とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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前回、予定している話を載せさせていただいたのですが、とある方のプロフィールを確認したときに設定が生えましたので、申し訳ありませんが1話だけ、挿ませていただきます!

因みに、本当の題名は『工藤新一VS怪盗キッド』なのですが、今回、『工藤新一』は出てこないので題名を変更させていただいております。ご了承ください。

また、この話は2時間スペシャルものですので、こちらでは前編後編に分けさせていただきます。気になる方は、良ければレンタルでご確認くださいっ!工藤くんとの対決は、ちょっとおちゃめな失敗をしてしまうキッドがみれますよ!

それでは、どうぞ!

*タイトル改定させていただいております。


第34話~集められた名探偵!・前編~

 会社が休日、副社長業もお休みと、珍しくも休日となった修斗。本来なら家族と話すか読書をする日なのに、この日は知人の車に乗せられ、仕事でもないのに灰色のスーツを着て、とある館へと向かうこととなってしまった。そのことに、修斗は頭を押さえていた。

 

「なんで俺まで……お前ひとりでいいじゃねぇか『探』」

 

「なんでって、貴方も素晴らしい『英知』の持ち主でしょう?であれば、貴方のこともお誘いしなければならないというもの……探偵でないと言うだけで除け者にするわけにはいきません」

 

「除け者にしてくれててよかったのに!!」

 

 修斗が嘆きの声を上げれば、誘い主である茶髪で、イギリス・日本でも有名な高校生探偵『白馬(はくば) (さぐる)』はにっこりと笑みを浮かべたまま受け流す。

 

 2人の初対面は7年ほど前。修斗がイギリスへと留学し、そこで学んでいた頃、事件に遭遇。本来の面倒くさがりの彼なら解決するまで傍観しているのだが、この日は急ぎの用事もあったため捜査に強引に入り込み、即解決へと導いた。その姿を当時、プリマリースクールの年齢であった白馬も見ていたが、イギリスではその後、すれ違いが続き会うことはなかった。修斗も卒業し、日本に戻ってしまったからだ。

 

 そんな2人が再会したのはその日本でのこと。別の事件でまたも修斗は巻き込まれ、自身の不運は一体どこからと呪っていた時、白馬が探偵として捜査に加わった。修斗には記憶はなかったが、白馬は初めて見たときから忘れたことはなかったらしい。彼に挨拶されるとともに助手として捜査に参加させられ、解決へと導いた。それから2人は度々遭遇し、白馬がイギリスから日本へと来ることがあれば、彼からの誘いに乗って食事をすることも多い。そして事件に遭遇することも多数。その内の1つとなってしまったのが本日、白馬から誘いを受けた話なのだ。

 

「というか、本当になんで助手としてまた俺を連れてんの?今日も『ワトソン』連れてきてんのに……」

 

 修斗の視線の先には、白馬の隣に置かれたケージ。現在、彼は鷲の『ワトソン』と修斗を連れて、招待主が待っているだろう『黄昏の館』へと、ばあやの運転で向かっていた。

 

「ふふっ、いいではないですか。楽しみましょう、この──黄昏の館のパーティーを、ね」

 

 そうして彼が見せたのは──黒い紙に毛筆で書かれた白馬の名前だった。

 

 

 

『黄昏の館』へと辿り着き、そばかすが特徴的なメイド──『石原(いしはら) 亜紀(あき)』に館の中に入る許可を受けたあと、修斗は白馬と別れて館の中を散策していた。しかし館内は所々、血飛沫のシミが付いており、既に彼は辟易していた。

 

(なっんだよこの館、絶対にアイツ許さねぇからな……!)

 

 修斗が頭の中で白馬に対して文句をつらつら並べていると、複数の声が徐々に聞こえてきた。

 

(ああ、館を一周したわけか……ってことは、ここは玄関ホールっ!?)

 

 その瞬間、聞きなれてしまった声に似せたらしいものが聞こえてきた。どうやら、毛利一家も招待を受けたらしい。

 

(あの死神が来てるってことじゃねぇか!!)

 

 更に頭が痛くなり、彼は頭を押さえる。その目の前を、見知らぬ白いスーツを着たふくよかな体系の髭を生やした男性が通っていった。その男性もまた、有名な探偵の1人である美食家探偵『大上(おおがみ) 祝善(しゅくぜん)』だった。探偵が4人の時点で修斗は察した──ここに招待されるのは全員、探偵であることを。

 

「……帰りてぇ」

 

 全ての事実に1人気付いてしまった修斗が遠い目をして小さく呟くも、それは残念ながら誘ってきた白馬が乗り気である以上、叶わない。ならばと諦めの境地に達した修斗は敢えて一歩を踏み出した──ちょうど、大上がメイドに怒鳴っている場所に。

 

「なにっ!?コックが急病で来られなくなった!?話が違うじゃないか!!ワシは晩餐を楽しみに態々、来たんだぞ!?」

 

「も、申し訳ありません……食材は買って来てあるんですけど……」

 

 そこで苛立ちを顔に浮かばせたまま、大上は自分が作ると言った。

 

