今回はクリスマスの話です!(クリスマス遅刻組)
幻想郷にクリスマスはまだ普及してない、白追異変前という設定です。
雪「外の世界にはクリスマスとやらがあるのだぞ?」
妖怪の山's「何それ面白そう」
天魔の素敵()なクリスマスの話です。ニッゴリ
その事件の始まりは天魔の仕事に勤しむ雪がポロッと零した一言。
「冬か…今年もクリスマスの時期が来たか…」
私が働いた残業の光で愛を語らうリア充どもめ!!氏ね!!何が聖夜じゃくたばれメルゥィィィィクルシミマス!!(巻き舌)
完全なる僻みの感情から解き放たれた小言は偶然にもその場に居合わせた射命丸文の耳に入り、幻想郷では聞き覚えのないであろうワードに耳聡く反応した。
「天魔様、その"くりすます"とはなんでしょうか?」
「ん、外界の神の降誕を祝う祭事だ。近代ではサンタクロースと呼ばれる存在が子供へプレゼントを配ったり、親しい者同士がプレゼントを贈り合うというのが風習となっているが…幻想郷では行われていなかったか」
恋人達の聖夜とかじゃあ断じてねぇから!!仕事に追われる私への当てつけかこん畜生め!(被害妄想)
ふぅ…ふぅ…落ち着け…落ち着くんだ…ひっひっふーひっひっふー
よし、落ち着いた。落ち着いたついで思い出したが、仕事が常に繁忙期の私は四季の変化に疎すぎて忘れがちだったけど、クリスマスというイベントは催されていなかった気がする。
「えぇ、初耳です。そのような楽しそうなイベントがあるとは…、天魔様は博識ですねぇ…」
ですよね。しかし折角思い出したというのに何もせずに終わるのも味気ないな…そうだ!
「…そうだ、折角だか――」
「――はっ!!良いこと思いつきました!!私は急用が出来ましたので!お暇させていただきます!!」
「あ、あぁ…そうか」
急用なら仕方ないヨネー…ぐすん。身内(雪、文、はたて、椛)で仲良くクリスマスぱーちーやりたかったなぁ…
所変わって、射命丸文の自宅。
「ふっふっふっ…これは良いスクープですよ!!しかもこのネタを有しているのは恐らく天魔様と外界に詳しい近代の妖怪くらい…。幻想郷で認知度が低くて面白そうなイベント…!テンション上がって来たーーーっ!」
超ハイテンションで新聞の記事を作り上げていく文。その見出しには大きくクリスマスの文字が刻まれている。
「このスクープを持ってして、幻想郷に新たな風習を作る!皆が楽しむ風習の発信源となるのは私です!!」
▽博麗神社
ふわふわと雪が降って積もっていく様子を見て、霊夢はふぅと息を吐く。吐息が白くなり、刺さるような冷気を遮断するために障子をぴしゃりと閉じ、足早に居間に戻り炬燵の中でぬくぬくする。
「ふぅ…、早めにおこた出しておいて正解だったわね。急にこんな雪が降るなんて…」
昨日は積もるほどは降ってなかったけど、勘で出したけど正解だったわ。
――などと考えていると炬燵の中でもぞもぞと動く存在が炬燵の横面から顔を出した。少し癖のある金髪の少女、魔理沙である。
「霊夢ぅ〜蜜柑食べたーい」
炬燵亀と化した魔理沙は駄々をこねるようにお茶を啜る霊夢の袖をチョンチョンと引っ張った。
「ウチにはそんな贅沢品ありません。お茶で我慢しなさい…って何よ、私に注げって言ってるの?」
「私はもう駄目だ…おこたの魔力から逃れられない…手も足も出ない!頼りになるのは霊夢だけなんだ…!」
「馬鹿な事ほざいてるとおこたから叩き出すわよ」
霊夢は正座を崩して炬燵の中の魔理沙の横腹をぐぃーっと足で押し外へ締め出そうとする。
「うぐぅ…それだけは勘弁。さて、よっこいせっと…」
どんどん強まる押しの力に観念したのか魔理沙は嫌々ながらも上半身をズルズルと未練がましく這い出た。おっさんくさい掛け声と共に。
「ジジくさいわよ」
「年がら年中縁側でお茶啜ってるお前にだけは言われたくない」
魔理沙の言っている事はほぼほぼ事実である。霊夢は基本来客がなければ枯れた老人のような生活を送っている。
