とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

46 / 83
第24話〜黒の組織との再会・コナン編〜

全員の視線が、シャンデリアの下敷きとなった呑口を見て、茫然自失の者や、事態を飲み込めずにいる者で溢れていた。そんな中、シャンデリアの近くにいた大学教授『俵 芳治』は、そのシャンデリアを見つめ、茫然自失となっていた。

 

「しゃ、シャンデリアが……」

 

そんな中、司会を務めていた麦倉が人の輪を掻き分けてやってくる。

 

「どうしましたか?」

 

麦倉がそう聞き、人の波を掻き分けて出てきたその時、シャンデリアと、その下から出ている人の手と血溜まりにようやく気づき、驚きで一歩下がってしまう。

 

「こ、これは!?」

 

また、俵と同じく、シャンデリアの近くにいたアメリカの女優『クリス・ヴィンヤード』も事態を飲み込めず、翻訳者に困惑した様子で問い掛ける。

 

What's happening?(一体、何が起こったの?)

 

I don't know…….(いや、私にも何が何だか……)

 

また、他の著名人達も、事態を飲み込めず、困惑していた。

 

「な、何があったのかね?」

 

「さあ……」

 

「一体、なんですの!?」

 

「おい、誰か説明してくれないか?」

 

白髪で高齢にあたる自動車メーカーの会長『桝山 憲三』、三瓶、南条、樽見の声が届いたのか、扉の前に陣取っていた刑事の指揮を取っていた目暮が、騒めく客達に静かにするように言い、刑事だと紹介をする。それに対し、三瓶は刑事にしてはやけに来るのが早いと皮肉を言えば、それに目暮が通報があったのだと説明する。それは勿論、コナンが声を変えて伝えた通報で、今夜、このパーティーで殺人が起こるという旨の通報だった。その説明をすれば、周りは更に騒めき始めた。そんな中でも刑事達は冷静にシャンデリアを退ける。そうなれば遺体は容赦も情けもなく客達の前にその悲惨な様子を見せることとなり、騒めきが一気に悲鳴へと変わる。それでも誰もパニックとなり、出ていく様子がないのは、一重に刑事という存在があったからだろう。

 

「どうだね?高木くん」

 

「駄目ですね。もう息はありません」

 

「そうか……直ぐに、署に連絡してくれ」

 

「はい」

 

そんな中でも、コナン、哀、咲は冷静で、周りの人物達を観察していた。

 

(犯人は奴だ。俺の体を小さくしやがった、黒ずくめの男達の仲間……コードネーム、ピスコ。奴はまだこの会場内にいる)

 

その間も、刑事達は聞き込みを始めていた。目暮が担当したのは、呑口の近くにいたクリス、俵。その2人に、まず不審な人物はいなかったかを聞くが、俵はそれどころではなかったと言う。彼は一歩間違えれば巻き込まれ、呑口と共に死んでいた可能性もあったと言い、その際、シャンデリアのガラスが掠め、背広の肩付近に擦り傷を負っていた。そして、もう1人であるクラスには、英語が出来る刑事を通して話を聞けば、不審な人物は見ていないと返される。それに考え込もうとした目暮に、背後から事故だと言われ、振り返れば、其処に樽見がいた。彼は、シャンデリアの鎖が古くなって切れてしまい、偶然にも下にいた呑口が死んだのだと冷たく言えば、それに桝山が疑問を呈する。

 

「じゃが、殺人を示唆する通報があったんじゃろ?それはどうするんだね。我々を散策する前に、まずは通報者の事を詳しく教えて欲しいもんじゃ」

 

桝山はその通報者が犯人かもしれないと言えば、目暮はそれに、声を機械で変えていた為に、男女の区別もつかなかったと言えば、それに麦倉は悪戯だと言う。呑口が収賄の件で世間的に反感を買っていた事を言えば、それに三瓶も賛成する。その悪戯に、偶然にも事故が重なってしまっただけの事だと言う。彼は天罰だとも言ってのけ、死者が出たにも関わらず、空気も読まずに炒飯を食べてみせた。勿論、それに樽見が皮肉を言えば、三瓶は樽見に黙るよう言い、また一口食べる。その瞬間、口から何かを吐き出し、シェフを呼ぶように叫んだ。それに気付いたコナンが、目暮達の目を避ける為に、テーブル下から手を伸ばし、それをハンカチで包み、手に入れた。その後、直ぐに2人と合流し、ハンカチの中身を見てみれば、それはシャンデリアの鎖の破片だった。それが何故、炒飯の中にあったのかと疑問を感じるが、話が進んでおり、南条がもし、呑口の死の原因が殺人であれば、シャンデリアの鎖に手を加え、会場が暗くなったその瞬間、シャンデリアの下に連れて行き、仕掛けを作動するしかないと言う。しかし、そんな仕掛けはシャンデリアにも、鎖にもそれらしいものはないと言う。だからこそ、殺人は不可能だと言い、さっさと解放するように威圧的に言うが、目暮は納得しない。その話を聞いていたコナンもまた、その方法が何なのかと考え込もうとしたその時、哀に手を掴まれる。それに驚くが、哀はその手を引き、歩き出した。その隣には、手は引かれてはいないものの、咲もいた。

