とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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さて、今回はあのコナンくんにとても根強い影響を与えた事件です。

正直、犯人さんも好きなのですが、申し訳ない……助けれないと判断しました。

どう頑張っても、到着時間的にはもう入らないですからね。

さて、内容的には半分です。後編はまた次回。

それでは!どうぞ!



追記:警察学校編にて、松田→萩原の呼び方が分かりましたので、修正しました。


第4話〜ピアノソナタ「月光」殺人事件・前編〜

穏やかな日が数日続いたある日の朝、警視庁にとある島で殺人が起きたとの連絡が入った。それを聞いた目暮警部が彰と瑠璃を誘い、行こうとしたが……。

 

「え?彰なら別件でもう出てますよ?」

 

「そうか……それは、困ったのぉ……」

 

瑠璃の言葉に目暮警部は心底困った表情を浮かべる。

 

別に、二人で島に行く分には何も問題はない。しかし、彰のあの鋭い洞察力、観察眼、推理力、その上での勘の良さ。それは事件解決に大いに役立っている。そういう人材が一人でも多くいた方が、事件解決自体、早くなる。

 

「ふむ、仕方ない……なら、儂と瑠璃くんで行くか」

 

「あ、ちょっと待ってください。なら松田さん呼びません?確か、松田さんなら何もなかった筈ですし……」

 

その瑠璃の提案は、目暮警部にとってはそれはもう、有難いものであった。

 

『松田 陣平』。29歳で彰の同期の一人であり、元は警備部機動隊の爆発物処理班に所属していたが、7年前、彼ら二人の同期の一人であり、親友でもある『萩原 研二』がとある爆弾事件にて事故にあい、運良く生きながらえた。生きながらえた理由は、彰の勘の良さと忠告から、彼は防護服を着ていたのが運命の分かれ道となったが、しかしそれでも大怪我を負ってしまった。そんな親友の敵を討つ為に爆弾事件を扱う特殊犯係に転属を希望するも、頭を冷やすようにと強行犯係に回された。そして転属から一週間後、また爆弾事件が起こり、危なく命を落としかけたのだが、病院に仕掛けられていた爆弾をある人物……と言うより、熱で倒れた雪男の付き添いで来ていた修斗が偶然にも見つけたものだが、その連絡を彰が受け、それで彼が死ななくとも問題がなくなり、現在も生きながらえながら、敵である爆弾犯を探し続けている。

 

そんな松田は、彰同様に能力が高い。だからこそ、とても頼りにされているのだ。

 

「あ、丁度やって来た……おーい!松田さーん!」

 

「……あ?」

 

瑠璃が松田の名前を呼べば、松田がサングラスを掛けたまま眉を寄せ見返す。其処には目暮警部もおり、これは今から事件捜査のために何処かに行くのだろうと予想がつき、そして自分の名が呼ばれたのは、その事件に自身も連れていこうという瑠璃からの提案を受け入れた結果なのだろうと理解した。

 

「……今から事件捜査ですか?目暮警部」

 

「ああ、そうだ。それで、松田くん。君も来てくれないか?」

 

「……分かりました」

 

そうして軽く準備をした後、三人は殺人事件が起こった伊豆の小島『月影島』へと向かっていったのだった。

 

***

 

「……って意気込みでやって来たのに。なーんで子供女性が起きてて、男衆は寝てるのかなー?」

 

「知るかオッサン供の考えることなんて」

 

「子供からしたら私達ももういい歳したオッサンとオバサン「何か言ったか?」イエ、ナンデモ」

 

そんな軽口も交えながら、コナンから事件のあらまし、置かれていた譜面を貰うと一度三人を寝かせ、それを目暮警部に渡すと、二人は村役場まで行き、事情聴取を始めた。その間、目暮警部は寝袋で爆睡している小五郎を起こしており、村役場で事情聴取をしていることを話すと、立ち上がり、村役場まで向かっていった。

 

そうして時間が過ぎ、もうそろそろ6時となる時間頃、瑠璃が軽く休憩をするためにコーヒーを松田、目暮警部、そして蘭と容疑者の一人であり、蘭達と共にいた『浅井 成実』、コナンの分を買う事にした。が、流石に数が多かったため、まずは後者三人分(コナンのはココア)買うと、その三人が待つ廊下へと足を向けた。

 

「「「ふぁぁ〜……」」」

 

「お疲れ様。はい、コーヒー。あ、コナンくんはココアね」

 

「あ、ありがとうございます、瑠璃さん」

 

「いえいえ!それじゃあ、私は一度離れますね!」

 

瑠璃はそう言って笑顔を向けながら去って行く。

 

「瑠璃さんの笑顔って、なんでか分からないけど、元気を貰えるんだよね〜。なんでなんだろうね?コナンくん」

 

「それは瑠璃さんの生来の明るさからくるんじゃないかな?僕も分かんないけど、なんとなくそんな気がする……」

 

そんな蘭とコナンの会話は、去って行く瑠璃には聞こえていなかった。

 

そうして目暮警部と松田の分、そして自分の分を買うと、それを二人に持って行った。

 

「お疲れ様です、警部。コーヒーをお持ちしました……って、まだ終わってないのか」

 

「よぉ、お疲れさん。あとコーヒー有難な。目暮のオッサンのはあの聴取が終わってからにしてやれ」

 

