とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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アニメだとこれ、1時間スペシャルなので、途中で一度、切らせてもらってます。それから今回、オリ主が三人出てきます。

1人は咲さん。もう2人が誰かは、読んでみてからということで。

*少し事件解決に足りない部分があったので付け足し、矛盾が生じるところは消しました。。


第23話〜空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件・前編〜

東京国際空港。この日、毛利一家と子供達は、沖縄に旅行に行くために、この空港にやって来た。本来なら行くにしても毛利一家だけの所、少年探偵団の4人がいるのは、この旅行を提案してくれた博士のお陰だ。

 

「わぁ!見ろよ!アレだぜ!俺達が乗る飛行機!」

 

「わぁ!大きい!」

 

「凄い!747!全長70.7メートルのジャンボジェット機ですよ!!」

 

「へぇ……そんなに大きいのか、あの飛行機」

 

4人が話しながら外の飛行機を見ている。そんな子供達の後ろでは、小五郎と蘭が子供達を見ていた。

 

「たくっ、この名探偵、毛利小五郎が、餓鬼のお守りしながら沖縄旅行とはな〜」

 

「よく言うわよ。昨夜、『待っててね!浜辺の天使ちゃん!』とか言ってたくせに」

 

「餓鬼連れなんて聞いてねー」

 

「もう!この旅行は、阿笠博士がインターネットで沖縄旅行を当てたから行けるのよ?一緒に連れて行ってもらえるだけありがたいと思ってよね?」

 

「へいへい。で、その幸運な博士様の姿がまだ見えねーが?」

 

「そういえば……」

 

「博士なら来ないよ」

 

そこで小五郎達と離れていたコナンが、欠伸をしながら戻って来た。そのコナン曰く、博士は風邪を引いてしまい、来られなくなったのだと言う。しかし説明したコナンは大したことはなさそうだと言う。そんなコナンに近付く歩美。

 

「灰原さんは?」

 

「博士の看病するならパスっだってよ」

 

「……そうか。哀は来ないのか」

 

「じゃあお土産、いっぱい買って行ってあげよう!咲ちゃん!」

 

咲が少々、寂しそうに言えば、歩美が元気にそう誘う。それに咲も笑みを浮かべて頷いた。その後、コナン達は飛行機に乗り込み、離陸する。

 

「わぁ!お家がどんどん小さくなってく!コナンくんも見て見て!」

 

窓側の歩美が右隣のコナンに話し掛ければ、彼は既に眠っていた。歩美がそのことに気付いた時、蘭が口元に指を立てる。

 

「シーッ、昨夜、遅くまで本読んでたみたいだから」

 

そこで彼女はコナンの眼鏡を取ってあげた。その眠った顔を見て、彼女はクスリと笑う。そんな蘭に気付いた、一個前の席に座る小五郎が振り返り、怪訝さを隠しもせずに問いかける。

 

「なにニヤニヤしてんだ?」

 

「ちょっと去年、飛行機に乗った時のことを思い出しちゃって。あの時、新一も離陸直後に眠っちゃったなって」

 

それを後ろの窓側の席に1人で座っていた咲は、これは揶揄いのネタになると思い、耳を立てて聞いていた。

 

「ああ、俺が町内会の旅行に行ってる隙に、探偵坊主とロスに駆け落ちしに行ったあの……」

 

「何度も言ったでしょ!新一の両親の家に遊びに行っただけだって!」

 

「高校生なりたての餓鬼が、2人で海外旅行するか?普通」

 

「だって、私の所にも新一の両親からチケット送られてきたもん」

 

それを聞いた小五郎の顔が神妙な顔つきになる。

 

「まさかオメー、あの時、彼奴に変な事されてねーだろうな?」

 

「なによ、変なことって」

 

蘭の問い返しに、小五郎が応えようとするが、流石に言えず、誤魔化すために、席から体を乗り出し、聞いていた隣の光彦達を叱る。そんな父に内心で悪態を吐いた後、彼女も眠くなってしまい、目を瞑った。

