異世界での生活も楽ではない   作:XkohakuX

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第14話 *初めての水着イベント!*

「着いたー!!」

裕兎は湖に着くなりそう叫んだ。

「結構遠かったのぅ。」

若干疲れたような表情でカエサルも荷物を地べたに置いた。

「じゃあ、私達はあちらの木陰で着替えるわ。」

ミカはそう言うと、クロエ、シャネル、そして前日に誘っていたソフィアとイザベラも続き木陰に入っていく。

「じゃあ、俺達も早めに着替えて道具の準備をしようか。」

レンの意見に裕兎とカエサルの二人は、そうだなぁーと軽く返事をし着替える。既に服の下に着ていたため、着替えるというより上の服を脱いだ、の方が正確かもしれない。

裕兎は黒色と赤色を主としたズボンのような水着のようだ。

レンは裕兎とは色の異なる赤色とオレンジ色だが、形状は同じで更にパーカーを羽織っている。

カエサルも形状は同じだが、色は青色だった。彼に関しては露わになった上半身は見事な筋肉で迫力がある。

「とりあえず、バーベキューの準備をするか。」

そう呟くと裕兎はカエサルが運んできた袋に手をつけた。

袋を開けると、そこには金網やトングといったバーベキュー用品が1式揃って入っている。

これらは裕兎が前日に急いで設計し鍛冶屋に頼んで作って貰ったものだ。ついでに言うならば、今着ている水着も前日に作って貰った特注品だ。

この世界にはバーベキューという概念がないため、これは世界で一つしかないであろうと思われる代物だ。

売ったら高そうだなぁ、グへへなんて思いながらも裕兎は組み立てていく。

「レンは机を組み立ててその上に肉を並べてくれ。カエサルは木1本ほど切り落としてそれを手のひらより一回り大きめくらいまで切ってくれ。」

「うむ。」

「分かった。」

二人は返事をすると早速作業に取り掛かる。

しばらくすると、遠くの木々がなぎ倒され鳥達の鳴き声と羽ばたきの音が響いてきた。どうやら、カエサルが斧で木を切り落としているようだ。

(まぁ、あれ...見るからに一本どころじゃないよな...。あんなに木必要ないんだけどなぁ。)

作業する手を止めて音がした方向を見ていたが、まぁいっかとまた作業に戻る。

裕兎はあらかた準備し終わると木を切り終わったのだろう、カエサルが袋に入れて持ってきた。

「これくらいで足りるかのぅ?」

「おう。充分過ぎるくらいにあるな...。」

木の入った袋を広げ見てみると予想通りとなった大量な量が入っていた。

(まぁ、肉の量多いし多めでいいか。)

それらをバーベキュー台へと入れていく。

「俺も準備終わったよ。」

肉を並べ終わったらしい、レンが裕兎のところへときた。机の上にはたくさんの肉が並べられていた。

「なら、次はこの木に火を付けてくれ。」

裕兎はバーベキュー台に入れられた木を指さす。

「りょーかい。」

レンは台に手をかざすと手のひらから炎を吹き出した。

みるみる炎は燃え広がりいい感じに火力が付いた。

「良し。もう止めて大丈夫だ。助かったよ。」

「この道具便利だね。裕兎よく思いついたね。」

裕兎は礼を言うと金網を乗せる。それを見ていたレンは、ほぉーと感心しながら道具を珍しそうに眺める。

「あーまぁな。こういうのは得意な方だ。」

異世界からの情報といえる筈もなく、裕兎はふと思いついた理由を適当に並べた。

「流石じゃのう。」

そんな風に準備をし終わると、三人で雑談しながら一息ついていた。すると突然木陰から一人の少女の姿が現れ裕兎に向かって抱きついた。

裕兎は急な衝撃に倒れそうになったが何とか倒れることなく踏みとどまった。

一体誰の仕業だ、と思い目を向けるとそこにはドレスのような紫色の水着を着ているクロエがいた。

着痩せするタイプなのか、水着を着ているクロエはいつも見るときよりも胸が多少大きいのだと気づいた。

いつもよりくっきりと分かる身体のラインや露わにされた肌が艶めかしく表現され美しかった。

「うふふ♪この水着似合っているでしょうか?♪」

(なんでくっついてきてるの...?あまりくっつかないで頂きたい...。ほら...水着だし?俺、男の子ですし...?恥ずかしいじゃないですか...?)

