ほんとう、ごめんね、咲さん…でも二次では私、好きな自キャラをイジメたい人間なの…でもごめんね?
それでは、どうぞ!
強盗グループが子供たちの悲鳴を聞き、あくどい笑みを浮かべる。走って悲鳴が響いたらしき場所へと辿り着き、灯りで照らせばーーその場には誰も、いない。あるのは五つの道のみだ。
「くそっ!どの道に行きやがった!?」
「焦るな!餓鬼の一人は怪我人だ。足は速くねー」
そこでリーダーの髭の男が、灰色の上着を着た男と片っ端から見ていくと言い、緑の男にその場で見張るように言う。そして二人の男がいなくなるのを、一番奥の穴から見ていた子供達も見送った。
「どーしてこんなところに入っちゃったんですか!?」
「しゃーねーだろ!?一番奥にある道だと思ったら、ただの穴だったんだからよ!!」
そう、子供たちはコナンが意識を失った後、とにかく逃げなければと、離れるために無意識に一番奥の道に姿を隠すつもりでいけば、そもそもそこは穴で、奥に逃げれるような道はない。そこで仕方なく身を潜めていたのだ。
「喧嘩してる余裕はないぞ。とにかく、コナンが言っていた『龍の道』を早く見つけないと、まずい」
「そうだよ!!じゃないと、殺されちゃうよ!?」
歩美の言葉に、咲はむしろそのほうがありがたいと思う。
(あちらが襲ってくるんだ…こちらがたとえ誤って殺しても、正当防衛になる可能性も少なからずある)
ただし、心情的なものでならないだろうことも理解している彼女は、今が冷静だからこそ、そんな事態は避けたいと願っている。
「…コナン君抜きでですか?」
「ま、マジで…?」
「マジだもん」
歩美の覚悟を決めた顔に、咲も推理は苦手ながらに考える。もちろん、犯人の出す座った動作の音、息遣い、拳銃の音も聞き逃すつもりはない。先程からチラチラと頭を過ぎる、テレビの砂嵐の様なものは、出来るだけ気にしないようにする。
「…なあ咲、あいつ、離れたか?」
と、突然の元太からの問いに、首を振る。
「おかしいですね、彼が生理現象を催せば、ここから抜け出す絶好のチャンスなんですけど…」
「そんなの待ってらんないよ!!あの人の仲間が、いつ戻ってくるかもしれないし、それに、早くこの鍾乳洞を抜け出して、コナン君を病院に連れて行かないと…」
「そうだな」
咲はそれに心底同意するように深く頷く。彼女も一刻も早く連れていきたい。恐怖で小さく震えている。それは、ジンたちと相対した時とは違う、生理的な嫌悪、恐怖。先程からよぎる砂嵐にも感じる、気持ち悪くなるような…そんな己を支配しそうな身に覚えのない恐怖。そこから脱するためにも、コナンに生きてもらうためにも、ここから逃げ切らなければいけない。
「そうですよね…兎に角、コナン君が言っていた出口に通じる『龍の道』を探しましょう!」
光彦の言葉に三人が頷くと、彼は手帳に簡易的な現在の場所の地図を描く。卵から数えて右三つの入り口と左一つの先に続く道。そして、彼らがいる穴と、犯人。
「ます、分かれ道が五つ。あの見張りがいるのが、卵の石の前。そして、僕たちがいるのが、ここの奥の穴。ここは道ではなくただの穴ですから、残りの四つの道の中に『龍の道』があるはずなんですけど…」
「うーん…」
「龍の道…龍…ドラゴン…」
歩美の言葉に、光彦は反応した。ドラゴンの頭文字は『D』。アルファベットで数えれば四番目の文字。入り口から四つ目の道が『龍の道』だと自信をもって言うが、四つ目の道は彼らがいる場所だった。それにがっかりする二人。
「そういえば、コナンが俺の頭の後ろでぶつぶつ言ってたぞ」
それに反応する二人。それは咲にも聞こえていた。
「ああ、キーワードは『と』の字と『龍』と『卵』と…」
「どーして早くそれを言わないんですか!?」
光彦が二人に怒鳴るが、それは今までの小声ではなく、大声。当然、なんの準備もしてなかった咲は頭の中がジューサーにかけられたようにぐちゃぐちゃになり、犯人の見張りの男が反応する。元太が光彦に注意するような声をかけるがもう遅い。なにせ、気のせいでは誤魔化しのきかない声量だったのだ。犯人も馬鹿じゃない。子供たちの方へと近づく足音が聞こえだした。
