とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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お・ま・た・せ・い・た・し・ま・し・た・!!!

パソコンをようやく買い替え、DVDを新しく買い直し(前までのはパソコン落下と共にお亡くなりになりました)、ようやく!ようやっと!!続きが書けます!!!

…が、瞳の中の暗殺者の続き、思ったより難航しております。まあ、コナンくんと蘭さんがほぼほぼ主人公な映画ですから、仕方ないのですが。

ですので、拙くてもお許しください。私なりに頑張ってはいますので。

それでは!どうぞ!


第26話〜瞳の中の暗殺者・4〜

ホテルでの事件があったその翌日、蘭はMRI検査に掛けられた。勿論、記憶喪失の原因が、急激なストレス以外の可能性を考慮しての検査である。その結果は少し時間が掛かるようで、また風戸から声がかかるのを待つ事となった。

 

その蘭がいる病院に、改めて咲は阿笠博士の保護監督のもとやって来た。勿論、灰原や少年探偵団三人組も一緒にである。ちなみに、この中でちゃんとお見舞いの花を持ってきたのは灰原のみである。

 

そうして改めて蘭と顔を合わせ、記憶がないことを改めて受け入れ、歩が全員の代表として自己紹介を始めた。

 

「私、吉田歩美!小島元太くんに、円谷光彦くん、月泉咲さん、そして灰原哀さん。皆んなコナンくんの友達で、蘭お姉さんを心配してやって来たのよ!」

 

そう膝に花束を乗せたままの蘭に伝えれば、蘭は申し訳なさそうな、でもどこか嬉しそうな笑みでお礼を伝える。

 

「ありがとう。……でも、ごめんね?誰の事も覚えてないの」

 

「そんなぁ!?信じられません!」

 

「あんなに遊んでくれたじゃねえか!」

 

光彦と元太は必死にそう言葉をかける。彼らも、蘭が暇であればショッピングに一緒に連れて行ってくれたり、博士がいない時には変わりの保護者として、公園で一緒に遊んでくれたのを覚えているからこその言葉であるが、やはりその記憶は、今の蘭には全くない。

 

「ワシの事も覚えとらんか?」

 

今度は博士が明るくそう問いかけ、阿笠博士と名を告げる。しかし、蘭の表情は乏しくない。そこでさらに、蘭と密接に関わって来た人物の名を挙げることにした。

 

「ほれ、君の幼馴染で同級生の工藤新一くんの隣に住んでる、天才科学者じゃよ!」

 

「……自分で『天才』と言うことは、つまりは『自称』なんだが…」

 

「シッ」

 

咲の茶々入れに、灰原が静かにするように注意する。そうして蘭の様子を見れば、彼女は大きく目を見開いて反応した。

 

「くどう…しんいち……?」

 

それに希望を持ったのは、本人であるコナンである。彼は、『新一』のことを覚えてるのかと希望を持ちながら問いかければ、蘭はそれに首を横に振って否定する。それを聞き、あからさまに気落ちするコナン。少しの期待が無くなった瞬間である。

 

その時、咲の耳には足音が聞こえた。が、すぐにその足音の持ち主を特定し、彼女は警戒せずに現れるのを待つことにした。

 

……しかし、その持ち主は、自分たちから離れた位置にある木の辺りで、足を止めてしまった。勿論、それに一瞬、首を傾げそうにはなったが、自分たちがいるから気を使ったのだろうと自身の中で納得した。ただし、足音が聞こえず、けれど気配に敏感な『彼女』は違う。すぐに後ろを振り向いた。そんな灰原の様子に疑問を抱くのは勿論コナンである。

 

「どうした?灰原」

 

「…今、誰かがジッと見つめていたような……」

 

「ぇっ!?」

 

そうしてすぐにコナンが確認するが、そんな人影は何処にもない。灰原はそれを気のせいと片付けようとしたが、コナンはそうはいかない。気になったことに対して、彼はとことん追求する。そして、その答えをすぐに提示してくれる咲に、小声で話を振る。

 

「咲……お前、何か音を聞いてないか?」

 

「ん?…あぁ、さっきのか。アレはあの先生だよ。ほら、風戸先生。……多分、彼女の様子を見に来たんじゃないか?けど、私達がいたから気を使ったんだろう」

 

その言葉に、コナンは一応の納得を見せたものの、警戒は解かなかった。

 