そんなことを思いながら頬を染めていると、その反応をからかうかのようにクロエは胸を押し付けてくる。

「いや...お前離れろよ...。似合ってるから。早く離れろ...。」

「目を背けないでくださいまし♪」

「ってか、こういうことはシャネルがしそうなんだけどな。シャネルはまだ着替えてるのか?」

「いえ?あちらに居ますわよ?」

クロエが向けた視線の先にはいつの間に来たのかシャネルが肉の並べられた机の前で目を輝かせていた。

「わぁー肉がどっさいあん!」

その光景を見て裕兎は納得をした。それと同時にふっと笑みがもれる。

「あーなるほどね。」

シャネルは黄色と黒色の豹柄の水着を来ていた。

豹柄という模様がシャネルのイメージにピッタリと合い凄く似合っておりいつもより露わにされた肌は白過ぎず黒過ぎずといった色でいつもより可愛らしく見えた。

いつもなら、見惚れてしまうところだっただろうが今はそうはいかない。なぜなら、隣にいるクロエのせいでそれどころではないからだ。肉食系女子か、と言ってやりたくなるほど積極的だった。

「それよか、早く離れろよ...。」

身を捩り何とかクロエから離れると一息ついた。

そこへ更に人影が三人現れた。

一人は純白の白といった至ってシンプルな水着であったが、逆にシンプルが似合い美しく豊満な胸が強調された女性。ミカだった。

その後ろに続いて現れた二人は、赤色やピンク色、青色といった花柄が主となり、下半身には腰周りの横から後ろまでミニスカのようなヒラヒラに包まれ前だけがヒラヒラがないような水着で両腕の前腕筋には鎧を付け腰には剣を携えている、イザベラ。

それと、胸の方は薄紫色の水着で下半身は左足が足首辺りまで薄紫色の煌びやかな布を纏っている、ソフィア。

肌は白く美しくきらめき恥ずかしいのか頬はほのかに赤く染めている。その姿は例える言葉が出ないほど綺麗だった。初めて見た人は皆、女神と間違えるのではないかと思えるほどに。

裕兎はそんなソフィアに見惚れているとイザベラがソフィアの前に踏み込むと剣の柄を掴み構えた。

「裕兎!お前、ソフィアを下卑た目で見ていただろう!切り殺すぞ!」

「いや、ちょっと待て!見ていたのは認めよう。だが、下心があった訳ではない。」

急なことに慌ててそう力強く宣言する裕兎。

しかし、逆にそれを聞いていたイザベラは手を震わせ困惑していた。震える振動で剣が鞘とぶつかりガチャガチャと音を鳴らしている。

「なっ...!?こんな美しいソフィアを見てそんな訳あるか!.....はっ...!まさか...お前は女ではなく、男が好きなのか!?」

(めんどくせぇ。これじゃ、下心あるなし関係ないじゃん...。正解はなんだったの...。ねぇ...!)

裕兎のそんな心の悲痛な叫びなど聞こえる筈もなくイザベラはなおも困惑していた。

このままでは変な誤解をされたまま周りに広がる、と思い急いで訂正をした。

「いや、違うから。俺は同性愛者じゃないから、異性愛者だから。」

「なら、やはりソフィアを!?」

「お前の勘違い両方ともないから。」

「ふん。まぁ、いい。今回は許してやろう。...だが、次はないぞ。」

そう言い終わると最後にギリッと睨まれた。

(怖いなぁ...こぇーなぁ...。)

