君のノート   作:JALBAS

2 / 8
第一話で、いきなりデスノートに名前を書かれてしまった三葉・・・・・
これで三葉は死んで、入れ替わりも無くなって、この話は終わってしまうのか?
そんな筈はありません。何故なら、デスノートで殺せるのは・・・・・




《 第二話 》

 

スマホのメロディーが、聞こえてくる・・・・これは?・・・いつもの曲!

私は、目を開けて飛び起きる。そして、辺りを見回す・・・・いつもの私の部屋・・・・

良かった、やっぱり夢だったんだ・・・そうだよね、死神なんて、いるわけ無いし・・・・

制服に着替えながら、夢の中の出来事を思い起こす。

でも、折角東京のイケメン男子になった夢見たのに、道に迷ってばかりって・・・・東京って、本当にあんな所なのかな?おまけに、死神に憑りつかれてるって・・・・・だけど、姿は恐かったけど、酷い事はされてないな・・・・迷った私を、家まで連れてってくれて・・・・何か、優しかったな、あの死神さん・・・・

そんな事を考えながら、下に降りる。

「お姉ちゃん、おそい!」

居間に入ると、四葉に叱られる。

「明日は、私が作るでね!」

そう言って、ごはんをよそう。

「・・・・今日は、普通やな・・・」

「昨日は、ヤバかったもんなあ・・・」

そう言って、お婆ちゃんと四葉が、じっとこちらを見ている。

何なの?いったい・・・・・・

 

朝食を終え、通学の途に就く。

「三葉~っ!」

後ろから、サヤちんの声がする。振り返ると、サヤちんとテッシーが、いつものように自転車に2人乗りして近づいて来る。

「おはよう!サヤちん、テッシー。」

「おはよう!今日は、ちゃんとしとんね。」

「え?どういうこと?」

「髪のこと。昨日は、結って無かったやん。」

「侍みたいやったな。」

「え?侍?」

 

昼休み、いつものように、校庭の隅で昼食をとる。

「三葉、今日は普通に喋るんやね?」

「え?私はいつもこうやけど・・・・・」

「でも、昨日は殆ど、自分からは話さへんかったやん。」

「ええ~っ?」

な・・・何なの?それ・・・・全然、覚えが無いんですけど・・・・・

「もしかして、狐憑きやったか?」

「何言ってんの、きっと、ストレスが溜まってんのよ・・・お祭りの事とか、町長選挙の事とか、三葉、気苦労多いに。」

「う~~~ん・・・・・」

完全に、覚えが無い・・・と言うより、昨日の事が、思い出せない・・・・変な夢なら、覚えてるんだけど・・・・・

 

 

 

朝、デスノートにあの女の名前を書いた。これでもう、問題は無い。

昨日、あの女は道が分からず、学校には行けなかったらしい。無断欠席になってしまったが、下手に学校に行かれて、おかしな行動を取られるよりはずっと良い。あんな田舎町の人間には、東京など迷路のようで満足には動けまい。僕のスマホは完全にロックしてあったから、例え入れ替られても使われる心配は無い。

いつも通りに学校に行き、昨日の事は適当に誤魔化した。家に帰ってからは、またキラの裁きを行った。そして、何も心配する事無しに床に付いた・・・・・

 

だが、その次の日・・・・僕は、またあの女の体で目を覚ました。

何故だ?僕は、間違い無くデスノートに名前を書いた。名前は、学生証で確認している。顔は、姿見で穴が開くほど見た。間違っている事は絶対に無い!なのに・・・・

「どうしたん?お姉ちゃん?」

布団の上で、半身を起こして呆けている僕を見て、妹が声を掛ける。

「ん?・・・いや、何でも・・・・」

そこまで言いかけて、僕は妹に聞く。

「あ・・・あのさ、昨日って・・・ぼ・・・わ・・私、何とも無かった?」

「?・・・何ともって?」

「調子、悪そうだったとか・・・・急に、倒れたりしたとか・・・・」

「何で、そんなこと聞くん?自分のことやろ?」

「う・・・うん、そうなんだけど・・・・」

「昨日は、何もおかしなかったけど・・・今日は、変やよ。」

「あ・・・そう・・・・」

何だ、心臓発作も起こっていない・・・・どういう事だ?

 

朝食を食べながら、テレビを見ていたが・・・・おかしい!囚人の、突然死のニュースが何も無い!僕は、昨夜も、何人もの犯罪者の名前をノートに書いた。いくらここがド田舎でも、ニュースは全国区の筈だ・・・・・・

すると、また、この間と同じ彗星接近のニュースが流れる。

『いよいよ、ひと月後に迫ったティアマト彗星の最接近・・・・』

ティアマト彗星?まてよ、この名前、聞いた覚えがある・・・・・・そうだ!3年前に、地球に最接近した・・・・3年前?!