その後、子供達と少しの間、話をして、蘭は病室へと戻り、ベッドに横になる。そして、英理がそんな彼女に布団をかけたその時、コナンは扉の前の気配に気付き、振り向いた。しかし、その気配はすぐに扉前からなくなり、その後を追って部屋を慌てて出たが、その姿はもう何処にもなかった。そんなコナンの後を追って小五郎も部屋から出てきた。そんな小五郎に、やはり修斗の推理が当たっていることを伝えれば、すぐに警視庁の目暮へと連絡を入れた。

 

目暮、高木、千葉は電話をしてすぐ、病院へとやってきた。此処からの護衛は高木と千葉が交代である。そして蘭の場所と現在の様子を伝え、目暮達を案内しようとした時、看護婦から風戸が呼んでいると英理は伝えられ、小五郎とコナンと共に風戸の診察室へと入り、MRI検査で撮られた脳の断面図を見せながら説明が始まる。

 

「MRI検査の結果、脳に異常は見当たりませんでした。……やはり、お嬢さんの記憶喪失は、自分を精神的ダメージから救うためのものですね……」

 

「ということは、娘をあのホテルへ連れて行って、事件を再現してみたら、記憶が戻るんじゃ……」

 

小五郎が備え付けのソファへ座り、そう話せば、その隣のソファに座った英理から睨みと怒鳴りが入る。

 

「何を言ってるんですか!!思い出したくない記憶を、無理に思い出させる必要はないわ」

 

その言葉で、2人の言論が始まる。

 

「じゃあなにか!?このまま蘭の記憶が戻らなくてもいいってのか!!?」

 

「あの子を苦しめる様なやり方に反対なの!!」

 

そんなヒートアップした2人を穏やかに仲裁する風戸。勿論、精神科である彼からは、無理に思い出させる様なことをすれば、脳に異常をきたす可能性があることを告げられ、小五郎はどうすれば良いのかと考える。

 

そんな時、プルルッと、電話のコールが室内に鳴り響く。それは、この部屋に置かれた固定電話のコール音。それに気付き、風戸は小五郎達に断りを入れて、電話を取る。その後、2、3言会話をし、誰かに電話をすると相手に伝え、電話を切り、左手で番号を入力し、電話をかけ始めた。それを見ながら、コナンは考える。

 

(もし、修斗さんの言う通り、蘭が犯人の顔を見ているとしたら、一刻も早く記憶を戻して犯人を捕まえなければ危険だ。…だが、先生の言う様に、無理に思い出させるのは禁物……)

 

そこまで考えて、彼は決意する。

 

 

 

 

ーーー自身が、彼女を守る……とーーー

 

 

 

 

 

そこで風戸が電話を切った。どうやら、目的の相手は電話に応答しなかった様子。そこまで理解し、英理は風戸に、ごく自然に記憶を思い出せる方法はないかと問いかければ、風戸は少し考えて、一般的な方法として、リラックスした状態の際、フッと思い出す事が多いことを告げる。そこまで聞き、英理もまた、ある事を決めた。

 

「分かりました……蘭が退院したら、私も事務所に住むわ」

 

「なにぃ!?」

 

「その方が蘭の世話も出来るし、あの子もリラックス出来ると思うの」

 

「冗談じゃねぇ!!俺の方がストレス溜まっちまうよ!!」

 

そんな小五郎の言葉に、英理は鋭く切れ込みを入れる。

 

「貴方がどうなろうと関係ないわ。全ては蘭のため。……いいわね?」

 

その英理の気迫に小五郎は拒否しきれず押し黙り、その後の結果が分かりきってしまったコナンは、小五郎以上に顔を青ざめさせた。

 

 

 

 

 

「ーーー修斗。1件目と2件目の事件の時、お前、何処にいた?」

 

その日の夜の北星家。いつも通りの父母がいないディナーをし、食べ終わった後のそれぞれの時間。修斗は本を読むために書斎へと入ったその直後、彰も書斎へと入り、修斗が訝しげな面を見せたと同時に、彰が問い掛けるーーー彼への、アリバイ確認だ。

 

「……1件目も、2件目も、3件目と同じ犯人だって断定されたんじゃないのか?」

 

「いや、模倣犯の可能性も、まだ捨てきれていない」

 

「……それ、兄貴が俺にアリバイ聞くために考えついた戯言じゃないよな?」

 