 

「お、おい!?どこ行くんだよ!」

 

「逃げるに決まってるだろ」

 

「はあ?」

 

「このまま此処に留まって、無意味に時間を浪費するのは危険だわ。それに、もし目暮警部達に見つかったら、私達が此処にいる理由を、どう説明する気?」

 

「手掛かりは、さっきお前が拾ったあの鎖の破片のみ。いくらお前でも、アレだけじゃ、犯人を割り出すことなんて、不可能だろ」

 

そこでコナンは哀の手を払い、ニヤリと笑う。

 

「『二つ』ならどうだ?」

 

「……なんだと?」

 

「落ちてきたんだよ。シャンデリアが落下した後、灯りが点く前に……このハンカチが」

 

そう言って彼が見せたのは、紫色のハンカチ。

 

「それがなんだって言うのよ。犯人の名前が書いてあるわけでもあるまいし」

 

「……ああ、なるほど。持ち主を探すのか」

 

「……咲、どういうこと?」

 

「コナンが持っているそのハンカチには、このパーティーの名前が書いてある。つまり、此処で配られたものだと予想がつくが、他の客達の持つハンカチはそれぞれ色が違う」

 

「そう。色が違うのは、酒巻監督の代表作、『七色のハンカチ』から来てるんだろう。つまり、受付の人にこのハンカチを渡した人物を聞けば、ある程度、絞り込めるって訳だ」

 

「でも、それは本当に、あの殺人に関係してる物かどうかなんて……」

 

「ああ。まだ何に使ったかも、犯人のものかさえも分からねーが、事件に関係してる可能性は、0じゃない。……だろ?」

 

それに目を見開き、哀は一つ溜息を吐くと、コナンに付き合う事を決めた。咲はコナンが二つ目を出した時点で付き合う事を決めた為、何も言わずにコナンについて行く。その際、扉の前に刑事達がいた為、コナンがフードを被り、トイレに行っても良いかと問い掛ければ、刑事の1人が扉を開ける。その瞬間、外の報道陣達のカメラのフラッシュを浴びせられ、質問責めの嵐が会場内に響き渡る。そのフラッシュの眩しさで、哀、咲が腕で顔を隠す様な仕草をする。しかし、そこでコナンがその腕を取り、走り出した瞬間、咲のフードが取れてしまった。しかし、それを気にせず、報道陣の合間を縫って飛び出し、目的の受付嬢達にハンカチの事を問い掛ける。その際、持ってない人に渡す事も伝えれば、受付嬢は教えてくれると言い、その名前を見せて貰えば、そこには先程の7人の名前が書かれていた。それにニヤリと笑ったその瞬間、報道陣の1人が叫ぶ。

 

「おい、出てくるぞ!!」

 

そこで目を扉に向けたその瞬間、大勢の客達が出てきた。

 

「くっそ、一旦、博士の車に戻るぞ!灰原、咲!」

 

そこでコナンが振り向けば、其処に、咲と哀の姿はどこにもなかった。

 

「くっそ!おい灰原!咲!返事しろ!」

 

其処から少し離れた所にいた哀が、コナンに手を伸ばす。しかし、哀は誰かにその小さな体を抱きき抱えられ、ハンカチを当てられ、眠りにつく。その瞬間、咲がその姿を見つけ、思わず叫ぶ。

 

「っ!哀!?」

 

其処で咲も存在を気付かれ、まずいと目を見開き、一度逃げようと後ろを向くが既に遅く、その体もまた抱き抱えられ、暴れる咲を物ともせずに口にハンカチが当てられる。

 

(っ!まずい、クロロホルム、を……)

 

そこで遂に薬が効き、同じく眠りについた咲は、連れ去られてしまった。

 

***

 

ーー優。

 

