東方白天狗   作:汎用うさぎ

11 / 26
ゆかりんのせいで雪の預かり知らぬところで雪を中心とした異変が発生。


6.白追異変

「あらあら、まさかここまで大事になるとは。妖怪が幻想郷を駆けずり回るなんて、霊夢も動いているみたいだけど。山神雪が捕まるまで収まらないでしょうね。」

 

 薄暗い不気味な空間で、モニターのように展開されたスキマを眺めてクスリと笑みをこぼす。

 

「紫様、人里を含む各方面から苦情が…」

 

 背後に仕える九尾の式、八雲藍が恭しく頭を下げて報告する。

 

「放っておきなさい、害はないわ。こういう時に悪巧みする愚か者は妖怪の山には米粒程しかいないから」

 

「はっ」

 

「件の天魔はどこかしら…って、あら?これは…」

 

 数多展開されたスキマのうちの1つに目を落とす。その先には、1人の童女が空を飛んでいる。ただ、その童女の頭には立派な二本の角が生えており、これでもかと、その威光を振りまいていた。

 

「――お?見てるな紫?聞いたぞ〜、雪の奴が天魔を辞めたってな。」

 

 常人ならまず気がつく事が出来ない視線に気づき、スキマを通して目が合った。相手が相手なだけに驚きはしないが、少し面白くない。だが、そんな様子をおくびにも出さずに対応する。

 

「えぇ、正確には辞めたがっているが正解かしら。突然過ぎて驚いたけれど、私が止めなくても彼女らがやってくれるわ」

 

「…なら、私はその逆だな。これまでは職務を理由に散々振られてきたけど、この騒動が上手くいけば私を拒む理由は無くなるからな!私は雪の味方をするよ」

 

 拒む理由は他にも沢山あるから萃香の思う通りにはならないと思うけど…。というか萃香が捜索を邪魔する側なんて、被害が大きそうなんだけれど…。

 

「…あまり大暴れはしない事、さもないと霊夢にしばかれるわよ。あの子、今回の事相当頭に来てるらしいから」

 

 博麗神社を捉えるスキマを尻目に警告しておく。鬼のような形相で妖怪をシメていく様はまさに鬼巫女である。本格的に霊夢の邪魔をしたら、私でさえも下手すればしばかれかねない。

 

「あぁ、知ってる。私も今し方神社を出て来たところだからね!霊夢が何とかしろとか言ってたけど無視して来た!」

 

「貴女も懲りないわね…」

 

「おっと…話しているのも勿体無い。私は雪の所へ急ぐとするよ。それと、天魔失脚を望んでいるのは私だけじゃない。私以外の鬼も、この話が耳に入れば腰を上げるだろうね」

 

「…地底から出てくるというの?」

 

「さぁね。ただ、あいつらの雪への執着は不可侵条約を笑顔で破り捨てるさ」

 

「…冗談よね」

 

「鬼は嘘をつかない、紫は知ってるだろ?ま、その様子だと軽い気持ちで山の連中焚きつけたんだろうが、後悔するよ」

 

「萃香、話があるのだけれど…」

 

「私にはないね。それじゃあ、事後処理諸々頼んだよ黒幕さん」

 

「…藍、貴女は地底を見張ってなさい。もし鬼が来たら足止めをしておいて頂戴。」

 

 地底から這い出てくる程天魔に執着してた鬼といえばあの鬼しかいない。いやというかあの鬼が睨みを利かせているから他の鬼は出てこないだろうけど、あの鬼は単体でも地上を更地に出来る力を持っている。

 

「畏まりました」

 

「はぁ…全部冗談だったら良かったのだけれど…」

 

 藪をつついたら鬼が出るなんて…。萃香だけなら鬼にしては常識を弁えているからいいけど、あの鬼は加減を知らない。

 

 少し苛めてあげようと思っただけなのに、調子に乗りすぎたわね。まぁ、霊夢ならなんとかしてくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔ァッ!」

 

「うわぁぁっ!?」

 

「はぁ…はぁ…!やっと終わったー!あんたら次押しかけたらぶん殴るからね!!」

 

 魑魅魍魎の神社は、霊夢の尽力で十分もせずに死屍累々と化していた。

 

(((もう既に殴られる以上のことされてる…)))

 

 神社に押しかけた天狗や河童はズタボロにされ、動けないようにお札によって簡易的に封印されて身動き出来ないようにされる。

 

「ふぅ…次は、魔理沙ね…うふふ」

 

 全ての妖怪に処置を終え神社に強力な結界を張ると、霊夢は魔理沙を追って空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――急に悪寒が……っと危な!」

 

 多分霊夢がしばき終わって私を探してるな?殺される前に異変を解決しねーとな!取り敢えず目に付く妖怪を捕まえて回って、そいつらが探してる天魔って奴を捕まえれば異変解決だろう、多分。

 

「おい、白黒!邪魔するな!我々は今――」

 

 見たことのない白狼天狗だが、早さにさえ注意すれば問題ない。異変解決には目に付いた妖怪全て捕まえて行くって決めてるからな、お前に特に罪はないが…私の経験値になってもらうぜ。

 

「天魔って奴を探してるんだろ?なら私を倒していきな!」

 

「なに!?天魔様が何処に居られるのか知っているのか!?」

 

「あぁ!(知らないぜ)」

 

 ついでに言えばどんな奴なのかすら知らない。

 

「ならば推して参る!!」

 

 それにしても皆んな必死過ぎないか?そんなに天魔って奴が凄いのか?ま、会ってみれば分かるか…。今は目の前に事に集中だぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な…」

 

 こ、これ全部…私をあの地獄のデスクワークに連れ戻し隊!?ふっ、ふざけるなァッ!!私の安寧を脅かす存在がここまでいようとは…。ちょっと待て、おい河童!あれだけ開発の許可や実験の承認を出してやったのに恩を仇で返すか!?

