とある六兄妹と名探偵の話   作:ルミナス

17 / 83
14番目の標的編
第11話〜14番目の標的・1〜


蘭はパジャマ姿のまま、どこかの遺跡のような所の階段を何の違和感も持たずに登っていく。そして登った先には、蘭の母である凄腕弁護士『妃 英理』がいた。

 

「お母さんっ!」

 

思わずそう声を掛ければ、英理は笑顔で振り向く。そんな2人の間を風が吹き抜けること数分。漸く蘭が喜びで駆け足で近づいた瞬間。

 

「来ちゃダメ!蘭!」

 

その英理の必死な声に蘭も急停止をする。素足が大理石の床を滑る。それと同時に後ろからは拳銃の音が響く。それに思わず振り向く蘭だが、自身に痛みはない。それに気付き急いで前を向けば、英理が辺りに血を撒き散らしながら倒れていく。

 

そこで蘭は飛び起きた。そう、今までの全て、夢だったのだ。

 

それは理解出来てもやはり心配だったのか、彼女は直ぐに母親に電話をかけた。

 

『え?私が拳銃で撃たれる夢?……それでこんなに朝早くから電話してきたの?』

 

「だって心配じゃない。弁護士って人から恨まれたりすることもあるんでしょ?」

 

『考えすぎよ、蘭。貴女色んな事件を見てきたりしてるから、そういう夢見ちゃうのよ!』

 

それを聞き、母が無事で良かったと安心した声色で言う蘭。

 

「そうそう!夢に出てきたお母さん、今より少し若かったよ!」

 

それを聞き、牛乳を入れ終えたにも関わらず、口が閉まらない。しかし、直ぐに意識を戻した。

 

『あらっ!失礼ね!私は今でも若いつもりよ!』

 

その言葉に蘭は笑い、巫山戯ながらも謝れば、それに乗ってくれる英理。そして2人とも楽しげに笑った。

 

「じゃあ、今夜7時ね!お父さんもコナンくんも楽しみにしてるから!」

 

蘭はそれを伝えて電話を切った。英理も電話を終えた後、ソファに移動し考える。彼女が見た夢のことを。

 

(あの子、覚えているのかしら……?)

 

そう思いながら向けた視線の先は、自身の太もも。其処には一線だけ引かれた傷跡があった。

 

***

 

それから時間が経ち、咲がコナン達と共に米花駅やって来てみれば、其処には占いゲームがあった。歩美がそれに興味を持ち、咲とコナン達は近くのベンチに座ってそれが終わるのをアイスを食べながら待つ事になった。

 

「あっ!元太くん、それも食べるんですか?」

 

「良いじゃねえかよ!何本食ったって!今度はブラックチョコバー。大人の味だ!」

 

「えっ、本当ですか?」

 

((なわけないだろ))

 

この時、お互いまだ小さくなった事を知らない同士であるにも関わらず、考えが一致したのはこの時の2人はまだ知らない。

 

(しっかしおっせーなー……)

 

「その阿笠博士って人、まだ来ないの?」

 

「ああ、まだみたいだ……」

 

「そうか」

 

咲は其処でソーダアイスを食べるのを再開した。まだなら焦っても仕方ない。と、そこで歩美が声をあげた。それを何事だと気になり見てみれば、彼女がしていた占いで『貴方と彼は相性はピッタリ!』と中々に高評価が出ていた。

 

「私とコナンくん、相性ピッタリ!」

 

その言葉に男衆が騒つく。1人コナンだけはあり得ないという顔を浮かべたあと、つまらなそうな顔に変わる。彼はそういうオカルトじみたものはそもそも信じないタチであり、その上彼女がしていたのが機械ならもっと胡散臭くなる。しかし、まだまだ純粋な子供3人組はそれを信じた。

 

「ま、マジかよっ!」

 

「と、というより元太くん!トランプ占いなんて、所詮嘘っぱちですよ!」

 

その言葉に歩美がムッとした顔で光彦を見るが、彼のソーダアイスが溶けて落ちた時、クスクスと笑いながら画面に視線を戻せば、今度はコナンの占いを始めた。

 

「ふふっ、中々に愛されてるな」

 