 

***

 

飛行機の窓の外は既に暗闇。飛行機内の電気も消え、あるのは上に付けられた小さな照明のみ。そんな中、蘭は毛布に体を包み、眠っていた。そんな中、飛行機内に声と咳き込む音が聞こえた。

 

「ケホッ、ケホッ」

 

「あの、すみません」

 

「あ?俺か?」

 

「煙草、やめてくれませんか?そこは禁煙席ですよ?他の方の迷惑にもなりますし、現に、あなたの1つ前の子供は咳き込んでいます。するんなら後ろの喫煙席でお願いします」

 

「僕、子供じゃ……ケホッ、」

 

男の子が咳き込めば、煙草を吸っていた男は何故か笑みを浮かべている。

 

「悪かったな、次からは気ー付けるよ」

 

男ー『大鷹 和洋』はそこで大きく煙を吸い込み、注意してくれた男性ー『鵜飼 恒夫』に吹きかける。それに彼は咳き込み、それを見た和洋は楽しそうに笑う。そんな笑い声で目を覚ましたらしい、隣にいた女性ー『天野 つぐみ』はタバコに気付き、和洋の手を抑える。

 

「ちょっと、やめなさいよ和洋」

 

「なんだよ〜?これから大金持ちになる恋人になんだよ?その態度」

 

和洋と呼ばれた男性の態度に、困ったような顔を浮かべる天野。

 

「和洋……」

 

「もっと喜べよ!向こうの新聞社が、このネガを高値で買ってくれるって言ってんだぞ?」

 

「そのネガが本物だったらでしょ?」

 

そこで別の第三者が割り込み、割り込んだ相手、天野の隣の窓側の席にいた女性ー『立川 千鶴』に2人して顔を向ける。

 

「来日したアメリカの有力上院議員のスキャンダルだかなんだか知らないけどね?もし人違いだったら赤っ恥よ?」

 

その千鶴の言葉に、彼は悪い顔を浮かべる。

 

「馬鹿言ってんじゃねーよ。こちとら予め、写真のコピーを2枚ほど向こうにFAXして、確認させてんだよ」

 

「どうでも良いけど、この旅行はバカンスよ?あんたのネガはついでなんだからね?」

 

「わーってるよ。俺達の華麗なサーフ・テクを拝ませてやるさ!な?『鷺沼』?」

 

そこで彼が1つ後ろの席に座っている仲間の男ー『鷺沼 昇』を見れば、彼は静かに眠っていた。

 

「何だよこいつ、もう寝ちまってるぜ」

 

そこで彼も寝ることにしたようで、常備されているアイマスクを取り出し、毛布も掛けて眠った。

 

「ケホッ、ケホッ……」

 

「大丈夫?雪男」

 

「うん、大丈夫だから……安心して、雪菜」

 

そこで顔がとてもソックリな少女と少年ー北星雪菜と北星雪男は、互いに笑みを浮かべた。その2人の隣で、照明を点けて本を読んでいた外国人の男性ー『エドワード・クロウ』が、後ろにいる和洋に視線を向けた。

 

それから時間が経過し、天野がスチュワーデスを呼ぶボタンを押せば、スチュワーデスがやって来る。その女性に天野が酔い止めの薬を頼む。しかし、少しずつ悪化していき、既に顔色が青褪めていた。それを心配する千鶴は、自身があげた薬はちゃんと飲んだのかと問う。それに天野は頷くが、効いている様子はない。その背後で未だ寝ている鷺沼にも与え、効いていることが確認出来る。それを聞いていた雪男が顔を出す。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「あ、平気、です……」

 

「でも顔色が……ふむ」

 