「……お前から見て、俺が嘘を吐いた…と?」

 

「……いや、ねえな」

 

彰の言葉に修斗は納得し、腕を組みながら答える。

 

「1件目の時は俺は仕事中だ。なんなら監視カメラでも確認すればいい。親父には事件性の有無の確認とでも言っとけば、面倒でも反対しないだろ……いや、切り捨てる可能性も無きにしも非ず、だな」

 

そこで思考が別方向へと行きかけたが、彰の顔を見て、元の道へと思考を修整させる。

 

「2件目に関しては、既に部屋にいたな……これに関しちゃ、アリバイはない。だが、監視カメラ上には、俺が出ていく様な怪しげな姿はないと断言できる……夢遊病でも患ってない限り」

 

そこでまたもや思考が別方向へと行きかけた。そして彰はそんな修斗の思考を止めない。彼は彼で、修斗が一応、1件目と3件目に犯行不可能と判断でき、少しだけ安心したのだ。……勿論、何かの間違いで修斗が犯罪を犯した際、たとえ捜査権がなくなったとしても、最終的には自身が取り押さえたいと思っている。

 

「……それで、やっぱり俺が『左利き』だからこそ、被疑者入りしたってとこか?」

 

修斗が元の路線へと思考を戻し問いかければ、彰はそれに頷き返す。しかし、まだ『2件目』はまだ疑いは晴れていない為、完全な解放ではない。そう伝えた方がいいかと彰は話そうとし、やめる。修斗なら言わなくとも理解してると断言出来たからだ。

 

「……だが、良かった」

 

「……」

 

修斗は考えるーー今、ここで犯人を密告すれば、この事件はたやすく収まる。しかし、修斗の立ち位置上、それは効果が薄くなる。せめて、彼自身が『被疑者入り』してなければ無問題だった案件だ。

 

(……まあどちらにしろ面倒だし、それは兄貴の仕事であって、俺がしないといけない仕事じゃない)

 

修斗はそう己の中で決めると、助言はせず、その日はそこで解散となった。

 

 

 

 

 

2日後、蘭の退院が決まり、高木が護衛として毛利家と一緒に行く事にした。そして病院から離れる際、風戸からもう一度、無理に思い出さない様に注意され、少しでも記憶が戻れば連絡して欲しいと英理と小五郎に話し、彼は看護婦を連れて病院内へと入っていく。それを見送り、雨の中を車で走り、家ーーー喫茶ポアロの上ーーーの前へとたどり着く。

 

雨が降っている為、英理が先に車から降り、傘を翳して入る様に促した途端、蘭が怯えた様な表情を浮かべ、車の中で自身の体を抱き込み、震えだす。

 

「……どうしたの?蘭」

 

そんな蘭の様子を不審に思い、英理が問い掛けるも、蘭は怯えて言葉を発さない。そんな蘭の様子を見て、小五郎は辺りを確認し、原因と思わしきものーー水溜りを発見し、佐藤の時にも水がかなり溜まっていた為、それが原因だろうと推測を話し、車を運転していた高木にもう少し前に出す様に頼んだ。この時、小五郎の頭の中に、修斗が説明した傘の件は、すっかり頭から出て行ってしまっていた。そうして家の中の構造、用品を説明する。その説明を聞くも、蘭は懐かしさはない様で、物珍しげに部屋を観察するばかり。それは自身の部屋と示された所でも同じだが、一つだけーー自分ともう1人、男が共に写った写真に反応を示した。彼女はその写真を興味深げに見つめていれば、小五郎は嫌そうに話す。

 

「そいつは工藤新一といってな、オメーの事を誑かそうとしているトンデモねー野郎だ!」

 

そう言って写真立てを伏せた。勿論、その説明に本人であるコナンが不満を抱かない訳もなく、内心で小五郎へと不満をぶつける。

 

そして次に興味を示したのは、空手の道着である。それを見て、コナンはここぞとばかりに声をあげる。

 

「蘭姉ちゃん、空手をやってたんだよー!」

 

「私が…空手を……?」

 

「高校の都大会で優勝したのよ!……覚えてない?」

 

