この頃予定が積み重なり遅くなってきましたが、頑張って続けていこうと思います。
はい、投稿です。
「死んだぞ」
その言葉に、ラディッツはピタリと止まってしまった。
怒りや悲しみなどの感情が爆発する前に、信じられないのだ。頭が事実を理解しようとしない。そして、信じたくない。
「……ッ!!」
だが、否定の言葉は出なかった。
相手がベジータならばおかしくも無い。同じ修行をしていた自分がナッパ相手にここまで全力を出し切ったのだ。それの何倍も強いベジータに、カカロットだけで挑んだらこうなる事位予想出来たハズなのだ。しかし、自分の事ばかりを考えていた。こんな結果になったのは……
「俺の……せいか……」
ラディッツは膝を突く。
それを見たベジータはニヤリと笑い、
「心配しなくても、直ぐに会わせてやる……あの世でなァ!」
拳を振りかぶり、ラディッツを殴りつけた。
「いい加減にしろよ?」
なんと、ラディッツはベジータの拳を片手で受け止めていた。そのまま握り、ゆっくりと立ち上がる。
ベジータはこれを外そうとするが、ラディッツの掌から外れない。「何故ラディッツがここまで……」と驚愕するが、ラディッツは静かなままだ。
「調子に乗るなァ!」
如何に先程の戦闘後だとはいえ、ベジータは認めたく無かった。カカロットに続きラディッツまでもが超エリートである自分にこうも追い付くのが、だ。
ベジータはもう片方の手で気弾をつくり、殆どゼロ距離でラディッツに放った。
しかし、
「……」
ラディッツはそれをまともに受けたというのに、動じない。
それどころか、握り締める力が強くなっていく。
「チクショウめェ!」
ベジータは蹴りを繰り出す。流石にラディッツはこれを避け、拳を離してしまう。
ベジータは瞬時に距離を取った。
「もう、帰ってくれ。ベジータ」
ラディッツは構えずまま、それを言い放った。
ベジータは怒りの余りに震え「ふざけるな」、そう言おうとした。
その瞬間、
ベジータの腹を、ラディッツの拳が抉った。
ベジータは堪らず腹を押さえて
「帰れベジータ」
さっきよりも強く発せられた声は震えており、何かを抑えているように感じた。
寒気がした。
冷えた汗が背中を流れる感触が嫌にはっきりと感じ取れた。
これは不味い。恐怖にも似た得体の知れないこの感覚は、触れてはいけない何かだ。
ベジータはポッドに乗り込み、扉が閉まる時にラディッツに向けて言った。
「覚悟しろよ……次に会った時が、お前の最期だ」
そのままポッドはもの凄い速さで空へと飛んでいき、見えなくなった。
しかしラディッツは見向きもせず、ただ黙ったまま立ち尽くすのみであった。
〜〜〜〜〜
戦いが終わり、脅威は去った。
しかしそれは、決して小さく無い傷跡を残していき、彼らはこの勝利を喜べなかった。いや、勝利と言って良いのかも分からない。
ピッコロが死んで神様も死に、悟空も生き返らない。自分達は何も出来なかった。
友人の死が、責任感が彼らを襲った。
どうにかしてこの結果を変える事は出来ないのか。これではどうしても、悔やんでも悔やみきれない。
しかし、どうしようも無い。
でも、どうにかしなければ。世界の為に戦い、二度もこの地球を救ってくれた英雄であり、友人だ。このままでは終われない。
クリリン達は皆病院へと運び込まれ、ラディッツは大丈夫だと言い張り何処かへ行ってしまった。お見舞いにはブルマやプーアル、ウーロンやカリン様などが来てくれたが、表情はやはりよろしく無い。
「これからどうします?」
クリリンの第一声。病室が嫌に静かであったから、はっきりと聞こえてくる。
「どうするって言ったって……」
ブルマが反応するが、どう答えていいか分からない。
それは皆だって同じだ。この状況を打開する策なんか、簡単に思い付く訳がない。思い付いていたらこんなに暗くなっていないだろう。
暫くの沈黙。
そして、再度クリリンが口を開いた。
「実は俺、考えついたんですけど……」
口籠った。
皆が疑問を持ち、ヤムチャが話しかける。
「どうしたクリリン? 何か良い案が出たのか?」
「そうなんですけど、上手く行くかどうか……」
「発言しない事には判断出来ん。その案とは?」
天津飯が促す。
それにより、クリリンはやっとその内容を答えた。
「もしかしたら、悟空を生き返らせる事が出来るかも知れない」
その発言に、皆は驚いた。
何も解決策が出ない中、その発言で一気に注目がクリリンに向けられる。
クリリンが次の言葉を述べようした時、