「──美食と殺人は、ワシの脳細胞を高揚させられる唯一の宝なのだからなっ!!」

 

「──言い方には気を付けた方がいいですよ」

 

 その声に、今度は小五郎一家が反応し、顔を見て目を丸くした──なにせそこには、修斗が立っていたのだから。

 

「なっ!?」

 

「し、修斗さん!?」

 

(おいおい、マジかよ……)

 

 その3人の様子に、傍に立っていたスーツを着た男性──『茂木(もぎ) 遥史(はるふみ)』と、年をめした女性──『千間(せんま) 降代(ふるよ)』は小五郎たちに目を向けた。

 

「なんだ?あの小僧は知り合いの探偵か?」

 

「私は見覚えがないねぇ……けど、上等なスーツを着ているのだから、上流階級の人物ね」

 

「あの人は北星修斗さんって言って、北星グループの人で、探偵じゃないよ」

 

 コナンの言葉に瞠目し、2人は修斗を見つめる。

 

「貴方の言い方だと、推理で人の罪をその人に明らかにし、罪を認めさせるて罪を減らすはずの探偵が──犯罪を待ち望み、意気揚々と相手のやましい部分を突いて楽しむ、快楽人間に聞こえてしまいますよ」

 

 修斗の言葉に、大上は目を吊り上げるも何も言わず、鼻を鳴らして去っていく。修斗はそれを見送るも、内心では黙祷していた。その後、改めて小五郎一行へと視線を戻せば、石原もそこで客人たちを思い出し、彼らへと慌てて近付き頭を下げた。

 

「大変、お待たせいたしました」

 

 そんな石原に視線を合わせて千間は問いかける。

 

「それより、どういうつもりだい?探偵を4人も呼んだりして……しかも、一般の人まで呼んで……」

 

「あ、いえ、お招きした探偵は全部で6名様です」

 

「俺はそのうちの1人に、助手として連れてこられました」

 

 メイドの言葉に続いて修斗が悲壮感を漂わせながら現状を話せば、コナンは苦笑いを浮かべた。

 

(ハハッ、この人、本当に振り回されてんな……)

 

 そんなコナンの反対に立っていた茂木が後2人もいることに訝し気に訊けば、それに石原は肯定を返す。

 

「はい。女の方と少年が……」

 

「少年って、まさかっ」

 

「蘭さん、残念ながら少年は工藤新一ではないですよ。コナン、服部でもないからな……そいつが俺をここまで連れてきたので」

 

 蘭とコナンがすべてを口に出す前に修斗が話す。それに石原も頷いた。

 

「はい。ご主人様にいただいたお客様のリストに、そのお二方も入っていたのですが……工藤様は連絡が取れず、服部様は中間テストが近いからと、お母様からお断りの電話をいただきまして、そのお二方がキャンセルになったので、毛利様のご家族を2人お呼びするのに、ご主人様からOKが出たんです」

 

「……ちょっと待て?じゃあなんで俺の許可まで出たんだ??」

 

 修斗がもっともな疑問を投げかければ、石原と目が合った。

 

「北星様は、事前にご連絡をいただいておりまして、ご本人様からも、探偵にも負けないほどの英知の持ち主であるとおっしゃられておりましたから、それでご主人様が特別に、と……」

 

(探、余計なことをっ!!)

 

 修斗が頭を抱えた姿に、コナン、茂木が可哀そうなものを見る目を向け、千間は肩を叩いて宥め始めた。

 

「まぁまぁ、ここはこの老婆と一緒に楽しみましょう?北星さん?」

 

「探偵はおなかいっぱいですよ、安楽椅子探偵……いや」

 

 そこで小声で何かを呟く。それはコナン達には聞こえなかったが、千間には聞こえたらしく、わずかながらに目を見開いた。

 

「……」

 

「……で?その探偵好きのイカれた野郎は、どこなんだ?」

 

「屋敷内を一周してみましたが、先ほどはそれらしい人物は見なかったですね」

 

「実は、私もまだ会ったことがありませんので……」

 

 その時点で修斗はこの展開に身に覚えがあった。

 

(あ、これ、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』と展開が似てきたぞ??)

 

 リストをもらったはずのメイドが主人を知らないということに小五郎が疑問をぶつければ、リストはメイド採用時に受け取ったらしい。しかし、その面接がそもそも奇妙だったという。

 

「──割りのいい仕事でしたので応募者が殺到したのですが、いざ面接の部屋にはいってみると、部屋の中にはパソコンと、晩餐会の説明書と、招待客のリストが机の上にあるだけで……誰もいなかったんです」

 

 そこで石原はパソコンの指示通りに爪を噛みつつ書類に目を通していけば、唐突にモニターに『貴方を採用します』という文字が出たという。

 

「じゃあ、どうして採用されたのか、分からないんですか?」

 

 蘭が不安そうな表情で問いかければ、それに石原が肯定する。主人との細かいやり取りも、すべて電子メールでやっていたという──つまり、雇い主とは一切、顔を合わせていないという。それを聞いた千間は楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「へぇ?面白いじゃないの。私はやっとぞくぞくしてきたよ」

