何だか違うDB   作:パンチ拳血

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はいこんにちは。投稿致します。





覚悟とは

 

 

 

 サイヤ人の身体が、まるで心臓の鼓動の様に振動し、巨大化が始まる。

 肌からは尻尾と同じ色や毛並みの体毛が生え、顔は人間のモノとはかけ離れた怪物の顔へと変化していく。

 

 これがサイヤ人の切り札、大猿化だ。

 

 しかし昔悟空が変身した大猿とは違い、エリートサイヤ人が変身した大猿には理性が宿る。だから本能のままに暴れまくるのでは無く、これまでの戦闘経験を生かした攻撃が繰り出される事になるのだ。

 

 

「クソォ……抜かったわぁ……」

 

 

 ラディッツが悔やむ様に大猿化したナッパを睨む。

 

 今までも巨大だったナッパの身体が、更に巨大化して目の前に立ち塞がる。

 それにしても恐ろしいのはナッパの判断力か。直ぐにラディッツの尻尾が無いと判断し、大猿化したのだから。

 

 

「油断したなぁ……だからお前は弱虫ラディッツなんだッ!」

 

 

 

 尻尾のないラディッツは変身が出来ない。

 

 先程まではラディッツの方が断然油断であったが、大猿となれば話は別になってくる。何故なら、大猿化すると戦闘力が10倍になるのだ。

 単純計算でナッパの戦闘力は40000となる。変身すれば同じサイヤ人同士で強化する倍率は変わらないが、カカロットを間違って襲わぬ様にと、今までの自身のケジメとして尻尾を抜いてしまったのだ。

 

 今まで大猿化する事は、月があれば当たり前の事になっていた。だからこそ、気付かない盲点だった。

 

 

 

「こうなってしまえばもうお前には打つ手立ては無いッ! 諦めてさっさと死ねぇ!」

 

「そう簡単にやられてたまるかッ!」

 

 ラディッツはなんとかナッパの踏み付けを避ける。この巨体だ。どんな攻撃を受けてもウェイトの差が出てくる、必殺の一撃だ。

 

 ラディッツはまず回避に専念し、作戦を練ろうとした。その巨体に張り付く様に動き、ナッパを撹乱する。

 

 まず手始めに、エネルギー弾をぶつける。

 しかし、

 

「ちょこまかと動きやがってぇッ!」

 

 全く効いている様子が無い。

 当たり前だろう。戦闘力の差もあるが、なにより元々のナッパの耐久力がおかしい。

 

 元々サイヤ人というのは、宇宙から見ても全体の平均の戦闘力、戦いのセンス、そして強靭な肉体が並外れて強力な種族だ。

 その中でも異常な耐久力を持ち合わせたエリートがナッパだ。少し戦闘力が上のサイヤ人でも、そのタフさに勝てず敗北したという噂は幾つか聞いている。

 だからこそ気の強さならば上なハズのピッコロも、腕を捥ぎ取られるという結果になったのは不自然では無いのだ。

 そんなナッパに小手先の技術は通用しないだろう。

 ならば、

 

(尻尾を狙うッ!)

 

 尻尾を切り落とす事に専念するしか無い。

 大猿化に必要なのは月と尻尾。月を狙うには気を溜める時間が必要となる。しかし、そんな隙をワザワザ逃す様な奴でも無い。

 ならば尻尾だ。尻尾を切断すれば強制的に大猿化の効果は切れて、元の姿に戻る。

 そうすれば勝てる。

 

 ラディッツはワザとナッパの目の前に現れ、連続エネルギー弾をブチかます。

 

「ノコノコと目の前に現れやがったなラディッツッ!」

 

 ナッパはエネルギー弾など御構い無しにラディッツに拳を振るう。

 ラディッツは弾幕とその爆煙で視界を遮り、下に回り込む事でそれを避けた。そのまま、尻尾へ____

 

 

 

「バァカめぇッ!!」

 

 

 

 ナッパの肘打ちが決まる。

 その威力に、ラディッツは地面に叩き落とされた。

 

 地面に叩き落とされ、肺の空気を吐き出すラディッツ。なんとか立ち上がろうとするも、そこをナッパに踏み付けられ動けなくされる。

 

「お前が俺の尻尾を狙っているなんてバレバレなんだよォ!」

 