「何ッ!? それは本当か!?」
聞き覚えのある声が聞こえてきたと共に、いきなり扉を開いたのはラディッツだった。扉を破壊する勢いで迫ってきたので、どうしていいのか反応に困った。
何故ここにいるのかは謎だが、聞いていたのなら話は早い。
クリリンは続きを話し始めた。
「ピッコロが宇宙人で、ナメック星人だって言ってたから、この宇宙の何処かに故郷があるのかも知れない」
戦士達はハッとした。
聞いていたのだ。神様が自分の事を"ナメック星人"とブツブツ言っていたのを。
「もしも……本当にもしもだけど、ピッコロの故郷にドラゴンボールと同じような物があれば、手に入れる事が出来れば……」
「成る程! 神様が生き返れるということかっ!」
「そうだ、神様が生き返ればここのドラゴンボールも復活して、それで悟空も生き返れる!」
歓声が上がる。
皆の顔が明るくなっていき、笑顔が戻ってくる。
「これはもしかすると、もしかするかも知れんぞ!」
そう言ったのは亀仙人。
クリリンも「でしょでしょ!」と反応して、互いに笑い合っていた。
しかしブルマが待ったの声を上げた。
「素人は単純でいいわねぇ〜……そんな夢みたいな事できる訳ないでしょ、ガックリよ」
要は何処にあるかも分からないナメック星を、どうやって探すのかという事だった。
探す方法も無いのに喜んでいる姿を見て、ブルマは言葉のままガックリといった状態だ。
そこで意外にも声を上げたのはラディッツだった。
「任せろ。……界王様よぉ、聞いていただろ。教えてくれ」
ラディッツが上を見上げながら叫ぶと、脳内に知らない声が響いてきた。
『ふむ、ラディッツよ。お前はもうちっと目上の者にかける言葉を考えた方がいいぞ』
「俺の上についている奴の事は教えただろう。はっきり言って、無理だ」
会話が成り立っているが、誰なのかがさっぱり分からない。亀仙人が恐る恐る声をかけると、
「北の銀河で一番偉い界王という奴だ」
『これ! その言い方はなんだ!?』
界王様は不貞腐れつつも、ナメック星のある場所を伝えてくれた。
しかし、その場所を聞いて驚いたのはブルマ。どこからか電卓を取り出して一生懸命に数字を打ち込んでいた。
そして出てきた答えは……
「父さんが作った世界最高のエンジンを乗せた宇宙船で計算してみたら、4339年と3ヶ月かかるわ。長生きしなきゃね〜……」
ブルマはへたり込んで、そう言った。
しかしラディッツは、
「心配はするな。宇宙船は俺のとナッパの物がある。それを使えば一週間もかからん」
なんとラディッツはあの後、ナッパの行方を探すついでに宇宙船を回収してきたそうなのだ。
ナッパのいる場所はどこだか分からなかったらしいが、あれだけやられて又襲いかかる程の馬鹿では無いと言っている。仮に襲いかかって来ても、大猿では無いナッパなら何とかなると言ってくれた。
皆から笑い声が飛び交ってくる。
ブルマが「その宇宙船はどこ!?」と問いかけラディッツがリモコンを取り出すと、ラディッツでも反応出来ないスピードでブルマはひったくった。
それに対しラディッツが「な、なんて女だ……」と息巻いていたがどうでもよい話である。
「いける、いけるわ」とブルマが言ったと思ったらいきなり明後日の方向に指を指し、
「「目指せ、ナメック星!!」」
クリリンや亀仙人、ヤムチャも声を合わせてそう言った。
更に大きな笑い声が場を包み、それを見たラディッツは、
「お気楽な野郎共だ……」
と言っていた。
そして病室の人に怒られるのであった。
〜〜〜〜〜
数日後、宇宙船を任せてほしいとブルマに頼みこまれたラディッツは引き続きナッパの捜索を行っていた。何でも数人を乗せる宇宙船を作るとか。
それは兎も角として、ラディッツは冷汗をかいて空を飛んでいた。どうやら何処かに急いでいるようだ。
(この大きい気は誰だッ!?)
感じた事の無い気に、ラディッツは驚きを隠せなかった。
これだけの大きな気ならば直ぐに気付くハズだ。上の者の関係上、此れ程の戦闘能力を持ち合わせている者ならば、奴は無視しないだろう。
暫くして到着した後見たのは、信じられない光景だった。
ナッパが何者かによってボロボロされている。
少なくとも目の前にいる者は、ナッパ以上の戦闘力を持ち合わせているようだ。
姿は古びたマントが覆っており、よく見えない。しかし相当の実力者である事は確かなようだ。
直ぐに相手は気付き、声をかけてくる。
「あんたは、かの有名な弱虫ラディッツ君ではないか」
(此奴、俺の事を知っているだと!?)
