とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

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今日から上映された『から紅の恋歌』を見て来ました!!

見た感想を言えば、最高です!!私の中でお気に入り映画入りしました!!歌も最高です!!

見て損はしないと思います!!是非、皆さんも見に行ってください!!

それから、昨夜の純黒の悪夢、私は映画館で見ていなかったので今回が初見だったのですが……アレですね。咲さんが発狂する映画ですね。いや、寧ろ私が発狂しました。何ですかあの映画。映画館で見なかったことを後悔しましたよ。安室さんカッコいい!赤井さんも素敵!だけど一番はコナンくんとキュラソーです!!テレビでの放映だからこそ、合間合間がなかったので、かの御仁の姿は映らなかったのが残念ですが、其処は仕方ないですね。テレビでの放映ですから。これは小説で書くときはDVD見ながらになるかもですね……やだ、永久発狂?

兎に角、書ける時が楽しみです!


第19話〜世紀末の魔術師・2〜

あれから時間は過ぎて行き、日も暮れ、夜となり、コナン、平次、修斗の3人は鈴木近代美術館へと戻って来た。しかしそこに、見知らぬ茶髪の女性と付き人らしきお爺さんがいた。その2人は秘書である西野と話している様子だった。其処で修斗は必然的に、会長である史郎に用があるのだろうと悟った。

 

「私、『香坂 夏美』と申します。此方は執事の『沢辺』です。このパンフレットにある『インペリアル・イースター・エッグ』の事で、是非とも会長さんと会って、お話ししたいのですが……」

 

彼女がそう言って持っていたパンフレットに一度視線を向けた後、真っ直ぐな瞳のまま西野を見れば、西野は史郎は出ていていないことを説明する。

 

「私で良ければ、要件を聞きますが……」

 

「このエッグの写真が違うんです……曽祖父が残した絵と」

 

その言葉にコナンと修斗が女性に視線を向ける。其処で修斗は、女性の瞳の色に気付いた。日本人特有の黒ではなく、灰色の瞳。

 

(名前は日本人で瞳は黒じゃない……何処かの国の血が流れてるのか、将又、何処ぞの童顔と同じ、生まれつきか……)

 

そう考えて思い浮かべたのは、彰が警察学校に入学していた頃顔を合わせた回数は少ないが、それでもとても個性豊かな面々で、その内の1人、金髪褐色青目の青年だった。と、其処でまたふと、思い返して見ればもう1人灰色の目の持ち主がいたことを思い出す。

 

(そう言えば、あの人も灰色だったな……青蘭さん)

 

平次が其処でなんとなしに腕時計で時刻を見れば、何かに気付き、笑みを浮かべる。

 

「お、これはオモロイな。夜中の3時がLやったら、今は『へ』やで」

 

そう言ってコナンと修斗に時刻を見せる。それにチラッとだけ視線を寄越した修斗とは違い、コナンはガッツリとそれを見る。

 

「『へ』?」

 

「今、19:13分や。19:20になったら完璧な『へ』やで」

 

その瞬間、コナンの頭の中で閃光が走る。そう、ずっとコナンの中で燻っていたあの一行目の暗号が、頭の中に浮かんだ。

 

(『黄昏の獅子から暁の乙女へ』の『へ』は、頭から数えて12番目!)

 

そんなコナンの様子に修斗はホッと息を吐く。彼は全文を聞いた時点でこれが解けていたため、いつ気付くのかと期待していたらギリギリになった事に少々の呆れと安堵の思いを抱いたのだ。

 

「服部!キッドの予告した時間は午前3時じゃなく、午後7時20分だ!!」

 

「なんやて!?」

 

其処でコナンが駆け出し、入り口に立てかけられていたスケボーに近付く。平次は驚きながらも声をかけた。

 

「おい、どこ行くねん工藤!!」

 

「大阪城だ!!お前はエッグを見張ってろ!!」

 

その瞬間、平次の顔に一粒の雫が落ちる。どうやら雨が降って来たらしい。

 

「雨か……確か天気予報は晴れ……はっ!」

 

