異世界での生活も楽ではない   作:XkohakuX

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自分なりに頑張って書いてみました( * ˊᵕˋ )暇なときとかそういうときに軽く読んでくれれば嬉しいです٩(ˊᗜˋ*)و


第1話 *やはり人生何があるか分からない*

「まだわしの邪魔をするか!小僧!お前とはあまり殺り合いたくは無かったが仕方ない!殺す気で行くぞぉ!!」

「お前を止めることが俺の役目だ。ここから先は行かせねぇよ!」

立ち込める砂埃の中から二人の叫び声が飛び交う。そして、向かい来る60代後半と思しき人物を止めようと少年が迎え撃つ。

「あの頃の俺と同じと思うなよ!"飛蝗"(カヴァレッタ)!!」

少年がそう叫ぶと両脚の膝から下にかけて緑、茶色の入り混じりのクリスタルのような煌めかな鎧を纏った。

そして、向かい来る相手に向かって曲げた脚を伸ばした。

すると、さっき少年が居た場所は地面は抉れ、少年の進行方向とは逆にコンクリートの破片や土、石が飛び散り街の家々を襲った。それはまるで土砂崩れのような、もしくは土の津波とも捉えられるそんな感じのものだった。そんな被害をもたらした少年の姿は無く既に相手のすぐ側まで迫っていた。

どうやら、土の津波は少年の驚異的な脚力が影響だったようだ。そんな脚力を持つ少年の姿は一般人が捉えることが出来ない速度だった。その少年は消えたかと思えば相手の側で蹴りを入れようと片脚を上げ、相手の顔面と少年の脚の距離が近づいていた。

しかし、相手は一般人では無かった。彼も化け物だ。故に少年の姿をしっかり捉えていた。そして、ただただその少年を憐れむような表情をしため息を吐く。

「そんなのでわしに勝てる訳がないだろう。残念だ...。"特性破壊"(アビリティカラプス)。」

ブヲォン、と音と共に相手の左拳が白いオーラのようなものを纏い、その手で少年の向かい来る脚を掴む。

そして、捕まれた少年は急に両脚の鎧が砕け粉と化した。

「俺の前では特性や武器などあらゆるものは無意味だ。故に俺は最強だ。お前が俺に勝てることなんてこの先一回もない。これで終わりだぁ!!"物質破壊"(マターカラプス)!!」

ぎゅっと強く握りしめた右拳は白いオーラを纏うと少年の腹部辺りを殴った。すると、オーラは広がり少年事前方の家々も幾つか覆った。オーラに包まれた家々は次々と粉々に粉砕されていく。

それは家に限らず少年も同様だ。骨が砕け肉、皮がベリベリと剥がれていく。そして、次第にオーラの白さは増していき、遂には少年や家々の姿が見えなくなった。

これは何の力もなかったただの一般人だった少年が力を得て、あらゆる命の危機を乗り越え、そして英雄になっていく話である。

 

 

* * *

「.......ぁー....死ぬ死ぬ......ふぅ〜あぶねぇー......。」

と、ゲームに興じる男性。

部屋は...十畳ほどだろうか。中々に広い。

だが、パソコンやプレステなどの多数のゲーム機、テレビ、タブレットPC、スマホ、ゲームの雑誌.......などの物が沢山あり、中々に広いだろう部屋が狭く感じる。

家には彼しか居ない。

 

彼...嵐鬼 裕兎(あらき ひろと)。18歳・コンビニのアルバイト生・ゲーム廃人。

髪は黒色。左耳の上でピンをしており耳は露わにしている。だが、右耳ではピンはされておらず耳は髪によって隠されていた。

裕兎は給料が良いからと自衛隊員になろうとしたが落選。

普通なら夢を実現する為に頑張る人が多いだろう。

だが彼は違った。落ちた瞬間、自衛隊を諦めアルバイトを始める。さらに自衛隊に入ってもキツイ思いをあまりしないようにとずっと鍛えてきていたが、その筋トレすらも辞めた。

今では趣味で軽く体術を嗜んでるくらいだ。

 