彼女の名が、呼ばれる。優が薄く目を開ければ、其処には、全体像が白い人物がいた。目の当たりのみ、青い人物が。

 

ーー優、起きろ。

 

「……だれ、だ?」

 

「おいおい、寝ぼけてるのか?」

 

そこで漸く、目の前が鮮明となり、優の目が見開く。そこには、嘗て、自身が依存した人物が、いたのだから。

 

「……な、なんで……」

 

「なんでって、俺が研究所から帰ってきたら、何故かソファで猫のように丸まったお前が寝てたから、起こしたんだけど?」

 

「……夢?」

 

「やっぱり寝ぼけてるだろ。デコピンするぞー?」

 

「……痛いからやめてくれ」

 

「デコピンぐらいい良いだろ〜?まあ、仕方ない。約束は守るって言ったしな〜」

 

そこで男は離れて行く。行き先は台所。それを見て、優は頭を抑える。

 

(今までのは、長い夢だったのか?……いや、それにしては、現実味が……)

 

その瞬間、優の意識が遠ざかり始めた。それに気付けば、優は、逆に慌て始める。

 

「っ!ま、待ってくれ!夢でも……夢でも良い!私は、お前に……あの人に、言いたいことがっ!」

 

しかし、既にその男の姿はなく、聞き覚えのある声が自身の名を呼ぶ声が聞こえ始め、もう一度、名を呼ばれた時、目を覚ました。

 

「……コナン?」

 

『咲!?咲か!?灰原はどこにいる!?』

 

「哀?哀は……」

 

そこで彼女が寝ていた横に目を向ければ、そこに彼女は眠っていた。

 

「……哀なら、寝てるようだ。拐われた際、クロロホルムを嗅がされていたから、その影響だろう」

 

『なら起こせよ!!』

 

「わ、分かった……哀。おい、哀」

 

『灰原!灰原!!返事しろ、灰原!!!』

 

コナンの大声がどうやら彼女の夢の中にも響き渡っていたようで、彼女の目が勢いよく開かれる。その際、その大声で咲の耳がやられていたが、そんな事などコナンは気にしていられない。

 

「工藤、くん?……どこ?」

 

『ホテルの前の博士の車の中だ!眼鏡に仕込んであるマイクとスピーカーを通して、交信してるんだ!』

 

「私達、どうしたの?」

 

『そりゃこっちの台詞だ!!会場前の廊下で何があったんだ!!』

 

「会場前……?ああ、あの時、私、人の波に飲まれて、貴方と咲と逸れて……そうしたら、誰かが後ろから……っ!」

 

そこでようやく事態が飲み込めた哀が、部屋の中を見る。コナンは哀がそんな事してるなどとは知らないものの、咲が先程、クロロホルムの名前を言った為、眠らされたことを把握していた。

 

「……誰かに攫われ、酒蔵にいるみたいだな」

 

「ええ、そうね」

 

『おい、誰かって……まさかっ!?』

 

「ええ。恐らく、警察の監視下にあったあの会場で、殺人をやってのけた組織の一員……ピスコ」

 

『なんだと!?まさか……いるんじゃねーだろうな?そいつが側に』

 

「いや、部屋の中には私達2人以外、誰もいない」

 

「部屋には、しっかりと鍵が掛けられてるけどね」

 

哀がそう言いながら鍵を確認する。そうしてもう一度部屋の中を見る。構造は確かに酒蔵だが、その部屋の中には暖炉も作られており、中には荷物用のダンボール箱とゴミ袋一袋、ダンボール箱の中に入っている新品らしい清掃員の服が一枚、ゴミ袋の中に入ってるボロボロのツナギが複数枚。哀はこれらを見て、もともと用意していたダンボール箱に2人を入れ、清掃員の服を着て、ここに連れてきたのだろうと言う。ゴミ袋の件に関して言えば、ホテル側が本当に勘違いし、このツナギを捨てるように指示したのだろうと言う。

 

「どうやら、あの会場で議員を殺しそびれた場合、トイレで殺害して、此処に運ぶつもりだったんじゃないかしら?」

 

『まあいい。取り敢えず、その酒蔵からの脱出方法を早く見つけて、何か手を打たねーと!』

 

そこで2人はアイコンタクトを取り、頷き合い、哀がマイクを通して話始める。

 

「いい?工藤くん。よーく聞いてね。私達の体を幼児化した、APTX4869の『アポト』は、『アポトーシス』……つまり、プログラム細胞死のこと。そう、細胞は自らを殺す機能を持っていて、それを抑制するシグナルによって製造してるってわけ」