其処で今度は平次が気付いた。全員のある一点の勘違いに。

 

「ああ!待てや工藤!!『天の楼閣』は天守閣やない!!通天閣や!!!」

 

「!通天閣!?」

 

「通天閣の天辺はな!『光の天気予報』なんや!!」

 

「なに!?」

 

***

 

通天閣が光るその天辺に向けて、一羽の白い鳩が向かって行く。

 

その白い鳩が、通天閣のアンテナに、命綱も無しに器用に立つ、白いマントの男の指先に乗れば、男はその白鳩の足に付けていた盗聴器を取り除き、ニヤリと笑い、高らかに叫ぶ。

 

「Ladies and gentlemen!」

 

その声が聞こえるものは、誰もいない。しかし、青年のマントは風に吹かれ、はためく。その姿は実に、サマになっていた。青年は光り輝く大阪の街並みをその目に移しながら、帽子のツバを持つ。

 

「さあ、ショーの始まりだぜ!」

 

まず彼はその手に持つ小さなスイッチボタンを大阪城の方面に向けて押す。すると、その大阪城から音を立てながら上空に登る煙が発生し、次にドーンと言う音とともに、誰もが見慣れた花火が上がる。それに、勿論大阪城に待機していた茶木を入れた刑事達も気付き、少々、慌てる。そしてそれはコナン達も同じで、目を見開く。しかし、それに目を奪われている暇はない。

 

「服部!通天閣はどっちだ!?」

 

「あっちや!」

 

そう言って指差したのは花火とは真逆の方向。そこに勿論、花火は全く上がっていない。

 

「あっちは花火は上がっとらんな……」

 

「大阪城で花火を打ち上げたのは、通天閣から目を反らせる為だ。……でも何故なんだ?何故奴は通天閣に……」

 

「くそっ!今から通天閣に行っても、間に合わへんな……」

 

「此処でキッドを待ち伏せるんだ!」

 

コナンはそう言った後、西野に駆け寄り、問いただす。

 

「西野さん!エッグは今どこに?」

 

「それが、中森警部が何処か別の場所に持って行ったらしいんだ」

 

それに驚く平次。

 

「な、なんやて!?」

 

すると今度は周りの電気が落ちてしまい、辺りは暗闇となった。

 

「はっ!?」

 

「停電!?」

 

「いや……多分、変電所で何かトラブルがあったんだろうな」

 

「トラブルって……」

 

「例えば……爆発とかだな」

 

その瞬間、コナンはキッドの狙いを理解した。そして理解すれば行動は早い。すぐにスケボーに乗った。前のスケボーであれば、太陽がある時刻にしか走れなかったが、その後に博士が改良し、現在は太陽光で充電しておけば、太陽のない時刻でも30分だけは走れるようになっている。そうしてスケボーのエンジンを入れ、煙を吹かし、車の速度を出しながらその場から去って行く。平次の制止は無視した。

 

一方のキッドといえば、双眼鏡を使って自家発電に切り替えられる建物を見ていた。最初は病院が切り替えられ、次にホテルと切り替えられて行き、そうしてその二つの建物以外を探して入れば、目的の建物を見つける。ホテルでも病院でもない建物が、自家発電に切り替えられ、電気が点けられていたのだ。それを見つけた瞬間、彼は微笑みを浮かべる。

 

「……BINGO」

 

彼は双眼鏡を懐に隠すと、体を宙に飛び出させる。そして風を感じた瞬間、ハンググライダーを開き、その建物を目指した。

 

その頃のコナンはといえば、辺り一面停電の所為で起こった渋滞中の道路を走っていた。しかも彼が走っているのは人道よりの道路ではなく、上方と下方の間だ。其処には車もバイクもないため、何の邪魔者もなく走れている。

 

(奴はエッグを別の場所に移動した情報を手に入れてたんだ。その場所を特定する為に町中を停電にし、自家発電に切り替えさせた。そして、病院やホテル以外で灯りが点くであろうその場所を……)

 

コナンが其処で空に視線を向ければ、空に白く光る物体が移動していた。それが目に入った瞬間、それが何かを理解した。

 

