とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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今回から初映画編という事で、章管理をすることにしましたが……こんな日常嫌すぎます!

さずか死神くんとか事件ホイホイとか言われまくるコナンくん!私だったら嫌だけど、うちのキャラには容赦なく絡んでいってもらうからね!覚悟してね!


時計仕掛けの摩天楼編
第6話〜時計仕掛けの摩天楼・1〜


某日、北星の屋敷にてとある手紙が送られて来た。それは『森谷 帝二』という者から手紙が送られ、それを修斗が開き、6兄妹全員が集まったこの日、それを開いて中身を読み始めた。

 

「『突然のお手紙を差し上げます。ご無礼をお許し下さい。来る4月29日、火曜日。午後三時半から、拙宅で開かれるアフタヌーンティーのガーデンパーティの御招待致したく、此処にご案内申し上げる次第です』……って書いてあるな」

 

「あら?中々に優雅な時間にガーデンパーティーを始めるのね」

 

長机の左端に座っている修斗の言葉にその目の前に座っていた斜め右に座っていた黒髪の長髪を伸ばしたままにしているオレンジのワンピースを着ている女性『梨華』が紅茶を飲みながら言えば、修斗の右隣に座っていた黒髪ショートヘアの身長が150cm前半しかない茶色のネック付き長袖Tシャツを着て濃い緑の短パンを履いた少女『雪菜』が嬉しそうに修斗に詰め寄る。

 

「パーティー!?私、行きたい!修斗お兄ちゃん!私行きたい!行かせて!!」

 

「まあ、行きたいんならいいけど……」

 

修斗のその反応に、雪菜の目の前に座っている、同じく黒髪の短髪で白のYシャツを着て、雪菜と同じ顔だが実は少年な『雪男』がそれに首を傾げる。

 

「修斗兄さん?何か問題があるの?」

 

「いや、特にはないけど……この森谷って人、東都大学で建築学科の教授をしてる偉い人だぞ?無礼な事をしないならいいけど……それに、これに関しては俺が行くように言われてるしな」

 

その最後の言葉に、雪菜以外の全員があからさまに顔を顰める。

 

「……あの糞親父からか」

 

修斗の目の前にいる雪男と同じ白のTシャツを着た彰が言えば、修斗は溜息を吐きながら頷く。

 

「つまり、これはキチンと好印象を与えて相手との縁を繋げという、会社命のあの糞親父からの裏の伝言だ。だからまあ……な?」

 

その言葉に全員が理解し雪菜の顔を見ながら首を横に振る。

 

「雪菜、お前はダメだ。絶対にダメだ」

 

「えー!?なんでなんで!?」

 

雪菜が頬を膨らませて問えば、雪男が溜息を吐きながら宥めに入る。

 

「はぁ……雪菜。これは、修斗兄さんの仕事の一環なんだ。修斗兄さんのそばから絶対に離れず、大人しく隣に入れて、勝手な事をしないと信じられる相手なら良いけど、雪菜にはそんな信用ないからね?」

 

「えー!?ちゃんと出来るもん!!」

 

雪菜は遂に頬を膨らませて拗ねてしまい、それに雪男は苦笑する。その一連を見た後、梨華は彰と瑠璃を交互に見る。

 

「貴方達二人は仕事?」

 

「まあね〜。休みではないよ」

 

「そもそも、たとえ俺たちに休みが与えられても、事件が起きたら休日返上だがな」

 

彰はコーヒーを飲みながら答えると、梨華は少し考えた後、頬杖をついて修斗を見る。

 

「ねえ?そのガーデンパーティーの庭にはピアノとかあったりするかしら?」

 

「なんだ?一曲弾きたいのか?」

 

「まあね。折角のパーティーだもの。盛り上がる為にも必要とは思わない?まあ、なかったとしてもそれはそれで良いのだけど……」

 

「というか、梨華は駄目なのか?」

 

修斗がジッと梨華の目を見つめれば、梨華は少し不敵に笑って答える。

 

「まあギリギリではあるわね。五月のゴールデンウィーク前にはアメリカに戻らないといけないし……けど、飛行機のチケットはその日の夜だから問題ないわ。まあ途中で抜けても良いというなら、だけどね?」

 

