何だか違うDB   作:パンチ拳血

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こんにちは、投稿致します。




恐ろしきはサイヤ人

 

 幹部と言われる彼らはやはり強い。

 

 ラディッツはザーボンとの拳や蹴りの打ち合いでそう感じた。先程殺していった上級の兵士とは違う、得体の知れない何かを隠し持っているような強さを持つ相手は、全宇宙から選ばれたエリートなだけはある。

 ナッパも瞬殺とは言っていたが、やはり体力は消耗していた様で決着はまだついていない。

 

 空中で互いの蹴りが決まり、吹っ飛ばされる二人。ラディッツは受け損なって顔面に真正面から食らう。ザーボンへは横腹に決まって、そこを押さえていた。

 

「相当に腕を上げた様だなラディッツ。あそこからここまで強くなった事は評価してやる」

 

「けっ、テメェなんかに褒められても嬉しくなんかねぇんだよ」

 

 口から血を流し、それを吐き出すラディッツ。

 ザーボンはまだ余裕がある様に見えた。長引けば長引く程ラディッツは不利になっていくだろう。

 ふと、ヤムチャとクリリンの姿が目に入る。他に兵士がいない所を見ると、何とか全ての兵士を倒したのだろう。今は立ち止まっており、参戦しようか迷っている様だ。しかし、彼らはラディッツとナッパ以上に疲労している。今のままでは完全に足手纏いになってしまうだろう。

 ラディッツはクリリンとヤムチャに向かって叫んだ。

 

「お前らは来るなッ!」

 

「成る程、やはり彼らもお前達の仲間だったか。そちらに余所見とは随分と余裕だなラディッツ!!」

 

 視線が逸れたラディッツ目掛けて、ザーボンは膝蹴りをかます。それは土手っ腹のド真ん中に入り、肺の空気が押し出される。

 だが、ラディッツは仰け反らない。我武者羅に気弾を撃ちまくり、ザーボンの視界を妨げる。一つ一つは威力の少ないモノだが、ザーボンはそれを全て避けてみせた。

 

 その隙を見て、クリリンとヤムチャは飛んでいく。ラディッツの言葉が届いていたのだ。

 兎に角遠く、ここでは無い遥か遠くへ。

 

 それを見たラディッツはニヤリと顔を歪ませ、撃つのを止める。

 

「どうした? 無駄な抵抗はもう終わりにして、やっと降伏する気になったのか?」

 

「そんな訳ねぇ、邪魔者がいなくなって清々したって所だ。これで思う存分暴れられるぜェ……」

 

 先程まで無かった獰猛な闘争心が、ラディッツから発せられる。

 今まで冷静に動いていたが、サイヤ人であり、その闘争本能は他のサイヤ人と変わらない。いや、ストレスに耐えてきたラディッツだからこそ、その爆発力はより大きいのかもしれない。

 この時初めて、ザーボンはラディッツに恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「なあ、本当に戻って良いのか?」

 

「だけど俺達に出来る事はもう何もありませんよ」

 

 武空術で空を飛び、逃げる事に成功した二人。

 残ってはいたかった。しかし、あのままでは足手纏いなのは火を見るよりも明らかなのは確かだ。

 何より、あの戦闘を見て……

 

「……レベルが違うな」

 

「そうですね、特にナッパの所なんか」

 

 近寄れなかった。いや、近付きたくも無かったが、それ程激しい戦いが起きていたのだ。

 それにナッパが、

 

「正直怖かったぜ。よくあれと戦えたなクリリン」

 

「まぁ、あの時は必死でしたから。今までは無理ですね、あんなに血走って……」

 

 敵よりも、味方であるハズのナッパが恐ろしく、戦慄してしまったのだ。あれこそがサイヤ人の本能なのだろう。思い出すだけでも武者震いでは決して無い震えが、身体を襲うのだ。

 兎に角、今は戻って態勢を立て直す事が先決だ。サイヤ人の二人は大丈夫だと思う。

 

 二人の無事を願いつつ、その場から離れるのであった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 ラディッツとザーボンが激闘を繰り広げる中、ナッパの方では___

 

 

 

「どうしたァ!? 俺様はまだまだこんなもんじゃねェぞドドリアァァッ!!」

 

「がはッ!? グフッ!? ……お、おのれ〜ッ!!」

 

 ナッパがドドリアを圧倒していた。

 今の状況をを三行で説明すると、

 

 

 ナッパが

 ドドリアを

 パワーで圧倒。

 

 

 これ以上無い程単純な理由だ。

 ドドリアはパワーで相手を殲滅する戦闘スタイルなのだ。姿を見てみればそれが分かるだろう。

 それを、一番の長所をナッパは力尽くで抑えたのだ。勿論ドドリアは必死で、先程まで見せた余裕の笑顔はとうの昔に消え失せている。

 