そこで雪男が千鶴を見れば、何かを察したらしい千鶴が席を代わろうと天野に提案する。そこにちょうどやって来たスチュワーデス。手には酔い止めの薬と水がある。スチュワーデスは一度だけ鷺沼がいる席を見たが、そこで千鶴が声を掛け、スチュワーデスからそれを受け取り、天野に渡したのを見て、雪男は安堵をする。その間、雪菜は気持ちよさそうに寝ており、雪男はそれを見て、クスリと笑う。そこで雪男も目を瞑り、寝ようとした時、女性の叫び声が耳に入った。

 

「っ!!」

 

「……ん〜……雪男?いま、なんか……」

 

雪男が後ろを勢いよく振り向き、寝ていた雪菜はといえば、呑気にも目をこすりながら目を覚ました。その瞬間、飛行機内の電気が点灯し、スチュワーデスの連絡が入る。

 

『お客様にご連絡申し上げます。只今、当機内にて急病の方がおられます。お客様の中に、お医者様や看護婦の方がいらっしゃいましたら、お近くの客室乗務員にーーー』

 

それを聞いた雪男は、近くのスチュワーデスを見て、手を挙げる。

 

「あの、僕はまだ研修医の身ですが、それでも問題なければ……」

 

「!それでも、お願いします」

 

そこで雪男が立ち上がり、エドワードに頭を下げて席から立ち上がる。そこで現場に向かう前に、雪菜に顔を向けた。

 

「ごめん、ちょっと行って来るよ」

 

「うん!行ってらっしゃい!」

 

雪菜が笑顔を向けて言えば、それに悲しそうな顔を向ける雪男。そのままスチュワーデスの女性と共に現場へと行けば、何故かそこで高校生の少年が既に遺体を観察していた。

 

「……あの、彼も医者ですか?」

 

雪男の問いに、案内してくれた女性が首を横に振り、否定する。それに眉を顰めたその時、声が掛かる。

 

「ん?……ダメじゃないか〜、子供がこんな所にいたら!」

 

その声に、雪男の眉間のシワが更に寄り、注意してきた相手である目暮を見る。

 

「……僕は研修医ではあるけれど、立派な大人で、医者です。医学の知識は一通り勉強してます。ですから、此方に立ち会わせてもらっても、構いませんよね?」

 

その少々苛立ちを声色に乗せた雪男の発言に、目暮は乾いた笑いを浮かべながらも頷いた。それを見た雪男は苛立ちを納め、遺体を再度見る。

 

「それで、遺体には彼以外、誰も触れてないでしょうな?」

 

「あ、僕もまだ触れてません。というか、僕よりも前に奇妙な青年がさっきからいて……」

 

「奇妙な青年?」

 

そこで目暮が直ぐに現場であるトイレの中に入れば、黒いセーターを着ている青年と、近くにはスチュワーデスがいた。

 

「一体、誰がこんなことを……」

 

「それはまだ分かりません。しかし、ご心配なく。犯人はまだ、太平洋上空に浮かぶ、この巨大な鉄の塊の中だ」

 

その青年の言葉に、今度は目暮が苛立ちを募らせ、睨むようにして青年を見据える。雪男はその間、目暮の後ろに立っていた。

 

「逃しはしませんよ」

 

「おい!!なんなんだね、君は!!」

 

そこで青年はゆっくりと振り返り、自信満々に名を名乗る。

 

「『工藤 新一』……探偵ですよ」

 

その名前に反応するのは、目暮。

 

「く、『工藤』って、まさか優作くん所の……」

 

「お久しぶりです、目暮警部」

 

「おお!息子の新一くんか〜!若い頃の彼にソックリだ!最後に会ったのは、君が小学校6年生の頃だったな!」

 

目暮は再会を喜び、そんな目暮の対応に、新一は嫌な顔せず笑顔を浮かべる。

 

「いや〜、それにしても大きくなって……」

 

そこで目暮は現在の状況を思い出し、新一の腕を強く引いた。

 

「んなことは関係ない!!確か君は、高校生になったばかりだろ!!勝手に現場を荒らしよって!!」

 