その梨華の問いに修斗は少し考えると、頷いた。

 

「まあ、そこのフォローは任せろ。それにそこまでお堅い人ではないと思うぞ」

 

「そう。ならパーティーの時の服装を考えておかないとね!」

 

梨華が少しだけ楽しそうにテンションを上げれば、それを修斗は微笑ましそうに見つめていた。

 

***

 

ガーデンパーティー当日、招待状を門番の人に渡した後、森谷邸の庭を歩き始めた。修斗はグレーのスーツを着て、梨華は白と薄黄色のフォーマルなワンピースを着ていた。

 

「へ〜?これがかの有名な森谷教授の御宅なのね……とても綺麗な庭ね」

 

「まあ、その森谷さんが自身で手掛けたものらしいからな。しかもこの建物、イギリスの十七世紀、スチュワート朝時代の建物らしいぞ」

 

「そうなの。じゃあ、この庭がシンメトリーなのも?」

 

「まあな。調べたところ、森谷教授は学生時代にイギリスに留学していて、そこで英国建築に心酔したらしい。特に、古典建築シンメトリーへのこだわりが強いらしいぞ」

 

「まあ、確かに。日本は左右非対称の方が美しいと言われるけど、外に出ると一変して左右対象シンメトリーの方が美しいと言われるものね」

 

「ああ、お前、今アメリカと日本を往復してるしな」

 

「そのうち、他のところでも仕事したいものだわ」

 

「してるだろ。しかもフランスとイタリアで」

 

修斗がジト目で梨華を見れば、梨華は少し自慢気な笑顔を浮かべる。

 

「当たり前よ。私は自身の願い、そして和樹の願いの為、努力をしてきたもの。あの父親のためなんかじゃなくね。そう思うとすごく努力出来たわ」

 

「しかも才能もあるときた。そんなお前なら他の国にも行けるか」

 

「まあ、今の所はそこまで興味はないけれどね。でも、日本を入れて4ヶ国は確かに目指していたわね……」

 

そこまで話をした時、森谷本人がやって来た。

 

「おお、来ていただき感謝いたします。私、森谷帝二と申します」

 

森谷が頭を下げれば、修斗と梨華も頭を下げた。

 

「初めまして。北星家の当主代理で来ました。北星修斗です。こっちは妹の梨華です」

 

「初めまして。妹の梨華です」

 

その名前に森谷は少し驚いたように目を開く。

 

「おお、かの有名なピアニストの梨華さんですか!いやはや、お会いできて光栄です」

 

そう言って右手を差し出せば、梨華も嬉しそうに右手を差し出す。

 

「こちらこそ、あの有名な建築家であらせられる森谷さんとお会いできて光栄です。お屋敷もとても素敵で、今日、ここに来れた日は私にとって幸いな日です」

 

それに森谷は嬉しそうに顔を綻ばせ、二人を裏庭まで案内する。その時、梨華の半歩前にいた修斗が肘を曲げ、脇を軽く開け、そのスペースを開けたまま梨華の方に寄せた。その意図に一瞬考えた梨華だが、クスリと笑ってそのスペースにすっとさりげなく入れ、修斗の手と肘の中間よりやや手よりの位置に手を軽く添えた。

 

「ふふっ、女性のエスコート方法を覚えるなんて、修斗もやるようになったわね」

 

「うっせ。叩き込まれたんだよ」

 

「あら?いつもよりはカッコよくなるじゃない。其処だけは感謝したら?正直、私もこれだけはあの父親を褒めてもいいぐらいよ」

 

「……まあ、こういう時に確かに役立つしな」

 

そんな会話をしながら森谷の後を追い、中庭までやってくると、そこでまた軽く話し、離れた。

 

「さて、とりあえずこれで少し縁は出来たが……」

 

「もう少し強固にしたいの?」

 

「いや、この程度でいいらしい。何かあっても切り捨てられる程度で」

 

「……そう」

 

修斗が努めて冷静に言えば、梨華は悲し気に目を伏せる。

 

「……まあ、今回に関しては俺も賛成だな」

 

「?あら、どうして?」

 

梨華が修斗にそう聞けば、修斗は少し訝し気に森谷が去って行った方を見る。

 

「……あの人、何か起こしそうなんだよな」

 