「うっせ」

 

そして出された結果は『意中の人と急接近!』だった。

 

「わーっ!きっとこれ、私とコナンくんの事よ!」

 

「えーっ!」

 

元太がそこで近寄った時、画面が変わって文字は『Aの予感』と変わった。

 

それに光彦、コナン、咲は反応する。

 

(おいおい、何年前のゲームだ?それ)

 

(中々に古そうなゲームだな、アレ)

 

「ねえ、『A』ってなに?」

 

「Aというのはつまり、Bの前の文字で……」

 

「エビフライのことだよ!」

 

「なーんだ、キスの事じゃないんだ」

 

それに今度は4人が反応する。

 

(おっと。彼女、中々に鋭いぞ。まだ純粋で救われた)

 

そんな時、白い羽織を着た白髪のおじいさんがやって来た。その間、4人は腕組みをして後ろを向いて待っていたが、咲に関しては初対面なのだからと怒ることはなく、後ろを向かずに空を見上げていた。その右手には使い切りカメラを持ち、空を一枚撮影した。

 

(……空はあんなに高いんだな……)

 

「すまんすまん!寝坊して……」

 

『たくっ!遅いよ博士!』

 

「すまん……」

 

4人の怒ったような声に博士は謝る他なく、その様子を見ていた咲は可笑しそうに小さく笑っていた。そうしてその場を立ち去り、やって来たのは『東都航空記念博物館』。文字通り、色々な航空機が展示されている。5人が中に入れば、色々な航空機が所狭しと展示されていた。

 

「「「わぁ!すごい!」」」

 

そして5人は博士と共に色々な展示場所を巡っていく。中には体験ブースもあり、航空機の中に入ることもできた。そしてヘリコプターの模擬体験が出来るブースに来ると、子供達3人がワクワクし始めたが、しかし操縦が出来るのは小学校5年生以上の年齢であることが条件だった。つまり、今の3人には操縦出来ないのだ。

 

「えーっ!つまんない!」

 

(これはちょっと楽しみにしてたのに……)

 

(悪いな。俺は5年生になった時、名一杯やってんだ)

 

4人が其処で不満そうな顔をしていると、そこで阿笠が頭を捻り、一つの問題を出そうと言ってきた。

 

「おい、やめさせねーと長〜い話されるぞ」

 

「僕に任せてください」

 

3人が話し合いをし、そして阿笠がギリシャ神話の話をし始めた時、光彦が急にクイズを出してきた。それに阿笠は目が点になったが光彦は止まらない。これは阿笠の『長い話』を止めるための策なのだから。

 

「なんじゃ、いきなり」

 

「元旦とエイプリルフールとこどもの日に産まれた三人が集まって会を作りました。さて、なんていう会でしょうか?ヒントは、ペガサスのように空を飛ぶ動物です!」

 

それにコナンと咲がクスリと笑う。それに光彦が反応した。

 

「あれ、コナンくんと月泉さん、分かったんですか?」

 

「勿論!」

 

「同じく。あと、咲でいい。言いにくいだろうしな」

 

咲がそう訂正したあと、説明しだす。

 

「その三人の誕生日を足せばいい」

 

「誕生日?」

 

「1月1日、4月1日、5月5日……10月7日?」

 

「そう、10月7日。『トナカイ』だよ。107会。クリスマスの時、ソリを引いて空を飛ぶだろ?」

 

それに博士を入れた三人が尊敬の目を向け、光彦が正解という言葉をだす。

 

「流石、コナンくんですね!そして咲さんも!」

 

その光彦からの純粋な褒め言葉に、咲は少しだけ困ったような笑顔を浮かべる。これで頭を撫でようものなら、あの金髪褐色の後釜を思い出して泣きそうになったことだろう。あの組織で彼女の事を褒めてくれたのは3人だったのが、2人抜けて彼だけになったのだから。

 

(……私はあそこから逃げたんだ。思い出す資格など、ない)

 

と、そんな時。近くでカメラのシャッター音が聞こえ、気になって咲が振り向けば、カメラマンの男がヘリコプターを撮っていた。そしてその男に元太も気付き、全員の隙を掻い潜り、前に出て指を指す。