 何がここまでナッパを強くしたのか。その理由は、ラディッツと似てストレスであった。

 これまでの短期間で、ナッパは敗北を重ねた。これまでサイヤ人として勝利して来た彼は、此れ程までに無い屈辱を味わったであろう。

 

 下級戦士のラディッツに負け、

 自らを下級戦士と言う女サイヤ人に負け、

 何もしなくても強かった自分が修行して、それなのにベジータに文字通り一蹴された。

 

 もはや怒りのボルテージは最高潮に達し、今彼を馬鹿にした者は漏れ無く死のプレゼントが待ち受けているだろう。

 その記念すべき一人目に選ばれたのがドドリアであっただけの事。何も可笑しくは無い。

 

 

 

 

 

「可笑しいだろォ〜!? 何で猿野郎のテメェがここまで強くなりやがったッ!?」

 

 いつの間にか地面に叩きつけられ、埋もれていたドドリアが這い上がり叫んだ。

 それに対し答えたのはナッパの拳。受け構えの姿勢が出来ていなかったドドリアはボールの様に弾んで跳んでいき、その先にあったのは岩壁。ドドリアは何も出来ずにその岩壁を砕き、その身を突っ込ませた。

 

「く、クソがァァァ!!」

 

 砕けた岩を吹っ飛ばしながら、ドドリアは立ち上がった。

 しかし、ナッパの追い討ちには気付かず、首を掴まれ引き摺られる。

 

「ぐ、ぐぎぎ……」

 

「ハーハッハァッ!! テメェのパワーはその程度かァ!?」

 

 ナッパの腕を引き剥がそうと、ドドリアは両手で掴む。更に反撃に出たドドリアは足蹴をナッパに食らわせ続ける。

 だが、ナッパは怯まない。持ち前のタフさか、脳内麻薬が溢れる程に出ているのかは知らないが、全く効いていないのだ。

 上空まで持ち上げ、一気に叩きつけるナッパ。ドドリアの口から血が出る。

 だが、フリーザの側近としての意地か。握る力が若干緩くなった所を見計らって脱出し、距離を取った。

 

「こんなの間違ってる……間違ってるぞォッ!!」

 

 残り全てを込めたエネルギーを口の中に溜めて、ドドリアは撃ち放った。地面を削り、ナッパに向かっていく。

 だが、ナッパは避けようともせず、ただ突っ立っているだけだ。

 

「痛め付けるのも飽きたぜ……」

 

 そう言って、ナッパも口を広げる。撃ち出されるのはナッパの大技。顎が外れる位に大口で、ドドリアのエネルギーを簡単に撃ち破った。

 

「ぐおぉぉぉ……」

 

 ドドリアは手で抑える。撃ち負けてもなお、諦めていないのだ。

 だが、そんな足掻きも虚しく光に呑み込まれるドドリア。こうしてこの勝負、ナッパの余裕の勝利で決着がついた。

 

「さて、ラディッツは死んでねぇだろうな……」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

(……! ドドリアの気が……消えた……?)

 

 ザーボンとの戦いの最中、ラディッツはドドリアが死んだ事を気で感じていた。ドドリアが死んだという事はつまり、ナッパの勝利だという事。

 ならば、此方もさっさとケリをつけよう。

 

「くっ、ラディッツ如きがちょこまかと……ッ!!」

 

 ザーボンの連撃を紙一重で避けるラディッツ。あれから大してダメージも受けていないラディッツは、ザーボンの体力を削る作戦に出た。

 威圧感からのプレッシャーにより相手の精神を削り、隙を見つければ鋭い一撃を与え、防御では無く無防備な構えになる事で攻撃を誘い、それを避けるのだ。

 プレッシャーに呑まれ、下級戦士に圧倒されるエリートを否定したいザーボンの攻撃には焦りが含まれており、躱すのは容易であった。

 

「いい気になるなよォ、私を怒らせた事を後悔させてやるッ!」

 

 一旦動きを止め、ラディッツに向かって怒鳴り散らすザーボン。余りの怒りに、彼の美形の顔がいつものそれでは無く、更に血と唾液を入り混じらせたものを吐き出していた。正直言って、こんな姿は色々な意味で見たくない。

 

 と、その時ザーボンの身体が変わり始めた。

 身体が膨張し、細身であった先程のザーボンの面影は無く、ドドリア以上の太さになる。顔は人の形よりも爬虫類に近い姿に変化し、元の美顔は消え失せた。更に、全身を余す事無くイボイボの粒が出てきて、此れではまるで別人だ。

