東方白天狗   作:汎用うさぎ

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雪「働きたくないでごさる!!働きたくないでごさる!!!」

文「だめです」

ランキング5位だうわーい。ってマジか。ご愛読感謝です。


7.それでも私は働きたくない

「天魔様が居たぞォォォオオオオオオ!!取り押さえろォォォオオオオオオッ!」

 

「「「「オォッ!!!」」」」

 

 ぴぃぃぃぃィィィィッ!?多過ぎるッピ!!揃いも揃って見たことある部下ばかりなんだけど!?お前ら顔は覚えたからな!ぜってぇ許さねえから覚悟しとけよ!?

 

 ってそれよりも逃げないと…!逃げたいのにしがみついてる文の力が強くて飛べない!!何だこの⑨力は!?

 

「くっ、離せ!離すんだ文!!HA☆NA☆SE☆!!」

 

「死んでも離しませんよ!!諦めて捕まってください!!」

 

 〜〜っ!!実力行使などしたくは無かったが…致し方なし!我が身の可愛さが1番をモットーに生きたい私には部下を殴り飛ばそうとも罪悪感など芽生ぬ!!いや、やっぱり心が痛むかも…だが、これも愛の鞭!!部下の皆様にはお帰り願おう!!

 

「…皆の者、私を恨むな。恨むのなら私をそうさせる社会を恨め!!」

 

 能力解放!吹き飛べ!!山の彼方まで!!怪我しないでね!!

 

「雪様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「「「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 

 文を含め数多の部下達が錐揉み回転しながら吹っ飛んで行く様はどこか清々しい。ふぅ…汚ねぇ花火だ。何がともあれ一件落着だぜ。

 

 ってあれ?盛大な裏切りを見せてくれたミスティアは一体どこへ?彼女にはなぜ裏切ったのか小一時間ほど問い詰めたいのだが。

 

 裏切った瞬間の驚きは相当だったんだからな!オンドゥルルラギッタンディスカー!と素で叫びそうになったんだからな!?

 

 いや、もう終わったことだ、それより今はこの先どうするかだ。

 

「今吹っ飛ばした連中が情報を共有する可能性もある…これ以上人里に居るのは危険か…?」

 

 此処以外に身を隠せそうな所は……はっ!彼処があった!彼処なら潜伏したらそう簡単に気がつかない!最悪の事態として、私が迷って抜け出せない可能性もあるけど…。行くしかない、迷いの竹林へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっ、どんなもんよ。この異変も案外早く片付きそうだぜ!」

 

「ぐっ…おのれ!珍妙な術で縛りおって!!私は今すぐに天魔様を探さねばならんのだ!!それに何だこの縛り方は!?な、縄が食い込んで…」

 

 縄で縛られた白狼天狗はジタバタと体を激しく動かし魔理沙に抗議する。

 

「そんな事知ったこっちゃないんだぜ。私は異変解決出来ればそれでいいのさ。それに敗者は勝者の命令をしっかり聞くもんだぜ。ついでに言うとその結び方は外の本を参考にしたんだぜ。何だっけ、亀縛りだったかな?」

 

 魔力を通すと対象に絡みつき、即座に拘束するマジックアイテムである。暴れれば暴れるほど拘束が強まり、色々なとこに食い込む(魔理沙作)。

 

 外から流れ着いたコミック(notアダルト)を参考に制作。制作期間は3日間。

 

「くっ…」

 正論を言われて天狗は暴れるのをやめて押し黙って俯いた。というよりかは縄があらぬ所に食い込んで来たためである。どこがとは言わないが。

 

「さて、霊夢の方はどうなってるか――っうわ!?」

 

 静かになった天狗から目を離して空を見上げた瞬間、魔理沙目掛けて何かが飛来していた。魔理沙は慌ててつつもそれをさっと避ける。

 

「ぐべっ!?」「うごぉ!?」

 

 魔理沙が避けたため、その先の縛られた天狗に飛来した何かが鈍い音を立てて衝突する。

 

 何が飛んで来たのか確認する暇もなく次から次へと隕石のように振ってくるそれを避け続ける。

 

「な、なんだったんだ一体!?」

 

 漸く飛来物が収まった段階で辺りを見回すと、そこら中に天狗やら河童といった妖怪の山の妖怪達が倒れていた。

 

 そう、飛来物は全て妖怪だったのだ。その中でも魔理沙はある妖怪を見つけて慌てて駆け寄る。

 

「お、おい!三流ブン屋一体これはどういう事なんだ?」

 

 文の体を起こして先程の事件について問い詰める。

 

「うぐ…さ、三流とは失礼な…!それよりも…魔理沙さん人里です…っ!彼処に天魔様が…!」

 

「なに!人里に異変の元凶がいるのか!?」

 

「えぇ…ですから早く…私に変わって天魔様を…!」

 

「ブン屋…お前の犠牲無駄にはしないぜ…!!有力な情報ありがとなー!」

 

「い、急いでください…!」

 

 箒に乗って人里へ真っ直ぐ飛んで行く魔理沙を見届けると文はプツリと糸が切れたように地面に吸い込まれた。

 

「…なるほど、人里か。それにしても…腕は落ちてないみたいだねぇ。仕事尽くしで鈍っちまってると思ったが嬉しい誤算だね。あぁ、酒が美味い…」

 

 皆が気絶して喋られる者がいないはずの空間に声が響く。そしてその声と共に微かな霧が人里へと流れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく!どれだけ退治すればこの異変は解決出来んのよ!」

 