「うっさい、私のことはいいのよ」
魔理沙に図星を突かれ、反論も出来ず霊夢は苛立った様子で睨みつけた。
鋭い眼光に射抜かれた魔理沙は降参とばかりに肩を竦めて急須に手を伸ばした。
「へいへい。にしても…暇だなぁ…」
チャポチャポとお茶が注がれる音がやけに響く静けさの中、魔理沙がポツリと“暇だな”と呟いた次の瞬間、黒い影が障子をぴしゃりと開いて現れる。
「――暇と聞きつけ参上!清く正しい射命丸です!暇だという魔理沙さんに超絶ホットでグッドなニュース!詳しくはこちらを…。それでは!」
冷気と共に飛んできた新聞を片手で何気なしに受け取り、視線を一瞬新聞に落とし再び天狗に戻した頃には射命丸文は存在しなかったかのように消え去っていた。
しっかりと障子も閉めて行ったのでいつの間にか冷気もシャットアウトされていた。
「…風のように現れ風のように去ってたな」
気にしても仕方がないと新聞を炬燵の上に広げて中身に目を通す。
普段は魔理沙は文々。新聞を見る事など全くないが、外の景色を眺めるよりかは無聊の慰めにはなるだろうと思っての行動である。
「魔理沙ー、ソレ窓拭きに使うから捨てないでね。ちゃんと正しく活用しなきゃ」
「おっ、見てみろよ霊夢!これ、面白そうじゃないか?」
「はぁー?天狗の新聞が面白いとかどんな天変地異よ…」
「まぁまぁ見てみろって」
「なになに…クリスマス?何よそれ」
「なんでも外の世界の文化らしいぞ。親しい者同士がプレゼントを贈りあったりする行事らしい。」
「へー、外の世界の。早苗とかが詳しいんじゃないかしら?」
「そうか早苗がいたか!よしっ、霊夢!そうとなれば守矢神社に行くぞ!」
「嫌よ、大体私プレゼントするような物持ってないもの」
「それじゃあ人里でなんか買ってこうぜ!」
「はぁ…仕方ないわね。こうなった魔理沙はテコでも動かないし…」
「へへっ、そういう事にしといてやるぜ。」
「ちょっと、どういう意味よそれ」
「ほら!早くしないと置いてくぜ?」
「はいはい…」
少女達は楽しげに空へ駆けていった。
――誰も居なくなった博麗神社の居間に、影あり。
「へぇ…クリスマス、ねぇ…」
声の主は新聞を一瞥すると霧となって消えた。
「天魔様!!メリークリスマス!!」
「えっ?あ、あぁ…メリークリスマス。」
えっと…どういう事なの…?
確かに一昨日くらいにクリスマスについて教えたけど…急にドア開けて第一声がそれだと流石の私もびっくりですわ。
「ふふふ…天魔様!私からのプレゼントはコレです!」
状況把握に努めている間に文は小さな小包を私に渡してきた。可愛らしい包装が施されており、パニックっている私でもそれがクリスマスプレゼントだという事に気がつく。
「開けていいのか?」
小さな小包を手のひらに乗せ、文の様子を伺う。
「えぇ!天魔様の為に選んできましたので!!」
どうぞどうぞと開封を催促する文。心なしかワクワクしているような雰囲気が見受けられる。
私としても滅多にないプレゼントを前にウキウキ気分で開封の義を行う。
包装を解いて、現れた木箱を開けると中には全体的に黒い意匠の万年筆が鎮座していた。ワンポイントで赤のラインも入っていて、文を彷彿とさせる万年筆だった。
「万年筆か…」
「天魔様は業務上よく使うと思ったので!大切に使ってくれると嬉しいです!」
あ、文…チョー嬉しい。嬉しすぎて涙が出そう。ヤバイ、嬉しすぎヤバイ…尊い…。
「…ありがとう、大切にする。…すまない、お返しは急な事で用意出来ていない。今すぐにでも贈り物を拵えたいのだが…仕事が溜まっていて動けない」
完全に仕事のせいで忘れていた私は当然だがお返しのプレゼントなど用意していなかった。
本心としては今すぐにでもお返しを贈りたいが手元にはめぼしいものはない。本当に悔やまれる。
「…折角のクリスマスですし、仕事はお休みにしませんか?」
そ、そんな子犬みたいな目で私を見ないで…!!