 

「こんな姿は見せたくなかったのだ。醜いからな……だから、この姿を見せた相手は誰であっても殺してきたッ!! 貴様も、殺してやるぞラディッツ!!」

 

 戦闘力も段違いに上がり、あったハズの焦りが消える。

 そしてザーボンは、ラディッツに掴み掛かった。反応出来ず、抵抗も出来ずに捕まってしまう。

 

「ぐお、離せッ!?」

 

「グフフ、離さんぞォ〜……」

 

 物凄い力で押さえ付けられる。

 ザーボンの両手がラディッツの頭を掴み、そのまま頭突き。何度も何度もカチ割る位に全力で、ラディッツの額には血が滲む。

 お次は胴体ごと抱きつく様に。そして一気に無理矢理上空へ引っ張られた。ザーボンの拘束から抜け出せ無いまま、天高く身体を持っていかれ、そして一気に急降下した。

 

 突然だが、地面と水面は、叩きつけられたら何方が衝撃が強いだろうか?

 答えは水面である。

 何故かと言うと、例えば水面に物体を時速80kmで叩きつけると、水面の硬さは鋼鉄を超えると言う。

 土や岩の地面と、鋼鉄では何方が硬いかと問われたら一目瞭然である。

 

 最早人外の速さの彼らはそれを遥かに超え、ザーボンはラディッツを水面に叩きつけた。

 人を打ち付けた音とは思えない鈍い音が着水と共に聞こえ、湖が干上がる程に膨大な水飛沫が吹き上がり、辺りに降り落ちた。

 

「ハハハ、此れではひとたまりもあるまい……」

 

 ザーボンは勝利を確信していた。

 変身前とは比べ物にならない戦闘力で不意打ちの連打、からの今の大技である。

 あの威力では良くて戦闘不能。最悪の場合、身体が粉々になっても可笑しくは無いのだ。

 

「さぁ、ドドリアの方はどうなったかな? あの大口で死んでいたらお笑い者だが……」

 

 ザーボンはもう片方の戦場へ飛ぼうとする。その時、スカウターが小さいエネルギー弾に破壊された。

 ザーボンは警戒する。まさか、ラディッツが無事だというのか?

 そしてその予感は、現実へと変わる。

 

 

 

「変身するとは、聞いた事も無かったぜ。だが、スカウターは破壊出来た様だな」

 

 

 

 戦闘服はボロボロになり、身体中が傷だらけになりながらも、ラディッツは生きていた。

 ザーボンは驚愕する。

 

「あ、あり得んッ! 何故無事なのだ!?」

 

「はっ、何でかねぇ……」

 

 ラディッツははぐらかす。

 ザーボンは確かにボロボロになっているラディッツの身体を見て攻撃は当たっているのだと思った。しかし、サイヤ人の肉体が強靭でタフさを兼ね備えているとしても、あり得ないのだ。

 

「さて、本来なら使うハズでは無かったんだが、この戦闘力差では使わざるを得ないな」

 

 そう言うと、ラディッツが纏ったのは紅いエネルギー。肉体が膨張し、輝き始める。

 少なくともザーボンはこんなものは知らなかった。眼中に無かったラディッツが、ここまで脅威の存在になるとは。

 

「そ、そうだラディッツ! 俺もフリーザ様……いやいやフリーザには嫌気が差していたんだ! 手を組もうじゃあないかっ!」

 

「お前程の奴が命乞いとは。プライドまで捨てたか」

 

 それ以上は何も言わず、ラディッツはザーボンを見据える。

 ザーボンは恐怖し、逃げ出した。

 

「逃がさん」

 

「何ッ!?」

 

 しかし まわりこまれてしまった!

 

 ラディッツは腹にボディブローを食らわせる。その威力に、戦闘服ごとザーボンの腹は貫かれ、オマケとばかりに気功波をそこにぶちかました。

 宙を舞い、地べたに落ちるザーボン。

 言うまでもなく、即死。

 二度と動かぬ屍と化したその姿に、かつての美しさは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃__

 

「これで三つ目か……ドラゴンボールとやらは」

 

 各地の村を襲い、己の願いの為だけに動くサイヤ人が、そこにいた。

 

 

 

 




今回はどうでしょうか?

優しくなった兄貴、ラディッツ。
気の良いおっちゃん、ナッパ。
しかしサイヤ人なので本能には逆らえず、戦闘民族としての恐ろしさは消えないまま。
頭を打った例外の悟空は仕方の無い存在なのです。

幹部の口調や戦い方が分からず、こんな感じになってしまいました。これが作者の限界です……
次はもう暫くお待ちください。

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