君のノート   作:JALBAS

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いよいよ、彗星の破片が糸守に落下します。
説得のための材料を集め終わった月は、宮水としきを説得して、糸守の住民を避難させようとします。
そして、三葉に対しては・・・・・
これが、最終章です。、




《 最終話 》

10月2日、夜。宮水家の居間に、家族全員を集めた。三葉のお父さんも、無理を言って呼び寄せた。糸守の存亡に関わる、重大な話があると言って・・・・・

 

僕の前に、お婆さん、三葉のお父さん、四葉が並んで座っている。

「わざわざ、忙しい中集まってもらってすみません。」

家族を前に、畏まった話し方をする僕に、お父さんと四葉は怪訝な顔をする。

「まず、最初に言っておきます。お婆さんは既に気付いていますが、僕は、三葉ではありません。」

『はあ?』

この言葉に、お父さんと四葉は、“何を言ってるんだ?”という顔をする。

「冗談を、言っている訳ではありません。僕は、今から3年後の東京の男子高校生です。三葉さんとは、ひと月程前から、何度となく入れ替っています。」

「な・・・何だと?三葉、そんな戯言を言うために呼んだのか?私は、もう帰るぞ!」

お父さんは、早くも怒って立ち上がった。

「待って下さい!怒る前に、話を最後まで聞いて下さい。」

僕は、毅然とした態度で、お父さんを見つめた。その気迫に圧されたのか、お父さんは腰を下ろした。

「信じられないのも、無理はありません。でも、宮水家の女子には、代々この不思議な力が受け継がれているんです。お婆さんも、少女時代に、この入れ替りを体験しています。」

「え~っ?ほんと、お婆ちゃん?」

「ああ・・・ずっと、忘れとったんじゃがね、この子を見て、思い出したんよ。」

「では、何故、そんな力が受け継がれているのか?それが、重要なんです。」

お父さんの顔から、怒りが消えた。少し、戸惑っているような表情に変わっている。

「糸守湖が、どのようにしてできたか、ご存知ですか?」

「ん?・・・知らないが・・・」

「恐らくですが、1200年前、ティアマト彗星の破片の落下でできたんです。」

「な・・・何だと?」

「御神体のある、山の窪みを知っていますか?」

「ああ・・・」

「あれも、恐らく彗星の破片の落下でできたものです。」

「何?」

「そうでなければ、火山でも無いあの山に、あのような窪地はできません。これは、糸守湖よりもっと古いです。多分、2400年くらい前でしょう。」

「ちょっと待て、それじゃ、1200年毎に彗星の破片が墜ちていると言うのか?」

「そうです。その彗星が、ティアマト彗星です。これが、2日後に地球に最接近する。」

「ま・・・まさか?」

「そのまさかです!2日後、また糸守に彗星の破片が墜ちるんです!」

「馬鹿な!そんなのは、推測でしか無いだろう!」

「僕は、3年後の高校生だと言いましたよね?既に事実として、知ってるんです。3年前の10月4日、つまり明後日、ここに彗星の破片が墜ちて、町が崩壊した事を!」

「な・・・・・」

全員、あまりの事に絶句している。入れ替りを認識しているお婆さんも、この事実には驚いている。

「この事実を伝え、住民達を事前に避難させて救うために、3年の時を越えて、入れ替りが起こっているんです!」

「ま・・・待ってくれ、君が3年後の人間という事は、未だに信じ難い。そもそも、昔からそういう事実があったなら、何でその事が、この町に伝承されていないんだ?」

「されていました。ですが、ある事件で、全ての古文書が消失してしまったんです。」

「な・・・何だ?その事件とは?」

「“繭五郎の大火”です!」

「な・・・なんと・・・」

その後、豊穣祭の舞にも、彗星落下を暗示するものがある事、御神体の洞窟の中の天井に、彗星の絵が描かれている事等も説明し、何とか理解してもらえた。

「わ・・分かった。お祭りの日に、臨時避難訓練を行う。それで、住民全員を、糸守高校に避難させればいいのか?」

「はい。糸守高校は、3年後もそのまま残っています。あそこは、災害の範囲外です。」

「すまんが、最後に、君の名前を教えてもらっても良いか?」

「はい・・・・立花、瀧です。」

「瀧くん・・・ありがとう。君の好意、絶対に無駄にしないよ。」

「宜しくお願いします。」

 