「分かってますよ……それにしても、確かあの『西本 健』って人。ずーっと何かに怯えるかのように震えてますけど、大丈夫ですか?支離滅裂なこと言ってません?」

 

「大丈夫だ。震えてるだけだし、だから何も言わねえだけで、支離滅裂なことは言ってねえよ」

 

「聞いた限りだと、あの人、昔は羽振りが良くって、酒に博打に女に大枚を叩いてたらしいですよ?」

 

「ああ、それは俺も聞いたな。だが、二年前、この島の前村長が死んで以来、何かに怯えるように引きこもったらしいな」

 

「一体、あの人は何したんでしょうね?怯えるほどって事は、殺される覚えがあるって事なんですかね?」

 

「だろうな……そういえば、お前、あの楽譜、覚えてるよな?」

 

そこで松田が瑠璃に例の楽譜の件を聞けば、当然とばかりに瑠璃が胸を張って答える。

 

「モチのロンですよ!あの楽譜、『月光』の譜面が書かれてましたけど、途中から変わってるんですよね〜」

 

「ほー?というか、お前、『月光』聞いたことあんのか。意外だな」

 

「失敬な!私の双子の姉の梨華がピアニストで、昔から頼んで引いてもらってたんですよ!あ、ちなみに一番好きな部分は第2楽章です!」

 

「そうかそうか。だけど俺はお前の好みは今聞いてねぇ。それで?」

 

「とりあえず、今アメリカにまた行っちゃった姉にちょっと見せてみましたけど……返信、来てないんですよね〜。多分、公演中なのかな〜?」

 

「そうか……そういえば、毛利のオッサンの所に届いた以来の紙はなんて書かれてたんだ?」

 

「えっとですね……『次の満月の夜。月影島で、再び影が消え始める。調査されたし 麻生 圭二』と。麻生って事は、射影機とか作っちゃう家系なんですかね?」

 

「んな訳ねえだろ。それはゲームの中の話だ」

 

「あれ?あのホラーゲームやったんですか?」

 

「警察学校時代に、彰の部屋でな。なんでも?ゲームやアニメ大好きな妹が?送って来たとかなんとか?」

 

「あー、そういえば送りましたね〜、それ」

 

「お前のおかげ様で萩が一人で寝れないとかほざきやがったけどな」

 

「えー?私のせいですか?」

 

「こらそこの二人!無駄話をするんじゃないぞ!」

 

そこで遂に目暮警部に怒られてしまい、頭を下げると、今度は松田から軽く拳骨を落とされた瑠璃。

 

そしてそれから30分後。遂に耐えきれなくなった現村長の娘である『黒岩 令子』が声を張り上げ文句を言いだした。

 

「もういい加減にしてよ!私に『川島』さんを殺す動機なんてある訳ないでしょ?……もう!」

 

「……瑠璃、今何分だ?」

 

「約十分です」

 

「あの人の肺活量すごいな」

 

「それ褒めてますか?皮肉ってませんか?」

 

「さあ?どっちだろうな?」

 

そんな会話をしていながらも会話を聞いていた。その時、放送が流れ始める。それはピアノを使った演奏で、とても軽快な音楽でもあった。

 

「!?」

 

「……おい、瑠璃。これは月光の第何楽章だ?」

 

「……月光の……第2楽章。さっきも言った……私の好きな楽章です」

 

「くっそ!」

 

そこで松田がすぐさま放送室がある三階へと走り、その後を追うように瑠璃も走り出せば、目暮警部から声が掛けられる。しかしそれで止まるわけにはいかない。そのまま走り続け、放送室へとたどり着けば、そこには怯え、腰が抜けた様子の西本と、放送室の中を鋭い目で見るコナンがいた。

 

それに続くように松田と瑠璃が中を見れば、そこには放送室の椅子に座り、背中から包丁を突き刺されて死んだ、現村長の『黒岩 辰次』がいた。

 

「チッ!」

 

「そんな……嘘……」

 

そこで漸く関係者一同がやって来て、亡くなった黒岩の娘、令子は部屋の外から父親の惨状を目にし、呆然とした様子を浮かべ、思わず手を伸ばす。しかし、それを目暮警部が止めた。

 

「すぐに検視官と鑑識を呼べ!」

 

「警部。検視官は川島氏の解剖のため、夕方ごろに東京へ……」

 

「何!?くっそ、こんな時に……」

 

そんな目暮警部達の会話に、成美が声を掛ける。曰く、自身が検視をするとの申し出だった。

 

「……しかし、これで容疑者が数人に絞られたな」

 

「じゃあ、犯人はまだ……」

 

そんな会話を聞いている横で、松田は瑠璃に声を掛ける。

 

「……大丈夫か?」

 

「はい……今回はあの音楽が流れて来た時点で、覚悟は決まってましたから……それにしても、いいんですか?容疑者のあの人に検視をさせて」

 

「だが、俺らじゃ検視なんて出来やしない。帰ってくるのを待つにも時間が掛かる。……なら、仕方ねえだろ」

 

「……」

 

瑠璃はそれに頷いた。そして、松田とほぼ同時に、容疑者がいる方へと振り向いた。

 

「さて、瑠璃。俺たちの仕事は?」

 

「事件の解決。でもその前に、これ以上の被害者を出さないこと。早期解決が目標です」

 

「なら、やることは分かってんな?」

 

「はい……松田さん。頑張りましょっか」

 

それに松田は不敵な笑いで返した。

 

ーーー月影島での事件は、まだ終わらない。


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