 

 それを聞き、茂木もフッと笑った。

 

「俺はその扉の妙な柄を見たときから、痺れてたぜ?」

 

 茂木の言葉を聞き、蘭が好奇心から先ほど入って来た扉へと向かってみれば──飛沫のような模様が残されていた。

 

「確かに……変な模様。何の模様なのかしら?」

 

 蘭が扉に近づく姿を楽しそうに笑みを浮かべて見つめる茂木と、そんな茂木に不満そうな目を向ける修斗。

 

「気を付けな、Baby。多分そいつは──古い血の痕だよ」

 

 それを聞いた蘭の顔が青ざめる。それでも否定してほしくて冗談ではないかと茂木に問いかけるが、それを否定したのは──若い、女性の声。

 

 白衣を着た女性は本物だと断言したうえで、持ってきたらしいスプレーを、階段の手すりに吹きかけ、手袋をつけたまま影を作れば──青紫色に光る痕。

 

「……扉に対し、ほぼ45度の入射角で付着した飛沫血痕。扉だけじゃないわ、壁には流下血痕、床には滴下血痕……一応、拭き取ったようだけど、この館内のいたるところに血が染み込んだ痕があるわよ」

 

「俺が敢えて言わなかったことを、なんで次々と、しかも淡々と言うんだ……」

 

 女性の説明に修斗はまたも現実逃避を始めた。本来、感情よりも合理的に動くのが修斗なのだが、今回は逃避したくて必死である。

 

(なにより──彼女に聞かせたい話でもないんだが、な)

 

「あら、なら貴方も気づいているんでしょう?──この血痕の主は、1人や2人じゃないってことを」

 

「──流石ですね!」

 

 そこで上から声が掛かり──白馬が階下を見下ろしていた。

 

「ルミノール……血痕に吹き付けると、血液中の活性酸素により酸化され、青紫色の蛍光が放出される。いいものをお持ちだ!元検視官──『槍田(そうだ) 郁美(いくみ)』さん?」

 

 白馬が階段を下りながらする説明と誉め言葉に、槍田はフッと笑みを浮かべる。

 

「……あら、お褒めに預かって光栄だわ──坊や?」

 

 白馬は槍田の挑戦的な笑みに対し、笑みを浮かべたまま挨拶を返す。

 

「──白馬探といいます。よろしく」

 

 その名前を聞いた小五郎は目を見開いた。

 

「白馬!?ってことは、白馬警視総監の……」

 

「えぇ、確かに白馬警視総監は、僕の父ですよ、毛利さん?」

 

 気障な笑みを浮かべる白馬に、修斗は溜息を吐いた。

 

「なぁ、俺いらなくね?探偵じゃないから帰っていいか??」

 

 修斗の悪あがきに白馬はにっこりと笑みを浮かべた。

 

「修斗さん。僕たちが乗って来た車は帰りましたから、残念ながら帰れませんよ」

 

「くっそ、お前の誘いに乗るんじゃなかったっ!!」

 

 嫌な予感はしたと修斗が嘆けば、見ていたコナンはにっこりと笑う。

 

「まぁまぁ!一緒に謎解きを楽しもうよっ!!」

 

 コナンのそのからかい交じりの言葉に、修斗は恨みがましい目を向けた。

 

「はぁ……で?お前、今まで一体どこに?」

 

「館内を見てきたんですよ、貴方と同じでね」

 

 そこで白馬が指笛を吹けば、奥からワトソンが飛んでくる。それに蘭が驚きを露わにした。鷹を目の前で見るのは、動物園など以外では初めてなのだ。

 

「た、鷹っ!?」

 

 ワトソンは、定位置である白馬の左腕に着けたグローブに留まった。

 

「あぁ、驚かせてすみません。この『ワトソン』は、イギリスで僕と行動を共にしていたせいか、血の臭いに敏感になってしまったようで……」

 

「わ、ワトソン……?」

 

 鷹のネーミングに対し、微妙な表情を浮かべる蘭。その反応を見た修斗も内心で何度も頷いた。なぜそんな名前なのか、と。

 

「でも、わざわざ帰国した甲斐がありましたよ!長年、隠蔽され続け、噂でしか耳にしなかったあの惨劇の現場に──40年の時を経て降り立つことが出来たのだから。僕の知的興奮を呼び覚ますには、十分すぎますよっ!!」

 

 気障な笑みを浮かべてコナン達へと振り返る白馬。その言葉を聞いた修斗は思わず満面の笑みを浮かべた。

 

「探くん。俺そんな話聞いてないんだが??」

 

 修斗の言葉に、同じく笑みを返す白馬。

 

「だって、お話ししてしまったら、貴方は来ないでしょう?」

 

 その行動を予測された言葉に、修斗は肩を分かりやすく落としたのだった。

 

 

 

