とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

28 / 83
第16話〜競技場無差別脅迫事件・後編〜

片方の犯人を捕まえようとした警部達だったが、しかしその犯人は拳銃を持っておらず、最悪なことに別の犯人とも通話状態だったようで、競技場に警察がいることが暴露てしまった。お陰で犯人は見せしめとして1人殺すと言い出し、目暮も彰もやめろと叫ぶ。しかし相手は愉快そうに笑うだけ。

 

「そ、それだけはやめてくれ!そちらの要求はなんでも飲む。だからっ!!」

 

「わ、我々ももう手を引く……犠牲者だけは出したくない」

 

その言葉に電話の相手は優越感を得たのだろう。少々機嫌が直ったことをその相手の声色と言葉が伝えてくる。

 

『よし、良いだろう。埋め合わせのチャンスをやろう』

 

「埋め合わせ?」

 

『そうだ。サツにタレ込んだ日売テレビさんに、追加料金を払ってもらうんだよ……10億円だ。試合終了までに10億円をバッグに詰めて、同じ18番ゲートに積んでおけ。時間までに用意出来なければ、観客を1人撃ち殺す!』

 

その金額にその場の全員が目を見開く。金子も無茶だと言えば、相手の起源は急降下。

 

『なんだ?俺の分が払えねえってか?』

 

目暮はそこで無線を使い、マークしていた8人のなかで携帯を使っている者はいるかと問うが、しかしそれらしい人物は1人もいないと返ってくる。

 

(バカなっ!一体奴は何処から掛けてると言うんだ!!)

 

そんな様子を何処からか見ていたらしい犯人が高笑いする。

 

『はははっ!無駄無駄。あんた達サツがいくら目を凝らしても、俺の姿は見えねえよ』

 

「なにっ!?」

 

『そうそう。観客席をウロついてるデカ連中は今すぐ引き上げてもらおうか……分かってるだろうが、こっちには56,000人の人質がいるんだ。逆らえばどうなるか……』

 

それがただの脅しでないことは初めの発砲から分かってしまったことだ。目暮はそれを聞き、全員を撤退させると言う。それに対して、犯人は誤魔化すなよ、すべてお見通しだと注意喚起してきた。しかし紛れているのは私服警官達。そうそう判断できる者ではないと、そう思っていた。だが、その考えは甘い。

 

『正面スタンド最上段、通路の左サイド寄りで煙草を吸ってる男。正面スタンドの下から二列目、新聞で顔を隠している女。その斜め前、最前列の手摺にもたれかかっている男2人……皆んなデカだろ?』

 

その言葉は確かに当たりだ。指摘された全員、私服警官達だ。これにはまた目を見張るしかなかった。一体、犯人は何処で、どうやって、彼らが刑事だと理解したのか、目暮達には理解出来なかった。

 

『もっと言ってやろうか!正面スタンド右側、ゴール脇にいる太った男!』

 

そこで盗聴器からずっと聞いていたコナンがバッチで光彦達に連絡を取った。

 

「おい元太!光彦!歩美!オメー等今、バックスタンドにいるって言ってたよな!?近くに双眼鏡かなんかのぞいてる奴、いねーか?」

 

『いますよ、いっぱい。なにしろ、ハーフタイムになって引き上げる選手達の顔を、見てるみたいです』

 

「馬鹿野郎!奴が見てるのはグラウンドじゃなくて、観客席だ!しかも奴は今、電話を使ってるんだ!そんな特殊な奴は、この56,000人の中で、たった1人しかいないはず!!」

 

そこで歩美がそんな特殊な人を発見した。どうやらその人物は、双眼鏡を除き、観客席を見ているらしい。

 

「そいつ何処にいるんだ?歩美」

 

『バックスタンドの真ん中、階段のとこよ!でも、電話じゃなくて音楽聴いてるみたい』

 

「音楽?」

 

その言葉にコナンは疑問を浮かべるが、歩美はその男がイヤホンをつけていること、その途中に変な物がくっ付いていることを伝えれば直ぐにそれが何かを理解する。その変な物は、イヤホンマイクであること。それをくっ付けている事を。それを使えば早々暴露ることはない。携帯を耳に当てて会話するよりも刑事に見つかりにくく、監視からすり抜けることは可能だ。