ラディッツは驚愕した。自分の知られたくない過去の一つをこの者は知っているのだ。
ラディッツは瞬時に身構える。
「おいおい、そう身構えるなって。争う気は無いんだからさぁ」
「どの口が言ってんだ? ナッパをこんなにして……」
自分を知っているという事は、サイヤ人であるか、奴の下についている者だけだ。
しかし、此れ程までの戦闘力を持っているならば忘れないハズ。ラディッツはそういう奴なのだ。
「聞いたぜ? 何でもエリート連中の奴らに革命を起こしたって。中々やるじゃないかラディッツ君」
「何者だッ!? 姿を見せろォ!?」
ラディッツが叫ぶ。
すると相手は笑いながらマントを翻し、姿を現した。
「私はターレスと言う。ラディッツ君と同じ、サイヤ人だ」
「……サイヤ人、しかも女か」
珍しいなと、ラディッツは言う。
自分達の他に同士がいたのだ、それは喜ぶべきであろう。それも女のサイヤ人である。
そもそもサイヤ人は男性と女性の比率を考えると女性は非常に少なく、4:1の割合で圧倒的に少なかった。だからこそ少数民族だと言われる原因の一つでもある。
今では数える程しかいないサイヤ人の一人であるから、少なからず喜ぶべきなのだが。
「何故ナッパを……?」
「理由は単純、私がエリートを嫌っていたからさ。私も君と同じ、下級戦士のサイヤ人だったからね」
「そんな事で……」
理由はどうでもよかった。下級戦士と言うならば、どうしてそこまでの戦闘力を持っているのかが不思議でならなかったのだ。
「一応私もお前と同じとこの配下だぜ? まぁ、あいつには別に忠誠なんて誓ってないがな」
「何だと!?」
知らなかった。
同じサイヤ人が同じ所で生きていたなど、聞いたこともなかった。
如何にラディッツの耳に入らなくとも、ベジータには入って来るハズだ。なにせベジータは幹部の一人であったし、奴に対してそんな情報を集めないなんて事もあり得ない。
ラディッツが悩む姿を見せると、相手がそれに反応する。
「あれはサイヤ人が力を合わせる事を恐れているのだ。だから私とお前らを会わせなかったんだろう、変に数を増やされるのも面倒だと思ったんだろうしね」
ま、私はあんたらなんかに惚れるなんてことはあり得ない、と付け加えてくる。
「ここに何しに来た? 裏切り者の俺を殺しに来たんじゃないのか?」
ラディッツは汗を流しながら質問する。このまま戦闘になれば、完全に回復している自分ならば兎も角、今では分が悪いのだ。
しかし、
「そんな事はしない。寧ろ逆、君を誘いに来たんだ」
逆とは?
ラディッツは疑問に思う。
「私と一緒に来る気は無いか? 私達は生き残ったサイヤ人のわずかな仲間、仲良くしようや」
一緒に来い、と手を出す。
その意味とは、彼女は束縛を嫌い、欲するままに動く自由な性格であり、その為には奴の存在が邪魔だと言っていた。その戦力として誘って来たのだ。
しかしベジータやナッパのようなエリートは嫌っており、どうにも誘う気分にはならなかったと言う。
ラディッツは再度質問する。
「奴を倒す為に、俺を必要としていると?」
「そうだ」
「お前の自由の為に、俺を配下にすると?」
「配下とまではいかないが、ある程度言うことは聞いてもらうぞ?」
そこまで言って、質問を止める。
「どうした? こっちにつく気になっ……」
「だが断る」
ラディッツの答えは、NOだった。
「俺はいきなり出てきたお前が信じられないのだ。誘った所で油断した俺を殺す可能性も大いにあるのだからな」
ここまで言って、ラディッツは更に気を引き締めて構える。
相手の誘いを断ったのだ。「ならば、死ねぇ!」と襲いかかってきてもおかしくは無い。
しかし意外にも、彼女は直ぐに諦めた。
「そうか、まぁ可能性は望み薄だったからねぇ。我が強い種族であるサイヤ人を誘えるなんて思って無い」
大人しく退散してくれるようだ。
一先ず安心したラディッツは、しかし次の台詞に驚愕した。
「同じ下級戦士のよしみで教えといてやろう。奴も願いの球……ドラゴンボールとか言ったっけ? それを狙って来るぞ? ラディッツ君も狙っているのならば気をつけるんだな……」
ターレスが好きな読者の皆さま、すいませんでした。
ターレスが女性化したのには、サイヤ人連中しか女性化するのがいなかったからです。他のレギュラーを女性化するには難易度が高く……本当にすいません!なんでもしますから!
このターレスは部下を持っておらず、神精樹の実を持っていません。そこが、劇場版との違いになります。
戦闘力を表しますと、
悟空:9020
ラディッツ:13800(戦闘後16200)
クリリン:1760
ヤムチャ:1680
天津飯:1820
餃子:1120
亀仙人:1590
ヤジロベー:1240
ピッコロ:3800(重り無し6200)
ナッパ:4000(戦闘後7800)
ベジータ:18000
ターレス:23500
と考えて書いております。
ヤジロベーは死んでいませんが、一応戦闘に参加しました。しかし、仙豆を隠し持っていたので何とか復活しましたが、悟空は即死でした。渡す暇も無くってやつです。
読んでいただき、ありがとうございます