 夕食の時刻までは自由と言うことで、全員がビリヤードルームへとやって来た。白馬は茂木はビリヤード、小五郎と千間がチェス、コナン、蘭、修斗、槍田がポーカーをしていた。そのポーカーでは、蘭がその豪運を発揮し、ストレートを揃えていた。蘭は勝てたことに喜び、コナンが相変わらずの豪運に呆れの表情を浮かべていた。

 

(相変わらずつえーな、この女……)

 

 そんなコナンの横に座っていた槍田がそこで声を掛ける。どうやら蘭の手札にあるスペードのJが別のカードと重なっていたらしい。それに蘭は気づいていなかったようで、槍田に謝罪をする。しかしそれは最初からついていたようで、蘭が慌ててはがそうとするが、それに修斗が待ったをかける。蘭がはがす手を止めて修斗を見れば、彼は真剣な顔で手を差し出していた。

 

「蘭さん……申し訳ないが、それを貸してもらっていいか?」

 

「え、あっはい……」

 

 蘭が不思議そうな表情でJのカードを渡す。修斗はそれを受け取った。

 

「ありがとう。もう1つ頼みたいんだが──目を瞑って、耳を塞いでてもらっていいか?」

 

「えっ!?」

 

 予想外な頼みに蘭の目が丸くなり、声を上げた。その声を聞いた全員の視線が4人へと向いたが、気にせずに修斗が再度、蘭へと頼み込む。

 

「頼む。いいと言うまで、目を瞑って、声を聞かないようにしていてほしい──合図があるまで」

 

 修斗の2度目の言葉に、蘭は戸惑いながらも目を閉じた。修斗の言葉と行動を見ていたコナンと白馬は、深刻な表情で修斗を見つめる。

 

「……修斗さん」

 

「まさか……」

 

「あぁ。子供がここで遊んでたなんて考えられないし、ご飯をここで食べるようなマナー違反者は40年前にもいなかったはず。そして、ここは惨劇の館だ──ということは、これが糊付けされている理由は、ただ一つ」

 

 修斗がJの札をはがしてみれば──そこに現れたのは、誰かの血液がべっとりと付着した、クラブの4。

 

「……やっぱりか」

 

「おやおや、こんなところにも血が飛んでたんだねぇ」

 

 そこで茂木がメイドの言葉を思い出した。この屋敷のものは事件当時のままで、ほとんど動かしていないらしい──つまり、この部屋でも、惨劇が起こったという証だ。

 

「……これは俺が片付けておく──夕食の時間だからな」

 

 修斗がそう言って素早くトランプを片付け始めたのと同時の、ビリヤードルームの扉が開き、石原が入って来た。そのころには蘭もコナンの合図の元、目と耳を開放していた。

 

「お待たせいたしました。晩餐の支度が整いましたので、食堂へどうぞ──ご主人様がお待ちです」

 

 その言葉に、毛利一家と修斗以外は笑みを浮かべた。

 

「やっと大将のおでましか」

 

「楽しみだね」

 

 

 

 晩餐の用意をしていた大上も合流し、石原の案内の元、食堂へと辿り着く。石原がその扉を開き、中へと促せば、一歩目から既に目の前に紫色の三角の被り物をした、人らしき存在。その存在を1番に目にした茂木は呆れたように笑みを浮かべた。

 

「おいおい、なんなんだい、そのふざけた格好は!テレビの見すぎじゃねぇのか?」

 

 茂木の言葉に対し、答えになってない言葉がかけられる。

 

「崇高なる6人の探偵諸君!我が黄昏の館に、ようこそ参られたっ!……さ、まずは座り給え!自らの席へ!!」

 

 声音から男であること以外を読み取れず、茂木は舌打ちし、それぞれの席へと向かっていく。修斗も、白馬の後ろについて歩きつつ、考える。

 

(これ、変声機使って録音されたものを流してんのか。しかもタイミングから考えてタイマーも使ってる……手が込んでんな)

 

 小さく息を吐き出し、視線をある2人へと向け──再度、内心で黙祷した。

 

 最後に部屋へと入った大上は、自分が説明した通りの順で料理を出すように石原に指示を出し、自身の席である修斗の隣へと座った。それぞれ、フードの存在に近い人間から順番に、左側は白馬、修斗、大上、千間、槍田。右側は茂木、小五郎、蘭、コナンだ。

 

 それを見届けたようなタイミングで、声が掛かる。

 

「さて、君たちをここに招いたのは、私がこの館のある場所に眠らせた財宝を、探し当ててほしいからだ!私が長年かけて手に入れてきた、巨万の富を──命をかけてねっ!!」

 

 その言葉に、じっとりとした視線を白馬に向ける修斗。その内心が透けて見える視線に、白馬も苦笑い。

 

 ──その瞬間、館の外から音が響き、それに驚いた大上は立ち上がった。

 

「なんだね、今の音はっ!?」

 

 大上の言葉に、まるでその場で話しているようなタイミングで、フードの存在は返答を返す。

 

「案ずることはない、君たちの足を絶ったまでだ」

 

「なにっ!?」

 

「私はいつも君たちに追われる立場……たまには追い詰める側に立ちたいと思いましてな!」

 

 声の主は、橋も当然壊したと宣言する──まさに袋の鼠。

 