「や、やば…こっち来る!」
そのことを確認すると、もっと姿を隠そうと奥へと身を寄せるが限界だ。フラつきながらも覚悟を決めた咲が子供たちを背中に隠し、攻撃態勢を取ろうとしたとき、別の犯人2人が戻ってきて緑の男に声を掛けたため、姿が見られることはなかった。
「おいっ!ちゃんと見張ってろと言っただろうが!!」
「あっ…見つかったんすか?餓鬼ども」
「いや、最初の道は行きどまりだったぜ」
「なーに、心配するな。残りは四つだ。捕まえられるさ」
そこで再度しっかり見張っているように言い含めて、卵から二つ目の場所へと入っていく。それを見送り、緑の男は見張りへと戻る。
それに安堵の溜息を溢す四人は、再度、考え出す。
「兎に角、キーワードは『と』と『龍』と『卵』」
「さっぱりわかんねーな」
「『龍』が蛇なら、卵は大好物なんだけどな…」
「蛇?」
光彦が歩美に問い返せば、田舎の祖母が巳年生まれで蛇に詳しくなったと。それに光彦は何かを思いついた顔をする。
「そーか!きっとそれですよ!」
「ん?」
「『と』と『龍』と『卵』は、十二支を暗示するキーワードだったんですよ!『龍』は辰年、『卵』は巳年…」
「『と』は?」
咲の問いに、酉か寅だろうという光彦。『卵』を蛇として、辰、兎、虎、光彦たちがいる所が牛で、一つだけの方がネズミ。つまり『龍の道』は卵のすぐ横の道と考えた。
「だがそこは、奴らが出てきたところだぞ。しかも、行き止まりのな」
「それに、卵だったら酉年の方が関係あると思うけど…」
「そうすると、『と』の文字の意味と重なってしまいます…!もしかしたら、あの『卵』は兎年の事かもしれません!兎の『卯』って、『卵』の字と似てますし」
「でも、卵を産むのは鳥さんよ」
歩美のその意見にまた振り出しに戻る四人。しかし、ふっと咲が口にする。
「…将棋」
「「「…え?」」」
「もしかして、将棋の事じゃないか?」
その言葉に、光彦の目が輝いた。
「それですよ!『歩兵』の裏は『と』、『飛車』の裏は『龍王』、そして『卵』は『
「『玉将』って?」
「将棋を指すとき、格下の人が使う『王将』のことです」
「つまり、あの卵を『玉将』とすると、五つの道は卵に近い順に、『金将』『銀将』『桂馬』『香車』となる」
「その『桂馬』の正面の道が、『飛車』の道ということに…」
そこまで言えば歩美も元太も理解する。『龍の道』とは、今いる場所の斜め前にある道のことだと。しかし、その道を行くにしても、見張りがいる。つまり、犯人の前を横切らねばならない。
「困りましたね、僕たちの武器とになるとしたら、時計型ライトと探偵団バッチぐらい…」
「バッチ?」
歩美がそこで思い出す。ここに隠れる直前のことを。
「--ねぇ!上手くいくかどうか分からないけど…」
そこで作戦を思いついた歩美は三人に伝える。それに三人も乗ることにした。
「…合図は私が出す。そのタイミングで、全員出る…いいな?」
咲の言葉に子供たちは頷く。それにふっと笑みを浮かべると、見張りをよく見る。ちょうど見張りが別の方に視線を向けていた。
「---いくぞ!」
「「「いっせーのっ!!」」」
子供達のその声が響いた瞬間、見張りが振り向くが、子供たちの行動の方が早かった。
「くらえっ!」
元太が『あるモノ』を投げつける。しかしそれは男に届くことはなく、それを理解していた男は鼻で笑った。
「八ッ!馬鹿な餓鬼どもだ。そんな石ころで俺がやっつけられるとーーー」
しかしその瞬間、何かの鳴き声が近づきだした。男がそれに気づき、おそるおそる振り向けば、蝙蝠の大群。蝙蝠たちが男を襲い、男は悲鳴を上げる。それを見て子供たちは走り出す。その時、ちょうど引き返してきたらしい男たちが戻ってきた。何事かと緑の男に問えば、蝙蝠に襲われながらも懸命に子供たちが逃げたことを伝える。
子供達は後ろも振り向かずに一心不乱に道を進み続ける。迷えば終わり。間違っていても終わりなのだ。信じて進むしかない現状で、恐怖を抱きながらも走りを止めない。
そしてようやく、その先に出口が見えた。
「出口ですよ!」