「キッド!……くそっ!!」

 

コナンは其処で直ぐに右は曲がり、車と車の間を通って人道に出て、路地裏を通って行く。そうして道なりに進んだとき、行き止まりに差し掛かってしまった。

 

「やべっ!行き止まりだ!!」

 

そんなコナンの後ろからバイクに乗った平次が現れる。

 

「乗れ!工藤!!」

 

その声が耳に入り、コナンは後ろを振り向く。そして迷いなく彼の後ろに飛び乗り、ヘルメットを付けた後、バイクが走り出した。その道中にて、コナンは説明した。その説明を聞き、平次も納得する。

 

「なるほどな。光が点くのを見渡すのに通天閣は絶好の位置取りや。奴は予告状を出す前からこうなる事を読んどっただちゃうわけやな!」

 

「そして修斗さんはそれに予告状を一部、聞いた時点で気付いたんだ!だからあの人、あんな事を……」

 

コナンの頭の中に浮かんだのは、昼間の会話。修斗は全文を聞かずとも『光る天の楼閣』の時点で溜息を吐いていた。そして神社の後には言ったのだ。『これは今夜、警察が慌てふためくな』、と。

 

「しかもその場所は、外部からそれと気付かれない為に、」

 

「警備は手薄!」

 

其処で平次は別の裏路地を右に曲がり、別の道路に出る。その空には悠々と移動するキッドの姿が見えた。

 

「こら、はよ行かな!!盗られてしまうど!!」

 

しかしやはり、空という何の弊害も障害もない所を移動していたキッドの方が一足早かった。彼は『RR』と光っていた建物な降り立つと、素早く移動を開始した。その後に到着したコナンは直ぐにバイクから飛び降り、ヘルメットを平次に投げ渡す。

 

「服部!お前は此処で待機してろ!!」

 

「なに!?おい!!工藤!!!」

 

彼がコナンを声で止めようとするが、コナンは止まらず、建物内に入っていった。そしてそのまま階段を駆け上り、最上階の部屋の扉を開ける。その目の前には、既にエッグを抱えたキッドが窓から逃げようとしていた。

 

「キッド!!」

 

その扉の開閉音でコナンに気付いたキッドは懐からトランプ銃を取り出し、コナンの足元に向けて撃つ。そしてスペードのAが床に刺さったその瞬間、煙幕が発生し、キッドの姿を隠す。しかしコナンはその煙から抜け出せば、キッドは窓に足を掛け、外に逃げてしまった。

 

「しまった!」

 

そのままキッドはハンググライダーを開き、飛んで逃げる。しかしコナンも負けていない。直ぐに窓の近くに置かれていたロープを掴み、その先に付けられたナスカンを鉄柱に付け、そのロープを下におろし、それを伝って地上に降り立った。そしてバイクに近付いてきたコナンを見てヘルメットを投げ渡し、それを受け取ったコナンはヘルメットを付けてバイクに飛び乗った。そしてそのままバイクは走り出し、キッドの追跡を再開した。

 

「ハンググライダーが飛ぶには、軽い向かい風が理想的だ!!」

 

「風上に向かって飛んでるっちゅう訳やな!」

 

コナンのアドバイスを元に、風上が吹く方面へと走る。そうして追跡しながら走っている時、キッドが高度を下げた。

 

「高度を下げ始めたぞ!」

 

「この先は大阪湾や!キッドの奴、絶対に降りよるで!」

 

平次が前方から目を背けたその時、彼はその横からトラックが来ていることに気付かなかった。直ぐに顔を前に向け、トラックの存在に気付いた時には時既に遅し。トラックとの衝突は免れたものの、バイクはそのまま滑るように転倒し、平次は受け身を取ることのないまま地面と衝突し、コナンは持っていたスケボーに飛び乗り、地面に転がる事を回避した。彼はそのまま一度平次の方へと戻る。

 

「服部!大丈夫か!?」

 

その平次はヘルメットを取りながら怒鳴りつける。

 

「なにしてんねん!はよ行かんかい!!」

 

「えっ!?」

 

「逃したら捌くぞコラァ!」

 