 

「歩美!絶対に其奴から目を離すな!其奴が犯人だ!!」

 

その言葉に子供達3人は驚きの声をあげる。そしてコナン、咲、哀はその人物がいる方へと走り出した。そんな3人とは逆に、その犯人を監視していた歩美。そこに光彦と元太が合流した。

 

「歩美!……犯人はどいつだ?」

 

元太の質問に歩美は一番上の席の方、ずっと双眼鏡であたりを見渡している人物を指差した。その人物は帽子とコートを羽織っている。

 

「帽子といい、コートといい、怪しいですね」

 

「ああ。いかにも犯人ヅラだ」

 

そこで元太と光彦は互いに顔を向け、目を合わせて一つ頷く。そして声をあげながら犯人へと駆け寄った。犯人はそこで2人の声に気付き、その声がする方へと視線を向けた。そして2人が自分へと向かっていることを理解すると一瞬驚くが、2人はそのまま犯人へと飛びかかる。そして犯人を捕まえたところでコナン達がやって来る。

 

「2人とも離れてろ!今其奴を眠らせて……」

 

コナンが麻酔銃を使おうと構えた時、その場の全員がその顔を見てキョトン顔を浮かべる。なぜなら、その人物はとても見覚えがある人物だったのだから。

 

「「た、高木刑事……」」

 

それに気付けば直ぐに高木は解放され、現在は観客席から移動し、出入り口付近の廊下にて会話がされていた。

 

「たくっ、紛らわしい格好をするなよな!」

 

「そうですよ!」

 

「仕方ないだろ、無線機が壊れていたんだから」

 

高木がコート姿から元のスーツ姿へと着替えながら答えたその言葉に、全員が驚く。どうやら彼の無線機だけ調子が悪かったらしい。しかし携帯を使えば犯人と紛らわしい為、イヤホンマイクを付けて目暮と連絡をとっていたと彼は言う。

 

「それで?ねえ、犯人の相棒は!?」

 

「金を持って競技場を堂々と出たらしいよ。尾行したら観客を撃ち殺すって、犯人の仲間から脅されていたからね」

 

「競技場を出たのは、その人だけ?」

 

その言葉に高木は肯定を返す。犯人以外、誰も出ていないのだと言う。つまり、犯人の仲間は未だ競技場にいることになる。それを聞き、捕まえるチャンスはまだあると子供3人は喜ぶ。

 

「でも、随分欲張りな犯人ですね。10億円を上乗せしろなんて……」

 

「いや、犯人はその金が欲しいんじゃない」

 

「ええ。咲の言う通り、多分、今度はお金が目当てじゃないわ。10億円なんて、45分で用意できるお金じゃないもの」

 

「北星家だって匙を投げるレベルだな。そんな金、直ぐには用意できん」

 

「じゃあどうして?」

 

その言葉にコナンは冷静に答える。

 

「最初から、誰か撃ち殺すつもりなんだ……試合終了のホイッスルと共にな」

 

それに子供3人は驚きの声をあげる。しかしそう考えるのが一番理屈が通るのだ。誰だって、10億円という大金を、短時間で用意など無理な事は考えれば分かるのだから。

 

子供達はその後、高木と共に競技場の外へと出た。そこには目暮達もいた。どうやら犯人の片割れを追ったらしいが撒かれたらしい。しかし派手に追えば観客の命が危ないのは明白であり、犯人からも脅されていた事だ。追っていた刑事の1人がナンバーを控えたらしいが、それは盗難車だったと報告が上がる。もう1人の犯人を見つけようにも、刑事達は犯人の要望を飲み、全員が競技場から撤退させられている。これでは探せない。そこで方法を考えている目暮にコナンが方法を一つ伝えた。

 

「ビデオを見てみれば?」

 

「ん?」

 

「その電話があった時も、空いてるテレビカメラで観客席を撮ってたんでしょ?だったら映ってるかもしれないよ?電話しながら双眼鏡であたりを見渡してる、おかしな人が」

 

「なるほど」

 

「金子さん、そのビデオは直ぐ見れますか?」

 