 

『おい、灰原?』

 

「ただ、この薬は、アポトシースを誘導するだけじゃなく、テロメアザ活性も持っていて、細胞の増殖能力を高め……」

 

『やめろ灰原!!ンなこと、お前らがそこから脱出したら、幾らでも聞いてやっから!!』

 

「いいから!!黙って聞きなさいよ!!……もう2度と、もう2度と貴方と言葉を交わすことなんて、ないんだから」

 

その言葉にコナンが一瞬、息を飲む声が、咲に聞こえた。

 

『なにっ?』

 

「分からないの?彼らは、私達のこの幼児化した姿にも関わらず、私達を此処に監禁したのよ?……例え、此処から脱出出来たとしても、2日も経たないうちに、彼等は私達を見つけるわ。そうなれば、彼等は私達を匿っていた博士や、北星家の人は勿論、私達に関わった人達も、秘密保持のために、1人残らず抹消するでしょうね」

 

そこで哀が悲しそうな表情を浮かべ、例え逃げだせたとしても、死んだとしても、コナン達に会えない状況に陥ってしまったのだと言う。そこで哀はパソコンを見つけ、パソコンに近付いた。

 

「だから、私が生きている間に、私が知ってる薬の情報を、貴方に教えるわ」

 

そう言って、パソコンの電源をつければ、博士がパソコン上に出てくる。

 

《ジャジャーン!博士の大冒険・2!》

 

その声はどうやらコナンにも聞こえたようで、彼の戸惑ったような声が聞こえてきた。彼はそれは何かと問いかけてきたため、哀は学校で、光彦から返してもらった博士のゲームだと説明する。どうやら、組織の人間は、そのMOを調べていたらしい。その画面を消し、携帯がパソコンとケーブルで繋がっているのを確認し、調べてみれば、そこにはパソコン上にSHERRYの顔写真が写っていた。更にそこから履歴を探れば、KATZの顔写真まで出てきた。その顔写真には、黒く長いストレートの髪で、黒いハイネックを着ている無愛想な女性が写っている。

 

『おい、お前ら、縛られてねーのか?』

 

「だから急いでるんじゃないの。彼等が長時間、私達を縛りもしないで放って置くわけがないでしょ?特に咲は、殺しの方法を得ている。彼女も縛られてないけど、放っておける存在ではないでしょう?」

 

『いや、奴は当分、戻って来れねーよ』

 

その一言に、2人して驚き、目を見開く。コナン曰く、2人がいなくなった後、急いで目暮に連絡し、紫色のハンカチをもらった7人を、杯戸シティホテルから一歩も出さないように言ったという。それも、工藤新一の声を使ったという。

 

『お前らが拘束されてないことと、携帯に繋ぎっぱなしのパソコンの状態からすると、恐らくお前らを監禁した奴は、何かの目的でちょっとだけホテルから出ようとした所を、出口で刑事に止められ、事情聴取を受けてるんだ。しかも、奴は今、外部との連絡が取れないでいる可能性が高い。お前らがいなくなってから、既に1時間近く経っているのに、奴はおろか、奴の仲間も其処に来てねーなんて、考えられねーからな。……いるんだよ、俺が考えた通り、あの7人の中に、暗殺を成し遂げてお前らを其処に監禁した、ピスコって奴がな』

 

そのコナンの説明を聞き、哀達は自身が監禁されている場所が、杯戸シティホテルの中なのかと聞けば、彼からは多分そうだと肯定される。コナンはそこで、仲間がこの監禁場所に来る前に、犯人を上げ、警察に突き出す事が出来れば、2人の身の安全は保障されたままとなると言う。

 

『警部があの7人を留められるのは、せいぜい後1時間。とりあえず、俺はホテルの従業員に、あんまり使用されていない酒蔵の場所を聞いて、直ぐに助けに行ってやるよ。女の子達が閉じ込められてるって言えば……』

 

「馬鹿ね、言ったでしょ?私達に関わった人がどうなってしまうのか。……知らないわよ?私達の逃亡を手助けした、その従業員が後でどうなるか」

 

『じゃあ自力でなんとかそこから脱出する方法を見つけろよ!!俺はその間に、あの7人の中からピスコを割り出すから!』

 

「……咲、何か思いつく?」

 

「まあ、暖炉があるから、此処から登っていけば、出れないこともないが……子供の姿じゃな」

 