「……服部」

 

そんな平次の姿にコナンは心を決め、平次は頷きで返した。其処にトラックの運転手とその現場を見ていたらしい車の運転手が降りて来て、平次に近づく。

 

「大丈夫かい、ニイちゃん」

 

そんな大人2人にコナンは平次と救急車を頼み、そのままスケボーに乗り、平次に待ってろと声を掛け、キッドの跡を追う。

 

そうして追い続けて暫くした時、空を飛んでいたキッドは自分に向けられた赤い照準に気付き、その照準を向けている人物に目を向ける。その照準が右目に辿り着いたその瞬間、弾丸が一発、放たれる。

 

その一発はキッドの右目に付けられていたモノクルに当たる。そのモノクルに当たった弾の薬莢はそのまま地面に落ちて行き、コナンが通り過ぎた道路に音を響かせた。コナンも銃声に気付き、音の元凶に顔を向ければ、暗闇でよくは見えなかったが、コートと帽子を被っている事は分かった。そして、銃を持っていることも。

 

「アレは……」

 

その銃の先が空にある事から、空を悠々と飛んでいるだろうキッドへと顔を向けた。しかしそのキッドはと言えば、落ちて行っているのが分かった。それを理解すれば、今度はそのキッドに銃を向けていた人物の元へと行けば、其処に人の影は既になく、あるのは桐箱の外側が壊れたエッグと、その隣に白鳩が倒れながらも飛ぼうと羽をばたつかせる姿だけだった。コナンは迷わず鳩を両手で抱き上げ、羽の怪我の状態を見た。

 

「この傷……」

 

その傷を少し見た後、鳩を上着の中に隠し、次にエッグに視線を向けた。中身は兎も角、外側の損傷は何処にもなかった。

 

「エッグは無事だ……っ!」

 

そのエッグの隣に落ちているものに気付いた瞬間、コナンは息を飲んだ。なぜなら、其処にはレンズが割れたモノクルがあったのだ。そんな物をつけている人物は、コナンの中でただ1人しかいない。

 

(これは、キッドのモノクル!?)

 

「まさか、撃たれて海に!?……それとさっきの男……一体……」

 

その後、コナンの連絡を受けた警察の懸命な捜査で海上が捜索されたが、キッドの生死は確認することは出来ず、その翌日、エッグに傷がないかを調べるために展示を取りやめ、鈴木家の船で東京に持ち帰る事となった。その船の中にて、夏美との会話がされる事となり、エッグはその会話のために出され、全員の目のあるテーブルに置かれた。そこで夏美の話がされる事となった。

 

「私の曽祖父は『貴市』といいまして、ファベルジェの工房で細工職人として働いていました。現地でロシア人の女性と結婚して、革命の翌年に2人で日本は帰り、曽祖母は女の赤ちゃんを産みました。所が、間も無く曽祖母が死亡……9年後、曽祖父も45歳という若さで亡くなったと聞いています」

 

「その赤ちゃんというのが……」

 

「私の祖母です。祖父と両親は、私が5歳の時に交通事故で亡くなりまして、私は祖母に育てられたんです」

 

その話を壁に背を預けた状態で聞いていた修斗は、頭の中に入れる。夏美がそこで一度止まると、『沢辺 蔵之介』が口を開く。

 

「その大奥様も先月亡くなられてしまいました」

 

それに一瞬目を伏せた修斗だが、安い同情は相手に対して失礼だと思い、直ぐにそれを自身の中から追い出した。

 

「私はパリで菓子職人として働いていたんですが、帰国して、祖母の遺品を整理していましたら、曽祖父が描いたと思われる古い図面が出てきたんです」

 

彼女がそう言って鞄から取り出し、テーブルに広げたのは、エッグの絵。しかしそれは完全ではなく、丁度真ん中あたりが破れてしまっていた。

 

「『MEMORIES』……なるほど。確かにそれはエッグの様だな。図面の細工まで同じだ」

 

「しかし、これには宝石が付いていない……」

 

「元々は宝石が付いていたのに、取れちゃったんじゃないでしょうか?」

 

