人魚を釣り上げたので世話する事にした   作:ちゅーに菌

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みんな大好きフランさんが出るよ! やったね!


みんな お ま た せ

脳みそを溶かしながら読むタイプのギャグ回です。考えるな、感じろ。


人魚さんとラマとフランさん

 

 

 

 白かった奴……もとい黒い奴を人魚さんが眷属に変えた翌日。俺はソファーに座りながら携帯電話を片手に考え事をしていた。

 

 俺は自慢ではないが、知識に精通した神性だ。全智者なんて呼ばれていたしな。まあ、この半分は人間の身体では新たに知識を引き出す事は出来ないので、知っている事はクレドの密林にまだいた頃の掠れた記憶だけだがな。

 

 その観点から言わせてもらうと、ドリームマンが言っていたように世界が滅ぶ事は決まっているという話は実に利に叶っている話だった。要は世界が滅ぶ事はもう止めようがない。更に言えば母さんが止める気が無い上に加担している為、それは確実だ。

 

 なので思い当たる俺の親しい友人には話した方が良いのではないかと考える。何せ全てを無かった事にしても今において進行した時間までは戻らない。人知れず世界は滅び、修復された暁には修復するのに使った時間は戻らずに全ての人類が目を覚ます事になるだろう。

 

 要はぽかーんとしている内に世界が滅び、気がついたら数ヵ月か数年単位で時間が飛んでいて再度ぽかーんとなるのだ。

 

 となるとだ。俺の一部……というか思い当たる1人の友人は、なんでその人理修復(イベント)に参加出来なかったんだと確実に俺に言ってくるであろう。いや、盛大に駄々を捏ねるであろう。2週間ぐらい俺の家に居座って駄々を捏ねるであろう。そして、途中から何故駄々を捏ねていたかを忘れ、結局1、2ヶ月ぐらい俺の家に飯をタカる目的で居座るであろう。

 

 人魚さんとその友人の夕飯を作るハメになっている俺の姿を幻視する。その姿はカッコウの子供の世話をするスズメの親ような切なさとやるせなさがある。

 

「………………話しておくか」

 

 俺は携帯の電話帳を開き、"フランさん"と表示されている人物を選択する。

 

「はぁ……」

 

 苦手なんだよなぁ……コイツ。なんとなく母さんと似ている……というかまんま小っさい母さんみたいで。まあ、母さんと比べると本当に可愛らしいレベルだが、性格が何と無く似ているので隣に居て若干のストレスを覚える。

 

 果たしてそれが友人なのかと疑問に思うかもしれないが、俺と同じく"数百年の時を当たり前のように生きている存在"は稀な為、数少ない付き合っていて後腐れも後悔もしない人間の友人なのだ。

 

「………よしっ!」

 

 意を決して通話ボタンを押し、携帯のスピーカーを耳に当てて向こうが電話に出るのを待っ…。

 

《はーい! 皆のフランちゃんでーす! 君から電話して来るなんて本当に珍しいねー! 明日は海魔でも降るのかな!?》

 

 

 プッツン……ツー…ツー…ツー……。

 

 

 いかん…何故か掛けた直後に電話に出られたから思わず終了ボタンを押してしまった。やっぱりコイツに教えるのは止めようそうしよう。よく考えたらカルデアにいる間、ずっとコイツに着き纏われる方が面倒な事になるじゃないか、クソなんで電話を掛ける前の俺はコイツに電話を掛けるという思考に至ったんだチクショウめ!

 

 

 ~♪ ~♪

 

 

 携帯からFishmenの曲が流れ始める。これに設定しているのは1人だけの為、見るまでもないが、一応確認すると"フランさん"と表示されていた。

 

 大きな溜め息を吐いてから仕方がなく電話に出た。

 

「………はい」

 

《いきなり切るなんてひっどーい! 私泣くぞ! すぐ泣くぞ! 絶対泣くぞ! ほら泣くぞ!》

 

「嘘つけやTSロリジジイ」

 

《なにおう! やーい! 俺っ娘! 外なる神ー!》

 

「……何それ貶してんの?」

 

《行き遅れ年増邪神…》

 

「精神が死に絶えるまでぶち殺し続けるぞ? 蒼崎橙子の時より酷い目に会わせるぞ? ドリームランドの名所(きけんちたい)巡りに連れていくぞ?」

 

《ごめんなさい。あ、でも最期のはちょっと興味あるかも》

 

 いかんいかん、一瞬本気で殺ろうかと考えてしまったなコヤツめ、ハハハ。確かに俺はとっくに俺らの中で一般的な成人である200歳を過ぎて久遠の如くだが、まだピチピチである。年増ではない。断じて年増ではない。

 

「要点だけを伝えるぞフランさんや」

 

《本当に珍しいねー。君から要件なんて》

 

「世界が滅ぶから俺の家に来い」

 

