死んだ後の悟空は、天国で孫悟飯の爺ちゃんと感動の再会を経て、自分が爺ちゃんを殺した事を謝り泣いてます。
今はあの世で修行中……
多分オリブー辺りとでも試合してるのではないでしょうか?
叶える為に
__あれから一ヶ月が経ち、仙豆も怪我をしているメンバー分が出来たので全員が動けるようになった。
更にブルマの父親であるブリーフ博士が遂に宇宙船を完成させたということなので、メンバー全員がブルマの家に集まっていた。
そこで目にしたのは球体の物体が二つ、予想よりも大きい宇宙船が出来上がっていた。
「これが宇宙船か……」
「凄く……大きいですね」
「完成度たけーなオイ」
「地球の科学力も馬鹿に出来んもんだ」
皆それぞれの感想を述べ、宇宙船を見る。
と、そこへ一人の老人が近寄ってきた。その人こそが、この宇宙船を完成させたブリーフ博士だ。
「こっちが試作品でな。もう片方が完成品じゃ。でもスピーカーを何処に付けるか悩んでな? どうせならいい場所で__」
長々と話が続くが、割とどうでもいい話である。
そんな事よりも、早く悟空達を生き返らせる為に準備をして来た皆は、すぐさま宇宙船を発進させたい一心であった。
「乗るメンバーは俺、クリリン、ラディッツでいいんだな?」
「私もよ」
ヤムチャがメンバーの確認をすると、ブルマが大量の荷物を携えて来た。
準備は万端の様で、宇宙服も着ていた。
それを見たヤムチャ達は、苦笑しながらの反応。どうにも反応に困ってしまう。
「ま、まぁとりあえず天津飯と餃子、武天老師様は地球の事を頼みます。ブルマは本当について来るのか?」
「私がいなきゃ宇宙船の運転とか行った先でなんかあった時対応出来ないでしょ」
呆れた表情のブルマ。
やむなしと思い、ヤムチャ達は宇宙船に乗り込もうとした。その時、
「待て。俺からの報告がある」
ラディッツが声を上げた。
するとラディッツは別の方向に声を掛けたかと思うと、思わぬ人物が現れたのだ。
「おぉ……宜しく頼むぜ」
彼らはその姿を見て表情を変え、一瞬にして構えた。
それは今回の襲撃者の一人にして、彼らが戦った相手でもあるサイヤ人、ナッパだった。
困惑した。額に汗が流れる。
何故今になって現れたのか分からないが、敵であった事は間違い無い。
宇宙船を奪いにきた。ラディッツが裏切ったなどの思考が巡らされていく中、直ぐに戦闘が開始されると思いきや、それをラディッツが止める。
「待て待て! 今はもう敵では無い。これからのボール集めに協力する為に来たのだ。敵では無い」
ラディッツはそう言うが、皆はどうにも信じられなかった。元はと言えばこいつらが元凶だというのに、どういった心変わりなのか。
ラディッツはそれも含めて訳を話し始めた。
〜〜〜〜〜
ターレスが去り、その場に静けさが戻ってき始めた時、やっとラディッツは動ける様になった。
衝撃的な事実に、身体が固まって動けなかったのだ。
奴は、ベジータなんか足元にも及ばない程に強い。それも圧倒的にだ。
身体が勝手に震え出す。やはり本質は変わっていない様で、自分より強い者には恐怖を抱いてしまう。
「情け無ぇなぁ……直ぐにこの有様だ」
ラディッツは自分の醜態に歯軋りをした。
すると、気を失っていたハズのナッパが笑う。
「おやおや、やっぱ弱虫ラディッツじゃねぇか。ハハハ……」
しかしそれは乾いた笑い声。更に無理矢理声を出した様で、笑った後咳き込んでいた。
だが流石はサイヤ人の中でもタフさはピカイチのエリート、ナッパである。あれだけの戦闘力の差にも拘らずまだ息があり、しかもこの短時間で喋れる程まで回復するとは。
と、ラディッツは思っていた。
しかし、
「ラディッツよ、俺を殺せ」
咳き込みながらもナッパが言った。
その言葉に、ラディッツは言葉を失った。自身の記憶にある中で、ここまで弱々しいナッパは初めてだったからだ。
ラディッツが理由を聞く前に、ナッパは語り出す。
「俺はエリートサイヤ人だ。それだけは間違い無い。だがどうだ? 弱虫と馬鹿にしてきたテメェに、大猿化無しのハンデがあっても負けた。更に続けて下級戦士と名乗る女サイヤ人にまで負けた。俺が、女にだぜぇ? テメェの弟のカカロットにも負けんだろうよ。サイヤ人の王子であるベジータがあんなになってんだからよぉ……。あの後ベジータがスカウターの通信で言ったんだが、『負けたサイヤ人は必要無い』だってよ? 負けたサイヤ人はゴミだ。下級戦士に負けるエリートなんかいらねぇ……だからよ、殺せ」