その小五郎の言葉に史郎が腕を組んで考え込む。そこにコナンがテーブルに近づき、図面を覗き込む。修斗はその様子を観察していた。彼の中では、大体の推測がそこで出来上がっていたのだ。エッグの装飾の違い、図面の違和感の推測が。

 

「ねえ、もしかして、エッグは二つあったんじゃない?」

 

それは修斗の推測と同じで、コナンの言葉を聞いた夏美が目をパチクリさせるのも気にせず、コナンは続ける。

 

「ほら、一つの卵にしちゃ、輪郭が微妙に合わないじゃない。本当はもっと大きな紙に2個描いてあったのが、真ん中の絵がゴッソリ失くなってるんだよ」

 

そのコナンの言葉に小五郎が納得した様子を見せる。コナンはその様子に目も向けず、エッグを観察する。

 

(しかし、何で『MEMORIES』なんだ?……お?)

 

コナンがエッグを観察中、その下側に小さな鏡を見つけた。それを指で弄れば、簡単に外れてしまい、ヤバイと思った頃にはガラスは床に落ちてしまった。

 

「取れちゃった!」

 

「何やっとるんだお前!」

 

「か、鏡が付いてたけど取れちゃった」

 

その言葉に小五郎の顔が青ざめ、蘭も焦り顔。勿論、修斗も同じで青ざめていた。

 

(あの馬鹿……っ!)

 

「コナンくん!」

 

「ああ、大丈夫。あの鏡、簡単に外れる様になってんの。どうやら、後からはめ込んだ様なのよね」

 

それを聞き、修斗はホッと胸をなで下ろす。しかしそこでふと、疑問に思う。なんの理由もなく鏡がある訳がないのだ。その意味を考えた時、彼の頭の中で答えは簡単に出てきた。

 

(あのガラス、もしかして……)

 

そして説明を耳だけで聞きながらガラスの方も観察してコナンも、光の反射で掌に映る物に気付いた。

 

(なんだ?何か映ってるぞ?……っ!これは、もしかして……)

 

それを考えれば行動は早かった。

 

「西野さん!灯りを消して!」

 

「あ、ああ……」

 

「コラッ!勝手なことを……!」

 

「まあまあ、小五郎さん。ここは様子を見ましょう。なにも、考えなしにしてる訳ではないでしょうし……な?」

 

小五郎が怒鳴り付けようとしたところで修斗が割って入り、コナンに挑戦的な目を向けながら言えば、それにコナンも受けて立つ様な笑みを浮かべて一つ頷き、腕時計の光を点け、それをガラスに向ける。するとそれは反射し、壁に一つの建物を映し出した。それに全員が目を見張る。これは流石に修斗が推測していたこととは違うもので、少々目を見張ると同時に彼の中で混乱が渦巻く。

 

そう、壁に映し出された建物はーーー城だ。

 

(どういうことだ?俺の推測が間違ってたって事か?……アレもエッグの仕掛けの一つで、もしかしたら、アルバムの中身を見る為の仕掛けの一つだと思ったんだが……俺の考えすぎか?)

 

今まで、彼の推測が間違うことはほとんどなかった。勿論、小学生といった年齢の時は間違うこともしばしばだったが、歳をとるにつれ、外れる事の方が少なくなっていたのだ。そんな外れが、考え過ぎが、今日起こったのだ。

 

(……考え過ぎ、だったのか?)

 

修斗が釈然としない思いのまま城を見つめる。

 

「ど、どうして絵が……」

 

「魔鏡だよ」

 

「魔鏡?」

 

「聞いたことがあるわ。鏡を神体化する、日本と中国にあったって言う……」

 

「そう、鏡に特殊な細工がしてあってな、日本では隠れキリシタンが壁に映し出された十字架を密かに祈っていたと言われている」

 

全員が驚いている中、少し様子が違う夏美と沢辺。

 

「沢辺さん、このお城……」

 

「はい。横須賀のお城に間違いありません」

 

それに驚きの顔をする蘭。

 

「え、横須賀のお城って、あのCM撮影によく使われる……?」

 