それに喜びを表す子供たち。しかし、咲が足音に気づき、集中するよう言おうとした瞬間、発砲音と共に元太こけた。それに思わず子供たちと咲が足を止める。
「元太君!!?」
「よーっし、捕まえたぞ!」
髭の男がそこで見た目的にもふくよかな体系の元太をそのままに、逃げることなどできない怪我人のコナンを首に腕を巻いて拘束する。
「よーっし、三人とも!!外へ出ずにこっちへ来るんだ!!」
それに三人が互いに顔を見合わせる。それに髭の男が拳銃をコナンの頭に突きつけて脅し、それに二人は怖がり、咲は感情がない表情で歩き出した瞬間、その場所を三人の後ろからの光によって明るく照らされた。
唐突な光に髭の男は目を腕で隠し、咲と子供二人も驚けば、その場に後ろからの声が響きわたる。
「警察だ!!お前たちは完全に包囲されている!!!銃を捨てて、投降しろ!!!繰り返す!!お前たちは完全に包囲されている!!!」
目暮のその言葉に、髭の男は舌打ちする。後ろを振り向けば、仲間の二人が警察に捕らわれていた。緑の男を佐藤が。グレーの男を高木と彰で捕獲している。子供達も、目暮の元にいる。しかし、逃げれないわけではない。彼には人質となりえる存在が腕の中にいる。
「馬鹿め!!コレが見ねえか!!!この餓鬼がバラされたくなかったら、道を開けろ!!!」
その瞬間、ふっと腕の中のコナンが喋りだす。
「はぁ、はぁ…バーロォ、オメェの将棋はとっくにもう詰んでんだ…」
「アアッ!!?ナニィッ!??」
「じたばたしてんじゃ…ねぇよ」
そこで腕時計のふたを開き、麻酔針を男の額に撃ちこんだ。そうすれば男は眠りに落ち、横に倒れる。コナンもまた、腕の力から逃れたものの、そのまま地面に倒れこんだまま、立ち上がらない。
歩美は哀に抱き着いて泣き、元太と光彦は博士に頑張ったと激励を送られている。警察が出口にいたのは、この二人がコナン達が出口へと向かっていると考え、現地の人に場所を聞き、ちょうど辿り着いたところだったとのこと。警察も二人が呼んだらしい。現地の人によれば、あの石碑は大昔からあったらしく、誰が記したのか定かではないとのこと。
しかし、そんな会話は、咲には聞こえていない。咲は『拳銃』で『撃たれた』コナンが『血まみれで』『地面に倒れ伏した』のを見た。目にしてしまった。たとえそれが、犯人の腕から滑り落ちた様にでも関係ない。コナンの『状態』、『拳銃』、『地面に倒れ伏す』。この三つを見てしまった。それも、蓋が開きかけていたその状況の、まま。
そうして記憶の蓋が開きーーー叫ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!?」
それにその場の全員が咲を見れば、彼女は泣き叫び、髪をぐしゃぐしゃにかきむしり、叫ぶ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!撃ってしまって、殺してごめんなさい、先生、『燕』!!!!いやだぁ!!撃たせないで!!!撃たせようとしないで!!!ーーーそんな風に、笑わないでェ!!!!!!」
「---咲!!?」
哀がすぐに咲に近づき、咲を抱きしめる。意識が混濁し、視線も合わさらない。錯乱状態だ。
「お願い笑わないで…!!」
「咲っ」
「憎んでよ、恨んでよ…」
「咲ッ!」
「--私の事なんか、考えないで…」
そこで声がどんどんと小さくなっていく。そして聞こえなくなる瞬間、哀の肩に顔を伏し、気絶した。
最後の言葉は、哀しか聞こえなかった。
「--逃げて欲しかったのに…」
米花総合病院。救急車に乗せられたコナンはそこに運び込まれ、手術することとなった。それに驚いたのは小五郎だ。もともと病院に来たのは怪我だと思っていたからだ。しかし、予想もしなかった単語のため、驚くのも仕方ない。それに博士が説明しようとしたが、うまく言葉にできずにどもるばかり。それを見て哀が口を開く。
「拳銃で撃たれたのよ」
「えっ!?」
「銃創の部位は左側腹。弾は貫通してるけど出血が多く、腎損傷の可能性もあるって。危険な状態らしいわ」
