とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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コナン世界はサザエさん方式なので、どれだけ経とうと歳はとりません。そして此処でも同じようにしてます。

つまり、うちの主人公はいつまで経ってもお婆ちゃんとかになりません!羨ましいなコンチクショウ!


第6話〜時計仕掛けの摩天楼・2〜

あのパーティーの後、修斗は梨華を東都の国際空港まで送り、その後に会社へと戻って父親への報告を終えるとそのまま帰宅。その後に夕食も取らぬまま眠りへと深く落ちてしまった。

 

それか時間が経ち、現在は5月3日の土曜日。修斗が執務室で書類仕事を捌いているとき、置かれていたテレビから倉庫に置かれていた爆薬が盗まれ、警察が100人を超える警察官を動員しての捜索を行っているが、未だに犯人の情報が出掴めていないことが報道されていた。それを聞いて一度書類をその場に置くと、頬杖をついてテレビを見た。

 

「こりゃ、彰達は今日も帰ってこれねえな……。いや本当に、なんで米花町ってこんなに事件が多発してるんだよ……」

 

そして溜息を一つ吐いたとき、以前、森谷邸で見た黒川邸が燃えている映像が流れ出し、それに目を細めた修斗。

 

「おっと。始まったのか……けど、予想より少し早かったな。まあ屋敷に白昼堂々、侵入したら通報されて終わりか……」

 

そこでテレビを切り、書類を捌き始めた。

 

***

 

雪菜はこの日、一人で散歩をしていた。北星家では唯一、彼女だけ仕事をしていない。それが『甘やかし』で放置されているわけではなく、しかし過保護であるのは確かである。

 

彼女はとある『病気』を持っている。そしてそれは、人としてはあってしかるべきもの、つまりは精神的なものである。それを他の兄妹は知っており、彼女自身、自覚はないが聞いて入るため首を傾げながらも頷いておいた。自身の病気が治るまでは、こんな風に散歩をしたりしてリラックスしたり、運動したりしている。

 

緑地公園の前を通ったとき、その中にいた3人の子供がラジコン機を操作しているのが見えた。

 

それを雪菜は暫く楽しそうにして見ていたが、ふと、そういえば自身はあの機械を使って遊んだことはないなと気付き、帰ったら兄にでも頼んでみようかと考えた。そんな時だった。視界の端に猛スピードで入り口までやってくるスケボーに乗った眼鏡の少年を見たのは。

 

「えっ……」

 

それに雪菜は目を見開き、驚きで後ろへと後退すると、そのまま中へと入っていってしまう。その時に強風が吹き、目にゴミが入らないようにと顔の前に腕を持って行き、目を瞑る。そして風が止んだとき、あの子供はと探せば、先程からラジコンを動かしている子供三人組のところへと近づいていっていた。

 

そして少し話したところで眼鏡の少年はスケボーを投げ出し、三人の中にいた一人の男の子と奪い合いを始めた。

 

「け、喧嘩?それとも、仲良しの証?」

 

雪菜は判断がつかずにオロオロしながら入り口の付近からすでに中へと入って様子を見ていれば、眼鏡の子供は大声で「爆弾が仕掛けられてるんだ!」と言い出す。それに雪菜は目を見開き、眼鏡の子供とは違うそばかすの男の子とちょっとぽっちゃりめの男の子は慌てだし、コントローラーから手を離してしまった。それに慌てた眼鏡の子供。しかし一歩遅く、そのままコントローラーは地面へと落ち、全ては変わらずともアンテナが折れてしまった。勿論、アンテナが壊れてしまえば操作などできない。操作が出来なくなったラジコン機はそのまま子供達へと向かっていく。ぽっちゃりめの男の子は眼鏡の少年に『コナン』と呼び、更にはなんとかしろと無茶な要求をする。コナンと呼ばれた少年もまたなんとかしようとすれば、今度は操作部分が折れて壊れてしまう。

 

そこでラジコン機は空中へと上昇。そこから方向転換し、また子供達へと向かっていく様は、雪菜からしたらまるで映画のワンシーンの様で、呆然とその光景を見ていればコナンが履いている靴を少し弄り、靴が虹色に光ると、そのまま操作機を軽くその場に投げ、蹴ろうとする。そこまですれば狙いも分かり、無茶だと思って止めようとするが一足遅かった。が、悪い結果とはならず、むしろ驚く結果となる。操作機がそのまま勢い良くラジコン機へと向かっていくのだ。それは子供が到底出せないキック力で、目を疑いその場に立ちっぱなしになってしまうが、今度は操作機が当たったラジコン機が空中で爆発し、その近くにいた子供三人が吹っ飛ばされてしまう。それに威力も大分あり、砂埃が雪菜の方にも飛んできて、再度腕で目に砂が入らぬ様に塞ぐ様にした。そして目を開ければ、其処には黒い煙が立ち上り、そしてその場でプカプカと雲の様になっているのが見えた。その周りには野次馬が集まり、中には顔を青ざめている人までいた。