僕は、部屋の周りを見渡した。そして、カレンダーを見つけ、年号を見る。

“2013年!”

そうか!時系列もずれていたのか!では、今は、僕の居た時間の3年前なのか?この女が死ななかったのは、3年前の人間だったから・・・・・いや、もしかしたら、3年後には死んでいるから・・・・まてよ、確か、この町の名は・・・・

“糸守”そうだ、彗星の破片が落下して、崩壊した町の名だ!この三葉という女は、1ヶ月後、彗星の破片の落下に巻き込まれて死ぬんだ!

 

朝食を終え、通学の途に就く。2日前と同様に、途中テッシー達と合流する。今日も髪は結って無いが、また時間が無かったことにした。

歩きながら、また考えていた。

3年の時差がある以上、いくらデスノートに三葉の名前を書いても無駄だ。3年後には、三葉は居ないのだから・・・・・そうなると、この入れ替りを防ぐ手立ては無い。しかし、ひと月後には彗星の破片が落下する。糸守は無くなり、三葉も居なくなる・・・・そうすれば、入れ替りも無くなる。それまでの間、何とかやり過ごすしか無い。

 

町営駐車場の前に差し掛かったところで、人だかりが見えた。誰かが、駐車場の敷地内で演説をしている。それを見物している人が、道の脇に集まっている。

演説をしている男は、肩から“現職・宮水としき”と書かれた、たすきを掛けている。

ああ、2日前の有線で言っていた、町長選挙の演説か?ん?・・・宮水?・・・・この娘と同じ苗字だな?

人だかりの横を通り過ぎようとした時、そこに居た、3人組の高校生達に声を掛けられた。何やら嫌味めいた事を言われたが、何の事か分からなかった。この三葉という女の悪口なんだろうが、僕は本人では無いので気にもならない。このような輩は、どこにでもいるものだ。

また、考え事をしながら歩き出したので、俯いて少し猫背になっていた。その時、演説をしている男に怒鳴られた。

「三葉、胸張って歩かんか!」

え?・・・・もしかして?

きょとんとした顔で、演説者の方を見る。周りの後援会の人々も、見物者も、皆こちらを向いている。そして、その人達の会話が聞こえてくる。

「身内にも厳しいな・・・・」

「さすが町長やわ・・・・」

え?あの人、この女の父親なのか?・・・・じゃあ、何で一緒に暮らしてないんだ?

 

三葉の父親は、この町の町長のようだ。何故、一緒に暮らしていないのかは知らないが、“町長の娘”という事で、色々と風当たりも強いようだ。

美術の授業中、朝嫌味を言っていた3人組が、また嫌味のような会話をしていた。

「・・・だから、町政なんて助成金をどう配るかだけやで、誰がやったって同じや!」

「・・・でも、それで生活してる子もおるしな・・・・・」

こんな田舎の町長に、大して旨みも無いだろう。都会でいうなら、自治会の会長程度だろう。面倒くさいだけで、多分誰もやりたがらない。妬む方もどうかしている。

そう考えている時に、真ん中の男と目があった。向こうは、嫌らしい笑みを浮かべている。

それでこっちが顔を背けると、愉快な気分になるのだろう。

だが、生憎僕はそこまでお人よしでは無い。こういう輩には、虫唾が走る。決していい気分には、させてやらない・・・・・

僕は、その男の目を見つめて、軽蔑するするような笑みを浮かべてやった。相手は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。こんな対応は、当然想定外だろう。そして、気まずそうに目を逸らした。

以後、何度か目が合ったが、その度に僕は同じ笑みを返した。そしてその度に、男は同じように目を逸らしていた。

 

昼食時に、サヤちんが言ってくる。

「えらいね三葉、松本らの嫌味、気にも留めんで。」

「俺は腹が立った、一度、がつんと言ってやらな!」

「あかんよ、そんな事したら、余計に妬むで。」

「そうだな・・・・逆に、笑ってやればいい・・・・あんな、低俗な奴らは・・・・」

『え?』

一瞬、空気が凍りついたような、静寂が辺りを包む。

し・・・しまった・・・・つい、地が出てしまった・・・・・

2人は、怪訝な顔をしてこっちを見つめている。

「え?・・・私、今何か言った?」

特に良いいい訳も思いつかず、何かに、憑かれていたかのような態度をとった。この間テッシーが、“狐憑き”とか言っていたので。

2人は、相変わらず怪訝そうな顔で、こっちを見続けていた。僕は、ずっとそ知らぬ顔をしていた。

とにかく、ひと月の間の我慢だ・・・・・・

 

 

 

『お兄ちゃん!早く起きないと、学校遅刻するよ!』

妹の声と、ドアを叩く音で目が覚めた・・・・・え?お兄ちゃん?