「勿論、ここには電話などないし、携帯電話も圏外。外の人間に助けを求めるのは不可能……そう、つまりこれは、その財宝を探し当てた方だけに、財宝の半分を与え、ここからの脱出方法を教えるというゲームですよ──気に入っていただけましたかな?」

 

 逃げ場がないことを聞いた辺りで小五郎と蘭は不安そうな表情を浮かべ、コナンはマントの存在を注視している。同じく聞いていた修斗は、話の途中で別の人物へと視線を向けたが、すぐに視線を戻し、つまらなそうに頬杖を突く。

 

 フードの人物の言葉を最後まで聞いた茂木はと言えば、フッと笑って立ち上がる。

 

「……虫が好かねぇんだよ。テメェみてぇに面隠して逃げ隠れする野郎はよ」

 

 そこで茂木がフードを鷲掴み、取り上げた。その下の素顔を見るつもりだった彼は、しかしその下から現れたものに驚く。その下にあったものは──スピーカーを付けた黒いマネキンの首だった。

 

「さぁ!腹が減っては戦は出来ぬ。存分に賞味してくれ!!」

 

「マネキンの首にスピーカー……くそっ!」

 

 茂木が悪態を吐きつつ席へと戻れば、小五郎はそれを視線で追う。

 

「誰が……一体、誰がこんなことをっ!!?」

 

「──あら、毛利さんともあろう方が、知らずに来たんですの?」

 

 小五郎の言葉を拾った槍田は、楽し気に頬杖をついて笑みを浮かべている。

 

「ちゃんと招待状に書いてあったじゃない──『神が見捨てし仔の幻影』って」

 

 槍田の言葉を聞くもピンと来てない表情を浮かべる小五郎に、隣に座っていた茂木も説明に加わる。

 

「『幻影』ってのは、『ファントム』……神出鬼没で、実態がねぇってことだ」

 

 小五郎の向かいに座っていた千間も口を開く。

 

「人偏を添える『仔』という字は、獣の『仔』のこと」

 

 事実、『仔犬』や『仔馬』といった動物に『仔』は使われる。その引継ぎを大上がする。

 

「『神が見捨てし獣』というのは、新約聖書の祝福を受けられなかった『山羊』のこと──つまりこれは『仔山羊』のこと」

 

 最後に──白馬が気障な笑みを湛える。

 

「英語で山羊は『goat(ゴート)』ですが、仔山羊のことはこう呼ぶんですよ──『KID』」

 

「な、なにっ!?」

 

「こう言えばもっと分かりやすいでしょうか──『Kid(キッド) the() phantom(ファントム) thief(シーフ)』」

 

 それが意味するのは。

 

「──狙った獲物は逃がさない。その華麗な手口はまるでマジック」

 

「──星の数ほどの顔と声で警察を翻弄する天才的犯罪者」

 

「──我々探偵が生唾呑んで待ち焦がれる、メインディッシュ」

 

「──監獄にぶち込みてぇ、気障な悪党だ」

 

「そして──僕の思考を狂わせた、唯一の存在」

 

 闇夜に翻るその白き衣を目にした人々は、熱を上げて叫ぶ──その名前は。

 

 

 

「──怪盗キッド」

 

 

 

 探偵たちの嬉しそう笑みを見やり、修斗は内心で重い溜め息を吐きだす。

 

(やれやれ……本人はこの中で一体、何をやりたいんだか)

 

 そのご本人に視線で表情を見たいところだが、少なくとも白馬とコナンには、彼が変装を見破れることを知られている──つまり、このタイミングで見てしまえば、教えてしまうことになる。

 

(現に探から名の通りに、視線で探られてんだよなぁ……)

 

 隣からの視線にあえて顔を向ければ、白馬からは笑みが返って来た。

 

「……楽しそうだな、おい」

 

「えぇ、とても」

 

「ヨウゴザンシタ」

 

「現に今──彼はその気配を一瞬、みせましたから」

 

 そのことに、コナンも気づいており──再会を喜ぶように笑みを浮かべていた。

 

(正直な奴だ。自分の名前が出た途端、一瞬その気配をみせやがった。お前のあの──凛とした冷涼な気配を)

 

 それは間違いなく──キッドが館内にいるという証拠。

 

 コナンは修斗に視線を向けてみれば、彼もその視線に気づき──顔を背けた。

 

(やっぱり、協力する気はないってことか……まあいい。何を企んでるか知らねぇが、欺き通せるかな──ここに集結した、7人の探偵を!)