英理が期待を込めてそう問い掛けるが、蘭は首を横に振った。その反応に小五郎と英理が気落ちすれば、それをすぐに察知し、他人行儀ながらもそのうち全部思い出すと、希望を灯す。その言葉にのり、小五郎が退院祝いと称して何か美味しいものを食べようと提案すれば、英理が久し振りに手料理を作ると張り切りだした。それに顔を青ざめさせ、凍り付くのは、勿論男2人であり、料理下手の自覚がない英理は、2人の反応に不思議そうな表情を浮かべる。

 

「あら、どうしたの?2人とも」

 

「お、おま、おまえの、りりりょ…!?」

 

「あ、だ、だったら僕の分はい、いらないよ!お、おなか空いてないから…」

 

「あら、遠慮しなくていいのよ?コナンくん。叔母さんが腕によりを掛けて、ほっぺが落ちそうな美味しいビーフシチューを食べさせてあげるから!」

 

(ゲッ、それ最悪……)

 

そんな2人の会話の隙に、部屋からユックリと出て行こうとする小五郎。しかし、2人はすぐに気付き、英理が声を掛ける。

 

「あら?どこ行くの貴方?」

 

「あ、ああああいや、こ、こんや近所の奴らと、麻雀の約束をしていたのをすっかり忘れてよ…」

 

「娘がこんな時に、麻雀なんてやってる場合じゃないでしょ!?……それとも、なーに?私の料理が食べられないっていうの?」

 

そんな三人の様子に、遂に蘭はくすくすと笑いだし、それを見て、部屋の空気は明るくなり、コナンもそれに希望を見出した。

 

(よかった。蘭のやつ、思ったより明るいぞ!これなら思ったより早く記憶が戻るかもしれないぞ!」

 

しかし、その日の夜、彼は見てしまった。ーーー淡い月明かりで照らされた彼女の部屋で、窓辺に座って顔を俯かせる、彼女の姿を。

 

(…蘭……)

 

そんな姿を目の当たりにしてーーーコナンはそっと、扉を閉じた。

 

 

 

 

 

その次の日の朝から、高木に聞いたらしい少年探偵団三名が蘭のボディガードを買って出た。勿論、高木から、蘭が犯人に狙われている可能性も聞いている。そこで高木の顔を見れば、高木は済まなそうに頭を掻いていた。

 

「私達、少年探偵団で蘭お姉さんを守ることに決めました!」

 

「名付けて!」

 

『蘭姉ちゃんを守り隊!!』

 

三人がカッコよくポーズを決めて宣言すれば、コナンは肩から力が抜け、呆れ顔。さはんなコナンをよそに、彼らは自身の装備を見せ始めた。

 

「俺は唐辛子入りの水鉄砲を持ってきた!!」

 

「僕はブーメランです!」

 

「私は手錠よ!!」

 

そんな三人の武器を目にし、コナンは注意するために声を上げる。

 

「おいお前ら、そんな子供のおもちゃでーーー」

 

しかし、そんなコナンの言葉を、何よりも彼が大事にしている存在が遮る。

 

「ありがとう、皆んな。とっても心強いわ」

 

蘭からの本心からの言葉に、子供達三人組は嬉しそうな表情を浮かべ、さらにやる気を出した。そして、蘭からのお礼ということで、冷たい飲み物を貰うことになり、蘭と子供達は先に事務所へと上がって行く。

 

そんな子供たちに呆れと疲れを乗せた顔で見送ったコナンに、咲は同情の視線を向け、灰原はどこか皮肉めいた笑みを浮かべる。

 

「まだ彼女、何も思い出さないの?」

 

「ああ……」

 

「このまま、記憶が戻らない方が、工藤くんにとって都合がいいんじゃない?」

 

その言葉に、コナンは目を丸くする。そんなコナンの様子を見ながら、灰原は続ける。

 

「もう正体がバレるのを心配する必要もなくなるわけだし」

 

灰原がどこか悪どい笑みを浮かべてそう言えば、咲は溜息を吐き、コナンは灰原の肩を勢いよく掴む。

 

「なんだと!?テメー!!」

 

「私だってっ……私だって…出来れば記憶を失くしたいわよ」

 

その灰原の言葉に、コナンも、そして今度は咲も、目を見開く。その言葉はどこか、本心のように感じられたからだ。

 

「お姉ちゃんが殺されたことや、組織の一員になって毒薬を作ってたことも……。みんな忘れて、ただの小学生の『灰原哀』になれたら、どんなにいいか……」

 