何とか誤解は免れたが、少し疲れため息をついた。

ソフィアとイザベラは、いつの間にかレンとカエサルが焼き始めていた肉のところへと向かっていった。

ミカは机の上に置かれている皿を持って既にレンの隣に立っていた。

レンと楽しげに話したりしており、肉を焼いて手が塞がっているレンにたまに肉を食べさせたりしている。

皆楽しそうにしておりそれを見ていた裕兎は安堵すると隣からクロエが声を掛けてきた。

「裕兎は食べないんですの?♪私が食べさせてあげますわよ♪あっ私を食べて下さってもいいですわよ?♪」

クロエは冗談めかしにそう言い、からかうと皿に乗せられた肉を1枚箸で持つと裕兎の口まで運ぶ。

「はい、あーん♪」

「肉は有難く貰うけど、お前は食べねぇから。」

苦笑混じりに笑うとクロエの持っている肉を口に含んだ。

「あらあら♪釣れないですわねぇ♪」

「おっ美味いな。これ。」

「それは良かったですわ♪どうです?私との関節キスのお味は♪」

ニッコリ笑いながらそう言った。

「う...!?ゴホッゴホッ!!関節キスしてようがしてなかろうが味は変わらねぇよ。」

関節キスと言われ勢いよく咳き込んでしまったが、至って平静を装う。

(まぁ、平静を装えてないよね...。はぁ...やっちまったなぁ。油断してたなぁ。)