それを聞き、自身が思うよりもマズい状態にあると理解した小五郎は顔を引き締めた。
「…咲は?」
そこで次に口を開いたのは修斗だ。彼は憔悴した様子の咲を背負ったまま、博士に聞く。その目は怒る様子もなく、凪いでいる。
「…咲は過去の『トラウマ』を今回のことで引き出されてしまったみたい。けど、あの様子だと、またその記憶は覚えてないかも。下手したら、今回のことも朧気にしか残らない可能性もあるわ」
「…わかった。あとは弟に見てもらうことにする」
そこに蘭の声が響く。
「コナン君!!」
手術台の移動音を響かせて、医者と看護婦と共にその場に現れた彼女は、コナンに声を掛け続ける。
「もうちょっとの辛抱だから!!コナン君!!!」
そんな蘭を静かに見つめる哀。彼女はまだ、蘭を警戒している。
「--先生、大変です!!!」
そこで別の看護婦がやってきた。その女性は、以前の手術でコナンと同じ血液型の保存液を使ってしまっていて、在庫がほとんどないことが伝えられた。
「なんだって!?今から血液センターに発注しても間に合わんぞ!!?」
それをきき、蘭が声を上げる。
「あの…私の血でよかったら…。私もこの子と同じ血液型ですから!!」
それに小五郎は驚き、博士は顔を青ざめさせ、哀と修斗は表情は変わらないものの、確信した。
蘭が、コナンの正体に気づいていることにーーー。
「お、お前、どうして…」
「でも一応、調べてください」
そこで看護婦は蘭を連れてその場を離れていく。それを霞む視界の中で見送るコナン。
(蘭、やっぱり…やっぱり、お前…)
手術が始まってしまえば、誰も口を開けない。祈るしか、ないのだから。
修斗が咲を連れて帰り、帰ってきていた雪男に見てほしいと頼み、雪男も咲の姿を見て目を見開くと、頷いた。そこで場所を移動し、修斗の部屋。
「…」
「…どうだ?」
まだ意識を失ったままの彼女の瞼の裏を見たりしなが診察していき、とりあえず問題ないことは伝えた。
「けど、兄さんの話を聞く限りだと、その『トラウマ』をまだ受け止めれる状態ではないから、何を見て錯乱したのか、忘れる可能性は極めて高いだろうね…今日のことも、あまり覚えてないかもしれない。特に、きっかけとなっただろうところは」
「…そうか」
そこで扉が勢いよく開き、二人が驚いて扉の方へと顔を向ければ、髪で表情は隠れているものの、彰が立っていた。どうやら調書は他に回ったらしい。
「おかえり、彰兄さん」
雪男の声に反応せず、彰は無言で壁に背を預けていた修斗に近づいた。
「おい兄貴。親しき中にも礼儀ありだろ。ノックぐらいーーーッ!?」
修斗が彰に注意しようとするが、彰は無言で修斗の胸倉を掴み、壁にたたきつけた。それは何の容赦もない力で、息を一瞬詰めてしまった修斗。いつもなら謝罪が来るところだが、それもないほどのーーー怒り。
「お前、なにを隠してやがる!!!??」
「ゲホッ…はっ、なんの…」
「ちょっと、兄さんたち!?」
雪男が止めに入るが、彼の貧弱な力では彰の力を緩めることが出来ない。そもそも彼は武道に長けた人間だ。インドアの彼では無理だった。
「テメェがなんか隠してんのはそもそもから知ってたが、いい加減に話してもらおうじゃねぇか。アァッ?何を隠してやがる。吐きやがれ!!!」
「グッ…」
首が更に締まるが、答えることなど、彼には出来ない。例えば、話してもしものことが起こればーーー修斗は其方の方が耐えれない。彼は苦しいながらに、無言を貫くしかできない。嘘を兄妹に吐きたくないからだ。
そんな修斗を見て吐くつもりがないと理解し、一度またきつく締めるが、深く深呼吸をして、ゆっくりと力を抜き、放した。咳き込む修斗の背中を擦る雪男は、悲しそうな顔を浮かべていたのを、修斗は見てしまい、血が滲むほど、唇を強く噛んだ。
翌日、日の出が現れだしたとき、コナンは目を覚ます。鳥の囀りが外から聞こえる。自身が生きていることを実感できた。
(どうやらまだ生きてるみてぇだな。しぶといねぇ、俺も…)
そこで起き上がれば左腹が痛んだが、傷が開くことはなかった。そこで足の辺りに重みを感じ、そちらに顔を向ければ、顔を突っ伏して寝ている蘭がいた。