「あぁー腹減ったなぁ〜。何か食べるものあったっけ?」

裕兎はゲームをクリアし終わると腹を擦りながらドアノブに手を掛け部屋から出てリビングへと向かう。

ガサガサ...。

リビングのあちこちを一通り探し始める。

無いことを確認し顔を上げようと曲げていた膝を伸ばし立ち上がると後ろで開けっ放しのなっていた棚の扉に後頭部をぶつける。

「痛ったぁぁ!」

後頭部を抑えしゃがみ込み悶えること数十秒。

痛みが和らいでくると裕兎は後ろを振り向き、痛みの原因となったものを睨んだ。

「こいつか。誰だよ開けっ放しにした奴。....俺じゃねぇか!」

今さっき食べ物を探しているときに開けたのを思い出し大声を上げて驚く。

「さて、この扉どうしてくれようか!」

左手で後頭部を擦りながら立ち上がると右手を棚の方へと近づけた。

鍛えている裕兎は扉くらい簡単に壊せるのだが、もしかするとぶち取るのではないのだろうか。

「こうしてやる。」

しかし、心配していたのも束の間、裕兎はただ扉を閉めただけだったのだ。

「もう開けっ放しは気をつけよう...。」

気を取り直して再び探し始める。

だが家に手軽に食べれるカップラーメンやカロリーメイトのようなものはなかった。

あるとしたらレトルトカレーやチャーハンの素、後は卵やキャベツといった材料くらいだ。

「はぁー、仕方ねぇ…。ちょっとコンビニに買いに行くか...。作るの面倒臭いしなぁ...。」

髪をわしわしと掻くと、面倒くさそうに深くため息を吐く。

近くにコンビニかスーパーとかが無いか適当に思い出そうとしながら自分の部屋へと戻り財布とスマホを手に取りボタンを押してみる。が電源がつかない。

 

(あれ?電源落としてたっけ?)

 

「あぁーそういえば、充電してなかったなぁ...。」

スマホの充電切れを確認すると昨日程からベランダで出しっぱなしにし充電していた太陽光パネル式充電器を取り、それをスマホにはめ、両方持って行くことにした。

必要なものを持ち玄関まで行き靴を履き始める。

「よし、準備出来たっと。...財布の中身オッケー。携帯も大丈夫...これくらいで大丈夫だよな?」

忘れ物がないかを確認し、大丈夫と判断した裕兎が玄関を開け外に出た。

ガチャンッ。

今まで数十時間ほど暗い中ゲームをずっとしていた為か陽射しが眩しく手で視界に陰を作る。

白くボヤけていた視界が段々慣れていき、慣れきった頃には裕兎は目を見開いていた。

そこには見知らぬ風景が広がっていたからだ。

「あっあれー.......?ここどこ....?あーゲームし過ぎたかなぁ...。幻覚が見えるなぁ。やっぱ、夏の炎天下の中、陽射しを浴びるというのが自殺行為だったのか...。」

と、裕兎は困惑しひとまず家に戻ろうと振り向く。

だが、そこには何もなかった。壁しかない。

「なっ...!?何だこれは.....!ここは、どこ..だよ....!」

ひとまず混乱した脳を落ち着かせようと目を閉じ五秒程時間をかけた。

それはいつもなら短く感じるちょっとした時間だろう。だが、今回はそのたった五秒でも一生に感じられるほど長く感じられるものだった。

恐る恐る目を開けはじめる。

白く光り輝く太陽の陽射しを浴びながらも、裕兎はしっかりと見えた。

そこには変わらず見知らぬ風景があった。

それはどう見ても中世風のレンガ造りの家、ときどき通る馬車、見たことあるような果物や見たことがない食べ物らしき物まで売られている小さな店.....などなど、あらゆる店があり賑わっている。

人々は甲冑を身に纏った傭兵や踊り子のようなヒラヒラな服を着た華やかな女性、ノースリーブや半袖といった汗水垂らしてる男性や、子供が愉快に走り回っていた。

裕兎の世界でいう車道のようなものもあり、人々はそこを避けて通っていた。それは馬車2個分はあるだろう幅だったが、道の幅が元から広い為か人々にはなんら影響を与えそうにもないように感じる。