「……それは貴方の勘?」

 

「まあな。正直、何も起こらないで欲しいな……」

 

そう言いながら隅の方へと移動した。すると少しして音楽家の男が近寄って来た。

 

「すみません。一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「……何でしょう?」

 

修斗が人好きのする笑顔を浮かべれば、男は梨華の方に視線を向けた。

 

「彼女はもしや、ピアニストの北星梨華さんではありませんか?」

 

「……ええ。確かに私はピアニストの梨華ですが。貴方は?」

 

梨華が笑顔を浮かべてそう問えば、男は申し訳なさそうな笑顔を浮かべて右手を差し出す。

 

「失礼。私、音楽家の竜志と申します。海外でも輝かしく活躍されている貴方にお会いできて、とても光栄です」

 

その挨拶に梨華もにこりと笑い、手をとる。

 

「ええ、私もお会いできて光栄です。同じ音楽家として、共に頑張りましょう」

 

「はい!あ、実は私、貴方のファンでして……」

 

「あら、そうなんですか?それはとても嬉しいです」

 

そんな会話を横で聞きながら周りを見ている時、また森谷が戻って来た。そしてその後から来た人物を見て、修斗は頭を抱えそうになった。

 

(またかよっ!)

 

そう、森谷が連れて来たのはあの毛利一家である。

 

修斗は気づかれな様に小さく溜息を吐けば、蘭と森谷が話し、そこで森谷が料理もすることが発覚した。勿論、独身だから自身でやらなければいけないのだろうが、森谷の場合、それに加えて自身でやらなければ気が済まない性格らしい。

 

それを修斗は頭の中に入れると、そこでいつの間にか音楽家の男が梨華から離れ、森谷と話していた。そして森谷は、男から『美しいものでなければ』という言葉に対し、『美しくなければ建築とは認めない』と言ってのけた。

 

「今の建築の多くは、美意識が抜けています!もっと自分の作品に責任を持たなければいけないのです!」

 

そう熱く語る森谷に梨華は目を見開き、そして数回同意する様に頷く。その隣で修斗は少し目を細めて森谷を観察していた。そんな時、森谷が小五郎にクイズを一つ出題することとなった。内容は、三人の男が経営する会社のキーワードを推理するものらしい。

 

「名探偵の毛利小五郎さんならすぐにお分かりになると思うのですが……」

 

その言葉を言った時、修斗は理解した。してしまった。森谷の狂気に。

 

(ああ……マジで死神だわ……事件ホイホイめ。なんでこんな厄介ごとに巻き込まれないといけないんだ……いや、今回ばかりは彼奴じゃなくて糞親父を恨むべきか……)

 

そう、森谷の顔には挑戦的な笑顔と共に、少しの憎悪が見えたのだ。

 

そこで天を仰いだ修斗。その周りでは小五郎の名前が囁かれていた。それと先ほどの言葉に気を良くしたらしい小五郎がスーツをキチッと伸ばし格好を付け、その下にいたコナンは呆れた笑顔で小五郎を見上げていた。

 

そうして全員に配られ始めた紙。その間の説明ではパスワードは三人に共通する言葉で平仮名5文字。そして紙には、

 

 

 

小山田 力(おやまだ ちから)。A型。昭和31年10月生まれ。趣味・温泉めぐり』

 

空飛 佐助(そらとび さすけ)。B型。昭和32年6月生まれ。趣味・ハンググライダー』

 

此堀 二(ここほり ふたつ)。O型。昭和33年1月生まれ。趣味・散歩』

 

 

 

と書かれていた。

 

それを見ながら梨華は真剣に考えるが、修斗はそれを一瞬サラッと見ただけで呆れた様な笑みを浮かべ、その後は紙を見ず、周りの人間の様子を観察し始めていた。特に森谷を注意深く見ていれば、森谷は今時珍しくパイプ煙草を使っていた。

 

(珍しい。けどサマになるところがまた凄いな……)

 

そうして観察していれば袖を軽く引かれ、なんだと横にいる梨華を見れば、目がヒントの催促をしていた。

 

「……簡単な考え方と面倒な考え方。どっちだ?」

 

「簡単な方でお願い」

 

「なら、上の名前と趣味を合わせて何が思い浮かぶ?」

 