新一を現場からだし、そう説教をする。その後、直ぐにスチュワーデスの1人に誰かからカメラを借りて着て欲しいと頼む。しかしスチュワーデスは、新一が既に撮ったことを話し、目暮と雪男が目を見開いて、後ろにいる新一を見る。

 

「60枚程、お客さんからカメラを借りて……」

 

「それに……その少年に言われて、彼の行動をずっと見張ってましたが……」

 

「何かを隠したり、ふき取ったりする怪しい素振りは全くありませんでしたよ」

 

それを言われて、目暮は一瞬言葉を失う。その横で、更に雪男の眉間に皺が寄る。

 

「けど、下手に触ると硬直した筋肉が解かれて、死亡推定時刻が分からなくなるんだけど……」

 

「死斑の状態や顎が硬直し始めていた事などを踏まえると、死後、1、2時間経過してます」

 

「1、2時間……」

 

そこて雪男は考え、ハッと思い出す。そう、それが正しいとなれば、雪男の立場は『容疑者』に早変わりする事になるのだ。

 

(いや、僕だけじゃない。雪菜だってそうだ)

 

雪男がそんなことを考えている間に、目暮と新一の話は進む。

 

「気になることは3点。1つ目は、遺体が寄りかかっていた壁に数滴、飛び散っていた血痕が、そこに密着していた衣服には付着していなかった点。2つ目は、致命傷となった傷口の右下に、何かで引っかいたような跡が残っていること。3つ目は、遺体のそばの左ポケットの内側が、ぐっしょり濡れていた点。遺体の手は全く濡れていませんでしたし、例え濡れた手を突っ込んでも、ああは濡れません」

 

「となると!誰かが何かの目的で濡らしたという事に……」

 

そこで又もや目暮が言葉を切る。話を真面目に聞いていた目暮だが、その助言してくれている人間は高校生なのを思い出し、警察の仕事だと新一を現場から追い出した。

 

「すみませんが、儂の隣の席で寝ている男をここに呼んで来てください!彼も、刑事です!」

 

そこでスチュワーデスの1人にそう頼み、目暮は雪男を見る。雪男はそこで自分の役割を思い出し、軽く頭を振った後、遺体に近づき、検死を始める。

 

「頸髄のあたりに傷がある事から、恐らく死因は頸髄損傷による窒息死ですね。この細さから考えて、凶器は先の細いアイスピックの様な物だと思います。死亡推定時刻は、この硬直から考えて、あの青年の言った通りです」

 

「ふむ。そうか……」

 

「あの青年、他にどこか触っていたりしましたか?」

 

雪男がスチュワーデスの1人にそう問いかけると、スチュワーデスがゴミ箱の中を見ていたことを告げる。それを聞き、雪男が白手袋でゴミ箱を開けば、中には小さな薬品瓶と青い布があった。

 

「これは……。多分、被害者は殺される前、薬品を嗅がされて、昏睡状態に陥っていた可能性があります……流石に、なんの薬品かを調べるには、相応の道具が必要ですので、今、これを調べることは不可能です。まあ多分、クロロホルムだとは思いますが……」」

 

「ふむ、そうだな」

 

そこで高木がやって来た。それを見て、目暮が遅いと叱りつける。そして、現状を説明し、薬品のビンと布を取り出す。

 

「この布を瓶の中に入れ、犯行の直前に使って、被害者を眠らせた可能性があるな」

 

「ええ」

 

「すみませんが、証拠品をお借りしたいので、ビニール袋か何かを……」

 

目暮がそう頼んだ時、スチュワーデスの2人が互いに顔を見合わせる。それを不思議に思い、目暮がどうしたのかと尋ねれば、1人が答えてくれる。

 

「いえ、あまりにもあの少年が言ってた通りなので、ちょっと吃驚しちゃって」

 

「あの少年?」

 

高木が不思議そうな様子を見せれば、目暮は半目で外を指差す。

 