「--蘭に感謝しろよ」
そこで声が聞こえて扉へと顔を向ければ、寝起き顔の小五郎が欠伸をしながら病室へと入ってきた。
「自分の血を400CCもオメェにやった上に、夜通しで看病してたんだからな、たくっ…」
小五郎はその後も、偶然、蘭が同じ血液型だったからよかったものの、特殊な血だっ
たらアウトだったことを言い、コナンに早く元気になるように、ならないと承知しないといえば、コナンは子供らしく頷くとともに、蘭が自身の正体を確信していることを理解した。
十日後。コナンは順調に回復し、今日の診察でも、主要臓器の損傷もなく、2,3日後には退院できるだろうと蘭は医者から聞き、嬉しそうな笑顔を浮かべる。ただし、術語で抵抗力が落ちていたために、上気道感染、つまりは風邪を引いていた。そんな風引きコナンはといえば、見舞いに来ていた子供たちに渡されたゲーム機を車いすに乗った状態でしていた。その間も、ケホケホと咳き込んでいる。それを心配そうに見つめる蘭。しかし反対にコナンは、ゲームに集中していた。
「なあ、そのゲームいけてるだろ?」
「今が、学校で大流行なのよ?」
「あっ!そこです!そこ、左に…」
そこで園子にゲーム機を取られてしまう。それに不満の声を上げる子供達だったが、園子は怪我人であるコナンを病室へと連れていく。子供たちは時間が時間のため、帰ることとなった。
「退院が2,3日後って事は、学園祭の真っ最中…」
「3日後だったら私達の劇の当日よ?どうすんのこの子の迎え」
そう。その日は朝から手が外せないほどに忙しい日。蘭では迎えに行けないことは本人も理解しており、小五郎に頼んだことを話す蘭。その間、黙々とゲームをしているコナン。
「そういえば、彼奴に連絡した?」
「彼奴って?」
「んもう、新一君よ!蘭が劇のヒロインをするって言ったら、すっ飛んでくるかもよ?」
その名前が出た瞬間、コナンはゲーム機を取り落としてしまうほど動揺した。反対に笑顔で対応する蘭。
「来ないよ。それに…いいんだ、私」
「えっ?」
「コナン君が元気になって見に来てくれれば!」
それに頬を赤く染めながらコナンは蘭を見上げる。
「…来てくれるよね?」
「っうん!」
「---あらなぁに?ラブラブ~って感じじゃない」
そこで園子が眉を引く附きながら割って入り、新一からコナンに乗り換えたのかとからかい、蘭が否定した時、コナンは園子が手首に包帯を巻いているのを見つけた。
「ねえ、どうしたの?園子姉ちゃん。その手首」
それに園子は悲しそうな顔で説明し始める。劇の練習中にへ捻り、騎士役が降板したこと、新出先生が代役を務めることになったこと。
「まあ、あとは蘭が大勢のお客さんにのまれなきゃ、バッチリね」
「もう、平気よ!あの体育館の空調壊れてて、上演中サウナ状態で、去年のお客さんの入り悪かったみたいだから」
その話を聞いていたコナンは表情がどんどんと不機嫌になってい。園子が騎士役だったために嫉妬しなかった彼だが、男性教師、しかも『新出先生』となれば話は別だ。
(あの優男、最初からそのつもりだったんじゃ…)
「あら、今年は大丈夫よ?演劇部が体育館の中で模擬店出して、冷たい飲み物を売るってさー」
「えー、うそーっ」
そんな会話をしながら去っていく三人。その姿を見ている人物がーーー壁際に、一人。
病室へと戻ってくれば、関西弁で喧嘩する男女の声が聞こえてきた。
「あんた何考えてんの!?ユリ買うてきて!」
「うるさいやっちゃな!花やったらなんでもええやないか」
もちろん、それに気づかないわけもなく、コナンの病室からする声に不審に思う園子と蘭。反対に、コナンは声と方言で特定した。
(あの声、まさか…)
三人が病室へと入れば、平次と和葉がいた。二人はやはり、なにか言い争いをしている。
「アホッ!ユリはな、匂いがキツぅて嫌がられるんやで!?見舞いに買うてくる花ちゃうやん!!」
「そやったら初めからそう言うとけ、ボケェ!!」
「---服部君と和葉ちゃん!どうしたの?」
蘭からのその問いに、二人は喧嘩をやめ、コナンが大けがをしたと聞き、学校帰りに飛行機に乗ってきたと言う。