 

「……映画を撮ってるとか、ないよね?」

 

すかさず左右の草むらを確認するが、そんなものがある様子はない。じゃあこれは何事かと首を傾げたとき、コナンがポケットから携帯を取り出し、会話をしだす。が、直ぐにコナンの方が何か焦った様な表情をし、首元の蝶ネクタイを引っ張り出した。その様子に首を傾げて見ていると少しして向かいの建設中のビルの方へと顔を向け、そのまま会話をした後、先ほどまで大人びた表情をしていたのに今度は子供らしい表情をして会話をする様子が見れた。そしてまた少しすると、今度は何か焦った様子のまま放り出されたスケボーに近づき、そのままそのスケボーに乗って猛スピードで走り去っていく。そのスピードは誰が見ても道路交通法違反で検挙されてもおかしくない速さだった。

 

「……なんだったの?アレ……」

 

雪菜にはもう、そんな感想しか言えなかった。

 

***

 

コナンはスケボーを使って米花駅まで走る。そんな間に携帯を使ってとある番号へと掛けた。その番号の相手は3コール目で取り、いつも通りの声で『もしもし、修斗ですが』と言ってきた。

 

「おい修斗!テメー、こうなるって知ってやがったな!?」

 

『おいおい、何事だ?なんで急に俺はお前に責められてるんだ?』

 

「責める理由ぐらいオメーの心に聞きやがれ!絶対に分かるだろ!」

 

『……ああ。なんだ?ついに始まって、で巻き込まれたのはお前だったのか。なんだ、予想が外れたな』

 

「……はぁ?」

 

コナンが呑気そうな相手の声に思わずそう言えば、相手は苦笑した様で、少しだけ申し訳なさそうな声で言い始めた。

 

『いやなに。お前が相手してるだろう犯人さんは、『探偵』を恨んでて、それで今時有名な毛利さんかコナンの方に挑むと思ったんだがな?見た目が子供なコナンに挑むとは考えづらくて、だから毛利さんの方かと思ったが……お前の様子だと、挑まれたのは何方でもなく『工藤』の方だったのか』

 

「おい、お前なに言ってんだ?なに一人で理解してんだ!詳しく話せ!」

 

コナンが相手ーーー修斗に対して怒鳴れば、修斗は呆れた様に言う。

 

『悪いが俺は探偵じゃないんでね。話すつもりはない。あと、善人でもないんでな。まあ頑張って考えろ。けど、少しは悪いとこれでも思っててな?一つだけヒントをくれてやる』

 

「なんだよ……」

 

『どっちが良い?お前が今挑んでる問題か、犯人の正体か』

 

その言葉に再度、修斗の『異常性』を感じたコナン。コナンからしたら、修斗は得体の知れない相手だが、しかし今は味方だ。これ以上の心強い相手はいない。

 

「今挑んでる問題を言うから、そっちのヒントをくれ!」

 

『ん?犯人じゃなくて良いのか?』

 

「犯人のヤローは俺が絶対に暴いてやる!オメーの力を借りずにな!」

 

その言葉に少しの間を空けて、相手がくつくつと笑い出した。

 

『分かった、良いだろ。で?問題は?』

 

「一時丁度に爆弾が爆発する。場所は米花駅広場。今俺は其処まで向かってる途中だ!そして犯人からのヒントは『木の下』だ!それも埋められてるわけじゃねー。早くしねーと誰かが持ってっちまう!」

 

その言葉に修斗は溜息を吐く。

 

『見た目が怪しいものなんて誰も拾わねー。つまり、見た目は其処まで怪しくないものだ。そして、誰かがつい拾ってしまうものでもある。犯人としては持っていってもらいたいだろうしな』

 

「……」

 

『そして木の下に埋められてるわけじゃないとも言ったならーーー果たしてそれは本当に木の『姿』のままなのかな?』

 

「……は?」

 

『ヒントはそれだけだ。しかも特別サービスで大ヒントまでやってやったんだ。あとはダジャレでも考えながら頑張って探せよ?名探偵』

 

そこでブチっと切られ、コナンは舌打ちをした。そして米花駅広場まで来た時、そのまま木の下を探し出す。が、しかし爆弾が入っている様な物は見つからない。そんな時、カップルらしき二人組が座ってるベンチの下にペットが入る様なピンク色のケージを見つけた。

 

「……いや、まさかアレに入ってるわけ」

 

そこでフッとコナンは修斗の言葉を思い出す。

 

 

 

ーつい拾ってしまうものでもある。

 

ー果たして本当に木の『姿』のままなのかな?