「?」

 

そのヒントに首を傾げつつ、もう一度名前と趣味を合わせて考えれば、梨華はあることに気づき、頬をひきつらせる。

 

「え、まさか……これダジャレじゃ……」

 

「ははっ。そのまさかだ」

 

修斗が呆れた様に笑えば、梨華もまた呆れたのか息を一つ吐きだした。

 

「……真剣に考えた意味って……」

 

「まあ面倒な解き方もあるけどな……」

 

「……その面倒な解き方って?」

 

「それはな……」

 

と修斗が梨華の質問に応えようとした時、子供の声で「『ももたろう』だー!」と聞こえてきた。

 

「おお、ちょうどその面倒な解き方を説明してくれるみたいだぞ」

 

「……え。あの子供が?」

 

梨華がまさかという目で修斗を見れば、修斗は一つ頷いた。

 

そうして問題を解いたコナンの説明によると、答えは三人の干支で、上から申年、酉年、戌年。その字から猿、鳥、犬となり、そしてこの三匹は全員、桃太郎の家来であることから答えは『ももたろう』であるという。それに補足するように修斗は溜息を吐きながら話し出す。

 

「ちなみにもっと簡単に考えるなら、小山田は山の字があり、そして趣味が温泉めぐりから思い浮かぶのが猿。空飛には空があり、趣味がハンググライダーから空を飛ぶと考えて、上記から考えて思い浮かぶのは鳥。此堀はもうちょっと崩して『此処掘れ』で、趣味が散歩。そして二つして動物だからそこから考えて犬。こんな風に考えればもっと早くに答えが出る」

 

「修斗さん!」

 

コナンが少し驚いたように目を見開けば、修斗は面倒そうに一つ溜息をつく。

 

「……元々幸薄な家庭で生まれたのに、お前に会ってから俺の幸せは溜息と共に出ていくように感じる……」

 

「は、ははっ……」

 

コナンは修斗の言葉に頬をひきつらせて笑う。そんな二人のところに森谷は感心した様子で近付いてくる。

 

「正解だよ坊や。そして修斗くん。いや、大したものだ」

 

そう言って拍手をすると、周りも拍手を始める。コナンはそれに照れたように笑うが、逆に修斗は居心地悪そうな顔をする。

 

「……修斗は目立つのが本当に嫌いね」

 

「うっせ。俺は影とかから支える方が性に合ってんだよ」

 

梨華が意地悪い笑みを浮かべ、修斗はそんな梨華にジト目を返す。そんな正解者の二人にはご褒美にと特別に森谷のギャラリーを案内されることとなった。が、それに修斗は梨華の付き添いの許可を貰い、コナンの方は森谷から保護者ということで蘭が指名され、四人でギャラリーの方へと移動していく。その道中、コナンは修斗に話しかける。

 

「修斗兄ちゃんが来てるなんて知らなかったなー。僕、ビックリしちゃった!」

 

「そーかよ」

 

「ねえ、なんで此処に来たの?」

 

「あの人からの招待と、親父から縁を繋いでこいとのお達しでな」

 

「?お父さんっていうと、今の当主さん?」

 

「ああ。俺にとっては糞親父だ」

 

(糞親父って、おいおい……)

 

修斗の言葉にまたコナンは呆れたような笑顔を浮かべるが、修斗としては心の底から思っていることである。そこでちょうどギャラリーに付き、四人で写真を眺め歩く。

 

その建築物は全て美しいと思えるほどに洗練されており、梨華と修斗は密かに見惚れた。

 

「……確かに。とても美しい建築物ばかりね」

 

「ああ。……まあ多分、そのうち無くなるだろうが」

 

「?」

 

修斗の呟きに梨華は首を傾げていると、コナンが声をあげた。

 

「ねえ、蘭姉ちゃん!これ、この前の……」

 

その声が気になり、梨華と修斗もその建築物を見れば、門まで着いた何処かの立派なお屋敷だった。

 

「あらそうよ。黒川さんのお宅だわ」

 

「黒川さん?」

 

「ああ。そういえばこの前、テレビで流れてたな。殺されたって……」

 

修斗の言葉に蘭は頷きを返す。そこで森谷が説明をしだす。

 