「う、むぅ…」
「駄目ですか…?」
め、目がウルウルしてる…。くっ…そんな顔されたら仕事を放り捨てるしかないじゃないか…!!
「文にそう言われたら仕方がない…、私は今から皆への贈り物を見繕いに出かけてくる」
よーし、雪さん頑張っちゃうぞー。人里はレベル高いし…、この前はたてが言ってた香霖堂行ってみようかな。現代の物も売り出してるらしいし
「本当ですか!?楽しみに待ってますね!!」
キラキラと目を輝かせる文を背に執務室の窓から飛び降り、翼をはためかせる。
待ってろ!!最高のクリスマスプレゼントを用意してみせる!!
「…ここが香霖堂か」
はたてが言っていた話を元に辿り着いた店を見回す。外の世界の標識やら看板がたくさん置いてあってカオスの一言。
しかし、現代の物も沢山ありそうなので当たりを引いた気分である。
一応扉に掛けられた営業中という看板を信じて扉をキィっと開ける。
中は暖房が効いているのかとても快適な暖かさだった。
「…誰ぞいるか?」
乱雑に陳列された商品を見て、営業してるかさえ怪しくなった雪は恐る恐る店の奥へ声を掛けた。
「おや、おんな辺鄙な場所に、しかもこんな時期に来客とは珍しい。」
すると直ぐに返答は返ってきた。そして声と同時に店の奥から姿を現した。
眼鏡をかけた銀髪の常識人そうな感じの男性だ。知的そうな人だ、と雪は内心少し喜ぶ。
「貴殿がここの店主で相違ないか?」
「あぁ、僕が香霖堂の店主、森近霖之助だ。君は…初めて見る顔だね。見たところ天狗のようだけど…」
「あぁ、そうだ。此処には少し贈り物をしようと考えていて立ち寄らせてもらった。」
「そうかい、贈り物に出来そうな物は少ないと思うけど好きなだけ見ていってくれ」
それだけ言うと霖之助さんはカウンター近くの椅子に腰をかけて本を読み始めた。
「あぁ」
許可を得た私は早速プレゼント選びに入ることにした。
「…何を選べばいいのか…」
ワカラナイ。文って新聞よく書くからペンがいいかなー?と思ったけど万年筆のパクリみたいで嫌だし…手帖は消耗品故に長く使うのは難しいし…カメラは河童の最新式だし…
あぅぅ…ワカラナイヨ…
「――もし、余計なお世話なら聞き流してくれ。贈り物は親しい間柄に贈るものなのかい?」
うんうんと唸る私を見て、店主が本に栞を閉じてカウンターに置くとそう尋ねてきた。
「あぁ、大事な…大事な家族に贈るものだ」
私は贈り物のヒントが欲しかったのでその問いに乗った。
「女性のなのかい?」
「あぁ」
私の答えを聞いて霖之助は重い腰を上げて商品棚を漁りだした。
「うーん、それなら…お薦め出来そうな物が確か…ここらへんに…」
ガサゴソとゴミを漁るが如く棚の物を散らかしていく霖之助に若干引きつつも、折角探してくれているのだからと感謝しつつ待っていると霖之助の棚漁りが止まった。
「あぁ、あったコレだ。こんなのはどうかな?」
霖之助は近場のテーブルの上に私のお題に沿った商品をいくつかピックアップして並べてくれた。
「…!店主、この三つを包んでくれ。お代は幾らだ?」
私はその中のある物に惹かれて即刻購入を決断した。ちなみに三つの内訳は[文、はたて、椛]の3人である。
「あぁ、贈り物だからね。ラッピングも任せてくれ。にしても金を払ってくれる客は久しぶりだ。今後ともよしなに頼むよ。お代は少し負けてコレくらいで構わないよ。包装代金も込みでいい」
購入した商品をカウンターに持っていき、そろばんを手慣れた手つきで弾いて此方へ向ける。
えっ、これだけでいいの?みたいな価格設定に驚愕する。
「…金には困ってないのだが、折角の好意を無下にはしない。感謝する店主殿。」
金は腐るほどあるが、店主の好意だからありがたく受け取ることにする。
「正直店主殿なんて言われるとぞわぞわするからやめてくれ。」
結構マジのトーンで嫌そうだった。なんて呼ぼうかな…
「では霖之助殿、感謝する」
「殿もやめてくれ…」
▽天魔の執務室
「――遅くなってすまない。今戻った。」
「いえいえ全然待ってませんよ。それに待ってる間に2人も間に合ってくれましたので!」
「ゆ、雪…!お帰り!め、めりぃくすます!そ、その…私もさっき知って急いで選んできたんだけど…こ、これ!どうぞ!」
「めりぃくりすます、僭越ながら私からも祝いの品を送らせて頂きます」
「はたて…それに椛も…ありがとう…。それじゃあ私からのお返しを贈ろう。メリークリスマス」
「開けてもいいですか?」
「あぁ、皆も開けてみるといい。気に入ってくれるといいが…」
「わぁ…」
「これって…」
「…紐のついた硝子細工?」
よ、よし!中々に好印象じゃないかな!?思わず心の中でガッツポ。やったぜ!