「それで、どうなん?具合…」
「うん、順調に回復してて、2,3日後には退院出来るって」
それに和葉は安堵する。それを見て、平次が彼女に別の花を買ってくるように言うと、和葉は文句を言いながらも蘭たちを連れて花を買いに行った。それを見送るとコナンが『わざわざ』買いなおさないといけない花を選んでなんの用かと聞けば、博士から電話があり、コナンの相談に乗ってほしいと言われたという。
「相談?」
「なんや知らんけど工藤、お前…あの姉ちゃんに正体バレかかけてるそうやないか!」
笑顔で楽しそうに言う平次に、諦めた様な様子のコナンは訂正する。『バレかけてる』ではなく『バレてる』のだと。それにコナンから話たのかと驚く平次だが、コナンはしていないという。実際、彼は何もしていない。
「せやったら、お前とじーさんの思い過ごしかもしれへんど?バレるバレると怖がってるから、そない思うんや」
「いや、思い当たる節は今までにいっぱいあるんだ。俺が分身でもしねー限り、誤魔化すのは無理って感じだぜ?」
だがそんなコナンでも分からないことがあった。それは、『なぜ自分に言わないのか』ということ。確信を持っているなら、余計になぜ言わないのかを。それに平次は溜息を吐く。
「相変わらず、人の心は読めても、自分のことになるとサッパリやな」
その平次の言葉の意味が理解で来ていないコナンはキョトン顔。それを無視して答える平次。
「あの姉ちゃんがホンマに気いついてるんやったら、言わへん理由は一個だけーーー待ってるんや。お前の口から直接話を聞かせてもらうのをな」
その発想は浮かばなかったらしいコナン。そんなコナンに、腹を括って全部話した方がいいかもしれないと言う。
「…バーロォ、人の苦労しょい込んで、自分の事のように心配して泣いちまう様なお人好しに、ンなこと言えるわけねぇだろ…。かと言って、あんな張り詰めた様な蘭を、このまま欺き通す自信はな…本当は早く全て話して楽にしてやりてえんだ」
コナンは最後に平次に問う。平次なら『どっち』なのかと。どちらが『正解』なのか、と。
帰りの飛行機の中、平次は考えていた。その時、和葉に声を掛けられる。蘭の演劇を見に行かないか、と。その時、コナンとの会話が思い返しーー行けれないと答えた。抜けれない大事な用がある、と。
その日の夜の病院。誰も歩くことなく静かなこの時間に、廊下には一つの灯りが辺りを照らす。看護婦が巡回しているのだ。その看護婦が去っていくのを見届ける、影。その影は壁に身を隠し、息を殺して看護婦が去るのを待つ。少しして、看護婦が去るのを確認し、ニヤリと笑うと、薬品室へと入りーー『
同時刻。コナンの病室では、平次と話した内容を、彼は未だに答えが出せないでいる。
博士に初めてこの幼児化を話したとき、話さないように言われた。誰にも、蘭にも言うなと。昼に平次と話した内容がよぎる。しかし話してしまえば、蘭は処か、親しい間柄の全員が消されると、だから、誰にも言ってはダメなのだと、あのピスコと対峙した事件時に哀に言われている。しかし、蘭はコナンから話すのを待っていると、平次は言った。
『--1人にしないで』
それは以前、豪華クルーザーのチケットをゲットした時に起きた事件の日に言われた言葉。
(---やっぱ、言うっきゃねーか)
コナンがそう決めた瞬間、近くで『ガチャン』という音が聞こえ、何かと横を見れば、哀がいつもの無表情でーーー拳銃をコナンに向けていた。
咲さんを病室シーンに出そうかとも思ったのですが、やめときました。きっと、二人の会話に彼女は入れない気がするのです。でも多分、あとから彼女は聞く気がするのでモーマンタイです!
ちなみに、咲さんのトラウマスイッチは、『目の前で拳銃で撃たれて倒れる』ことが条件なので、目の前で撃たれた姿目にしなきゃ、すぐ発狂とはならなかったです。夢として出て、発狂はするでしょうが。ちなみに、最大のトリガーは『親しい人』なので、赤の他人が撃たれても反応しません。よほどのお人好しか、もしくは彼女が『自分の所為』と責めるような状況でない限り。
ではでは!