「この家は私が独立してから間もない時の作品です。この先のものは全て三十代の作品です」

 

そこで梨華は修斗の耳に口を寄せ、質問をする。

 

「森谷さんって今何歳?」

 

その質問に修斗は少し呆れた様子を見せ、同じように耳に口を寄せ、囁くように答える。

 

「47歳だ。こういうのは失礼だから、気をつけろよ」

 

その注意に梨華はムッとした表情で修斗を見ていると、森谷と蘭の間で気になる話がされていた。

 

「ところで、蘭さんは工藤くんと親しいのですか?」

 

「え?ええ、まあ……。彼とは幼馴染で、高校も一緒なんです。ただ、此処んところしばらく会ってなくて……」

 

その言葉に梨華と森谷は意外そうな表情を浮かべ、修斗は視線を下に向け、コナンを見る。その視線に気づいたコナンは何だと言いたげな顔をする。

 

「あ、でも今度の日曜日が新一……いえ、彼の誕生日で、一緒に映画を見る約束をしてるんです」

 

その言葉に森谷は笑顔を浮かべる。

 

「ほぉ、それは楽しみですな。ではもうプレゼントも買ってあるんですか?」

 

それに困った表情をする蘭。

 

「いえ、それは土曜日に。彼、私と同じで赤い色が好きなんです。それに5月は二人とも赤がラッキーカラーで。だから赤いポロシャツプレゼントしようかなって!」

 

最後の辺りでは既に頬を赤らめて嬉しそうに説明する蘭に、梨華は微笑ましいものでも見たように優しげな目と表情で蘭を見ている。が、その隣で修斗はジッと森谷を観察していた。

 

「ははっ。それは素敵なプレゼントですな。工藤くんもきっと喜ぶことでしょう」

 

「はい!」

 

そこでコナンが慌てた表情をしたのを修斗は見逃さず、そこから考えていなかったのだと分かると、呆れたように溜息を小さく吐き出す。

 

「あら?これ、米花シティビルじゃないですか?」

 

そう言って蘭が見たのは、青空のもと、下から上へと見上げるように取られた一つのビル。そのビルを指差しながらそこで映画を一緒に見るのだと説明する蘭。その上、日時まで話し、それに少しだけ食いついた様子の森谷。そして米花シティビルは森谷の自信作であることを伝え、若いカップルがバースデーを迎えるには此処以上のところはないと自信満々に言ってのけた。それに困った表情を浮かべるコナンをチラッと見た後、森谷の表情と目を見て、修斗は深い溜息を吐き出したのだった。

 

***

 

そうしてガーデンパーティーが終わり、帰り出した時、修斗がコナンに近づき、呼び止める。

 

「おい坊主。ちょっとこっち来い」

 

「?蘭姉ちゃん、ごめん!修斗兄ちゃんに呼ばれたからちょっと行ってくるね!」

 

そうして蘭から離れたのを見た後、修斗は梨華に顔を向け、顎を使って離れるように言えば、梨華はそれを了承し、少し離れた場所に移動した。

 

「何だ?修斗さん」

 

「おい、口調は周りと状況と場所を考えて変えるんだな」

 

修斗がコナンの口調を指摘すれば、コナンは慌てたような周りを見て、まだ人がいることを理解して子供らしいものに戻した。

 

「そ、それで?僕に何の用?修斗兄ちゃん」

 

「これ、渡しとく。何かあったら連絡して来い」

 

そう言って修斗が渡したのは電話番号とメールアドレスが書かれた小さな紙。それにコナンは目を見開き、修斗を見る。

 

「いいの?教えちゃって……」

 

「ああ。まあ、出れないときは容赦なく出ないし、メールも遅れて返すから問題ないな」

 

(いやそれ問題じゃねえか?)

 

コナンがハハッと乾いた笑いを漏らせば、修斗は少しコナンを見た後、その頭に手を乗せ、撫で始める。

 

「わわっ!?なに!?」

 

「……ま、頑張れよ。平成のシャーロックホームズさん」

 

そう言って立ち上がり、修斗は梨華の元へと歩き出す。コナンがこの言葉の意味に気づくのは、もう少し先のお話。




*今回出てきた竜志さんはモブに名前をつけただけなので重要人物ではありません

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