「えっここって、まさか異世界!?すげぇー、アニメだけかと思ってたけど、ほんとにあるもんなんだなぁ。どういった原理で飛ばされたのか些か疑問だが...。」

まずは、と周りを見渡して見ると少し離れたところに八百屋のようなところがあり、そこにはリンゴのような物が並べられていた。

その他にもキャベツやトマト、見たこともない緑色の野菜や果物までも並べられている。

その中で裕兎は食べれそうで尚且つ美味しそうなリンゴが目に付き、ぎゅるるる〜とお腹を鳴らす。

「ん?あれってリンゴ?腹減ったし買いに行くか!」

異世界に来るという貴重な体験ができると喜びや近くに食べ物があったという安堵感に顔を綻ばせ店に歩いていった。

「おっちゃん。その赤い実一つ売ってくれ。」

値段は〜とダンボールのような物に書かれている数字分財布から小銭を取りだし、店主にそれを渡す。

しかし、受け取った店主は手に持っている小銭を見ると怪訝な表情を浮かべ首を傾げる。

「なんだ?これは。見たことねぇな。こんなんじゃリンゴは買えねぇよ。ちゃんと金払え金。それにお前なんだ?その格好は。」

迷惑そうに応えた後、裕兎を向き直ると見たこともない服装に更に驚いたらしく店主は裕兎から受け取った100円玉や10円玉を返しながら問う。

そんな店主の反応を見て裕兎は肩を落とす。

「マジかよ!?はぁー....まぁ考えてみればそれもそうか...。ここ異世界だしお金が違ってて当たり前だよな....。」

深くため息を吐いていると、男性は裕兎の服装が気になっているのか未だにうーん、と唸り考えていた。

そんな店主に裕兎は気づくと、あっと言い話を続けた。

「あーこの服装のことだっけ?こういう服装の田舎村出身なんだよ。」

だが、お腹が空いて働かない頭で上手い言い訳が思いつくことも無く、またそのやる気すらも無かった裕兎は適当に受け流す。

「あー...飯どうすっかなぁ...。腹減り過ぎて、さっきからちょっと腹痛てぇな...。」

口々に愚痴を零していると、それを見兼ねた店主の手から赤い球体のようなものが飛んでくる。どうやら、リンゴのようだ。

おっと、と不意なことに驚きながらも見事にキャッチが出来た。

「それ、やるよ。お前さん田舎から出たばかりでお金あんま持ってねぇんだろ?なら、一個ぐらい分けてやるよ。」

そう言って店主はニカッと笑った。

「えっ!くれるのか!?ありがとう!ほんとにありがとう。」

裕兎は人受けの良さそうな爽やかな笑顔を浮かべると上機嫌に店主に手を振り別れを告げる。

「さて、これからどーするかなぁー。金ないし、宿もない。とりあえず、仕事先探してみるか!」

リンゴを食べ終わり色んな店をまわってみた。

一つ目は野菜や果物を売っている八百屋みたいな所、二つ目は精肉店.....と商品販売系統をメインに声を掛けて行ったが全て断られる。

2時間は歩きまわっただろうか。日の高度が上がり真昼間となっていた。

「あぁー疲れた〜...。ちょっと休憩っと。」

路地裏の影になっている所へ入り、壁に背を持たれると考え事を始める。

「とりあえず、日本語がここで通じるっぽいから助かった〜。.......就職先はどーするかなぁー...。俺が見過ごした影が薄いマイナーな店もあるかもだし、ついでにこの世界について聞けるかも知れないから情報収集も頑張ってみるかー!」

顎に手をやり、ふむ、としばらく考え、やる事が決まると背伸びをし早速取り掛かる。

路地裏から出ると、目の前を丁度通りかかった男性がいた為、その男性へと声を掛ける。

「あのー.....すまないんだけどよ、この国について教えてくれねぇか?俺田舎からきたもんでよ、この国のことよく知らねぇんだ。」

異世界からきたと言っても信じないだろうと思った裕兎は、この世界に田舎という概念があるか分からないため田舎だから、という理由で納得して貰えるのか内心心配になりながら質問した。

だが、男性は案外気にすることもなく普通に返答してきた。

「この国はな、多分人類種の中で一番発展した国じゃないか?あっここは東帝都アデレード王国ってんだ。」

田舎と言って納得して貰えたことに内心ホッとしながらも質問を続けて言う。

「?何でここが人類で一番発展してる国なんだ?」

「国自体があまりなくてな。それにドラゴンとかがたまに襲ってくるから壊滅する国もあるんだ...。」

「へードラゴンなんて居るんだな。...あっとか、ってことは他にもいるのか?」

「お前ほんとに何も知らないんだな!?びっくりしたぞ!一体どこの村出身だよ。人類種(ニンゲン)龍魔種(ドラゴニア)魔獣種(ゲシュ)森精種(エルフ)亜人種(デミヒューマン)吸血鬼種(ヴァンピーア)の6種族いるんだよ。」

(案外沢山いるんだな。)

他に必要となる情報はないか思案しているところに先にその男性が話してくる。

「そして、その他種族からこの国を守ってるのが国王が認めた4騎帝と呼ばれる最強の兵士4人だ!いやぁ〜心強い!あの人達が居なかったら今頃この国は滅びているだろうな!」

男性はそう言いながらゲラゲラ笑った。

(4騎帝....?)