灰原はずっと、コナン達から目を逸らしたまま、静かに語り続ける。それが、彼女の本心なのかと、咲は気付かなかった自分を情けなく思い始めていた。

 

「そして、あなたとずぅっと……」

 

哀愁を漂わせて語る灰原。そんな灰原の言葉に、コナンは緊張を顔に出して、灰原の言葉の先を待つ。

 

「ずっと、このまま……」

 

(灰原、お前……)

 

そしてコナンの頬が少し赤みを帯びたとき、灰原の憂いた顔に、ニヤリと意地悪い笑みが浮かび、咲はその瞬間に、これは彼女の掌の上だったことを悟った。

 

「なーんてね。少しは元気でた?」

 

そんな灰原の言葉に、どっと体から力が抜けたコナンの肩から、服が少しずり落ちた。

 

その時、ピチチチッと鳥の鳴き声が聞こえ、三人が思わず空に顔を仰げば、素早く飛んで行く小さな黒い鳥が飛んでいた。その正体は、直ぐに『燕』であることを知り、コナンは顔を灰原の方に戻した。しかしその時、咲の顔を見てギョッとする。

 

なぜならーーー彼女が涙を、流していたからだ。

 

「さ、咲?オメー、どうした?」

 

「……?何がだ?」

 

「……気づいてねーのか?というか、『燕』に何か、嫌な思い出とか、悲しい思い出でもあるのか?」

 

「……いや、特にないと思うが…」

 

コナンが渡したハンカチを恐る恐る受け取り、涙を拭いながらも彼女は首を傾げる。その瞬間、灰原が何か驚いたような表情を浮かべ、咲に顔を向ける。

 

「……ねえ、咲。貴方に聞いておきたいことがあるのだけど」

 

「ん?今か?……で、なんだ?」

 

「貴方…『燕』さんを、覚えてる?」

 

灰原がそう心配そうに問いかければーーー彼女は、不思議そうに首を傾げる。

 

「…哀。……『燕』とは誰だ?」

 

「………」

 

その言葉を聞き、哀は泣きそうに顔を歪め、そんな哀を見て、咲はさらに不思議そうにし、コナンは新たな組織の一員の名を聞き、体と顔を強張らせた。ーーーしかし、そんな空気は壊される。

 

「はーい!おチビちゃん!」

 

その声に、咲は普段通りに誰かを知りつつも後ろを振り向き、コナンもコナンでその声を聞いて力が抜けたからか、少し呆れ顔で振り向いた。哀もまた、危なく涙を零しそうになり、それを少しハンカチで拭うと、振り向いた。

 

「……あら?どっちかがあんたのガールフレンド?それとも、ガキンチョの取り合い中?」

 

(はは、またウルセーのが来た……)

 

そのまま声の主である園子も連れて事務所へと入れば、先に入っていた子供達三人がカキ氷を食べているのが見えた。そのまま哀、咲にもそれぞれ、メロン、イチゴ味のシロップがかけられ、2人ともそれぞれのカキ氷を味わい始める。そんななかで始まる園子が持ってきたアルバム閲覧会。蘭はゆっくりとアルバムを捲っていく。そして、都大会の試合のシーンらしく、相手に勇ましいキックを向ける蘭。優勝トロフィーを持ち、園子と共に写真に収まっている蘭。それらを見ても、彼女の中での記憶は埋まったまま、出てこない。そして次のページを捲れば、一番上にあるのは、蘭、園子、そして昨日の写真にも写っていた『工藤新一』三人が集まった記念写真だった。

 

「この人……」

 

「ああ、工藤くんね!アンタの旦那!」

 

(旦那じゃねーって!)

 

コナンが内心で園子へと不満をぶつける。勿論、園子は気付かない。

 

その時、蘭がフッと笑みを浮かべる。それを見逃さない哀と咲。2人は目を見張った。

 

「……お前、まさか…」

 

「…見覚え、あるみたいね」

 

その言葉に、園子とコナンが驚き、本当なのかと蘭に問いかけるが、蘭は首を横に振るが、すぐに「でも……」と続いた。その続きを促せば、彼女は、どこか懐かしそうな笑みを浮かべていた。

 

「どこか、懐かしい気持ちがするの。どうしてたが分からないけど……」

 