翌朝、自分の体で目を覚ますと、まず三葉からのメモをチェックする。

「何?尾行されていた・・・・本当かリューク?」

「ああ。」

「警察か?・・・いや、もし警察なら、先に父さんが何か探りを入れて来る筈だ・・・・という事は、“L”のさしがねか?」

警察の情報が漏れている事に気付いて、警察関係者を調べ出したのか?だとしたら、警察以外の者か?・・・・極秘裏に動いている可能性が高い。まずは、相手が何者かをつきとめるのが先決だ。だが、今はまだ不味い。あと、2日待つか・・・・・

「なあ、月?」

「何だ?」

「糸守の件は、片が付いたのか?」

「ああ・・・片付いた。」

「それじゃあ、もうあの女とお前が入れ替る事もねえのか?」

「何だ、寂しいのか?まさかお前・・・・三葉に惚れたか?」

「馬鹿言え!死神にそんな感情はねえよ!ただ、あいつをからかうと面白かったんでな。」

「はあ?・・・ははははは、三葉が聞いたら、顔を真っ赤にして怒りそうだ。」

 

 

 

10月3日、彗星の破片落下の2日前。朝起きると、スマホに月くんからの、最後のメッセージが入っていた。

何故、最後なのかというと・・・・・・

 

『三葉、昨夜、君のお婆さん、お父さん、四葉に、入れ替わりの事と彗星の破片の落下の事を話し、納得してもらった。お父さんが、臨時の避難訓練を実施し、町民全員を糸守高校に避難させる・・・・』

 

そう・・・・良かった。お父さん達、信じてくれたんだ。

ここまでは、本当に嬉しい報告だった。でも、その後は・・・・・・

 

『これで、糸守の人達は助かる。その見返りと言ったら卑怯かもしれないが、最後に、ひとつだけ頼みがある。

これで、僕と君の入れ替わりは終わる。元の、赤の他人に戻る。だから、以後は二度と、僕には近づかないでくれ。

僕はキラだ。これからも、犯罪者を裁き続ける。そして、それを良しとしない、警察や“L”との本格的な闘いが始まる。

君は、僕の正体を知っている。本来なら、生かしておいてはいけない存在だ。最初は、僕も本気で、君を殺そうとしていた。だが、今は、君を殺したく無い。

君が僕の近くにいれば、そこから僕の正体が、“L”や警察に知れる危険がある。しかし、君が僕に一切近づかなければ、僕と君を繋ぐ物は何も無い。入れ替わりの事実は、宮水家の人間しか知らないし、僕の本名を知っているのは、君だけだ。

もし、それでも君が僕に近づくというのなら、僕は、君の名前をノートに書く。

どうか、僕にそんな事をさせないでくれ。

さようなら、三葉。   』

 

最後の方は、涙で目が曇って、よく読めなかった。

私はスマホを胸に当て、上を向いて目を閉じる。それでも目からは、滝のように涙が溢れ、頬を伝っていく。

 

その夜・・・・

「お婆ちゃん、お願いがあるんやけど・・・・」

私は、お婆ちゃんに言って、髪を短く切ってもらった。

お婆ちゃんは、心配そうに聞いてくる。

「瀧くんと、なんぞあったんか?」

瀧くん?・・・・あ、そういえば・・・・・

“僕の本名を知っているのは、君だけだ”