絞り出すような声で、ナッパは言う。それは"命令"と言うよりも、"願い"のように聞こえた。
ラディッツはそれを聞くと自身の手をナッパへと持っていき……
__ナッパの腕を取った。
「な、何!?」
ラディッツはそのままナッパの腕を自身の首に回して支える。
かと思うと、今度はゆっくりと浮くように動き出した。
「……殺せるかよ。長い付き合いだった奴を、そんな簡単に殺せるかってんだ」
「こ、殺せ! 俺はもういらねぇんだッ! ベジータにも見限られて捨てられたんだッ! どっちにしたって死ぬしかねェんだよォォ!」
ナッパは叫ぶ。血反吐を吐きながらも、叫ぶのを止めなかった。
しかしラディッツは平然とした顔でそれを聞き流し、ナッパを何所かに連れていった。
暫くして到着したのはブルマの家。
ラディッツは、ナッパを介抱する気だったのだ。
ブルマはいきなりのことで驚き、介抱するそれの存在が判明した時は叫びながら震えていたが、ラディッツの説得がどうにか通じて、家の中に入れてもらえた。
ナッパは客室用のベットに寝かせられた。この程度ならば寝ておけば回復するとラディッツが言ったからだ。
ラディッツは部屋から出ようとすると、ナッパが口を開く。
「……何故殺さない。テメェは俺たちが憎かったハズだ。サイヤ人なら、それだけで十分に理由になる」
「言っただろ。仲間だったからだ」
「それだけじゃ足りねぇんだ。それ以外に、何かあるハズだ。それがどんな理由だか分からねぇが、それだけは読めるぜ?」
ナッパはラディッツに問いかける。後ろ姿のラディッツを追い、ベッドから落ちそうになったが、その時ラディッツは立ち止まった。
「歴戦のサイヤ人であるナッパには分かっちまうか。そこら辺は単細胞だから分からねぇと思ったんだがなぁ……」
「おい」
今の一言で不機嫌になるナッパだったが、実はそのことをベジータに陰ながら言われ続けていたのを知っていたので何とか耐える。しかし怒りは隠しきれないようで、身体がプルプルと震えていた。
しかし、ラディッツが話し出すとそれが止まる。
「んじゃ言っちまうが、ナッパにもやりたい事があったんだろ? ……例えば、種族の再興とか?」
固まった。言われた事は正にそれであった。つまりは図星だったのだ。
地球に向かう前でラディッツを生き返らせる提案をしたのも、王族であるベジータに下手でぎこちない敬語を使い続けたのも、全てはサイヤ人一族の復活の為であった。
でなければサイヤ人がほぼ滅んだ今、一族の中でもプライドの高いナッパが誰かに従うなんてことはしない。例えかなりの戦闘力の差で脅されて、痛めつけられても従わなかっただろう。
「……なんで分かった?」
「お、当たってたか。半分は勘だったんだがなぁ」
「茶化すな弱虫」
「な……ッ!」
ナッパも仕返しとばかりに過去の悪口を言う。
バカバカしい理由で少しの時間睨み合いになったが、暫くして互いに笑い合った。乱暴だが、部屋に響く笑い声。二人の野太い声は流石に大きかったようで、後でブルマに怒られてしまった。
少し時間をおいて、ラディッツが続きを話し出す。
「言っただろ、勘だって。だがまぁ、昔のナッパと比べると違和感があったぐらいだな」
「テメェも十分鋭いじゃねぇか。……確かに俺は再興が目的だった。だがよ? もう手遅れだろう。奴も、『フリーザ』もいるからよぉ」
その名前にラディッツは固まり、笑顔が消える。
それは、彼の恐怖の一つ。今までいた所のボスであり、そしてそいつは圧倒的であった。
ナッパはラディッツの表情に気付かない。
「他の星を攻める仕事をくれたのはフリーザ様々なんだがよ? でも駄目だ。宇宙でも随一の戦闘民族のサイヤ人が圧倒される程のあれじゃあな。だから___」
ナッパの言葉が続き、愚痴のような語りが長々と流れていくが、途中で言葉が切れた。
ナッパが、ラディッツの様子にやっと気付いたからだ。
ナッパはラディッツがフリーザを恐れているのを知っている。ならば今のだんまりな状態も当たり前だと思った。
だが、ラディッツから出た言葉は、
「俺は、フリーザと争う事になる」
ナッパは口を開けたまま動かなくなった。額に汗が流れる。
その言葉を理解するのに数秒掛かった。何故なら、その言葉の意味する事は余りにも無謀だから。自殺しに行くようなものだ。
