43~45度辺りでシャワーで洗い流せば毒も弱まるらしいですよ( *´꒳`* )
裕兎達は亜人の大将と残兵を討伐し終わると獣人種(ビースト)と合流をし応急手当をし始める。
「あ...ありがとうございます。」
「すみません...。」
ミカは手馴れた手つきで次々と傷だらけとなった獣人種(ビースト)の手当てをしていく。
「いいえ。構わないわ。」
多くの人からお礼を言われ、ミカはにこやかに微笑み返している。
シャネルやレンもミカ程ではないが、それなりに出来ている。
裕兎やカエサル、クロエに関しては手当てが下手過ぎて逆に邪魔にしかならなかった為、ミカに下げられてしまっていたので除外され邪魔にならないところで並んで座っている。
(応急手当かぁ…。興味無かったから授業中ほとんど寝てたもんなぁ...。)
ミカの手馴れた手つきを見て、ほぇーと感心する裕兎。
「さすがじゃのぅ。」
どうやらカエサルも裕兎と同じ心境だったらしく感服していた。
クロエはというと裕兎の膝を勝手に枕にし寝ていた。
(こいつ、いつの間に膝枕してるんだよ。
ぼーっとしてたら気づかんかったわ...。......可愛いから、まぁいっかってなっちゃうな、これ。)
そんなことを考えていると、いつの間にか手当ては終わったらしくミカ達は汗を拭っている。
「やっと一段落出来るわね。」
そう言って、ミカは結んでいたゴムを取りバサッと髪を下ろした。
「お疲れ様。流石ミカは速いね。」
レンがミカを撫でていると、その隣をバッと黒い影が通り過ぎ裕兎の元へと飛び込む人影があった。
どうやら、シャネルが疲れたようで倒れるように飛んで来ていた。
「えっ...お...おい?...危ねぇだろ!?」
寝てるクロエと、そのせいで動けない状態の裕兎は何かないかと辺りを見渡すが何もなく、とりあえず、支えようと腕を前に出す。
ところが、寸でのところでカエサルがガバッとシャネルを掴み肩に乗せた。
飛び込んできたシャネルは既にスースーと寝息を立てて寝ている。
(は...はぇぇ...。まぁ、それほど疲れたんだろうな。)
カエサルも同じことを思ったのか、ぽつっと一言感想を零すとシャネルを下ろした。
「どうやら、疲れが溜まっていたようじゃな。」
それから、しばらく休憩していた裕兎達だが、獣人種(ビースト)をまとめるリーダー、パンテラに呼ばれ一つだけ少し離れたテントのところへと向かった。
「すまんの。うちの者達の手当てを手伝わせてしもうて。」
パンテラは申し訳なさそうに言った。
「構わないわ。私の得意なことですしお気になさらなくて結構よ。」
「それより、これからが大変そうだね。」
パンテラが申し訳なさそうにしていた為、レンは気にしないようにすぐに話題を切り替える。
「せやね。まぁ、ゆっくりやっていくよ。ところで、あんた達はこれからどないすんねん?」
「俺たちは夜が明け次第アデレード王国へ帰省するつもりだよ。」
「うちも行くばい!」
そこへシャネルが元気よく手を挙げて言った。
「さよか。......って、えっ!?あんたも行くん!?」
予想外だったらしくパンテラはシャネルの言葉に驚く。
シャネルはパンテラの反応を気にする風もなく、裕兎の腕に抱きつき続けて言う。
「裕兎は、よかよっち言ったもん!」
(おい!ちょっと待て...。何で抱きつくの。可愛ければ何しても許されるって思ってるの?......いや、まぁ許しちゃうけどね...。とりあえず、柔らかいものが俺の腕を挟んで話に集中出来ないから離れようか。)
シャネルの腕を振りほどこうとした裕兎。だけど、解けない。ていうか、動かない。
(あっ駄目だこれ...。よし、無になろう。こういうときは仏教の教えに習って...。あっ俺無宗教だわ...。)
煩悩を自力で消していっているところで裕兎に新たなる煩悩が追加されてしまう。
「あらあら♪楽しそうなことをしていますわね♪」
そう言うが否やクロエは裕兎の空いているもう片方の腕に抱きつく。
「おい...。お前まで何してんだよ...。」
(当たってんだよ...。ってか!お前はわざとだろ!)