「ほら、入り口のところにいただろ、黒いセーターの」

 

そこで雪男も連れて現場を出れば、高木が新一を見て、目暮に問う。

 

「何者なんですか?」

 

「儂の友人の息子だよ。事件に詰まった時、相談に乗ってくれていた推理小説家のな。子供の頃、よく父親について来て、現場でチョロチョロしていたが、まさか、これほど現場を分析する力を身につけていたとはな」

 

「へ〜!それは頼もしいじゃないですか!」

 

高木が素直に褒めれば、目暮に怒鳴られる。

 

「バッカモーン!所詮、素人は素人!!推理小説を読み齧って、名探偵気取りになってる高校生に過ぎんわ!!」

 

そこで現場のトイレを閉じる目暮。そこで目撃者を探すと言えば、それを聞いていた新一が気障な笑みを浮かべる。

 

「容疑者は6人ですよ」

 

「え?」

 

「その時間、トイレに行ったのは、被害者を除けば6人だけです。僕の席は客席の最後尾。ずっと見てましたけど、後ろの喫煙スペースには誰も来ませんでしたので、間違いないと思います」

 

「ずっと見てたって、あんた、一晩中起きてたの?」

 

蘭がそこで驚いた様に聞けば、それに新一はなかなか寝付けなかったと言い訳をする。しかしそれに蘭は更に不思議そうに聞く。

 

「え!?どうして?飛行機に乗るなり、すぐに寝入っちゃったじゃない!」

 

「あ、あれ?そうだったっけ?」

 

そこで誤魔化す新一。それに蘭が呆れた様子で、早く寝て夜中に起きる新一に、赤ん坊と変わらないと評価すれば、新一は笑って誤魔化す。しかし、頭の中では少し違う。

 

(馬鹿野郎、隣であんなに寝息立てられて平気でいられる程、俺はまだ人間が出来てねーんだよ)

 

「じゃあ早速、その6人というのを教えてくれないかね」

 

目暮がそこで新一にそう聞けば、素直に頷き、1人目である雪男を見る。

 

「まずは、そのお医者さんで、2人目はそのお医者さんと同じ顔の少女……ですよね?」

 

新一が雪男にそう聞いてくる。それに驚いた様子の目暮と高木を他所に、雪男は苦笑いを浮かべて頷く。

 

「そうだね。僕と、僕の双子の妹の雪菜も、前のトイレを使うために立ったよ。あと1人も、大体予想はつくけれど、他の3人は分からないよ」

 

「そうですか」

 

そこで新一が驚く2人に視線を向けたその瞬間、目暮が雪男の肩を強く掴む。

 

「あ、貴方がトイレに立ったというのは、本当かね!?」

 

「ほ、本当ですよ!でも、だからと言って、僕は容疑者であり、確かに今、遺体を触ったりしたけれど、貴方方警察の前で、何かを隠したりする様な様子、見ましたか?」

 

雪男のその言葉は、容疑を晴らすためのものではなく、『現場を荒らしていない』ことを証明するための言葉。それを理解した目暮は、肩から手を離し、頷く。

 

「た、確かに……分かりました。そこは信じましょう。しかし、まだ貴方は容疑者ですので、疑われる可能性がある行動は控えて下さい」

 

「分かってます」

 

その返事を受けたあと、今度は新一の案内で前の座席ー雪男達が座っていた周辺までやって来て、新一は指を指していく。まず最初に千鶴、そして隣にいた天野、通路を挟んだ隣の鵜飼、そして前の席のエドワードと、不思議そうな顔で新一を見ている雪菜。

 

「貴方は?えっと……」

 

「あ、そう言えば名前を言ってませんでしたね。僕は雪男です。僕の席は、外国人の方の隣で、ちょうど真ん中の席ですよ」

 

「6人共、席が近いですね」

 

「ああ」

 

「ちょっと、なんなのよ?」

 

「何があったんですか?」

 