「ストラップというやつだ。可愛いだろう?私も個人的に一つ買ったので皆とお揃いの物だ」
霖之助さんのストラップ特集からチョイスしたんだよ!朴念仁っぽさそうとか思っちゃってすみません!
チリンチリンと鈴のような音が鳴る。3人ともストラップを目の前に翳して眺めて感嘆の声を漏らしていた。
「雪の結晶…ですね」
「綺麗…」
「雪…」
そう、私が3人に贈ったのは雪の結晶がモチーフのストラップ。全員同じだと味気ないので紐の部分と鈴が色違いである。
文が赤、はたてが紫、椛が白。まぁ、見た目通りの選色ですがね。
「まぁ、なんだ少し恥ずかしい話だが、それを私だと思って大事にしてくれ」
これで重いとか嘲笑されたら恥ずか死しそうなんですが
「はい!私はカメラに付けて肌身離さず持ち歩きますよ!」
「私もケータイにつけるわ!」
「私は…紐を通して首輪にします。」
みんないい子でよがった…。あぁ〜心が浄化されるぅ…
「あっそうだ!雪、私たちのも開けて見てよ!」
「そうさせてもら――」
「雪!クリスマスプレゼントちょうだい!!」
雪がはたてと椛の贈り物に手を掛けた瞬間、朗らかな童子の声が響く。
はい、雪さん声だけで分かりますよ。この可愛い声に潜む狂気の暴力性…それにこの鼻の曲がりそうな強烈な酒気は絶対あの鬼さんですね…
「伊吹…萃香…!!」
「なんだよぅ…そんな剣呑な目で睨まなくてもいいじゃないか。私は“くりすます”ってやつしに来ただけなのに…」
振り返って萃香の姿を視界に入れて少し驚く。
萃香は赤いサンタ帽を被って大きな靴下を片手にぶら下げており、完全にクリスマスを楽しむ子供の装いだったからだ。
えーと、不覚にも可愛いらしいと思ってしまったが本来の姿を知っている私は直ぐに気を締め直した。絶対なにかあるもん…
「生憎だが、クリスマスが今日だとは知らずプレゼントは用意していない。他を当たれ」
「えぇ〜、私は雪からプレゼントが欲しいんだよぅ」
駄々を捏ねるな子供か!お前何百何千歳だよ言って見るゥオ!?
しかし、純粋にプレゼントを求めてやって来た相手をただ追い返すのは大人げない。
「純粋にクリスマスを楽しむ事が目的なら贈り物を渡すのも吝かではないのだが、いかんせん仕事が立て込んでいて拵える暇はない。今日のところは帰ってくれないか?」
自分でも完璧な大人の対応だと思いました(小並感)。
さぁ、これでお帰り願おうか!まぁ、これで帰らないのは経験から分かって――
「…わかった。でも絶対プレゼント用意するんだぞ」
――え?