彰がそう問えば、金子は大丈夫だと答えた。しかしその映像の中にはそんな不審人物はどこにも見当たらなかった。

 

「警部、正面スタンドにもバックスタンドにも、そんな人物は見当たりません」

 

「そんな馬鹿な!!競技場に来ているマスコミはチェックしたのか!?望遠レンズ付きの写真機なら、かなり遠くまで見渡せるはずだぞ!!」

 

その目暮の問いに、カメラマン席に張り込んでいた刑事がそんな人物はいなかったと証言する。

 

「それに、カメラのファインダーを覗きながら電話をすれば、いくらなんでも周りの人が不審がりますよ」

 

それは確かに、と納得する彰。しかしコナンは納得しない。

 

(冗談じゃねえ!じゃあ犯人はどうやって電話を掛け、どうやって辺りを見渡したって言うんだ!誰にも気付かれずに……一体どうやって?)

 

その時、金子から約1億は用意出来たと伝えられた。やはり短時間で10億はとてもじゃないが無理だったようだ。

 

「もうこの際、修斗にでも手伝ってもらう?お金集め」

 

「ウチも無理だ。あと約9億だって、この短時間で用意するのは難しいぞ」

 

「だよね……」

 

彰の冷静なその言葉に、瑠璃は眉を寄せる。彼女は冷静な表情をしながら怒っているのだ。そして二人の会話を聞いていた目暮は残りは新聞紙か何かで誤魔化そうと言う。そこで高木が目暮に先程のコナンとの会話を思い出し、先程の内容を伝えた。

 

「だから、犯人が欲しいのは最初の5000万円だけで……」

 

「おいおい、まさか……犯人は最初から、試合終了と共に誰かを撃ち殺すつもりだったんじゃ!?」

 

「そ、そんな!?……どうして?」

 

目暮は金子に最近、日売テレビが恨みを買った事があるのではないかと詰め寄るが、金子はないと答える。

 

「ねえおじさん!犯人から掛かってきた声って、皆んな同じ人だった?」

 

そのコナンからの質問に、金子は声は篭っていたが三回とも同じ男だったと思うと答える。それを聞き、電話を掛けてきた人物とボールを撃った人物は別人なのだから、お金を取りにきた人物がボールを撃った人物かと確認をする。それに金子も頷く。しかしその人物は拳銃を持っていなかった。それは何故なのか、考えれば自ずと答えは出てくる。

 

「まさか……仲間に拳銃を渡した!?」

 

それに気付けば後は探すのみ。ボールが撃たれた前半10分過ぎから、最初の金を取りにきたロスタイムまでの35分間のビデオをすべてチェックし直せと指示が入る。接触した人物が犯人だと。そして映像を見始めて数分。あのマスクの男が観客席の通路を通っているのを発見した。しかし、その映像は直ぐにカメラが動き、男が外されてしまった。他にも映っている可能性はあるものの、しかしその可能性自体は実は低い。それにコナンも、彰も、理解している。その上、拳銃を渡したと言う確証もない。捨てた可能性が排除されていないのだから。

 

(でも、俺達が犯人を見つける手立ては……)

 

(……もうこれしかない!)

 

コナンとの彰の考えは一致する。しかし時間は無情な過ぎていく。すでにロスタイムが迫ってきていた。それに焦り始める刑事の面々。焦れば焦るだけ、視界は狭く、見逃す物も多くなる。しかしそれを理解していても、どうしようもないことでもあるのだ。

 

(くそっ!もう時間がねぇ!)

 

コナンも焦り始める。あのマスクの男は何処かと視線を何度も移動させ、画面の中から男を探す。

 

(どこだ!どこだっ!!どこにいるんだ!?)

 

試合はそろそろロスタイム。コートの中の審判も、ホイッスルを口に咥え、腕時計を確認している。それでも犯人は見つからない。手掛かりさえも掴めない。

 

(頼むっ!)

 

コナンは願うーーーその場の誰もが望む願いを。

 

(頼む、時間よっ……止まってくれっ!)