 

「あれ、『宍戸 永明』じゃないか?」

 

名前を呼ばれたのに気付き、宍戸がこちらに振り向いた。とてもサングラスがよく似合う男だった。そしてその男はカメラのレンズを咲達に向けた。その瞬間、咲は阿笠の後ろに隠れた。そして3枚ほど撮ったあと、永明は手を上げて去っていく。

 

『カッコイイ〜!』

 

そんな宍戸に向けてそういう子供3人。逆に咲はホッと安堵の息を吐き出す。

 

(良かった。とりあえずこれで、私は写ってないはず。用心のし過ぎかもしれないが、しないよりかはマシだ)

 

そんな事を彼女が考えてるなど知らないコナンは、しかし先の行動を怪しみ、ジッと彼女を観察していた。それに気付いた咲が苦笑いを浮かべる。

 

「……写真、撮られるのは苦手なんだ。撮るのは好きなんだけど」

 

「……そっか」

 

それから間もなくして解散した。咲も修斗に連絡を入れ、迎えに来てもらい、家へと戻っていく。

 

「すまない、ありがとう……仕事で忙しかっただろうに」

 

「いや、構わないさ。あの人は俺に『依頼』や『指示』は出来ても、今は一々文句を言ってくることはないからな」

 

「それだけ優秀であり、あの父親にそこは信頼されているということだな」

 

「そこを信頼されても嬉しかないけどな……」

 

その会話の間、咲は空を見上げていた。ボーッとし始めた時、修斗が「そういえば」と言って、不思議な事を問いかけてきた。

 

「なあ、あの坊主といて事件とか起こらなかったか?」

 

「?いや、全く起こらなかったが?」

 

「そうか……あの坊主が行くとこ全てで事件が起こるほどの死神力かと思ったんだがな……」

 

「なんだその不名誉な力は」

 

咲が呆れたように笑えば修斗もフッと笑う。

 

「ああ、そういえば」

 

「ん?」

 

「博物館で宍戸というカメラマンに会ったよ」

 

「……写真は?」

 

その問いを聞いた時、明らかに警戒と緊張を含んだ声色をしており、それを安心させるために、咲は笑う。例え彼に見破られると分かっていても。

 

「直ぐに隠れたから安心しろ」

 

「……そうか。なら良かった」

 

修斗は安堵とともに困ったように笑う。彼女の笑顔が、本物に近い『作り笑い』だったから。

 

「……楽しかったか?」

 

「ああ。楽しかったよ……とても」

 

その修斗からの問いには、とても自然に咲は笑うことが出来た。

 

***

 

時間が7時となり、約束の食事会の時間となったが、蘭達の方が少し遅れてしまった。なぜなら父親の小五郎の方が麻雀をしており、約束のギリギリで漸く帰ってきたのだ。そして蘭は店で座って待っていた英理に謝罪する。それに英理は問題ないと答えた。

 

「どうせ誰かさんが遅くまで麻雀でもしてたんでしょ?」

 

その鋭い勘にコナンは一目置いているが、今は同時に注意もしている。何か下手な事を言おうものなら、色々とバレてしまうかもしれないからだ。そんな事を考えてるとも知らない英理がコナンに挨拶をし、コナンも慌てて挨拶をする。その時、丁度店の扉が開いた。入ってきたのは派手な姿の女性2名を連れたプロゴルファーの男『辻 弘樹』だった。辻はそこで小五郎に気付き挨拶をし、小五郎のことを連れの女性に紹介する。そして女性が色めき立てば小五郎が身なりをキチッと整え、そして後ろにいる家族を紹介し始めた。

 

「妻の英理と娘の蘭です。それと居候のコナン」

 

(居候って、他に言い方ねえのかよ、おい)

 

「辻です。毛利さんとはプロアマゴルフでご一緒しまして」

 

そこで小五郎が再来週の木曜から全米オープンだったのではないかと聞けば、声に覇気を入れた。

 

「ええっ!一年間、この為だけに練習してきたようなもんで、今年こそ、今年こそトップ10に残って見せますよ!」

 

「期待してます!」

 