 

 小五郎は、キッドが探偵を集めたのかと目を丸くして言えば、大上は髭を触りつつ肯定する。どうやら彼は、探偵たちと知恵比べをしたいらしい。それも、彼が今まで盗んできた財宝と、探偵たちの命を懸けて。それに内心で否定するのは修斗。

 

 彼は、面白半分で情報を集めていた咲と、好奇心から調べ上げてきた勇気から通常の会話の中で言われたのだ──怪盗キッドは、盗んだ宝石を持ち主に返しているのだと。

 

(探の奴も知ってるはずなのに……あぁ、でも例外の可能性も考えてるのか)

 

 そんな風に考えている間、小五郎たちに槍田から、屋敷中にある監視カメラの存在を伝えられたところで、扉が2度、ノックされる。

 

 全員の視線がそちらへと向けられたところで扉が開き、石原がオードブルをもってやって来た。

 

「やっと来たわね……彼が言う、最後の晩餐が」

 

 石原はワゴンカートを押し、席が一番近いはずの槍田を通り過ぎる。千間の後ろを通る途中で、その彼女から声を掛けられた。

 

「ねぇ、メイドさん?……もしかして、料理をテーブルに置く順番を、ご主人様から言いつけられてやしなかったかい?」

 

 千間の固い声に、石原は頷く。

 

「はい。白馬様のお席から、時計回りに、と……」

 

 それを聞いた千間は、自身の疑問を口に出す。

 

「やぁね。ゲームは始まったばかりなのに『最後の晩餐』というのが、私にはちょっと腑に落ちなくってね」

 

「ハハハッ!毒なんか入っちゃいませんよ!!料理はワシが作ったんだから!」

 

 大上が千間の言葉に不安を隠せないながらも呆れた様子で言う。しかし、白馬が口を開いた。

 

「しかし、口に運ぶフォークやナイフやスプーン、そしてワイングラスやティーカップも、あらかじめ食卓に置かれていましたし……僕たちは、この札に従って席に着きました」

 

 そう言って彼は、自身の名前が書かれた札を指で軽く倒した。

 

「──まぁ、彼が殺人を犯すとは思いませんが……僕たちの力量を試すための笑えないジョークを仕掛けている可能性はあります」

 

 その言葉を口にした修斗は呆れた目線を向ける。

 

「おいおい……キッドをずっと追い続けてるお前が、キッドを信じなくていいのかよ」

 

「可能性の話ですよ……自分のハンカチでグラスやフォークなどを拭いてから食べた方が、賢明でしょう」

 

 白馬の言葉に、茂木も同意する。

 

「違いねぇ。奴のペースでことが進むのも気に食わねぇし……何なら、じゃんけんをして、席替えするか?」

 

「しかし、それで運悪く毒に当たったら……」

 

 小五郎が青ざめた顔で止めに入るも、茂木は鼻で笑う。

 

「……そんときはそれだけの人生だったと、棺桶の中で泣くんだな」

 

 蘭やコナンと言った子供がいるにもかかわらずの茂木の言葉に、蘭は眉根を寄せた。

 

 その後、席替えは決行され、改めて席は左側が蘭、コナン、槍田、修斗、茂木。右側が大上、小五郎、千間、白馬となった。食事は至って問題なく進み、誰かが苦しむと言った様子もなく、食事は終わりに進む。

 

「いやー、美味かった!!さすが、美食家探偵!!料理の腕も素晴らしいっす!!」

 

 小五郎の賛美に、テーブルナプキンで口元を拭き終えた大上は笑みを浮かべる。

 

「いや、自らの舌を満足させるために、随分と修業しましたからな!」

 

 槍田も口元をテーブルナプキンで拭き、思い過ごしだったと笑みを浮かべる。それに茂木はまだ分からないと、どこか楽し気に話しかけ、間に座っていた修斗はそんな探偵たちに頭を抱えた。

 

 そんなタイミングで、人形から声が再度、流れ始める。

 

「どうかね、諸君。私が用意した、最後の晩餐の味は」

 

(ツッコミ入れたいけど我慢だおれっ!!料理作ったのは大上さんだとか言ったって空気壊すし、意味がないぞ俺っ!!)

 

「そーら!おいでなすった」

 

 今までのどこか緩んだ空気は、そこでまたも引き締まる。人形の方はそれに口を止めることもなく話が進む。

 

「ではそろそろお話ししよう──私がなぜ、大枚を叩いて手に入れたこの館を、ゲームの舞台にしたのかを!」

 

 そこでまず声は食器類の数々を確認するように指示する。それを聞いた修斗は、自分の目の前に置かれた食器を確認してみれば──大きな嘴を持った、不気味な鳥のマークがついていた。

 

「こりゃ……鴉じゃねぇか?」

 

(鴉……いや、まさかな。流石にねぇよ、考えすぎ考えすぎ)

 

 一瞬、修斗の頭に過ったものを、彼は自身の中で否定する。否定しなければ──彼はこの先、その渦に巻き込まれることが、決まってしまう。

 

(……いや、『降谷さん』と繋がってる時点で無理か)

 

 内心で遠い目をする修斗に気付いた人は誰もおらず、千間がそのマークに驚きの様子を見せた所で、人形は言う──このマークの持ち主を。

 

「それは半世紀前に謎の死を遂げた大富豪──『烏丸(からすま) 連耶(れんや)』の紋章だよ!!」

 

 その名前に、憶えのない蘭以外がそれぞれ反応を示す。

 