「悲しいですわぁ♪その割には意識してた気がしましたけども♪」

うふふと笑いながらクロエは次々に裕兎の口に肉を突っ込むと空になった皿を持ってカエサルの元へと向かった。

口いっぱいに肉を含んだ裕兎もそれに続いて机から皿を一枚取りカエサルのところへ向かうことにした。

肉を焼いてるところでは、シャネルが物凄い勢いで食べていた。食べる度に目を輝かせて美味しそうに顔を和ませながら。

レンは肉を焼きながらも今回の任務での話をミカと話している。

「そういえば、ミカ。今回の任務では一人で行かせたけど、次からも俺も戦うからね。」

「私が失敗をするとでも思っているのかしら?」

ギロリと睨まれたレンは苦笑いをしながらも話を続けた。

「い、いや違うよ!?ただね、最近とある噂を耳にしてね。」

噂?とミカは首を傾げる。

「最近、俺ら四騎帝に並ぶ実力者が現れたという噂を聞いたんだよ。確か、十賤兵と呼ばれる人達だったかな。ほら、四騎帝も皆それぞれ個性強いから。」

「十賤兵と呼ばれる人達も個性が強いだろうから、絡まれたら問題が起こるかも、ということかしら?」

レンが話している途中でミカは先読みをし言う。その通りだったらしくレンは、うんと頷く。

しかし、ミカは特に気にする風でもなくケロッとしていた。

「別に大丈夫と思うのだけれど。それに絡まれたとしてもレンが居るわ。」

「凄い信頼してくれるんだね。」

そのことが嬉しかったのかレンは満足そうに微笑んでいた。

「まぁ、レンが心配してのことならそうするし気をつけるわ。」

それからしばらくたわいもない話をし楽しい時間を過ごしていると肉が無くなった。

うーん、と伸びをすると裕兎は口を開く。

「良し。じゃあ、腹も膨れたし軽く遊ぶかぁ。」

腹が満たされ満足なのかシャネルはタッタッタッとバーベキューの袋とは別のもう一つの袋へと走る。

袋を漁るとビーチボールを取り出した。

「うち、これで遊びたぁい!昨日裕兎から教えて貰ったぁ。これを上にポーンてして落っちしたばいら負け、てゆうゲームの楽しかげな。」

両手でボールを持ってニッコリ笑って言った。

ミカ達の女性陣は楽しそうやら、やってみたいやらと好評だった。裕兎の思惑通りに。

「レン、カエサル。俺らは泳がね?」

「俺は辞めとこうかな。日陰でゆっくり休んでるよ。」

「わしは構わぬぞ。」

裕兎は二人を誘ったがレンは申し訳無さそうに断り日陰で座った。どうやら、ひたすらに肉を焼いていたためか疲れたようだ。

カエサルと裕兎は湖へと入り泳いだ。

「水が冷たくて気持ちいいのぅ。」

「あぁ、最近暑かったしなぁ。」

二人で軽く雑談しながら泳いでいるとカエサルが唐突に止まった。

「あっそうじゃ。裕兎、わし新しい技を思いついてじゃな。少し見てくれんかのぅ。」

「おっ!新しい技かぁ。」

「うむ。あそこの岩を見ていてくれ。」

カエサルが指さした先には湖の水面から1メートルほど出ている岩があった。

すると、そこに手をかざすカエサル。

「"増風圧縮"(ヴァンフェアザンメルン)。」

そう言うと岩の周りで風が巻き起こったかと思ったらいきなり岩が砕けた。

「...なるほどな。風という力の働きを倍増させたってことね。カエサルの特性は"増力"(フェアメールング)だし、納得がいくな。」

「どうじゃ!?凄いじゃろ!」

裕兎が原理について考え納得しているとカエサルは自信ありげに胸をはる。

「確かに凄いな。その発想は無かったわ。俺も新技考えないとなぁ。というより、生物学の勉強しないと、だな。」

率直な感想を述べると顎に手をやり考え始める。

しかし、少し離れた浅瀬の方からミカ達の声が聞こえ考えていた頭はリセットされそちらに視線がいく。

そこには楽しそうにボールで遊ぶミカ達が見えた。

(女性のみでのビーチバレー。目の保養になるなぁ...。それに、しても皆スペック高いよなぁ。)

そんなことを考え見ているとイザベラがソフィアにコソっと一言言う。

当然ながら離れている裕兎にはそれは当然聞こえない。

「ソフィア、ボールを高く上げて下さい。」

「...?まぁ、分かった。」

何をするのか理解出来ずにいたソフィアだったが、とりあえずイザベラの指示通りボールを高く上げた。

「裕兎!貴様また見ていたな!次は許さないと言っただろうがぁ!」

イザベラは高く上がったボールに向かって飛びスパイクを打つ。無経験者とは思えないほど綺麗なフォームだった。

飛ばされたボールは一直線に裕兎へと飛んでいく。

咄嗟のことに反応出来ずにいると思いきや、裕兎は高らかに笑う。

「フハハハッ!そんなもん想定内済みだ!!さぁ、来い!レシーブしてやる!!」

そう勢いよくレシーブの体制を取ろうとして裕兎はあることに気づく。裕兎のいる所は深くて立てないと言うことに。

「あっ!!やべぇ!!ここじゃ構えきれない!しまったぁぁぁぁぁ!」

そんなこんなしている内にボールはそのまま裕兎の顔面へと当たった。あまりにも間抜けな失敗だ。

「かはっ!!」

そして、ブクブクと湖の中に沈んでいく裕兎。

「なっ何してるの!?イザベラ。死んじゃったらどうするのよ。」

ソフィアは何が起こったのか理解すると困惑しながらも何とかイザベラに聞く。

「あのくらいじゃ死にませんよ。」

「うふふ♪大変そうですわね♪」

「また怒られてるのかしら。全く懲りないわね。」

イザベラはソフィアをなだめ、クロエとミカは笑っていた。

シャネルはというと

「わぁーしゅごぉい!ボールのビュンっち飛んでった!」

目を輝かせてイザベラを見ていた。師匠って呼びそうな勢いで。

ボールを顔面に受けた裕兎は一瞬失った意識をなんとか取り戻す。

(はっ!!ここは...湖の中かぁぁ!!くっ苦しい!)

意識を取り戻したところがまさかの水中で焦り、慌てふためきながら息を吸おうと水面から顔を出そうと脚をバタつかせ腕を回す。

すると、あることに気が付く。

海底の方に吸い込まれるな、と思った裕兎はそこを見るとどんどん大きくなっていく渦を見つけた。

(な...なんだあれ!?このままじゃ水に浸かってる奴ら皆吸い込まれて溺れ死ぬぞ!)

そう危機感を覚えた裕兎は急いでどうするか考える。

しかし、時間は裕兎を待ってくれない、みるみるの内に渦は大きくなっていくのであった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

第14話........終




久しぶりの投稿です( *´꒳`* )
少しの間投稿出来なくてすみません:(´◦ω◦`):

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