 

「焦っちゃダメ」

 

そんなコナンに冷静な言葉が投げ掛けられる。その言葉を投げかけた人物ーーー哀に視線を向ければ、哀はジッと画面を見据えたまま、言葉を続ける。

 

「時の流れに、人は逆らえないもの。それを無理やり捻じ曲げようとすれば……人は罰を受ける」

 

その言葉の意味を、コナンはこの時、理解出来なかった。その意味を問いかけるが、哀は答えない。更にその隣にいる咲も見たが、コナンに視線を向けることはなかった。コナンは哀に視線を向けたまま立ち尽くしている。そんな時、子供3人が声をあげた。

 

「ああっ!?」

 

「これでもう3回目ですよ?」

 

そんな3人の様子にコナンは呆れた様子を見せた。

 

「こんな時に試合見てはしゃいでんじゃねえよ」

 

しかしそれに歩美は違うと否定する。光彦達はちゃんと犯人を探していたのだ。しかし元太はその男が直ぐに画面から消えると言う。それにコナンは信用ない顔を全面に出しながら元太が指差す画面を見る。

 

「ほら、映ったかと思えば……」

 

その言葉の直ぐあとに、カメラが直ぐに動き、消えてしまった。

 

「これは……13カメだろ?」

 

「ついてねーな……」

 

しかしコナンも、彰もそうは思わない。なぜなら、先程も男が映ったかと思えば移動してしまったのだから。

 

(そうか……そうか、そうだったんだ!)

 

その時、ロスタイムに入ってしまった。そこで警部は仕方ないと1億円をカモフラージュの鞄と共に置いて監視をすると言う。その他は試合終了と共に観客席に突入すると指示を受け、瑠璃は彰の腕を引っ張り、移動した。それを見送った子供達3人と哀と咲。

 

「……あれ?コナンくんは?」

 

子供3人がコナンを探す間、咲と哀は画面に視線を戻す。そのコナンはと言えば、犯人の後ろへと移動していた。

 

「……やっと分かったよ、おじさん」

 

その声に、目付きの悪いカメラマンの男は立ったまま目だけコナンへと向ける。そのコナンはと言えば、自信満々な笑みを浮かべて、カメラマンの男を見据える。

 

「おじさんでしょ?日売テレビを脅迫してた犯人」

 

コナンが対峙している男……それは、先程も問題視されていた、13カメラを担当しているニット帽を被った男だった。

 

「おじさんなら、テレビカメラで辺りを見回しても不自然じゃないし、携帯電話につなげたイヤホンマイクをインカムの下に付けて喋っていても、怪しまれない。それに、日売テレビを脅しているのが、同じテレビ局のカメラマンだなんて、誰も思わないしね」

 

それにカメラマンの男は悪い笑みを浮かべ、試合の様子をカメラ越しで見ながら答える。

 

「……よく分かったな、小僧」

 

「おじさんが撮った映像のビデオを見たんだよ。犯人の仲間が4回映ってたけど、4回とも直ぐにフレームアウトした。それで分かったんだ。……偶然撮れなかったんじゃなく、仲間を庇ってワザと撮らないようにしてるって。それに、犯人が電話で指摘した刑事達の位置は、全て正面スタンド。その姿を捉えられるなら、バックスタンド側に一台しかない、そのテレビカメラのみ。……つまり、すべての条件を兼ね備えているのは、おじさんしかいないって訳さ」

 

そこで二人の雰囲気が変わる。一触即発な、お互いに警戒心剥き出しな状態へと。

 

「……どうする?」

 

コナンのその挑発的な笑みと言葉を犯人に向け、犯人は視線だけを後ろに向ける。

 

「自首する?おじさん」

 

コナンは後ろ手に麻酔銃を準備する。犯人は胸ポケットに右手を入れた。

 

「ああ、仕方ないな……そうするよ」

 

そこで男はニヤリと笑い、ゆっくりと振り向く。その男の首に標準を合わせ、コナンは麻酔銃を撃つ。しかしその針は男が取り出した拳銃に阻まれ、弾かれてしまった。

 

(しまった!)