 

「人里には流石に入っていく妖怪は少ないが…数人はいるようだな」

 

 人里に篭ってればワンチャンと思ったけど、地味に探しに入ってくる猛者がいる。そこまでして私にブラック職を押し付けたいか!?

 

…取り敢えず、人里の外は魑魅魍魎だし…人里を逃げ回る方が吉か?それに人里で暴れるわけないしね!ということは人里で隠れんぼ大会開催か!?楽しそう!罰ゲームがブラック職に戻される事じゃなければ!

 

「…降りるか」

 

 あ、ちなみに地上から遥か上空に居ます。目がいいから全然見える。

 

 それはさておき、誰にもバレないように降りるとなると…超スピードで降りるしかないな。大丈夫、私の“流れを操る程度の能力”を使えば衝撃諸々起こさないで着陸出来るから。

 

 ウン、これものっすごくチート。基本何でも出来る。分かりやすく説明すると身の回りの事象や物体の動きを自由に操れたりする。天狗らしく風の動きを操ったりも出来るが、風に限らず水や火、雷なんかも何でもござれ。力の流れさえも操ることも可能。私の能力はベクトル操作と置き換えても何ら変わりはない。やったぜ。

 

 まぁ、この能力故にブラック職に祭り上げられたんだけどね!クソッタレ!

 

 などと愚痴を零しながらも猛スピードで地上へ降り立つ。マッハ出てるわコレ。ひゃっほー。と、楽しむ間も無く地面とこんにちわ。

 

 地面スレスレで能力を行使して着地における衝撃や被害をゼロにする。無事着地成功。やったぜ。

 

「さて、誰も気づいてないよな…」

 

捜索隊の死角が多くなった瞬間を狙って降り立ったが…大丈夫みたいだ。取り敢えず物陰に身を潜めよ――

 

「…見つけましたよ天魔様…!」

 

 うひっ!?な、なに!?バレた!?というか背後からこっそり声かけないでよ心の臓が止まるでしょ!?

 

 ってよく見たら文か。ま、まさか文も私を…

 

「…文か、何事だ?」

 

「何事か?じゃありませんよ!天魔様が急に辞めるなんて言うから妖怪の山は大パニックですよ!」

 

 ん?なんで?風さんが上手くやってくれてると思ってたんだけど?それと職務ときは公私混同のため敬語を使ってるけど2人っきり時くらい敬語は止めようって言ったじゃないか!

 

「ちゃんと引き継ぎは手紙で残したはずだが…それと2人っきりなのだ天魔ではなく名前で呼んでくれ」

 

「〜っ!あんなの引き継ぎとは言いません!騒ぎがこれ以上大きくなる前に戻りますよ雪様!」

 

「断る、何故お前達が私を天魔にと固執するのか分からんが、私は山には戻らぬ。」

 

「雪様以外に天魔は考えられないからです!」

 

「私は戻らん」

 

「困ります、ほんっとうに困りますから!!」

 

「断固拒否する」

 

「お願いします〜!雪様が天魔じゃないと…私が気持ち良く新聞かけませんから!!」

 

「全く言ってる意味が理解出来ん」

 

「ほんっとうにほんっとうにお願いします!!雪様が天魔じゃないと妖怪の山は…機能しません!!断っても無駄ですよ!もう絶対に意地でもこの手を離しませんから!!」

 

 お断りしますモードに入った私を前に、文は私の体にしがみついて絶対に離さないと言わんばかり私を抱きしめてきた。

 

 いや、普通に役得というか。シチュエーションがアレなだけに素直に喜べない。コレどうしよう…。

 

「あ、天魔様…此処に居たんですね」

 

 文をどうしようかと思案してると少し肩で息をしているミスティアがこちらへ近づいてきた。

 

 ナイスタイミングである。さぁ一緒に文をどうにかしよう。

 

「ミスティアか…いいところに――」

 

「天魔様はッ!此処に居まぁぁぁぁすッ!」

 

「ファッ!?」

 

 うせやろ…ッ!?裏切り…ッ!信頼出来ると思っていた…ッ!ミスティアの…裏切り…ッ!

 

 私は、私は一体何を信じればいいんだッ!!?世の中敵しかいねぇじゃねぇーか!?目に入る物全てが敵なんだ…!悲しすぎる!

 

 って、悲観してる場合じゃない!!に、逃げないと…!

 

 何か地響きなようなものが……まさかっ!?

 

「「「天魔様はどこだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!




ゆかりん「てへぺろ」

雪「ふざけんなよマジで」

ゆかりん「私も鬼が出てくるとは思ってなかった。やべえ」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。