「なんとなく、ですわ♪」
クスリと笑い抱きつく力が更に強まる。
「はぁ...。」
ため息をつく裕兎。
「あらあら♪両手に花、ですわね♪一体何にため息をついていらっしゃるのですか?♪」
裕兎の反応を見てクロエはわざとらしくとぼけてみせる。
「どこ...ん?どうした?」
どこが花だ、と言おうとしたところでシャネルからも話かけられる。
「裕兎からもパンテラに頼んでよ!」
「ん?あーそうだな...って次はなんだよ...?」
「私との話がまだ終わってませんわよ?♪」
「ワハハッ!裕兎は人気じゃのぅ!」
裕兎は両方から休む暇なく構わられているとコホンッとパンテラがわざとらしく咳込んだ。
「まずはうちの話がさきやろ?......まぁ、うちは
ええと思っとるよ。自分らは亜人を倒してくれたし、それなりに強いって思ってるから安心できる。」
「そう...か。分かった。」
案外、簡単に許可を貰えて裕兎は少し驚いていた。
それに引き換えシャネルはとても喜んでいる。
「やったー!」
許可を貰え、シャネルは両手を上に上げてバンザイをして喜んだ。
「うち、ちょー暑かから風に当たっちくる!」
言うが否や、すぐに外へ飛び出していった。
(天然系、かぁ...。可愛いんだけど、不意のスキンシップが...。早めに慣れよう...。)
シャネルが外へ行き少し安堵する。
「まだ私がいることをお忘れなく♪」
やはりまだ安堵するには早かったようだ。
しばらくすると、パンテラは一つの課題を思いつく。
「それにしても今回のようなことがまたあるんやったら、わてらも次は終わりやろな...。どないしようかな?」
今回の件でパンテラはこのままでは危ないと思い、解決策がないか考え始める。
「一つ確認だけど、獣人種って他には居ないのか?」
「何か考えでもあるのかのぅ?」
どんな考えなのか、と自然と裕兎に皆の目が集まる。
「まぁ、少数の集落に別れてどこぞで過ごしとるって思うよ?大人数で固まるより少数で過ごした方が狙われへんってことで皆で別れたからね。」
「なら、集まればたくさん居るってことだな。となると、パンテラはこれから獣人種を集めて大国を作ればいいじゃん?いや、大国というより街、だな。」
「せやけど、それやって狙われるよ。」
「だけど、少数のときに狙われたら絶滅だろ。そうなるんなら集まった方がまだ打開策はある。」
どうやら納得したらしくパンテラは頷く。
「...せやな。やったら、うちはそないやることにしよかな。
やけど、竜魔種(ドラゴニア)に襲われたらどないしよか?うちらは空中戦は無理やで?やから、勝てる自信あらへんよ...。」
昔に対立したことがあるのか苦々しい顔をする。
「あーそこら辺は対策あるから大丈夫だ。まぁ、俺が間に合えば、の話だがな。対策する前に狙われたら無理だな。」
「無責任やな...。まぁ、対策があるんやったら良かった。」
裕兎の話を信じたのか、苦笑をしていた。
「ほな、ご飯の準備も出来てるやろしはよ食べて休もうや。うちはしんどいからはよ寝るで。」
解散、と示すようにパンテラは手を叩きパンッパンッと音を響かせた。
裕兎達はその合図を聞くと皆立って食卓へと向かう。
「確かに疲れたなぁ…。カエサルもお疲れ。」
「そうじゃの。今回は相当強い相手じゃったからのぅ。しばらくは仕事休みがよかのう。」
カエサルはそう言うとハッハッハと笑った。
すると、裕兎の隣からひょこっとクロエは顔を覗かせた。
「私にはお疲れ様、という言葉掛けはないんですのぉ?♪」
「お前もお疲れ。」
ポンポンとクロエの頭を撫でる裕兎。
クロエはそれに対してからかうように返す。
「ウフフ♪嬉しいご褒美、ですわね。」
「そりゃあ、良かったな。」
(...何でこの子はさり気なくこういうこと言うんですかね。頬を染められたらこっちまで恥ずかしくなっちゃうだろうが...。)
何気ない普通の会話をしながらも3人は歩きながら向かう。
レンとミカは、それを後ろから微笑ましくみていた。
「予想以上に元気そうで良かったね。ミカ。」
「はい。そうね。レンも今日は疲れたでしょう?帰ったら膝枕してあげましょうか?」
ミカはにこやかに言う。
「なら、お言葉に甘えて軽くして貰おうかな。」
レンはそう言うとミカの頭を撫でて向かう。
* * *
裕兎達は獣人種(ビースト)の皆と外でバーベキューのようなものをしていた。
裕兎は皿に適当な肉を入れるとクロエの元へと向かう。
辺りを見渡すと倒れた大木に座って肉を食べていた。
見つけるとクロエの隣へと座る。
「なぁ、クロエ。吸血鬼(ヴァンピーア)って血以外を食べても大丈夫なのか?」
血しか摂取出来ないと思っていた裕兎は少し驚いた。