「あ、あぁ…!約束する」
あまりの聞き分けの良さに肩透かしを食らった気分だよ。なに考えてるですかね…
「…これは私からの贈り物だ。約束はしっかり守れよ」
開けたら爆発とかしないよね…?開けるの嫌だな…などと躊躇っていると萃香から無言の圧力を感じたので意を固め長方形の木箱に手をかける。
「開けてもいいか?」
一応そうやって聞いてみれば目を輝かせてコクコクと頷いた。
「雪の為に蔵から引っ張り出して来たんだ。ちゃんと使ってくれよ」
蔵ってどこのだよ根無し草のくせに、とか思ったけど余計な散策はしない。それは悪手だって雪さん知ってる。
それよりもプレゼントだが…、木箱の中には質朴ながらもどこか芸術的な美しさを感じさせる扇子が入っていた。
飾り気はない、しかし派手な物を嫌う雪にとっては好ましいデザインだった。
「これは…扇子か。ありがとう、大事にする」
夏とか涼しく快適に過ごせそう。スキマの人みたいに扇子で口元隠して人を煙に巻くごっこも面白そう。
多分その遊び私には向いてないけど。
「あ、あぁ!喜んでくれて何よりだ!それじゃあまた明日来るよ!」
え、えぇ…?(困惑)と思ってしまうくらいにはすんなりと萃香は帰っていた。
いつもこのくらい素直に諦めてくれよ…
「いやー、急に現れるものだからヒヤヒヤしましたよ」
萃香が現れてから冷や汗をかいていたのかハンカチで額を拭う文。
「雪、鬼と約束したんだから気をつけなさいよ」
はたては萃香の登場に文ほど驚いてはおらず、私に忠告出来るくらいには落ち着いていた。横に控えている椛も同様で萃香が帰ってからはピンと張って警戒を示していた尻尾がダランと垂れて揺れている。
「あぁ、重々承知している」
そんなの言われるまでもないがはたてが心配する気持ちもわかる。
あいつらは約束反故にしたり嘘つくとキレる。尋常じゃないほどに。(経験談)
取り敢えず明日の朝にでも香霖堂へ行かなくてはな。
――と、考えているとドアをノックする音が聞こえる。“入って良いぞ”と返すと入ってきたのは巨漢のおじさん天狗こと、風さんだった。
「失礼します天魔様、折り入ってお話が…む?なぜお前たちが此処におるのじゃ?」
「大天狗様…えーとこれはですね…」
風さんの登場に少し萎縮した様子の文。上司にクリパしてましたなんて言えるはずもないので私が空気を読んで庇う。
「彼女達は私が呼んだ。文が広めたクリスマスを祝う為にな」
「ふむ、なるほど…そういう事にしておきましょう。それで話というのは他でもない“くりすます”とやらについてなのですが…」
風さんさ何でこういう時だけ察しがいいんだよ…。まぁそれはもういいや。それよりもクリスマスに何か問題があったのだろうか?
「どうかしたのか?」
「いや…山の各方面から天魔様にと山のように贈り物が送られて来ておりまして…その皆が口々にお返しを期待していると言っておりましてですな…」
「…贈り物はどれくらいあるのだ?」
「現段階で軽く200は超えているかと…」
ーーはぁ?ファッツ?
イヤイヤイヤイヤイヤイヤ…イヤッ、ちょっと待って!
…いや無理でしょ。そんなのお返しを全て選んで買っているようじゃ私のチョイス能力の低さでは何日何週間とかかってしまう。
あぁ…やばい頭痛くなってきた…。でも貰ったからには責任感というか使命感が重くのし掛かる。
いやそんなの放りなげろとか思うじゃん?私にはそんなこと出来ないんだ…
「…贈り物をした者のリストを作ってくれ。私は少し執務室を開ける…」
…もう考えるのすら億劫だ。
頭痛や胃痛なんざ関係ぬぇ!!私が!私こそがサンタムだ!!
▽雪降る聖夜、人々は親しい者達と団欒し安らかな眠りに就く頃――
空を駆ける白きサンタがいた。
そのサンタは、プレゼントを配るのに必死で疲労困憊な表情で、呪詛のように『クリスマスなんてクソ喰らえ』と吐き捨てていたという。
そして、臨時収入によって懐がホカホカになった香霖堂の店主はホクホク顔だったという。
翌日、過労死必須のサンタとかいうブラック職業全うし、疲れて死んだように眠る雪さんが居たとさ。
ちなみにはたてと椛の贈り物は、はたてはシャツとロングスカートという現代風の衣装。椛は守矢神社で購入した御守りだったりする。
プレゼントは愛されてる証拠(ニッゴリ)
皆んな師走とかの話ししてる中、大遅刻してクリスマスの話です。すみません。