「はい。元々、曽祖父が建てたもので、祖母がずっと管理してたんです」

 

コナンがそこで時計のライトを消し、絵を映し出すのをやめた。それを見て、西野も電気を点けた。

 

「じゃあ、アレも香坂家のお城だったんだ……」

 

「夏美さん、二つのエッグは、貴方のひいおじいさんが作ったものじゃないでしょうか?」

 

その小五郎の言葉に全員の目が少し開かれる。しかしそこまで修斗は推測してはいた為、彼は驚く様子はない。しかし、話を聞きながらも顔を下に向け、考え込んでいた。

 

「貴方のひいおじいさんは、ロシア革命の後で夫人と共に自分が作った2個のエッグを日本に持ち帰ったんです。恐らく、この2個目のエッグに付いていた宝石のいくつかを売って、横須賀に城を建て、このエッグを城の何処かに隠したんです。そして、城に隠したというメッセージを魔鏡の形で別のエッグに残したんですよ」

 

「あの実は、図面と一緒にこの古い鍵があったんですが、これも何か……」

 

そう言って彼女が鞄から取り出したのは、確かにとても古さを感じる鍵。

 

「それこそ!2個目のエッグが隠してある所の鍵に違いありません!」

 

「宝石が付いた幻のエッグ……」

 

「もし、それが見つかったら10億、いや、15億以上の値打ちがあるぞ」

 

将一のその言葉にセルゲイは言い返せない。そしてその値段を聞き、コナンはキッドが狙った理由はそれかと考え、修斗を見る。修斗はずっと顔をうつむかせていた。

 

(もしそれが正解だとすると、修斗さんの推測は間違った事になる。……いや)

 

そんなコナンの様子など気付かず、夏美が小五郎に東京に戻ったら一緒に城に同行してほしいことを言い、小五郎もそれを了承する。それを聞き、エッグを狙っていた全員が同行すると言い出し、夏美はそれに嫌な顔一つせず受け入れる。コナンはそんな全員の様子に驚く。

 

(なんだ?皆んな、目の色が変わったぞ?……二つ目のエッグも狙うつもりなのか?)

 

その後、東京に行くまでの間、全員が自身の部屋へと戻っていった。蘭とコナンもまた、自分達の客室に戻り、コナンが連れて帰ってきた鳩の治療をし、羽に包帯を巻いた。

 

「ふう、出血は止まったし、傷口さえ塞がればまた飛べるようになるわ」

 

「本当?良かった!」

 

「服部君も幸い、軽い捻挫で済んだけど、キッドは死んじゃったのかな……?」

 

蘭が顔色を曇らせ、キッドの安否を心配する。コナンもまた、キッドの安否を考え出した。

 

(奴があんなことで死ぬわけがない。もしかしたら、既にこの船に……)

 

その時、客室扉が2回ノックされた。それに蘭が返事をし、扉を開ければ、その前にはカメラを構えた寒川がいた。寒川はどうやら上機嫌のようだ。

 

「ん〜!いいね、その表情!いただき!」

 

寒川はそう言って一つウインクをすると、歩いて行ってしまう。そんな寒川を背中に、コナンはジト目を向けた。

 

(なんだよ、あいつ)

 

「はーい!蘭!」

 

その声に気付き、後ろを向けば、園子と夏美、西野がいた。

 

「遊びに来たよ!」

 

「夏美さんと西野さんも!さあ、どうぞ!」

 

蘭の許可を聞き、客室の中に入っていく3人。しかしその瞬間、鳩が驚いたのか羽ばたき、西野もそれに気づいて何故か鼻と口を手で覆った。

 

「僕、やっぱり遠慮します!」

 

西野が慌てて出て行き、そんな様子に4人が頭に疑問を浮かばせるが、園子が何かに気づいた様に目を輝かせる。

 

「そっか!美女ばかりだから照れてんだ!可愛い〜!」

 