「咲の声は聞こえた?無理そうよ」

 

『ロープかなんか、ないのかよ!』

 

「さあ、酒蔵にロープなんてあるかしら……」

 

「一通り見て回ってもいいが、ないと思うぞ」

 

『……酒蔵ってことは、いろんな酒が置いてあるのか?』

 

「ええ。古くなって使われなくなった部屋に、世界中のお酒を詰め込んで、酒蔵にしたって感じね」

 

『そこに白乾児ってあるか?』

 

「白乾児?」

 

「なんで中国のキツイ酒なんて聞くんだ?」

 

『いいから、探して見てくれ』

 

「さあ、あるかしら?」

 

「仕方ない。二手に分かれよう私は右を行くから、哀は左を見てくれ」

 

「分かったわ」

 

そうして分かれて探し始めるが、咲が探しているところに、白乾児は見つからず、咲は溜息を吐いた。

 

(これは、哀の方にあるかもしれないな。……ああ、もう。さっきから体が重い……熱が上がったな、これは)

 

その時、哀から白乾児があったと声を掛けられ、何故か飲むように指示される。咲がそこで首を傾げれば、コナンから飲むように言われたと言われ、仕方なさそうに白乾児を飲んだ。しかし、飲んだ後、2人して逆に体調が悪くなり、顔色の悪さが全面的に出される状態となっていた。

 

「おいおい、これでどうやって私達を脱出させるんだ?奴らに病院にでも連れて行くように仕向けるつもりか?」

 

「あら、そんな優しい人間がピスコなら、私達は閉じ込められなかったんじゃない?」

 

「広大な砂漠から小さな金を見つけるような確率だが、信じるか?」

 

「あら、素敵な確率ね。遠慮するわ。……ねえ、『エルキュール・ポアロ』の綴りって、分かる?」

 

「いや、私は知らん」

 

咲がそう答えれば、今度はコナンに同じ問いを投げかける。そこでコナンからちゃんと飲んだのか問われ、飲んだことを言えば、彼はその綴りを答えてくれる。

 

『HERCULE POIROTだけど、こんなこと聞いてどうすんだよ?』

 

「組織のコンピューターから、あの薬のデータを、博士のMOに落とそうと思ったんだけど、パスワードに引っかかって……ダメだわ、ポアロでも開かない」

 

『パスワードがポアロってどう言うことだ?』

 

「試作段階のあの薬を、組織がたまにこう言っていたのよ。シリアルナンバーの4869を文字って『シャーロック』……『出来損ないの名探偵』ってね。だから思いついた名探偵の名前を手当たり次第に入れてるんだけど、そんなに簡単にはいかないようね」

 

2人の具合はさらに悪くなっており、頭痛まで始まっていた。哀は説明している間もその痛みに耐えるように、頭を軽く振っていたのだが、コナンはそんなこと知らずに、彼が思いついた名前を告げる。

 

『シェリング・フォード。綴りはSHERRING FORD』

 

「そんな探偵いた?」

 

『いいから、入れてみろ』

 

そこで言われた通り、綴りを入れ、エンターキーを押せば、パスワードは解除され、APTX4869の情報が開示される。それに驚いたのは、哀と咲。彼女達は目を見開き、驚愕していた。

 

「開いた……どうして」

 

『シェリング・フォードってのは、コナン・ドイルが、自分の小説の探偵を『シャーロック』と名付ける前に仮に付けた名前。つまり、『試作段階の名探偵』』

 

「へ〜、組織にしては、洒落てるじゃない?」

 

『それより、そろそろ時間がやばい。……お前ら、体はなんともないのか?』

 

「なんともないわけあるか。あんなキツイ酒飲まされたんだぞ……ああ、頭がいたい」

 

「兎に角、薬の情報を落として、この酒蔵に隠しておくから、後で取りに来るのね……組織が、私達を運び去った、後でね……」

 

『お、おい!!』

 

そこで遂に2人の意識は朦朧となり始め、体も言うことを聞かなくなり始める。コナンが焦りの声で、暖炉の中にでも隠れるように言う声も、すでに曖昧となり始めた。その瞬間、全身に激しい痛みが走る。既に2人は立っていられなくなり、地面にその体が倒れてしまう。その痛みから、胸を抑えるように腕が持っていかれたその瞬間、激痛が走り、叫び声を、あげた。




すごい中途半端ですが、出来るだけ早めに上がれるように頑張ります。

途中に出てきた人物は、(咲の中では)忘れなれない人物です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。