ただ、裕兎が首を傾げていたからか、男性も笑いが止まると、ん?と首を傾げた。

「他に質問はあるのか?」

「4騎帝ってなんて名前の奴らなの?」

「だよな!やっぱ4騎帝のこと聞くと気になるよな!?ワハハ!」

自分の思った通りになって嬉しかったからか、裕兎の肩をパンパン叩く。

(ちょっと強すぎない!?結構痛いよ!?)

そんな裕兎の心の叫びは男性に届く筈もなく、話し続ける。

「まず1人目はな!煉獄王(れんごくおう)ユグリス・レンだ。レンは今までにあらゆる種族の討伐に功績を残し、今まで対立してきた種族は皆灰と化され4騎帝の中でも1~2位を争う実力者だそうだ!」

(やっぱり、人間種(ニンゲン)って他種族に襲われて追い詰められてる、って訳じゃないのか。...まぁ、周りを見れば一目瞭然だな。)

裕兎は、明らかに怯えることなく満足そうに賑わう人々を見渡し納得していた。

テンションの上がっている男性は周りを見渡す裕兎を知らぬ顔で、いや実際には気づいて居ないのだろう、気にせず続けていた。

「4人目は雷神(らいじん)アイン・クレイステネス。彼女は最近4騎帝に入ったばかりで、更にレンとはさほど歳も変わらんだろうが一番若い!その為か、4騎帝の中では実力は一番下かもしれんな。」

「まぁ、一番下と言っても4騎帝の中で、だから、俺らからしたら相当強いんだろ?」

「あぁ!最近の話でいえば、亜人種(デミヒューマン)を一人で500~600人以上はいる大軍を倒した、とかな。」

「そりゃあ、すげぇな...。」

(それにしても、さっき4騎帝の残り二人聞き逃したなぁ.....。周りをキョロキョロしてたからなぁ。まぁ、名前だけでも聞けたからいっか。)

裕兎は思い出すかのように聞こえてきた二人の名前を心の中で復唱する。

(氷河姫(ひょうがき)アイス・キュロス。そして、破壊神(はかいしん)ディオクレ・ティアヌス、ね。こいつら計四人が国内最強な訳ね。)

納得したところで、また再び疑問が一つ芽生えた。

「そういえば、何で国王はわざわざ4騎帝なんて制度を作ったんだ?」

作る必要性が分からず、何となく男性へと聞いてみる。

「国王曰く、4人の最強の席を作ることで反乱が起きないように均衡を保っているらしいぞ。あとは、東西南北に一人ずつ守備を頼み、更にそこ一帯の町を譲って自由にさせてるってことよ。」

(自分の広大な土地と町かぁ。いいなぁ...。)

腕を組み、うーん、想像していたがある程度情報を聞けて満足そうに男性に別れを告げた。

「じゃあな。助かったわ。」

(あまりに大仰な仕草で説明するもんだから、目立って仕方がない。こんなところ俺は耐えれない...。)

だが、急いで歩いていると急に近くで危機迫る声が響く。

「あなた!危ないわよ!!」

そこを見ると上下ピンク色の可愛らしい洋服に身を包んでいる女の子が飛び出しており、そこから少し離れたところに馬車が通っていた。

このままでは女の子は轢かれてしまうだろう。

それを防ごうと裕兎は反射的に走り出していた。

しかし、裕兎が居たところは馬車と同じくらいのところにおり、それはつまり馬車より速く走らないといけないということだ。

間に合わないと分かっていながらも走る裕兎。

(ここは異世界だろぉーがっ!魔法とか特殊な能力とかねぇーのかよ!?このままじゃ間に合わねぇーよ!もっと速く走れよっ!俺ぇーー!)

体力がキツいと顔を顰め、歯をギリっと鳴らせ俯かせた顔を上げ、それでもと足に力を込める。

その瞬間、目の前が風景がいきなり視認出来なくなった。

建物パッと別の建物に変わり、裕兎の前に走っていた馬車さえも視界から消えて無くなっていた。いや、実際には無くなってはいない。あるにはある。裕兎も馬車の走る音は聞こえていた。