「し、正気かオメェ……」
言葉が震える。
あんな奴に逆らっただけでもお終いなのに、挑もうとする。それがどれだけ愚かなことか。
「馬鹿言うんじゃねぇッ! 自殺願望でもあんのかテメェ!? 力をつけて変な自信でもついたか弱虫がァ!?」
悪口も御構い無しに使いラディッツを止めようとする。
しかしラディッツは、
「命をかける程に価値のあるものを探しに行くだけだ。俺は、カカロットを生き返らせるッ……!」
これ程までの闘志を滾らせるラディッツを、ナッパは見た事が無かった。拳をこれ以上無い位に握り締め、この部屋が熱気に包まれるのを感じる。
本気なのだ、ラディッツは。
「……知らんぞ。どうなっても」
「あぁ、ナッパは自分のしたい事をしてくれ」
ラディッツは今度こそ部屋を出ようとした。
その時。
「気が変わった。俺もそれに手を貸してやるぜ」
扉にかけた手が止まり、ナッパの方を振り向く。
「よく考えれば俺も殺される一人じゃねぇか。ベジータの野郎にも一発入れねぇと気がすまねぇ。それによ、少ないサイヤ人の一人だ。再興を願う俺が生き返らせるのに手を貸すのも筋が通ってるしな?」
「な、何を言っているのか分かってんのかナッパ!?」
本当に何を言ってるのか。ラディッツがこれから挑むのは一か八かの勝負である。上手くいけば弟が生き返り、失敗すればそれは不可能。最悪死ぬ。
カカロットの仲間は大丈夫だろう。やる気十分だし、あいつらが死んでもこちらには関係無いのだ。まぁ、カカロットには関係あるが。
ともかく、人のことは言えないが、これは生死を分けた勝負所。何の意味があってか分からないが、ナッパが手伝う理由がよく分からないのだ。
「勘違いすんなよ? 俺は貸し借りが嫌いなんだ。サイヤ人が減るのも気に食わねぇしな。このまま何もしないよりも、動いた方がイラつかねぇ。サイヤ人は戦場を好むってやつだ」
「……いいのか?」
気楽にこの馬鹿げた戦闘旅行に参加すると言ったナッパ。幾ら何でも罪悪感が湧くというもの。
だが、
「別に拒んだっていいぜ? 勝手に参加するだけだしな」
ガハハと笑うナッパ。ラディッツはもう何も言えなかった。
こうして、ナッパがナメック星行きに参加する事が決まった。
「で? 俺の宇宙船は?」
「あ、すまん。壊れてたから改造中だ」
「は?」
〜〜〜〜〜
「__てな感じで頼むぜ」
ブルマの証言もあり、渋々理解した戦士達。
正直、信用はしていない。だが、聞いた所によるとフリーザは相当にヤバい奴らしい。サイヤ人よりも恐ろしいとか考えたくもないが、悟空を生き返らせる為には衝突は避けられない、と言っている。そんなバケモノに対抗する為にはどんな戦力も欲しい所だろう。
しかし、ピッコロを生き返らせる為に、ピッコロを殺した奴が参加するのは何とも言えない気分になるものである。
こうして、地球人三名とサイヤ人二名を乗せた宇宙船はナメック星に向けて発進した。
〜〜〜〜〜
「クソ〜、フリーザの野郎が目を付けやがるとは……」
何処かの星で治療を終えたベジータが、苛立ちを壁にぶつけていた。その威力により、その壁には穴が開く。何かに八つ当たりしないと気が済まない、それ程までに良くないことが起きたのだ。
"願いの球の情報がフリーザに伝わっていた"
フリーザが不老不死になってしまえばこの宇宙は完全にフリーザの手に渡ってしまう。そうなれば、ベジータの"全宇宙を支配する"目的も、何もかもお終いだ。
すぐさまベジータは新しい戦闘服とスカウターを手にする。
フリーザ配下の下級の兵士の声を無視し、ポッドをナメック星へと飛ばすのであった。
今回も微妙な感じですが、ナッパが仲間になる回でした。ドラゴンボールの願いで真っ先にラディッツを生き返らせる提案をした優しさを持つナッパさん。そこら辺のを持ってきた感じです。
サイヤ人には仲間意識が高い者もいる。バーダックのチームを見ていたらそれが分かりますよね。
死闘を繰り広げ、しかし戦闘以外の会話ではこんな感じで割り切っているのかな?と思っての今回の会話シーンです。
てか、冷酷なサイヤ人が王族だけであっただけなのではないでしょうか?序盤のベジータは簡単に仲間を切り捨てていたし、ベジータ王なんかは星の侵略に間に合わなかっただけで殺したり、ブロリーの戦闘力の高さで殺したり。
ナンテヒドイヤツダ!
やはり時間がかかり遅くなりがちになりますが、期待せずお待ちください。