「?普通に食べれますわよ?♪血以外食べれないなんて不便ですわ♪私たちの種族も人間とあまり身体の作りは変わりませんわ♪ただ戦闘経験をすればするほど強くなり、血は効率よく強くなる手段、のようなものですわね♪」
それにしても、やっぱり肉は美味しいですわね。と笑顔で食べているのを見ていると裕兎も安心した。
(今は種族同士対立しているけど、多民族国家ってのも可能っぽいな...。俺がそれなりに地位が高くなったら国王に提案してみたいものだな。)
賑わう街を想像し、いいものだな。と微笑みながら今のひとときを楽しんだ。
その後、酒を飲んだり踊ったりとし皆盛り上がり楽しそうに愉快に笑った。
裕兎はシャネルに踊りを誘われ次にクロエと踊り2人とも寝付いたのを確認してからカエサルと話したりした。
しばらくの間、賑やかだったが疲れたのかだんだんと眠る者が現れ始める。
「シャネルとクロエのダンスの相手お疲れじゃの。」
カエサルは酒を飲みながら笑った。
「あぁ。明日から賑やかになるな。」
そう言いながらも実際は悪い気もせず笑う。
「それにしても今回はなかなかにギリギリじゃったの。わしも力を付けねばじゃの...。」
「あーそうだな...。俺も強くならなきゃな。まぁ、今回は勝ったんだ。勝ったときはちゃんと喜び息抜きしないとストレスで禿げるぞ。」
そう言いつつも今回の反省点などを考えてしまっていた。
それからしばらく話しているといつの間にか寝てしまっていた。
* * *
チュンチュン。
鳥のさえずりと共に裕兎は目を覚ます。
ふぁ〜あ、と欠伸をしながら伸びをする。
辺りを見渡すとまだ寝ている者が多くいた。
どこか川ないかな、と呟き起き上がると歩き回った。
しばらく歩いていると少し離れたところで川の流れる音がする。
裕兎はその方向へと進む。
歩いていると数分で森を抜け川が見えた。
「結構、綺麗だな…。」
元居た世界の川を思い出しながら呟く。
川の近くまで歩みよると水を手ですくい上げて顔を洗った。
「ふぅースッキリしたー。」
服の裾で顔を拭くと腰を下ろし、川を眺めた。
すると、突然後ろから声がかかった。
「こんなところでどうしたの?」
どうやら、声の主はレンのようだ。
「ん?あーいや、少し暇だったんでな。ぼーっとしてただけだ。」
「そっか。」
そう言うとレンは裕兎の隣に腰を下ろした。
「今回の任務について考えてた、とかじゃないのか?」
「レンは鋭いな...。うーん、まぁ、そんな感じだ。今回は結構ギリギリ、というかミカが来なければ危なかったからな...。」
思い出したのか、裕兎は顔をしかめる。
「なら、そんな裕兎に軽く特性について教えてあげるよ。特性同士が戦う場合、勝敗を分けるのはなんだと思う?」
「やっぱ、相性とかじゃねぇのか?」
「うん。そうだね。でも、相性が悪い特性相手でも勝つことは可能だよ。だから、相性なんて覆せるからそこまで重要じゃないんだよね。」
それを聞き驚く。
「となると、一番重要なことはなんだ?」
「特性の濃さ、だよ。」
「特性の...濃さ...?」
あまり理解出来ずに復唱する裕兎。
「例えば、だよ。砂を操る特性があるとする。砂で自分自身をドーム状に囲まれると、俺は炎をぶつけてもびくともしない。これが相性。だけど、俺はそんな相性を覆して砂ごと灰と化せる。これが特性の濃さだよ。」
「つまり、相性なんてハンデでしかなく特性の濃さで勝負は決まる、ということか。」
「うん。そういうことだよ。」
(4騎帝の実力は皆同じじゃない、というのはそういうことか。俺も努力すれば最強になれる、のか...?今の仲間を守れるような力が欲しい...な....。)
そんなことを考えていると向こう側からガヤガヤと音が聞こえ始める。
「そろそろ皆起きたみたいだね。戻ろうか。」
レンはスッと立つと裕兎を向きそう言った。
「あぁ、そうだな。」
裕兎もそれに習い立ち、皆の元へと向かった。
集落へ戻るとパンテラ達は起きていた。
だが、シャネルとクロエはまだ眠っているようだった。
二人を起こすと王国へと帰る準備を始める裕兎。
裕兎達は身支度を済ますとパンテラと挨拶を交わす。
「昨日は楽しかったで。ほんなら、お互いに頑張るかいの。」
「うん。そうだね。」
最後にレンはパンテラと握手を交わすと王国へと帰った。
裕兎達はその際に振り向き獣人種(ビースト)たちに手を振った。
「じゃーな!またどこかで会おうなぁ!」
「うち頑張るちゃ!」
こうして、新たな仲間を二人加え裕兎の異世界生活は賑やかなものとなった。
第12話.......終
AZ∑さんお気に入り登録ありがとうございます( *´꒳`* )
これからも頑張っていきます( * ˊᵕˋ )