「食器だけではない。この館の扉、床、手すり、リビングやチェスの駒からトランプに至るまで、全て彼が特注したもの。つまりこの館は、烏丸が建てた別荘……あ、いや、別荘だった──40年前この館で、血も凍るような惨劇が起こった、あの嵐の日までは、ね」

 

 大上は爪を噛み、他の全員も話に聞き入る。探偵たちも、この館に足を踏み入れた時点で気づいていた──館中にある血飛沫の痕の数々を。

 

「そう……それはこの館がまだ美しかった、40年前のある晩のことだった」

 

 40年前、この館に、当時の政財界の著名人たちを招き、とある集会が開かれた。それは、99歳で他界した烏丸連耶を偲ぶ会と銘打ち、彼が生前コレクションしていた美術品を競売するためのオークション。その品数は300を超え、オークションは3日間かけて行われるはずだった。しかし、その2日目の嵐の夜──この館に、ずぶ濡れの2人の男が訪ねてきた。

 

 2人の男は、寒さに震えつつも、この嵐で道に迷ったため、嵐が止むまで屋敷にいさせてほしい、と。

 

 オークションの主催者は、最初は彼らを入れることを渋っていたのだが、男の1人が小さな包みを宿代の代わりだと言って渡した。それは煙草のようなもので、主催者は男たちに言われるままに吸ってみると、彼は徐々に陽気になり、男たちを館内に招き入れてしまった。

 

「──その様子を見た他の客たちも、彼らに勧められ、館内に煙が充満していった」

 

 この時点で事件の結末が見えた修斗は頭の中で現実逃避をしようとする。なにせ、その正体は──大麻(マリファナ)だ。

 

「暫くの間、客たちは陽気なバカ騒ぎを続けていたが、そのうち様子が変わってきた」

 

 

 

 ──ある男は、悪魔でも見たかのように悲鳴を上げ、自身が競り落とした美術品を抱えて走り出した。

 

 

 ──ある女は、何者かに許しを請うように涙が枯れるまで泣き続けた。

 

 

 ──ある男は、嬉しそうに自らの腕を手にしたペンで何度も刺した。

 

 

 

「──やがて、客同士で美術品を奪い合うようになり、オークションの品だった名刀や宝剣で殺し合いが始まり、オークション会場は地獄へと化した」

 

 その悪夢の一夜が明けた頃には、8名の死者と十数名の昏睡状態の客たちを残し、2人の男は、残されていた美術品と共に消えたのだ。

 

 ここまで聞けばかなり大きな、歴史的事件にもなりえるほどのものだが、世間には一切漏れ出ていない。それはなぜだと小五郎が問えば、その中に、政界に顔が利く何者かがいたのだろうと、大上が言う。

 

「なるほどね。誰が誰を殺めたのか分からないような、そんな状況だとしたら……」

 

「下手に事件を解明されるより、丸ごと握りつぶした方が得策と判断したんでしょう」

 

 勿論、それも消えた男たちの計算の内だったのだろう。現に今も事件は解明されず、男たちも逮捕に至っていないのだから。石原が食堂に入って来て、話に聞き入る全員のカップにそれぞれ、紅茶を入れていく。

 

「さて、もうお分かりかな?私がなぜこの館を舞台に選んだのかが。それは、君たち探偵諸君に演じてほしいからだ──再び、あの40年前の惨劇を。財宝を巡って奪い合い、殺しあう……あの醜態を!!」

 

「……悪趣味が過ぎるだろ」

 

「ふん、下らんな」

 

 人形の言葉に修斗は頬杖を突き、溜め息を吐く。大上もつまらなそうに溢した。

 

「まぁ、やみくもにこの館内を探させるのも酷だろうから、ここで1つ、ヒントを与えよう!」

 

 そのヒントに、コナンは視線だけを人形に向ける。

 

「──『2人の旅人が天を仰いだ夜。悪魔が城に降臨し、王は宝を抱えて逃げ惑い、王妃は聖杯に涙を溜めて許しを乞い、兵士は剣を自らの血で染めて果てた』」

 

 それは、まるで先ほどの惨劇の語りと同じもの。それがヒントだと人形は告げる。そのヒントに、大上は爪を噛んだ。

 

「まさにこれから、この館で始まる命がけの知恵比べに相応しい、名文句だとは思わないかね?」

 

 それを聞いた槍田が不機嫌な様子で否定する。

 

「馬鹿ねっ!殺し合いっていうのは、相手もそうだけど──こっちもその気にならなきゃ」

 

 その言葉を読んでいたのだろう──人形は告げた。

 

「無論、このゲームから降りることは不可能だ!!なぜなら、君たちは私が唱えた魔術に──もうすでに、掛かってしまっているのだから!!」

 

 そこで紅茶を飲もうとしていた探偵たちの手が止まる。修斗、コナン、蘭はそもそもカップを持ってはいなかったが、不穏な空気は察知した。修斗は白馬へと視線を向け──安堵の吐息を吐き出した。

 

「さぁ──君たちの中の誰かが悲鳴をあげたら、知恵比べの始まりだ!!いいかね?財宝を見つけた者は、中央棟4階の部屋にあるパソコンに、財宝のありかを入力するのだっ!!約束通り、財宝の半分と、ここからの脱出方法を……お教えしよう」