そこで園子は何故かコナンの手を取り、また部屋を出て行こうとする。その目的は、もう1人の美女であるチャイニーズドレスを着た青蘭を連れてくるためだ。青蘭を呼びに行き、青蘭からも了承を得て、今現在、彼女が用意をしたいからと言う事で、コナンと園子は部屋の外で待っていた。コナンはそこで部屋の中にある写真立てに気付く。どんな写真かは見ることは叶わないが、裏に書かれた文字に気付いた。園子もそれに気付き、笑顔を浮かべる。

 

「もしかして、彼氏の写真?」

 

その問いに青蘭が驚いた様に目を開くが、それに笑顔を浮かべて肯定しながら写真を伏せた。

 

「いいな〜。皆んな旦那がいて。こんな事ならぜったいキッドをゲットしておくんだった」

 

その言葉にコナンは呆れ顔。

 

(オメーがゲット出来んなら警察は苦労しねーよ)

 

そのまま青蘭を連れて蘭とコナンの部屋に戻り、茶会が始まった。そこで夏美の話を聞き、蘭と園子が尊敬したような目を向けた。

 

「へ〜!夏美さん、20歳の時からパリにいるんですか?」

 

「そうなの。だから時々、変な日本語使っちゃって。あ、変な日本語って言えば、子供の時から妙に耳に残って離れない言葉があるのよね」

 

「へー?なんですか?」

 

「バルシェ 肉買ったべか」

 

「「え?」」

 

その夏美の言葉に蘭も園子もよく分かってない顔をする。そんな言葉、聞いたことがないのだ。夏美はその言葉の意味を『バルシェが肉を買った』と言う意味だと解釈していると言い、しかし『バルシェ』という人物に心当たりはないと言う。その時、コナンが夏美の目の色に気付き、それを質問すれば、夏美は笑顔で「灰色なの」と言う。その色は遺伝のようで、母親と祖母も同じだったと言う。その血は多分、曽祖母から受け継いだのだと言った。そこで蘭が青蘭の瞳も灰色じゃないかと言えば、夏美とコナンが驚き、青蘭は微笑みを浮かべる。園子が中国の人も灰色なのかと言った。そこで話は終わり、別の話題として蘭が名前のことを振った。

 

「あの、青蘭さんって『青い蘭』って書くんですよね?私の名前も『蘭』なんです」

 

「『青蘭』は日本語読みで、本当は『青蘭(チンラン)』と言います」

 

「チンラン?」

 

「『青』が『チン』、『蘭』が『ラン』、『浦思』が『プース』で『浦思 青蘭(プース・チンラン)』です」

 

「『蘭』は中国読みでも『ラン』なんですね!」

 

「そうです。『毛利』は『マオリ』」

 

「じゃあ私の名前は『毛利 ラン(マオリ・ラン)』か。ふふ、なんか可愛くていいな」

 

蘭の嬉しそうな様子に、園子も自分はと聞いた。

 

「『鈴木園子』さんは『リンムー・ユーアンツ』です」

 

その読み方に園子が微妙な表情をする。そこに夏美が青蘭は自分と同じ歳ぐらいだと思うと言えば、青蘭は一つ頷き、27歳だと答える。それに夏美が喜び、何月生まれかと問えば、青蘭は5月5日と答え、それに更に喜ぶ夏美。彼女は5月3日らしい。そこにコナンが2人は自分と一日違いだと言うと、蘭が目を見開く。何故なら、『5月4日』は新一の誕生日だからだ。

 

(こんな偶然って……もしかして……もしかして、やっぱりコナン君は……)

 

そこてまコナンと新一の顔を彼女は頭の中に浮かばせ、首を小さく振る。

 

(馬鹿ね……そんなこと、ある訳ないじゃない。いつもあいつのことばっかり考えてるから……本当、私って馬鹿……)

 

そんな蘭の様子に気づかないまま茶会は進み、時刻は夕方。コナンが夏美と青蘭と共に船のデッキへと出れば、小五郎が史郎と寒川、修斗と共にビールを飲んでいた。そして夏美達を見つければ、史郎と小五郎、修斗が立ち上がる。

 

「おお!夏美さんと青蘭さん!貴方方も一緒にどうです?」

 