「と言っても、時には息抜きも必要でしてね。明日も彼女達を乗せて飛んでこようかと思ってるんですよ」

 

その言葉にコナンが何のことかと疑問に思った時、小五郎から辻は自分のヘリコプターを持っており、操縦もしているのだと教えられた。そして次の日曜日にも飛ぶつもりだと言い、全員を招待すると言えば、蘭と英理、コナンは大喜び。しかし小五郎が高所恐怖症のため、断りを入れてしまった。それを聞き、コナンはつまらなそうな顔をした。

 

そして場所は移ってレストラン内。先に着けば小五郎達の所に男がワインを運んで来た。その運んで来た男は『沢木 公平』。小五郎と英理がまだ若い時の知り合いであり、プロのソムリエでもある。その証拠に胸に葡萄のバッチが付けられている。その蘭の説明の間に彼はワインのコルクを抜き、そのコルクの匂いを嗅ぎ、専用の皿に置いた。

 

「あの首から下げてるお皿はなに?」

 

そうコナンが無邪気に聞けば、蘭は嫌な顔一つせず答える。

 

「あれは『タストヴァン』って言ってね、ワインを試し飲みするためのものよ」

 

蘭のその知識の多さに小五郎が褒めれば、蘭はその知識全て、彼女がファンとなっているエッセイストの『仁科 稔』の本で読んだものから来ていた。

 

「例えば、赤ワインは室温、白ワインとロゼは冷やして飲むのが良いとか」

 

「確かに、そう仰る方が多いようですが、ワインの温度はその人の好みで決めて良いものなんです」

 

その公平の言葉を聞きながらワインの香りを楽しみ、一口飲む小五郎。そしてその美味しさに彼は公平を手放しで褒めた。

 

「軽い赤ワインは冷やして飲んでも美味しいですよ。大切なのは、冷やせばワインの渋みが抑えられるという事です」

 

それにコナンと蘭は聞き入っていた。知らなかった知識、興味のあったジャンルの話は聞いてて面白いものなのだろう。

 

「しかし、蘭もそういうのに興味を持つ年頃になったんだ」

 

「それだけ私達も確実に歳をとってるってことよ」

 

「ふんっ、違えね」

 

その会話をし、2人は楽しげに笑い始めた。その雰囲気はとても良いもので、蘭とコナンが嬉しそうに笑顔になった。

 

「なんか2人、良い感じになってきたね」

 

そんな内緒話をコナンに聞かせたその数分後、フランス料理を堪能していたコナンだが、その口周りはとても汚れていた。それに気付いた蘭が布を持ち、拭こうと近づくが、コナンはその蘭の口に気がいってしまった。そう、あのお昼の時に見た『Aの予感』の画面が頭を過ぎった。そしてそれを思い出せば、コナンは顔を赤くする。しかし、彼が期待するような事は起きない。蘭が拭く前に小五郎が拭いてしまったのだ。しかも結構強めに、そして適当に拭いてしまったせいで口周りに汚れはなくなったが逆に赤くなってしまった。そんな小五郎に不満顔を向けるコナンだが、その真意を小五郎が読み取ることは一切なかった。

 

そこからまた少し経ち、料理を堪能し終えた後、英理が小五郎に思い出話を持ちかけた。それは此処に前に来た時、彼がプレゼントを渡したこと。そしてそれは、彼女が好んだ『ZIGOBA』のチョコをプレゼントし、帰りに米花公園のベンチに並んで座って食べた事も話す。その雰囲気の良さに蘭とコナンの機嫌も上がって来た時、小五郎がある人を見つけた。それは店の真向かいにある銀座の高級クラブのママ『岡野 十和子』さん。その十和子さんがタクシーの前で迎えたのはニュース・キャスターをしている『ピーター・フォード』。そんな2人の様子に嫉妬する小五郎だが、今現在、この場にいるのは娘とコナンだけではない。

 

「誰なの?十和子さんって」

 

「銀座のクラブのママだよ。いや〜、彼女にはしょっちゅう世話に……」

 

そこで英理が静かに立ち上がる。それに反応したのは蘭とコナン、そして小五郎。しかしもう遅い。彼女の先程まで上にあった機嫌はドン底に落ちていた。

 