「く、クソッタレめ……ッ!」

 

「このままグシャグシャに潰れろォ!!」

 

 ラディッツが死を覚悟した。

 その時、何者かがナッパに攻撃を加えた。しかし、やはりと言っていいのかダメージを受けた様子は無い。

 

 

 

「お、俺を忘れるとは……馬鹿な野郎だぜ……」

 

 

 

 その正体はピッコロであった。

 腕を捥がれ、再起不能と思いきや、五体満足でそこに立っていたのだ。

 

 ナッパの意識がピッコロに向く。

 その隙を突いて、ラディッツは脱出を試みた。

 

 

「界王拳ッ!」

 

 

 ラディッツの身体が紅い気を発し、ナッパの踏み付けから逃れる。

 

 ナッパはいきなりラディッツのパワーが上がった事に驚いたが、まだ自身の方がパワーは上であると確信し余裕の笑みを浮かべた。

 

「まだそんな元気があったのか。そうだ、もっと俺を楽しませろ」

 

 ラディッツとピッコロは突進してきたナッパから逃れる。

 避けた方向は同じだったようで、互いに目線を合わせた。

 

 

 ラディッツにとっては願いの球に関係するナメック星人、としか感じていないだろう。しかし、かつての自分よりは手強いとナッパは言っていた。

そして思った。ナッパを攻撃した所を見ると、少なくとも今は敵になったりはしないだろう、と。

 

 対するピッコロは昔の怒りを思い出していた。自分を敵とも思わず、無視していったこの男を。あの怒りがあったからこそ、今の強さがあると言っても過言では無い。しかし、こいつの力を借りなければこの怪物には勝てない。

 少なくとも、今の自分では。

 だからこそ、手を貸してやる。今回だけだ。次会うときは……。

 

 

 目線を合わせたのは一瞬だった。

 それだけで、言葉も交わさず、彼らはナッパに向かって飛んでいった。

 今は話す余裕も無いのだ。それ程までに、目の前の敵は強い。

 だからこそ彼らは不慣れな、『力を合わせる』をしなくてはならないのだ。ナッパの攻撃をギリギリで避け、隙あらば反撃する。幾らナッパがタフでも、ダメージは積み重なっていくハズ。そして相手が鈍ってきたところを叩くッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナッパはイラついていた。

 回避に専念する奴らに攻撃が当たらない。

 奴らからの攻撃は痛くも痒くも無いのだが、どうにも鬱陶しい。まるで牛に群がるハエが如く、だ。

 

 やがてナッパの苛立ちが頂点に達した時、

 

 

「邪魔だァ!!」

 

 

 ここ、東の都にやったモノと同じ技が彼らを襲ったのだった。

 まるで自分の周りを全て破壊するかのように。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 ____ラディッツは目を覚まし、同時に身体中が軋む様な痛みを感じた。その痛みに耐え切れず、呻き声を上げてしまう。

 

 

「やっと目を覚ましたかラディッツ。そーこなくちゃな、苦しむ顔を見ねぇと面白くねぇッ!」

 

 

 それと同時に握る力が強まる。

 どうやらナッパの手の中にいる様だ。両手で握られ、ナッパの顔の前に来る様に持ち上げられている。

 

 ラディッツの恐怖が再来した。もはや隠せない程に恐怖が抑えられず、それは表情にも出てしまう。

 

 

「お、怖いか? そうだろうなぁ。もうお仲間さんもいないもんなぁ」

 

 

 そういえばナメック星人がいない。……気も、感じなかった。

 

 地球人はまだ微かに残っているモノが幾つかあるが、それは余りにも遠く、この気の小ささならば動けないだろう。

 

 

 確実に来る"死"が怖い。

 

 目の前のナッパが怖い。

 

 ベジータが怖い。

 

 名前も言えないあいつが怖い。

 

 幼い頃のトラウマが怖い。

 

 そして、"一人"が怖い。

 

 ラディッツは、心を恐怖に塗り潰されていた。勝手に身体がガタガタと震え、抑えられなくなる。

 あの時逃げていればよかったと思った。尻尾を抜かなければよかった。カカロットの声を聞かなければよかったと、思った。思ってしまった。

 後悔の念が押し寄せる。

 情けなくて。

 情けなくて。

 