しかし、それは何故か後ろから聞こえるのである。

そして、更にはさっきまで遠く感じた女の子は今じゃ目の前にいた。

何がなんだかよく分からなくなっていたが少女は助けれそうだったから抱きかかえ自分がいた反対側の歩道へと走り切る。

ザッと地面を踏み込み抱き抱えていた女の子を下ろす。

久しぶりの全力疾走に荒らげた息を少しずつ整えていく。

「はぁ...はぁ...。良かった...。助けれた...。」

「「おぉー!すげぇな!」」

その現場を見ていた周りの人は口々に言い、そこら一帯は一時の間賞賛の海となっていた。

「な...なんだったんだ.....。今の...。」

そんな中、自分自身の驚異の速さに驚きを隠せないでいた。

(な...なんだったんだ...。)

再び自分の胸に問い考えを張り巡らせていたが、やはり分かることは無かった。

「まぁ、何はともあれ助けることが出来たしいっか。」

分からないことを考えても仕方が無い、と思い諦める。

それに

(うん、こういう目立ち方は悪い気はしないな。)

裕兎は助けれて良かったという安堵感や周りからの賞賛に達成感を感じ満足そうだった。

そんな騒がしい群衆の中から一人女性が出てきた。

その女性は金髪の髪で長さはスーパーロングだろうか。そのくらいの長さまであり皇貴な服を身にまとい気品溢れる人だった。瞳は黄色で黄金のように美しく輝いていた。

「ありがとう。感謝します。さぁ、あなたはもうお家に帰りなさい。」

「うん、ありがとう。」

その美しい女性は裕兎にお礼を言うと女の子に帰るように促した。

女の子はその女性の言う事を素直に聞き入れ、裕兎にお礼を言ってから走って家に向かって行く。

それを裕兎と女性は見送り、見えなくなった頃には女性は裕兎に向き直っていた。

「私はこの東区アルジェを治めるユグリス・レンの妻ユグリス・ミカという者なのだけれど、あなたの名前も聞いていいかしら?」

「俺は、嵐鬼 裕兎だ。」

(ん?今この人ユグリス・レンって言わなかったか!?レンってあの4騎帝の一人だよな!?....あっそっか。4騎帝は一人ずつ領土を貰え、その代わりに国の守護をするんだから居ても不思議じゃないか。)

軽く有名な名前がパッと出たことに驚きつつも何とか理解し平常を保てた。

「嵐鬼、さんね。よろしければお礼をさせてくれないかしら。」

ミカは顔に喜色を浮かべ、その笑顔は美しく、また可愛らしさも垣間見れた。

そんなミカのお礼という言葉に裕兎は目を光らせ瞬時に反応する。

「でしたら、俺に雇ってくれるところを紹介してくれると助かる、かなぁ。」

「なら、私の旦那は4騎帝の1人ユグリス・レンという方なのだけれど、その団の幹部になるのは構わないかしら?給料もちゃんとあるわよ。もちろん宿も、ね。」

「そうなのか!?ならお願いしようかなぁ。」

異世界へ飛ばされてからのいきなりの安定収入業への就職を果たせそう、とテンションを上げる裕兎。

しかし、今は気づいていないのだろう。

騎士として働く大変さや覚悟を。

「では、レンに紹介したいので着いて来て貰っていいかしら?見たところあなたは特性を持っているようだから、認めてくれると思うわ。」

それを聞いていた裕兎は、一つ疑問を感じ思わず呟いていた。

「特...性...?」

なんだろうか、と考えていると裕兎の意図を汲み取ったミカが答える。

「あなたがさっきあの子を助けるときに使ったでしょう?もしかして、今さっき覚醒した子かしら?」

どうやら、この世界では能力のようなものを特性というらしい。

「かなぁ。あんな体験初めてだし。」

(なら、あれは能力だったのか!?へー俺でも使えるのか!)

あまりの嬉しさに裕兎は思わずにやけていた。

「どうしたのかしら?」

首をコクンと傾げる。

その可愛らしさに現実に引き戻される裕兎。

「あー悪い。大丈夫だ。」

「そう。なら、行くわよ。」

ミカはクルッと踵を返すとレンが居るであろうところへと向かって進み始める。

「これで一つ目の目標、就職先、宿ゲットっと♪。これから色々と頑張って行くかぁ。」

周りの人々はいつの間にか、さっきまでのの賑わいに戻り仕事をしていた。

そして、裕兎は伸びをするとミカに続き人々の間を通り抜けながら進んでいく。

こうして嵐鬼 裕兎の異世界生活が始まった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1話.......終




次回は嵐鬼 裕兎がユグリス・レンの元へ案内してもらい、そこで自分の特性について知ろうとします。

初めて書いた小説なのでつまらなかったらすみません(´д⊂)

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