 

 そこで──修斗の横にいた茂木が唐突に悲鳴を上げた。あまりの声の大きさに、蘭が大丈夫かと声を掛ける。隣にいた修斗はと言えば、呆れ顔だった。

 

「……ブラックジョークはやめてもらっていいですか?茂木さん」

 

 修斗がその表情のまま告げれば、彼は首を手で押さえたまま、ウインクを1つする。

 

「なーんてな!」

 

「全く、悪いおじさんね」

 

 槍田は悪いついでに降りると宣言。茂木の演技に騙されて拗ねていた蘭は目を丸くして茂木を見る。

 

「宝探しには興味ないんでねっ!」

 

「でも、ここからどうやって!!」

 

 蘭の声に、茂木は山の中を駆けずり回ればなんとかなるはずだと、安心させたいのか笑みを浮かべて言う。しかし、修斗は理解していた──本物の悲鳴が、上がることを。

 

 

 

「──うっ、ぐおっ」

 

 

 

 椅子が倒れ、大上が首を抑えて苦しみだす。その苦しそうな表情に、修斗は内心で苦虫を噛む。

 

(……目を逸らすな──これが、見捨てた俺への罰なんだ)

 

 白馬やコナンなら信じてくれただろう修斗の言葉。小五郎や蘭だって信じてくれたはずだ──しかし、修斗が彼らに話すことが出来なかったがために、事件は起こった。

 

 修斗が事件を防ぐには、どうして気付いたのかを説明しなければならないが、まずそこが最難関なのだ──なにせ、彼には見ればわかることが『当たり前』なのだから。

 

 自身にとっての『当たり前』を説明することは──出来ない。

 

 そのまま、大上が苦しみぬき──苦しい表情のままに後ろから倒れこんだ。

 

「……探」

 

「!……分かりました」

 

 修斗が懺悔するように両手を組み、顔を伏せた状態で名前を呼べば、それで全てを察したのだろう。白馬は悔しそうな表情で大上へと向かう。

 

「おいおい、オッサンよ。2度目はウケねーぜ?」

 

 茂木の言葉はからかい交じりに言葉を投げかけるが、脈を測っていた白馬が懐中時計をポケットから取り出したことにより、空気は一変する。

 

「……22時34分51秒──心肺停止確認。この状況下では蘇生は不可能でしょう」

 

 その言葉を聞き、小五郎と茂木が信じられないと言った表情を浮かべる。白馬の前に槍田がやって来て、大上の検視を始めた。

 

「唇が紫色に変化するチアノーゼが見られないわ……それにこの、青酸ガス特有のアーモンド臭」

 

「じゃあ、さっきオッサンが飲んでた紅茶に、青酸カリが……」

 

「──いんや、酸化還元反応がない」

 

 茂木の言葉を、先に10円玉を紅茶に着けて確認した千間が否定する。原因が紅茶でもないとなると、現時点では原因の特定ができない。

 

 ──そこでまたも、人形から声が発せられる。

 

「──さぁ!賽は投げられました!!自らの死をもってこの命がけの知恵比べを、華々しくスタートしてくれた大上探偵のためにも、財宝探しに精を出してくれたまえっ!!」

 

 そこで耐え切れなくなった茂木が人形の胸倉を掴むが、その首が反動から外れ──中からは修斗の予想通り、カセットテープとタイマーが出てきた。

 

「──命のあるうちにね!」

 

 人形の声は、その一言から先は紡がれなかった。探偵たちはそのテープとも繋がったタイマーを見て、全てを察した──今までのは全て、録音であったことを。

 

「メイドさん!!食事をここに運ぶ時間も、決められていたんですか?」

 

「あ、はいっ……オードブル、スープ、メイン、デザートと細かく……」

 

 これにより、2つ分かったことがあると、コナンが声を上げ、探偵たちの視線を集めた。そのコナンの後ろには、蘭と修斗が立っている。

 

「犯人は最初から、大上さんを狙ってたってことと、もしかしたら犯人は──僕たちの中にいるかもしれないってことが」

 

 ──惨劇の夜の幕が上がった。




自身の『当たり前』が、他人にとっては『当たり前』ではなかった場合、果たして皆さんはそれを詳しく、相手に納得させれる説明が出来ますでしょうか?

因みに私は出来ません。語彙力がないというのもありますが、なによりどこから説明すればいいのかわからず、説明したところからまず相手にとって不思議となる可能性があります。分かりやすいのは、海外の人と会話するような感じでしょうかね。修斗君の感じとしてはそれと似ています。

彼の場合、言語の違いと言うより理解速度や洞察力の違い、心理の追求etc……彼の見える世界を共有するのはなかなか難しいといった話です。

私の近くにこういった感じの人がいるのかと言えば、いるにはいます。私が頭が乏しいのもあり、その人に説明を求めても、私側が理解できずに困ってしまいます(ちなみに相手には呆れられる)。

要は、人に分かってもらえるように説明するのは難しいですね、と言った感じです!

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!!

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