 そして、カカロットに、親父に、謝りたかった。

 

 ____こんな駄目な奴でゴメン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、不意に言葉が思い浮かぶ。

 

『兄ちゃんスゲェな! オラなんか全然かなわねぇ!』

 

『兄ちゃん少食なんだな〜、オラが貰っていいか?』

 

『兄ちゃん、もっと自信持った方がいいぜ? 兄ちゃんは、強ぇんだからっ!』

 

 カカロットの声が。そして、

 

『強くなれよ、俺のガキなんだからな……』

 

 親父の声。

 

 

 恐怖に塗り潰された心に、小さな光が宿る。それが広がり、いつの間にか恐怖は消えていた。

 

 

「……ナッパ」

 

 

「お? やっと死ぬ覚悟が出来たか? 無くても殺すがなぁ」

 

 

 ナッパの笑い声が高らかに鳴り響く。

 だが、そんなのは耳に入らない。

 

「確かに俺は臆病だった。いや、今でも臆病だ。だが、勝てるぞ」

 

「はぁ?」

 

 その言葉に笑い声が止まり、ラディッツを睨みつけるナッパ。

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘力なんてのは、単なる目安だ。あとは…………勇気で補えばいいッ!!」

 

 

 

 

 

 ――――界王拳三倍。

 

 

 

 

 

 

 ラディッツは拘束から力尽くで抜け出し、ナッパに連撃を仕掛ける。

 いきなり重くなった攻撃に、ナッパは困惑した。何故大猿の自分よりパワーが上なのか。さっきまで恐れ戦いていたこの弱虫に何が起こったのか。

 ナッパは反撃も出来ず、ラディッツの猛攻に押されていく。

 

 何故今までラディッツが界王拳をそこまで使わなかったのか、それは精神統一にある。

 悟空とは違い、今まで溢れる感情のままに戦ってきたラディッツは、安定した精神のままでの戦闘があまり得意では無かったのだ。一段階目の界王拳でも、制御し切れていない程である。不安定な感情では、界王拳を極めるのが難しいのだ。臆病さも、そこに加わっていた。

 

 しかし今、ラディッツは三倍の界王拳を身にまとっている。

 普通ならば確実に心と身体が崩壊しているだろうが、今までに無い"覚悟"が、それを可能としていた。

 

 

 

 

 絶望を乗り越える勇気を。

 

 

 

 

「俺はエリートのナッパ様だッ! 負けるハズが無いィィ!!」

 

 ナッパは口の中にエネルギーを溜め込む。

 それはナッパの最高の技であり、圧倒的な火力を誇るモノだった。

 ラディッツは迎え撃つ様に両手に気を引き、構えた。

 

 

 

「カカロットよ、技を借りるぞ」

 

 

 

 それは、かめはめ波の構え。

 

 同時に撃ち出され、拮抗する両者のパワー。夜だというのに、眩しい程の光が東の都跡地を照らす。

 だが、次第にラディッツのエネルギーに押されていき、

 

 

「チクショーッ!!」

 

 

 ナッパは呑み込まれた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 満月であるのに、ナッパの姿は戻っていた。

 理由はナッパを呑み込んだ気が、尻尾を焼き切ったことからである。ナッパ自身も、身体中が焦げた様な傷痕でいっぱいであったから、恐らくそうなのだろうと思った。

 

 ともあれ勝負はついた。

 ラディッツは力無く地上に落ち、肩で息をする。

 界王拳を無理矢理上げたのはやはりキツく、一瞬でも気を緩めれば身体がおかしくなりそうだ。

 

 

 

 ____だが、一息付くのはまだ早い。

 

 

 ベジータが、見るからにボロボロな姿でこちらに飛んで来る。片目を潰され、戦闘服も意味をなさなくなっている。

 

「ベジータ……!? カカロットはどうしたッ!?」

 

「ラディッツか、カカロットなら____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回はいかがでしたでしょうか?

勇者王のセリフを少々使わせてもらいました。

まぁ、前々回でハガレンのセリフも使っているんですけどね。
てか色々なネタがあってオリジナルなセリフが殆ど無いと思うんですよ。ふむ、難しい。

やっぱオリジナル展開は難しい。上手く書けてないような気がして仕方が無いです。ホント、すいません。

次回もよろしくお願いします。



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