はっとして飛び起きる・・・・ここは・・・・この間の、夢の・・・・?!

私の目の前に、例の死神さんの顔が現れる。

「きゃあああああっ!」

思わず、悲鳴が出てしまった。

『ど・・・どうしたの?お兄ちゃん?』

「い・・・いや・・・・な・・何でも・・・無い・・・何でも無いから!」

とっさに、そう言っていた。

『・・・・まだ、寝ぼけてんの?とにかく、早くごはん食べないと遅刻するよ!』

そう言って、妹は下に降りて行った。

私は、しばらく硬直して、死神さんと睨めっこをしていた。

「・・・お前、三葉か?」

「は・・・はい・・・」

「何で、生きてる?」

「え?な・・何でって言われても・・・・」

死神さんは、不思議そうに首をひねっている。私は、ようやく落ち着き、状況を理解する。また、夜神月くんになっているようだ・・・・この間のは、夢じゃなかったの?私達、また入れ替ったの?

 

朝食の後、部屋に地図を広げ、駅までの道を確認する。そして、どの駅で降りれば学校に近いか、その駅から学校までの道も確認する。よし、これで何とか・・・・・

「お前、本当に学校に行くつもりなのか?」

「うん、そうやよ!」

ようやくこの死神さんにも慣れて、普通に話せるようになった。

「悪いことは言わねえから、やめとけ。」

「何で?勝手に休んだら、月くんだって困るやろ?」

「行った方が、困ると思うがな・・・・・」

 

死神さんには散々止められたが、私はそれを振り切って家を出た。そして駅に向かって行ったのだが・・・・・

あれ?この道、さっきも通ったよね?

ちゃんと地図で確認して来たが、実際に歩くのはかなり勝手が違った。曲がるべき角を何度も間違え、その内、どの方角を向いているのか分からなくなり、同じところを何度もぐるぐる回っていた。駅に着いたのは、家を出て1時間以上過ぎた後だった。

ようやく電車に乗り、学校の近くの駅で降りる。しかし・・・・・・

あれ?南口・・・北口・・・どっちに行けばいいんだっけ?

散々悩んで南口で降りたが、どうやら逆だったらしい。歩けど歩けど、学校には着かない。もう、道も良く分からなくなってしまった。陽は、殆ど真上に来ていた・・・・・

私はまた、偶然見つけた公園に入り、ベンチで項垂れていた。

な・・・情け無い、ただ学校に行くだけの事すら、できないなんて・・・・

「ほらみろ・・・だから、言ったじゃねえか・・・」

死神さんが、そう言ってくる。

「・・・・ねえ、死神さん?」

「リュークって呼べよ。」

「・・・ねえ、リューク?」

「何だ?」

「あなた、道知っとるんやろ?何で、教えてくれへんの?」

「はあ?何で俺が、そんなことしなきゃいけねえんだ?」

「この間は、家まで案内してくれたやないの?」

「ありゃあ、ただの気まぐれだ。俺は、死神だぜ。お前の味方でも何でもねえよ!」

言われてみれば、その通りだけど・・・・優しいなんて感じたのは、大間違いだった・・・・

 

その後も散々迷って、ようやく駅に辿り着いた。もう学校まで行く気力は無かったので、電車に乗って元の駅に戻った。その後もかなり迷って、家に帰れたのはもう夜だった。

歩き疲れた事と、ようやく家に戻れて気が抜けたのか、強烈な眠気に襲われた。その後の事は殆ど覚えていないが、夕食の後直ぐに、私は眠ってしまった・・・・・

 






デスノートでは、過去に人が死んだ事にはできない。殺せるのは、あくまで今生きている人を、今よりも未来で殺すんです。だから、月に三葉は殺せません。

東京や横浜あたりって、本当に道分かんないんですよね。受験で東京に行った時、以前に下見に来ていたにも関わらず、道に迷いました。東京駅や新宿駅なんかは、駅の中でも訳分かんないですよね。そんで出口間違えたら、完全に別世界だし・・・・・
今でこそスマホがあるんで迷わないですが、そんな物が無い時代は大変でした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。