 

ーあとはダジャレでも考えながら頑張って探せよ?名探偵。

 

 

 

「……まさか!?」

 

そこでコナンはベンチ下のペットケージを掴み、自身に寄せる。と、其処へお婆さんがやって来た。

 

「あら?坊や、これは……捨てられちゃった動物を見つけたの?偉いわね〜」

 

「あ、えっと……」

 

そこでコナンが困り顔をしていると、お婆さんがそのままペットケージを開けてしまう。それにコナンは慌てたが、出て来たのは白猫。それにお婆さんが優しい笑顔で頬擦りをし、そのままコナンに『この子は私が世話をするから心配しなくて良いよ?坊や』と言い、ケージをごと持って行ってしまう。

 

それにコナンは慌てて追うが、お婆さんは既にタクシーを捕まえて乗ろうとしている。それに声をかけて車道に飛び出すが、そこにバイクがやって来て、ぶつかりそうな時にバイクが早めのブレーキを踏んでいたお陰で助かったが、コナンは驚き尻餅をつく。その時にスケボーも思わず投げ捨ててしまい、ガードの側面にぶつかってしまった。

 

「危ねえだろうが!信号が見えねえのか!」

 

バイクの男はそうコナンに怒鳴り、コナンも謝ればそのまま走り去っていく。そこでスケボーの確認をするコナンだがどこも壊れてないことが確認できると、バイクの後ろにいたトラックが走り去ったあとにもう一度タクシーを見る。しかしお婆さんは既にタクシーに乗り込んでおり、走り去っていく。既にその時点では一時になる五分前。時間はあまりかけられない事態だった。それに悪態をつきながらスケボーを使って猛スピードでタクシーの後を追っていくと、途中でタクシーが渋滞に引っかかる。もちろんそれに喜ぶコナンだが、それと同時にスケボーが止まり始めた。原因は何かと考えれば、自ずと答えが出る。

 

「そうか!さっき放り投げちまった時、どっか壊れちまったのか!」

 

そこで止まってしまったスケボーを拾い、歩道へと移動してから周りを見渡す。すると丁度よく自動販売機で飲み物を買っている自身の見た目よりは年上な小学生らしき少年の近くに、その少年のらしき自転車が置いてあった。

 

その自転車に走り寄り、籠にスケボーを入れながら少年に声をかける。

 

「坊や!ちょっと自転車借りるよ!」

 

「あっ!おおい!」

 

少年は自転車を漕いでいく見たこともない子供の世話見ながら一言呟く。

 

「あれ、『坊や』?俺の方が年下か?」

 

そんな声など耳に入れずにタクシーを追えば、すでにタクシーは動き始めていた。そして爆発まで三分前。

 

「そういえばこの道路、左は大きくカーブしてたな」

 

そこでコナンは慌てて自転車を左へと曲げ、細い路地を進む。そうして更に左へと曲がり、その先にある公園前にある『止まれ』と書かれた出っ張りを使って大きくジャンプをすると、タイミングよくタクシーの前に出れた。そしてまるで当たり屋の様に子供らしく『わーっ!』と声を上げ、運転手が慌てて出てくるのを見て直ぐに運転席のドアから中へと入り、お婆さんに声をかける。

 

「お婆さん!このケース貸して!」

 

「おや、さっきの坊や……って、ええ?」

 

お婆さんは何事かと慌てるがコナンはそんなこと気にしていられない。そのままケージの中を見れば、残り時間はあと25秒となっていた。そしてそのまま車を降りれば運転手が心配そうに声をかけるが、それを適当に返しながら周りを見る。しかし、今の周りで爆発させれば、確実に被害が大きくなり、最悪、コナンの他にも死者が出る。

 

そこで焦りながら考えている時、あと16秒の所で時計が止まった。それに気付き、自転車に素早く乗ってスケボーが乗っていた籠に今度はケージを置けば、そのまま高速道路の先にある空き地へと向かい出した。スケボーの存在はこの時、既にコナンの頭の中から抜けていた。

 

そして走り出して直ぐに時間が再度動き出す。それに慌てるが行き先を変えることはせず、そのまま空き地へとジャンプしながら飛び込み、そこでコナンは自転車から飛び降り、受け身を取る。そして自転車は坂をそのままのスピードで降り、そこでタイムアップ。時間切れ。爆弾が爆発してしまった。高速道路ではそれに驚き運転ミスをする人もいたが、それは仕方がない。誰でもそうなる。

 

そしてコナンは、爆風に巻き込まれて飛ばされ、近くに生えていた木に強く頭をぶつけ、そのまま気絶してしまったのだった。

 

この一連の事件はニュースで報道され、コナンの負傷も伝えられる。それを園子と買い物中の蘭は気付かなかったが、修斗は気付いた。そうして溜息をつく。

 

「……犯人捕まえなきゃなんだろ?どうする?名探偵」

 

修斗はそこで外を見る。その目は本人は無自覚だが、とても心配そうな目をしていた。


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