 退治した妖怪を次々と拘束して放置して行く霊夢。異変の原因は妖怪達が騒いでいた天魔様とやらで間違いない。妖怪の山のトップだか何だか知らないけど。迷惑千万、取っ捕まえたら魔理沙と一緒に神社の片付けやらせてやるわ。

 

「――夢さーん!霊夢さーん!!」

 

「うるさいわね、誰よ…って早苗か。何の用?私は異変解決で忙しいのだけど」

 

 一際姦しい声につられて空を見上げると白と青を基調とした巫女服の少女、東風谷早苗が目に入る。

 

「私もその異変を解決に来たんですよ!神奈子様と諏訪子様が迅速に天魔様を捕まえてこいって」

 

「その天魔ってのは誰よ。そいつの所為で神社が荒れ放題なんだけど、どうしてくれるの?」

 

「天魔様は天魔様です!ザ・仕事出来る女性って感じでかっこいいんですよ。憧れちゃいますよねぇ…」

 

 恐らくは天魔とやらを思い浮かべてうっとりとしているのだろう。正直いってどうでもいいし、そこはかとなくイラっとくる。

 

「そんな事はどうでもいいし私はそいつが何処の誰で今何処にいるのか聞いてんのよ」

 

「何処にいるか分からないからみんな幻想郷中を虱潰しに探してるんじゃないですかー」

 

「使えないわね…。」

 

 情報なしか、なら用はない。此処に用はないし、さっさと人里に行こう。何やら妖怪が集まってるとも聞くし…

 

 まぁ、早苗は無視してもいいだろう。と思って人里へ飛んで向かっていると背後にピッタリと早苗が金魚の糞のようについて来ていた。

 

「酷いですよ霊夢さん…」

 

「あんたいつまで付いて来る気よ。」

 

「いやー、探しても全然見つからないので霊夢さんの勘に任せてついて行こうかと」

 

「はぁ?何それ嫌よ。私の邪魔するってんなら先にあんたをしばいてから行くわよ」

 

「え?弾幕ごっこしてくれるんですか?いつもめんどくさがってやってくれないのに!」

 

 人がお茶を片手に和んでたり、日向ぼっこしてうたた寝してる時に押しかけて来る奴の相手などしたくはない。以前弾幕ごっこで勝敗を着けてから何度も勝負を挑んで来るのでたまったものじゃない。

 

「いつもはそういう気分じゃない。でも今は、そういう気分。あんたをぶちのめしたいっていうね」

 

「やっと乗り気になったんですね!それじゃあ行きますよ〜!」

 

 皮肉たっぶりに言ったのにまるで堪えてないあたり早苗らしいとは思うが今のは少しムカついた。

 

 弾幕を展開する早苗に対抗するように弾幕の隙間へ飛び込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里へ続く道を二陣の風が吹き抜ける。1つは黒、もう1つは白色の影が人里へと駆け抜ける。

 

「どう?まだ雪は人里にいるの?」

 

 黒い影、姫海棠はたては少し後ろを随伴する白狼天狗、犬走椛に問いを投げた。

 

「…いや、恐らくは人里を離れるおつもりのようです。各方面を警戒しながら翼を広げております。」

 

「…私達では追いつけないから…椛、見失わないようにね」

 

 速さに自信のある私達だが、天魔のスピードには追いつけないと思い知らされる程天魔は速い。大天狗あるいは文ならギリギリ縋り付けるかも知れないが私には無理だと思っている。

 

「承知」

 

 椛は言葉少なに返答し観に徹したようだ。どうにかしていち早く雪に合流しなくては…

 

「はぁ…、まったくなんて事をするのよ…あの妖怪は!!」

 

 あの妖怪とは、八雲紫の事である。椛によれば八雲紫が何らかのアクションを起こしてこの異変が始まったのだと言う。雪がいないと大天狗に知らされてから私は直ぐに椛に掛け合って雪の居場所を特定した。

 

 しかし、私はその情報をリークすることはしなかった。何故なら――

 

「せっかく雪がハメを外して休んでくれたのにみんなでよってたかって追いかけ回すなんて!雪の笑った顔なんて久しぶり見れたのに…」

 

 人里に降りて、妖怪の山以外の人妖と触れ合い、笑っていたのだという。私は雪が天魔になってから笑った姿を見たことがない。喜怒哀楽を忘れたのかと疑ってしまう程には。

 

 私は心配で仕方なかった。だが、確かに笑ったと聞いて私の心は決まった。雪の味方をする。天魔を辞めたいのなら辞めたらいい。天魔という重みが雪から笑顔を奪っているのならそんな物クソ喰らえだ。

 

 雪、待ってて!私が何とかしてみせる!

 

「…!!はたて様、人里の周囲が謎の霧に包まれております!!」

 

「霧…?」

 

 改めて決意を固めた瞬間に椛が人里の異変を感じ取り慌てて報告する。霧と聞けば紅魔の吸血鬼の起こした異変が思い浮かぶがそれはないだろう。このタイミングで起こす理由がないし、異変解決の際に禁止されていたはず…

 

「…まさか…いや、でもこれは…」

 

 椛は動悸に抑え、冷や汗を流しながら千里眼を行使していた。その様子を見れば間違いなくマズイ事が起きていると分かる。

 

「な、なに!?何が起こってるの!?」

 

「恐らくは伊吹萃香殿が人里を包囲している模様です…」

 

「なっ…!?」

 

 雪と一刻も早く合流したい私達にとって、最悪の状況が待ち受けていた。




はたて「私が守護らねばならぬ…」

萃香「来ちゃった☆」

雪「来るなぁぁぁぁァァァッ!!」

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