 

「……と言いたいところだが、そうは行かねえんだ」

 

これで男の形成逆転。コナンに打つ手はなく、男は拳銃をコナンに向けている。

 

「こっちにも色々と事情ってもんがあるんでね」

 

「ベレッタ?……トカレフじゃないね」

 

「ああ。相棒のチャカなら、競技場のどっかのゴミ箱の中だ。ベレッタもトカレフも、みんな一年前の銀行強盗の為に用意したもんだ」

 

そこで男が語る『事情』。それは一年前、三年間有りっ丈の金をつぎ込み、練りに練った計画は完璧だと自信を持った。その作戦実行の当日、銀行でタレントの一日支店長というイベントが行われ、それを見に来た客がごった返していなければという。それを犯人は下らないとバッサリと言い捨てた。

 

「その金をアテにしてた俺の女は落ち込んで酒浸りになり、挙げ句の果てには自殺。あの日、日売テレビが企画した馬鹿なイベントのせいでな!!」

 

「なるほど?その恨みを晴らす為に、日売テレビのカメラマンになったってわけか……でもどうするの?今ここで僕を撃つと、誰かに気付かれちゃうんじゃない?」

 

コナンのその言葉に、男は鼻で笑う。誰も気付きはしないと。

 

「見てみろ。観客の視線は試合に釘付けだ。この歓声でサイレンサー付きの拳銃の音なんて、微塵も聞こえやしねえ。現に、お前がグラウンドに降りたことさえ、誰も気付いちゃいねえじゃねえか。お前を撃つのは試合終了の瞬間。歓声は悲鳴に変わり、パニックになる。その騒ぎに乗じて俺は逃走し、テレビにタレこむんだ。『俺は日売テレビが金を出し渋った所為で、ガキを一人殺っちまった犯人だ』ってな!」

 

そんな会話の時、コートからボールが勢いよく飛んできた。それは二人の間の丁度真ん中辺りでバウンドし、そのまま壁へとぶつかり跳ね返る。そのボールへと犯人の意識は移動した。

 

「なに?」

 

そこでコナンはニヤリと笑い、その場でジャンプ。犯人と対峙する前に準備していたキック力増強シューズを使い、そのまま体をバク転する要領で狙い定めたボールを蹴る。それはものの見事に犯人の顔へと吸い込まれ、犯人の左頬にぶち当たり、犯人はその勢いのまま試合コート内に飛ばされ、気絶する。その瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。サッカーの結果は2対1でビック大阪の勝ちとなり、一番の活躍をしたラモスが仲間の選手達から喜びのハグや褒め言葉を投げかけられていた。そんなラモスにコナンは声をかける。

 

「ラモスー!ナイスクリア!」

 

そんなコナンの褒め言葉にラモスは目をパチクリさせてコナンを見つめていた。

 

その後、犯人は試合終了と共に突入してきた刑事達に逮捕され、その30分後、犯人の家にいた仲間も捕まえられ、天皇杯は何事もなかったかのごとく、フィナーレを迎えた。しかし、事件に巻き込まれ、自らも巻き込まれに行ったコナン達はまともに試合を見れなかったことに肩をガックリと落としていた。

 

「ちぇ〜、もっとちゃんと試合を見たかったなぁ」

 

「知らないうちに犯人、捕まっちゃうし」

 

「少年探偵団、良いとこなしですね」

 

「んなことねえよ。事件解決はオメー等のお陰でもあるって、警部さん言ってたぞ?」

 

そのコナンからの伝言に子供3人は大喜び。

 

「それにしても、あんな手掛かりだけで目的の人物を探し当てるなんて、流石ね、工藤くん。ますます興味深い魅力的な素材だわ」

 

その哀の言葉に隣にいた咲は苦笑い。コナンはジト目で哀を見据える。

 

「ふっ、84歳のババアに言われたかねえよ」

 

それに哀は和やかに笑う。

 

「あら?私本当は、貴方と同い歳の18歳よ?」

 

「え?」

 

「なーんてね」

 

それにコナンは困り顔。どれが嘘でどれが本当か、ヒントがないに等しい為に判断が出来なかったようで、次に視線を咲に向けた。その中には審議を問うものもあり、咲は笑みを浮かべただけで黙秘を貫くことにした。彼女にとっては、折角、哀が楽しんでいるのにそれを奪うつもりは全くないのだから、黙秘は当たり前だ。コナンもそれを理解し、溜息を一つ吐き出したのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。