《………………え?》

 

 珍しく電話の先の相手が押し黙る。その真摯に受け止めてくれたような様子に俺も満足だ。

 

《えーと……》

 

 そして、申し訳なさそうな声色で暫く言葉を濁してから口を開いた。

 

《私カルト的なの(そういうの)と新聞の勧誘は遠慮してるんですよ。ゴメンね》

 

「宗教勧誘じゃねぇよ。後、お前が言うな」

 

《えー? 神サマなのにー? ほんとにー? ほんとにござるかー?》

 

「うるせえ、人魚さんぶつけんぞ」

 

『………!?』

 

 俺の隣で卵を温めていた人魚さんがぷるっと震えて、こちらを見つめてきた。どうやら俺の冗談が聞こえたらしい。

 

 それはひとまず置いておき、俺や母さんは厳密にはこの星の神に分類されるモノではない。ORT等と同じようにただの地球外生命体だ。俺は大昔、拝み倒されて仕方無く神様の真似事をしていただけである。

 

《人魚…? エビフライじゃなくて?》

 

「お前にエビフライは勿体無い」

 

『Aaaaaaa!!』

 

 なにやら人魚さんが俺の胸をポカポカと叩いて、私なら良いのかとでも言いたげに厳重抗議し始めた。だが、可愛い上に害はないので放っておこう。

 

『………!(すぽっ)』

 

 あ、人魚さん。待って、俺が悪かったから! 俺のブラジャーから母乳パッドを引き抜かないで! それがないと服が大変な事になるの!

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 フランさんに電話を掛けてから3日程経った頃。なんやかんやで俺の家に来る事を了解したフランさんは今日来るらしいので家で待機している。

 

 するとチャイムがなったので玄関に行き、ドアを開いた。

 

 目に飛び込んできたのは、"狐っぽい見た目の装いをしたピンク髪の女性"である。ニマニマと陽だまりのような笑みを浮かべている。何故かLlamaと大きなイニシャルの入ったエプロンをしているのがポイントである。

 

「どちら様ですか……?」

 

 見れば家の前に車が止まっていた。いや、ただの車ならそれで終わった話だが、その車は何故か広めのサンルーフが改造されて取り除かれており、そこから数頭の"ラマ"が上半分程はみ出ている。なんだそれすげー可愛い。

 

「Dial-a-Llama、ラマなら何でも即座にお届けだ。ラマを届けに来たぞ」

 

「ええ…」

 

「お客様の母が注文したラマを届けに来たゾ。エベレストの山頂からマリアナ海溝の底まで、お客様がラマを必要とするなら我々はラマを届ける。それが仕事なんだナ」

 

 彼女は何か物凄い事を言い始めた。ん? ちょっと待て最初に俺の母とか言わなかったか?

 

 どうやら母さんからの物理的ドッキリ(黒い奴)の次は精神的ドッキリらしい。隙を生じぬ二段構えと言ったところか。くたばれ。

 

「うむ、そうだ。先に君の母からの伝言を読み上げよう。キャットはお得意様にはサービスするのだ。えーと…"ワーオ! 過程と結果はどうあれよくシャイガイを倒したね! 正直もう少し苦戦すると思ったが、母さん息子の成長に感無量だよ! だからお詫びに電話一本でSCP-1296を送りつけてみたぞ! 楽しんでね!" だそうだ。お前苦労してそうだな、お祓いを勧めるぞ」

 

「余計なお世話と言いたいところだが、とーっても苦労している」

 

 きっと母さんの娘でなければ俺は今頃ドリームランドから人間を玩具に暴虐の限りを尽くすような存在になっていたかもしれない。世界最高の反面教師(その点)だけは感謝している。だが、とりあえず母さんは詫びの意味を辞書で引け。後、俺が社へ行くと神様がビビるからお祓いは行かん。

 

 そんなことより、あの黒い奴はシャイガイと言うのか。意外と行儀が良いし、食事も出せばきちんと残さず食べるから中々良いぞ。ただ、椅子とテーブルが明らかにアイツ用に合ってないから作らねばならないな。会話出来ない奴は人魚さんで慣れているので今更だ。

 

「注文の品は2つだぞ。どちらとも買っても良いし、片方でも良い」

 

 買わないという選択肢は無いのか言葉が出そうになったが、配達員には罪はないのでそれを呑み込む。黙って見ていると、配達員は荷台から一頭のラマを下ろして俺の前に連れてきた。

 

「ロボットのラマなんだナ、5年修理保証付きだぞ」

 

 いきなり無機物である。メカメカしい銀色ボディである。

 

 その外見は最初のメカゴジラのような何処と無く時代のチープさを感じる光沢を帯びたラマのような何かだ。

 

 ………………正直、嫌いじゃない。

 

「中々好感触なようでなにより。もうひとつはこれだワン!」

 

 配達員は助席のドアを勢い良く開けた。

 

 そこには"赤い軽装を纏ったアホ毛付きの赤毛の男の子"が眠っていた。美少年といえる顔立ちであろう、一歩間違えれば美少女と言えてしまいそうである。

 

 え…なにこれは…?