目暮達が話していれば、自体を理解できてない天野達が聞いてくる。そこで目暮が事件があった事を説明し、現場まで来れば、その遺体を見た天野と千鶴の目が見開かれ、顔が青褪める。

 

「和洋……和洋!」

 

天野が和洋に思わず近付こうとした所を高木が止める。彼女が伸ばしたその右手が和洋を掴むことは、なかった。

 

「そんな……そんな……」

 

そこで遂に天野が泣き崩れてしまい、それを千鶴が慰め、どうして和洋がこんな事になったのか、聞いてくる。その理由はまだ判明していないため、これからだと目暮が言えば、そこに鵜飼がネガが原因ではないかと告げる。

 

「ネガ?」

 

「あの男、見せびらかしていたんです。新聞社に売り込むと金になるネガって……」

 

「ああ、そう言えばこの人、そんなこと言ってましたね」

 

そこでネガはどうなったのかと千鶴が聞けば、高木がそれに答える。どうやら和洋が持っていたというネガは、失くなっているらしい。それに信じられない様子の天野。

 

「となると、犯人はネガの事を知っていた人物という事になりますな」

 

「そんなの、業界の人なら誰でも知ってるわよ!彼はマメに、いろんな新聞社に売り込んでたから!」

 

「なあ刑事さん、大鷹は後頭部を一突きにされたんだろ?だったら、犯人はプロだ。その2人はただのカメラマン。疑うのは筋違いだぜ」

 

そこでここまで2人の付き添いで来たらしい鷺沼がそう言えば、それに反論する新一。

 

「いや。ちょっとした医学知識と麻酔薬、そして凶器があれば、誰でも犯行が可能ですよ。例え女性でもね」

 

その新一に、鷺沼は不審そうな目を向けるが、そこで次に雪男に目線を向ける。

 

「なら、一番はそこの医者だろ。一番、ここで医学知識があるんだからな」

 

その鷺沼の言葉に、雪男は反論しない。しかし、その隣にいた雪菜が怒ったように反論する。

 

「雪男はそんな事、しないもん!!」

 

「ちょっと、雪菜……」

 

「あ?なんだ?この嬢ちゃんは」

 

「雪男は私と、お姉ちゃんの所へ行く為に来たんだもん!人を殺しに来たんじゃ……ムグッ」

 

そこで遂に雪男がその口を抑え、喋らせないようにする。それに一瞬藻搔いた雪菜だが、直ぐに藻搔くのをやめ、怒った様な視線を雪男に向ける。

 

「ちょっと、一回落ち着こっか、雪菜。一回手を離してあげるから……はい、深呼吸」

 

そこで雪男の言う通り、雪菜は深呼吸をする。それで落ち着いたのを見て、目暮は6人全員に、トイレに立った時の状況を聞く。それにまず答えたのは、天野。彼女は、気分が悪くてトイレに行ったと言う。その後、戻って来た時には和洋はいたと証言する。その後は、薬を持って来てもらう為、スチュワーデスを呼んだと言い、それをスチュワーデスの1人に聞けば、肯定される。その時の和洋は眠っていたと証言される。

 

「それなら私も、通路の向こうから見たよ。なんか薬を頼んでいたみたいだったよ。私がトイレに入ったのは、そのちょっと後、入ってる時間は、5分ぐらいだったかな」

 

「通路の向こうって、あんたの席は被害者と同じ通路に面しているはずじゃ……」

 

「席でジッとしてると落ち着かなくて、ウロウロしていたんですよ」

 

「雪菜は多分、この人の後だと思います……まあ、確信は持てませんけど。僕は雪菜が席に戻って来た後に行きました。その時にはいなかったと思います」

 

「薬を彼女に持って行った時には、もう席を立たれていました。持って行くまで、1分もかからなかったと思います」

 

「あ、なら雪菜が行った時にはもういなかったのかも……」

 