「お先に失礼するわ」

 

「まだ良いじゃない!ウチに寄ってコーヒーでも……」

 

その蘭の誘いにも彼女は固く拒否する。仕事を理由に英理はレストランから出て行ってしまった。それを見て蘭は小五郎に怒りを向ける。しかし小五郎は反省せず、そのやり取りの間に消えた十和子を探し窓にへばりつく。その様子にコナンと蘭は頭を抱えるしかなかった。

 

そしてその一週間後の早朝。目暮がジョギングをしていた時、彼に対してボーガンが撃たれ、それは腹に刺さった。彼はそのまま緑台警察病院に運ばれ治療される。そしてその知らせを受けた小五郎が丁度いた子供達もタクシーに乗せて警察病院にやって来た。扉をノックすれば中から白鳥の声。そして扉に入ろうとした時、元太が『目暮 十三』を数字の13と読んでしまい、それは『じゅうぞう』だと訂正した。

 

そのまま中に入れば、ベッドで横になる目暮にその隣に立つ白鳥と彰がいた。

 

「あれ、咲?お前なんでここに……」

 

「丁度、彼らと一緒にハイキングに行こうとしていたところでね」

 

咲がそうコナン達を紹介すれば、それに納得したように頷いた彰。

 

「やあ毛利くん、わざわざ来てくれたのか。それに皆んなも」

 

「はい。咲ちゃんが言った通り、皆んなでハイキングに行こうとしてたところだったんです」

 

「警部殿、傷の具合は?」

 

そこで小五郎が聞けば、白鳥が急所は外れていたこと、命に別状はないこと、数日の入院は必要な事を伝えた。そこで歩美が今も目暮が帽子を被っていることに気づき、純粋な質問をぶつけた。

 

「ねえ警部さん!どうしていつも帽子を被ったまんまなの?」

 

「んっ?ま、まあ良いじゃないか」

 

その誤魔化した様子に子供達は『薄い』だの『大きなコブがある』だのの好き勝手に言う。そんな事を尻目に白鳥が凶器の説明を始める。

 

「使用されたのはボウガンだと思われます。目暮警部だと知って狙ったのか、たまたま通りかかった警部に面白半分で撃っただけなのか、その両面から捜査を開始しています」

 

「なあなあ、警部のおっちゃん!拳銃持ってたんだろ?」

 

「それで逃げられちゃったの?」

 

その質問に彰は苦笑いで答える。

 

「普段、刑事だろうと日常生活で拳銃は携帯しないよ」

 

「それに、たとえ持っていたとしてもそっちの腕は毛利君や彰君と違ってイマイチだからな」

 

その言葉に蘭は驚いた。

 

「え、お父さん、拳銃上手かったんですか?」

 

「警視庁内でも1、2を争う腕前だったんだ」

 

(へ〜?誰でも取り柄はあるもんだな)

 

その言葉にコナンはジト目で小五郎を見上げるが、小五郎は気付かない。

 

「所で、ボウガンを撃ったと思われる場所から妙な物が発見されました……これなんですが」

 

そう言って透明なビニールに入れられて見せられたのは西洋の探検を模した段ボール。

 

(あれ、これどっかで見たことあるぞ?どこだっけ……)

 

そんなコナン達とは別の場所では、英理が事務所に辿り着き、執務室へと入る。そして椅子に座り、仕事を始めようとした時、秘書が今日の予定を記した紙と、郵便受けに入れられていたと言う彼女が好きな『ZIGOBA』のチョコレートを持って来た。

 

「あら、ZIGOBA」

 

「先生が好きなスイスのチョコですよね」

 

(そうか、あの人……)

 

そこで英理はそのチョコを届けたのが小五郎だと考えた。そう、だから彼女はーーー。

 

「でも、差出人の名前がありませんね」

 

「大丈夫よ、犯人は分かってるから」

 

ーーー警戒せずに食べたのだ。

 

英理は食べてすぐに気付き、ティッシュを大量に掴み、口に当て吐き出し始める。それと共に秘書に水を頼むが上手く口から言葉として出せず、水という単語だけ口から出し、首を抑えるようにして、執務室にて倒れてしまったのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。