小五郎と史郎が紳士的に椅子を引き、それを見て修斗が自分の席にもう一度座り直した。青蘭が席に座った後、脚を組み、その時に見えた生足に小五郎が喜びの顔を全面的に出した。

 

「いや〜!色っぽいですな〜!」

 

(はは、しょうがねーなこのオヤジ……)

 

小五郎が青蘭にビールを入れた時、寒川のペンダントに青蘭が気付き、眉を寄せる。

 

「寒川さん、そのペンダント……」

 

「ほー?流石、ロマノフ王朝研究家。よく気付いたね……見るかい?」

 

そう言って寒川がペンダントを差し出す。しかしコナンがそれに疑問を抱く。

 

(あれ?あの人、あんな物付けてたっけ)

 

「……言っとくが、あの人、このテーブルに来た時から付けてるからな」

 

そんなコナンの隣に座っていた修斗が、コナンの思考を読みそう言えば、コナンは少々冷や汗を流しながらも礼を言った。

 

急に心を読まれれば、誰でも焦るものである。

 

青蘭が空に掲げて首に下げられていた指輪を見る。そこには文字が彫られていた。

 

「『Maria』……まさかこれは、ニコライ二世の三女、マリアの指輪?」

 

「あんたがそう言うんなら、そうなんだろ?」

 

寒川は椅子から立ち上がり、青蘭からペンダントを受け取ると、それを首に掛けた。

 

「それをどこで!?」

 

そんな青蘭の質問に答えず、寒川は去って行く。小五郎が本物なのか疑問視し、青蘭も本物かどうかは詳しく鑑定しないと分からないと言う。

 

「おい、西野君。ボールペン、落ちそうだぞ」

 

「あ、どうも」

 

西野はそこで左手に飲み物を乗せたお盆を持ち、右手で右の尻ポケットに入れていたボールペンを挿し直す。そんな会話を聞いていたらしい将一、セルゲイ、沢辺に見向きもせず、寒川は去って行く。そして夜となった時、西野が小五郎の部屋を叩く音に気付いた修斗。彼は蘭とコナンの部屋とは反対の部屋におり、誰が叩いているのかと開いた頃には小五郎も出て来ていたようで、彼がもう晩御飯なのかと聞くが、西野の焦った様子に嫌な予感がした修斗。そしてその予感は、的中する。

 

「寒川さんが、寒川さんが死んでるんです!」

 

その言葉に、修斗、小五郎、そしてちょうど出て来たコナンと蘭の目が開かれる。すぐに寒川の部屋を見れば、そこにはーーー部屋が荒らされた状態の中、顔から血を流して仰向けに倒れる寒川がいた。

 

「寒川さん……」

 

部屋が酷く荒らされ、枕からは羽毛まで飛び出していた。時刻はPM8:03で止まっている。小五郎が部屋の惨状を見る中、コナンもコッソリと入っていたようで、寒川の遺体を見てあることに気付いた。

 

「右目が撃たれてる……っ!」

 

そこで思い出すのは、キッドのモノクル。キッドも右目を撃たれたのだ。

 

そこで小五郎に捕まり、部屋の外に向けて投げられる。そんなコナンを心配する蘭を気にせず、一つ舌打ち。小五郎が寒川の遺体を触り、頬の硬直が始まったばかりであることを確認する。

 

「死後30分程しか経ってねーな」

 

そこで寒川の首元を見て、指輪のペンダントが失くなっていることに気付く。勿論、これが殺人事件であることは明白であり、客を全員一箇所に集めるように指示を出し、警察を呼ぶようにとも伝え、史郎もそれに頷き、警察に連絡を取る。取ったのは目暮であり、高木と彰、数人の鑑識とともにエレベーターを降りれば、警視庁の廊下で荷物を持った白鳥と出会う。

 

「ああ、目暮警部」

 

「あれ、白鳥?」

 

「白鳥くん。休暇で軽井沢じゃなかったのかね」

 

「別荘にいても退屈なので……事件ですか?」

 

白鳥が真剣な顔で尋ねれば、それに目暮は丁度良いと、白鳥も同行するように言い、警察ヘリに乗って船へと向かったのだった。


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