雪男がそんな風に言った後、今度は千鶴がトイレに行った時の証言をする。彼女がトイレに行ったのは、天野が薬をもらった後だと言う。20分ぐらい経った後だと言う。どうやら、和洋がなかなか戻ってこない為、様子を見に行ったのだと言う。

 

「でもその時、彼はまだ生きてたわよ?」

 

「え?」

 

「だって、このトイレのドアを大丈夫?ってノックしたら、ノックで返してきたもの」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

高木が尋ね、目暮がなぜ和洋だと分かったのかと聞けば、他の3つのトイレに誰もいない事を、ドアを開けて確かめたからだと答える。

 

「じゃあ、残るは彼だけか……」

 

そこで目暮がエドワードを見れば、既に新一が近付き、英語で問い掛けていた。

 

When did you go to the toilet?(貴方はいつ、トイレに入りましたか?)

 

「I don't remember when I did,unfortunately.」

 

その答えを聞いた新一が、咳き込みながら目暮へと訳を伝える。

 

「いつ入ったか覚えてないそうです」

 

それに困った様子の目暮。しかし、覚えてないのも仕方ないかと理解する。その間も咳き込む新一に、蘭が心配そうな様子で寄ってくる。

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

 

「あの外人、コロンがキツイんだよ」

 

そこで遂に鷺沼がいつまで聞いているのかとニヤニヤとした笑みで聞いてくる。凶器が持ってる人間が犯人だろうと言い、彼は6人の手荷物などを調べた方が早いのではないかと提案する。

 

「ま、トイレに立たずにずっと寝てた俺には、関係ねー事だがな」

 

その言葉を鷺沼が言った途端、鵜飼が反論する。

 

「嘘だ!貴方も席を立ったじゃないですか!」

 

「何?」

 

「だって貴方の席、被害者の真後ろでしょ!」

 

「どういうことです!?」

 

そこで目暮が鵜飼に問い掛ければ、鵜飼がトイレに入る前、被害者がまだ寝ていたその時、鷺沼は確かに席を空けていたと証言する。それに鷺沼がデタラメを言うなと言う。勿論、トイレに立ったのは4人だと新一の証言も証拠として叫び、新一に確認を取れば、新一は曖昧ながらも後退する。

 

「ちょっと、ハッキリしなさいよ!」

 

蘭が小声でそう言えば、新一は記憶を振り返り、焦る。

 

(そう言えば一瞬、気を取られてたような……)

 

そこで目暮が鷺沼を加えた7人に、手荷物のチェックと身体検査をトイレの中で受けるように伝え、検査が終了するが、その7人の手荷物からも体からも、凶器は出てこなかったことが伝えられる。勿論、飛行機内の疑わしいところも捜索したが、どこにもない事が伝えられる。

 

「おい。トイレに立ったのは本当にあの人達だけだったのか?」

 

目暮の問いかけに、新一は答えない。彼の目は見開いたままだ。

 

「ちょ、ちょっと新一?……新一?」

 

蘭が新一の名を呼べば、彼は驚愕の顔から、楽しそうな笑顔へと変わる。

 

「ふん、おもしれーじゃねえか」

 

「え?」

 

「凶器が機内から見つからねーって事は、まだ犯人が隠し持ってるって事だ。恐らくそれが犯人の切り札。見つけてやるよ、その切り札ってやつを。この巨大な鉄の鳥が、翼を休める前にな!」

 

彼は宣言する。飛行機が目的地に着くまで、まだ時間は、たっぷりとあるのだからー。




うちの主人公、まさかの容疑者側。これを書く上で、折角だからと容疑者側にしてみました。ハイ。

因みに、以前、雪男君が蘭さんをみた時、何の反応もなかったのは、彼もまた、この事件を忘れてしまっているからです。正確に言えば、遺体とその死因とその時の凶器は覚えているのですが、その時にいた人に関して言えば、雪菜ととある人物以外、覚えてません。とある人物に関しては、雪男にとっての印象が強かっただけなので仕方ないですね。

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