それにコナンはまた目を見張る。そんなコナンを他所に、無邪気な子供達は、『工藤新一』に会えば思い出すのではないかと言い始め、元太は連れて来いという。勿論、連れてくるどころか、本人は小さくなってその場にいる。しかし、哀と咲以外、その場の誰も、その事は知らない。

 

「そう言えば、高校生探偵で、難事件をいくつも解決してるんでしたね!」

 

「たくっ、アイツ……蘭が大変だって時に、一体どこほっつき歩いてるんだか……」

 

そんな園子の言葉を右から左に流しながら、コナンは険しい表情で窓の外を眺めていた。

 

そしてその夜、千葉が交替で見張りをしていたが、そんな千葉は事務所しか見ていなかった為に、車の後ろで同じく事務所を見上げていた『友成真』がいることも、千葉を見つけて、顔を隠しながら去っていくその姿も、見ていなかった。

 

そんな事務所の中では、蘭が自室で、自身と仲が良さそうに写っている『工藤新一』をジッと見ている。それでも、時は進み、コナンが蘭に入浴が次であることを告げれば、それに蘭は礼を返すが、それと同時にコナンに問い掛ける。

 

「ねえ、コナンくん?『工藤新一』ってどんな人?」

 

それにコナンは一瞬、驚き、目をパチクリとさせ、少しして、頬を赤く染め、首に掛けていたタオルを握った。

 

「どんな人って……た、多分、蘭姉ちゃんのことを一番に考えていて、でも、そういう気持ちを素直に言えない人だと思うよ?」

 

コナンの言葉に、蘭はさらに笑みを浮かべる。

 

「……会ってみたいなぁ、その人に」

 

そんな蘭を見つめるコナン。けれどすぐに、その後ろから英理が現れ、蘭を銀座に誘った。どうやら、小五郎と共に居すぎて、ストレスが溜まっており、その発散としてパーっと買い物をしようと誘ったようだ。勿論、その場にいたコナンも誘った。それにコナンは頷いた。

 

そして迎えた翌日の午前10時頃、米花駅。コナンたち3人は、駅のホームで電車を待っていた。そんな3人の後ろでは、高木が周りを警戒している。そんな高木の後ろで別の電車が到着し、何人もの乗客が降りてきた。その中の1人である女性が、後ろの客に押されたのか小さく声を上げ、高木の目の前で倒れ掛けた。勿論、それに気付かないわけもなく、高木はその女性を反射的に支えた。

 

「おっと…大丈夫ですか?……っ!?」

 

しかしその瞬間、高木の頭の中で、事件時、大量の血を流して倒れていた佐藤の姿がフラッシュバックし、彼はその時の情けない自分に怒りを露わにした。

 

そんな怒りがーーー彼の視界を、思考を、狭めてしまった。

 

蘭たちの目的とする電車がプラットホームにやって来た、その瞬間。

 

コナン、そして英理の目の前でーーー蘭が、ホームから勢いよく落下した。

 

電車はブレーキを掛けていたが、蘭が落ちて倒れた場所では、到底止まれるわけもなく、このままでは彼女はーーー。

 

「蘭ッ!!!」

 

直ぐにコナンがホームへと降り立ち、彼女の体を起こし、その勢いのままホーム下の空間に、彼女ごと体を滑り込ませた。

 

「ラーーーーーン!!!」

 

英理のそんな悲鳴は、電車のブレーキ音で掻き消されてしまう。勿論、英理が知らないことであるとは言え、コナンと蘭はホーム下の空間にいる為、ギリギリではあったが、引かれることなく無事である。

 

 

 

 

 

ーーーこうして、その日の最高の休日は、最悪の出来事と共に、最悪の休日となって、病院行きと共に終わりを告げた。




そういえば、私、今日(投稿時間的に昨日)、コナンの映画を見てきました!!

予告の時は、安室さんが敵かもしれないと言われ、これは咲さんも敵になるフラグか!?とちょっと内心でビクビクしてました。勿論、咲さんは私の心の中にいてもらって、純粋に楽しんできました。

まあ、感想としてはアレですね。



安室さん好きには堪らない映画ですね!!!



何ですかアレ!!?カッコイイし、普通に笑顔は可愛いし(童顔だからかな?)、見てる最中、内心で私は荒ぶってましたよ!!!何だ口元がニヤニヤしたか!!!

これはDVDが待ち切れませんな!!!

それでは!さようなら〜!

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