 

「ラマ…?」

 

「ラーマなのだな」

 

「ラマなのか?」

 

「ラーマなのだな」

 

「ラマなのか……」

 

「ラーマなのだな」

 

 なんか配達員のニュアンスが若干おかしい気もするがこの男の子もラマらしい。ラマという名前の子なのだろうか。

 

 同じアホ毛同盟としてシンパシーを感じないでもないが、人身売買はNGである。申し訳ないが彼は持って帰って貰おう。

 

「まあ、常設だからナ、仕方ないナ」

 

 ロボラマだけ購入することにすると伝えると配達員は、星5でもないしナと呟きながら助席の扉を閉めた。時々、この配達員の言うことの意味がわからない。ひょっとしてブラッドでボーン的な啓蒙が足りないのだろうか? 俺が上位者なのだが……。

 

「えーと、40万5587円だナ」

 

 うわロボラマ普通に高い。いや、ロボットなら寧ろ安いのか?

 

「…………カード使えます?」

 

「月払いか? ローンなのか?」

 

「一括で」

 

「おうさ」

 

 あ、意外とちゃんと近代化してるんだ。

 

 ブティックに置いてあるような手元にカバーの付いているカード読み取り機に暗証番号を入力すると、配達員はお買い上げどうもと言葉を吐き、運転席に戻って行った。

 

「ちなみに、アタシは未だ見ぬマスターが呼んでくれるまで暇だからバイトしているだけだから何も支障はないんだナ! 皆のもの! ガチャで会おう!」

 

 謎の言葉を言い残すと配達員は車を走らせて帰って行った。普通に安全運転で帰って行った。いったいあれはなんだったんだ…。

 

 ぽつんと玄関先に残された俺は暫く呆然としていた。正直、シャイガイくんの時より今の嵐のような時間の方がよっぽどダメージがあった。というか疲れた。

 

 玄関前の段差に腰を下ろして地面を眺めながら溜め息を吐いていると、つんつんと肩を触られている感触と、俺に影が掛かるのを感じた為、顔を上げた。

 

「ハーイ! とっても元気そうね"イブ・ツトゥル"。アハハハハハ!」

 

 そこには白と黒を基調としたゴシックロリータ風の服を着て、10代半ばを過ぎた程度に見える少女。

 

 

 

 

 

 俺の友人の"フランチェスカ・プレラーティ"がそこに居た。

 

 

 

 

 

 コイツの本名は"フランソワ・プレラーティ"だが、面倒なので俺は"フランさん"と呼んでいる。

 

 別に歳上だからさん付けとかではない。生きている年数は俺の方が比べるのも億劫な程に遥か上である。さん付けの理由は嫌っている訳ではないが、呼び捨てや、ちゃんつけする程親しみを感じないからフランさんである。ミストさんと同じである。

 

 今来たのかよ…隙を生じぬ三段構えかチクショウ…。

 

 俺はげんなりしながらも仕方無く、フランチェスカとロボラマくんを家に招き入れた。

 

 

 




主人公の名前判明回、隠す気が更々無かった? 気のせいです。

ちなみに今後、フランさんはこの小説のサブヒロインなんじゃないかと思うぐらい出続けますし、人理修復にも連れて行くので悪しからず。フランさんは人類の味方やし、クトゥルフ神話のタグがある時点で当たり前だよなぁ…?(ねっとり)



~簡易SCP説明~

SCP-1296 - Dial-a-Llama (「ラマ」なら何でも即座にお届け!)-Euclid
電話一本でラマなら本当に何でもどこでも届けてくれるSCP。ラマとか病気持ち妊婦ラマとかラマ僧とかロボラマとかラマの着ぐるみのSCPとか何でもござれ。多分、ラーマきゅんも行ける。収容不能なのでEuclidクラスである。多分、ラーマきゅんも行ける(大事なry)。
ん? 意味がわからない? 人間が理解出来ないからSCPなんだよ(集中線)

タマモキャット
多分SCP。

フランチェスカ・プレラーティ
多分SCPその2。



~主人公マテリアル(絆0)~

イブ・ツトゥル
ニャルラトホテプ等と同様に外なる神に属する一柱。ニャルラトホテプの娘、或いは息子。数人の重症の精神病患者を全快させたり(嘘は言っていない)、何の質問でも返してくれるクトゥルフ神話の神々では比較的(ここ重要)マトモな邪神。
母親の破天荒っぷりに頭を悩ませており、大変な反面教師となっている為、秩序・悪の属性を持つとても良い人である。


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