今回の相手は守矢神社です。多分賭博録では一番ほのぼの回です。それではドウゾー
〜白追異変が起こる前〜
「――ロープウェイか…」
「そうです!守矢神社と人里を結ぶこのロープウェイさえ作れば守矢神社の信仰はうなぎ登りです!」
天魔の執務室に東風谷早苗が来客として招かれていた。以前より要望を出していたロープウェイの設置に関して雪は興味を持ち、直接早苗から説明を受ける事にした。
「…ふむ」
そしてやはりというか、その企画は悩ましいものであった。いや画期的だとも思うし、出来たら出来たで山に人が迷い込む案件も減るだろうし良いとは思うけど…
「難しいのですか?」
「皆を納得させるのには骨が折れる話だ。儂とて良い案だとは思うが…」
「そこをなんとか!!天魔様の声があれば山の皆が反対することは絶対ありませんよ!!」
いやいや、何言ってるの早苗さん。私にそんな人望があったら私こんな忙しくないヨ?みんな私に仕事を押し付けたりしないヨ?
積み上げられた書類を見たら躊躇して申し訳なさそうに書類置くよね?アイツら笑顔で積み上げて行くんだけど?
「確証はない、それに今は大掛かりな計画を手伝う余裕は儂にはない。」
主にお前のとこの神様がやらかしたせいで。アイツ無駄に現代の知識あるから河童共が飛びつくような技術を惜しげなく渡すから碌な事にならない。その後処理誰がすると思ってんの?私だよ!!!!
「て、天魔様が忙しいのは知ってますけど…、なんとかなりませんか?」
「時期を改めよ、儂に余裕が出来たら考えよう」
雪さん怒ったからダメでーす。シャットアウト!いくら良い子の早苗さんのお願いでも今は忙しいから無理でーす。ちな常に忙しいから未来永劫その計画進むことないけど。
「――余裕が出来れば良いのか?」
早苗にお帰り願おうと思った矢先に新たな刺客…神々しいこのオゥラは…やはり保護者じゃないか…。
「む、八坂神奈子…」
いつの間にか執務室の窓縁に腰をかけていたのは早苗の所の二柱の神のうちの1人八坂神奈子だった。御柱を消して執務室の中へ入って私の目の前へ堂々と歩み寄ってくる。ここ一応私の部屋なんですけど…
まぁそれはいいとしてだ。さっきも言ったけど神奈子のせいで河童共が暴走してんのどうしてくれてんだ!!
「そう邪険にするな、まさか私もあぁなるとは思いもしなかったんだ。まぁそれについての話も含めてなんだが…私たちと勝負しろ。私たちが勝てば索道の話を飲んで貰おう、逆に負けた時は事態の収拾に尽力しよう。」
唐突に勝負を持ちかけてきた神奈子。事態の収拾を助けるとあらば確かに少しの暇は出来るし言質も取れる。そう悪くはない話だ。
私はこの勝負に乗ることにした。ただ、条件付きだが。
「……いいだろう。だが索道の話については善処するが確実とは言えない。それと勝ち負けに関わらず八坂神奈子、お前は事態の収拾に努めろ」
何ちゃっかり事態収拾まで私に押し付けようとしてんだよ。雪さんオコなんですけど?
「あー、まぁ私が蒔いた種だし分かったよ。ただ私たちが勝った時はよろしく頼むよ?」
「あぁ、いいだろう…それで勝負形式はなんだ?先に言っておくが殴り合いなどという野蛮な真似は許容出来ぬぞ」
暴力、ダメ絶対。非暴力を訴えます!!というわけで先手として暴力を禁止する。
「まぁ、そう言うだろうと思ってな。今日はコイツで勝負をつけようじゃないか」
神奈子が腰に下げた袋から取り出した物は――
「麻雀牌…」
背の部分が竹で出来た所詮竹牌というものだ。
うーむ、麻雀か…ルールもある程度分かるしいっか。その勝負…受けよう!コールだ!!
ん?でもちょっと待って。これ私にとって大したメリットなくない?
勝っても負けても神奈子は手伝うって確約したし、負けた場合は仕事が増えるだけじゃ…
※その通りです。
〜守矢神社〜
「それじゃあルールはアリアリのダブロン、ダブル役満なし。筋食い替え、責任払いとトビあり。赤ドラ二枚、裏ドラあり。持ち点は30000点の東風戦一回で勝負を決める。
――そして今回の特別ルール、満貫縛りだ」
神奈子がドヤ顔で宣言する。妙にカッコいいポーズで。
…うん、ノーコメントで。
それよりもその特別ルールとやらだ。まぁ要するに満貫以上を上がれば良いというルールだ。縛りの難易度が高く、運の要素が非常に強くなってくるためかなりマイナーな縛りだと思う。
やるなら特別な事をしようと言うので神奈子は当初役満縛りなどというふざけた事を提唱したので却下した。
私は普通に一翻縛りで良いだろうと言ったが神奈子も譲らず結果満貫縛りになったのだ。
いくら言っても平行線なので私も渋々というか諦めて神奈子の案を飲んだ。私としては上がりが全く出ず、点の動きがあまりないつまらない麻雀になると思ったんだけど…、まぁやるしかないか。
「…いいだろう」
「いやー、四人で麻雀なんて久しぶりじゃないのか?」
牌を弄りながら諏訪子が嬉しそうに呟いた。
「そうですね!いつも私と神奈子様と諏訪子様の三人でしかやりませんしねぇ…」
早苗もそれに同意し、同時に汲んできたお茶を全員に配って一息ついていた。神奈子も嬉しそうに笑っていた。
なんだろう、一家団欒に放り込まれた気分だ。どことなくムズムズする。
「よし!先ずは場決めからだな」
なんて考えているうちに神奈子が卓上の伏せられた四枚の牌を配り始めた。手元の牌を捲ると北の牌。
「賽子は振らないのか?」
「ん、面倒いからウチはこれだけで場決めしてるのさ」
まぁ、そういうのあるよね。身内ならそう拘る事もないだろう。私は立ち上がり早苗から見て左側に座る。つまりは早苗が親なのだろう。対面は神奈子、上家は諏訪子が座っており各々座席の位置を見て何やら考えているようだった
「起家は――早苗か」
「はい!今日も頑張っちゃいますよー!ロープウェイもかかってますからね!」
早苗が起家マークを卓上の隅に置き、使った風牌を裏返すとみんなで一斉に牌をかき混ぜ始めた。
東:早苗 30000点
南:神奈子 30000点
西:諏訪子 30000点
北:雪 30000点
長くなったので一度区切りますね。ルールとかは作者のよくやるルールなので変なところあっても見逃しテ!麻雀分からない人がいたらすみません。なるべく分かりやすく進めたいと思います!
追記)本編と賭博録を見やすくなるよう並び替えました。