お父さん達には、本当の名前を言っていないんだ・・・・それは、そうだよね・・・・

「ううん、そうやないの・・・・」

心配をかけないように、そう答えた。

仕方が無い・・・・私が居たんじゃ、月くんが、余計に危険になる・・・・・私では、足手纏いにこそなれ、何の手助けもできない・・・・忘れるしかない。元々、私と月くんは出会う筈の無い2人だった。神様のきまぐれで、一時、出逢っただけなんだ・・・・

さようなら、そして・・・・ありがとう、月くん・・・・・・・

 

10月4日。豊穣祭が開催される中、その行事のひとつとして、町民全員をあげての臨時避難訓練が実施された。

普通なら、どうしても参加できない者は免除されるものだが、今回だけはそれは許されず、お年寄りであろうと、赤ん坊であろうと、病人であろうと、本当に全員の参加が義務付けられた。当然、反発も多かったが、そこはお父さんが何とか周りを言い聞かせた。

そのおかげで、糸守の住民は救われた。

 

こうして、私と月くんの入れ替わり生活は、完全に幕を閉じた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

三葉との入れ替わりが無くなった後、“L”との闘いが激化した。僕らを密かに尾行させていたFBIを始末したら、今度は部屋に隠しカメラを仕掛けられた。

これを入れ替わっている時にやられたら、完全にアウトだった。やはり、死神で無い神も、僕に味方してくれているようだ。

 

そして、とうとう“L”は、僕の前に姿を現した。偽名を使い、何重もの罠を仕掛けて僕にボロを出させようとした。だが、こちらもそれを利用して、何とか奴を始末しようと策を練った。それこそ命を懸けた、騙し合いの始まりだった。

 

そんな時、また、僕にチャンスが巡って来た。

この時間の日本に、もう一冊のデスノートが落とされた。それを使った、第2のキラが現れたのだ。しかもこいつは、死神の目を持っていた。

第2のキラは、テレビ局を使った派手なデモンストレーションの後、僕に直接コンタクトを取って来た。僕のスマホに、呼び出し状を送り付けて来た。何故、僕がキラだと分かったのか?その理由は謎だ。しかし、この呼び出しを断る訳にはいかない。こいつを“L”や警察に取られてはまずい。僕の側に取り込むか、それが無理なら、早い内に始末しなければならない。

 

僕は、待ち合わせ場所で待った。だが、そこに現れたのは・・・・・

「み・・・三葉?」

3年経ち、少し大人びてはいるが、紛れも無く、糸守に居た三葉だった。

そして彼女は、バッグから一冊のノートを取り出す。赤い表紙だが、ノートにははっきりと“DEATH NOTE”と書かれている。

三葉は僕に近寄り、ノートを僕の前に差し出す。僕は、そのノートに触れる。

そこに現れた死神は・・・・・

「やはり、また会えたな、夜神月。」

レム、お前だったのか、三葉にデスノートを渡したのは。

「月くん、私も闘う。本当に犯罪の無い、理想の世界を創るために・・・・足手纏いになるようなら、いつでもノートに私の名前を書いて!私は本当なら、3年前に死んだ身。こんな命、惜しくは無いわ!お願い、私にも手伝わせて!」

「わ・・・分かった、三葉。」

そして、レム!お前にも見せてやる!僕達が創る、真の理想郷を・・・・・

 





ここまで読んで下さって、ありがとうございました。

月がとしきに“立花瀧です”と言いますが、当然偽名です。何事にも慎重な月が、簡単に本名を教えるとは思えないので。どんな偽名を使おうか考えた時に、逆に“瀧くん”の名を偽名で使ったら面白いかなと思って、こうしました。

デスノート側の設定も、かなり変えてしまいました。この話では、三葉が第2のキラになるので、ミサミサは出てきません。また、レムの位置づけやキャラも、大きく変えてます。

話はここで終わりです。この先は、難しくて、面白い発想が浮かばないので。申し訳ありません。

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