君のノート   作:JALBAS

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朝起きると、三葉は見ず知らずの男の子と体が入れ替わっています。その男の子は自分よりも1歳年上です。更に、時間軸がずれています。本来は、その相手は瀧くんなのですが、このお話でのお相手は・・・・デスノートを持つ、夜神月です・・・・・




《 第一話 》

 

「ん・・・んんっ・・・・・」

な・・・どこ?ここ・・・・・・

私は、見たこともない、部屋のベッドで目が覚める。もしかして・・・・これも夢?

体を起こして、部屋を見渡す・・・・姿見や、化粧台は無い。置かれている家具や、部屋の装飾を見ても・・・・何か、女の子の部屋っぽく無い・・・・・

体にも、違和感を感じる。喉が妙に重い、視線を下に落としてみると・・・・胸が・・・無い?・・・逆に下半身には・・・・何かある?ええ~~っ?

 

起きて戸惑う彼女を・・・いや、姿は男なので彼を、部屋の上方から見つめている影がひとつ・・・・彼には、見えていない。髑髏のような異形な顔、逆立った髪、黒い体に黒い翼を持つ、死神のリュークだ。

“何だ?・・・様子がおかしいな、月の奴・・・・ん?”

リュークは気付く。月の顔を見ても、彼の名前と寿命が見えない事に・・・・

“何だ?何で、月の名前も、寿命も見えない?こいつは、まだ生きてるのに?”

「おい!月!」

リュークは、月に声を掛ける。しかし、月は全く気付かない。それどころか、ベッドから起きて部屋を動き回って、リュークの方に顔を向けているのにも関わらず、リュークの存在に気付いていない。

“こいつ・・・・俺が見えてない・・・・月じゃねえのか?”

 

その時、ドアをノックする音がした。

『お兄ちゃん、ごはんだよ!』

え?・・・お兄ちゃん?・・・・ということは、やっぱり私、男の子になってるの?

 

壁に掛けてあった制服に着替えて、私は下に降りる。まず洗面所を探し、洗面台の鏡を覗き込む。

こ・・・これが、私?

そこには、ちょっとニヒルな感じの、イケメン男子の顔があった。

ほ・・・本当に、男の子になってる・・・・神様が、私の願い(来世は、東京のイケメン男子にして下さい)を適えてくれたの?でも、まだ、来世じゃ無いけど・・・・・

 

顔を洗って、リビングに行く。既に皆、食卓に付いて朝食を食べている。先程声を掛けてきた妹、母親の2人だ。父親は居ないのかな?それとも、もう会社に行ってしまったのかな?

「お・・・おはよう・・・・」

控えめな声で挨拶をして、食卓に付く。テーブルの横にテレビがあり、ニュースが流れている。

『昨夜、また刑務所内で、服役者が心臓麻痺により亡くなりました・・・・・』

「これって、またキラの仕業かな?」

キラ?・・・・何?それ?・・・・何で、心臓麻痺が誰かの仕業なの?

「お父さん、いつになったら帰って来るのかな?」

ああ、父親はいるんだ。どこかに、出張に行ってるの?お仕事は、何なんだろう?

「やっぱり、キラが捕まるまで、帰って来れないのかな?」

捕まる?・・・キラって人を捕まえるの?じゃあ、警察官?

「お兄ちゃん、今朝は、何も言わないんだね?いつもは、キラのニュースが流れると、色々言って来るのに。」

「う・・・うん・・・・」

何も、言える訳が無い。キラなんて知らないし、この家の事も、今の自分の事も分からないんだから・・・・・・

 

食事を終えた後、妹は学校に行ったが、私は一度部屋に戻った。この男の子の名前も分からないし、学校の場所も分からない。まず、それを調べないと・・・・・

スマホは、ロックが掛かっていて中を見れなかった。机の中や鞄を調べて、日記と学生証は見つけた。名前は、“夜神月”。月と書いて“ライト”と読むらしい、珍しい名前だ。学年は3年、私より年上だ。学校の住所は分かったが、それが、何処にあるのかは分からない。スマホはロックされているから、GPSは使えない・・・・・

 

まさか仮病を使って、ずっと部屋に居る訳にもいかないので、とりあえず家を出て最寄の駅に向かう・・・・と言っても、何処に駅があるのか分からないんだけど・・・・

 

リュークは、月の後ろに浮かんで、ずっと付いていた。

“何だ?こいつ、いつもと、全然違う方向に歩いていくぞ?”

 

歩けど歩けど、駅に着かない。何なの?この町・・・・家が有り過ぎて、全然先が見えない・・・・こ・・・これが、東京?何か、抱いていたイメージと、違う・・・・・・

散々迷って、やっと駅に着いた。しかし・・・・・・

だ・・・駄目だ、どの駅で降りればいいのか分からない・・・・・

 

結局、私は引き返す事にした。家に帰って、地図帳でも何でも引っ張り出して、まず学校への行き方を確認しなくっちゃ!だけど・・・・・・

どうやってここまできたのか、覚えて無い・・・・どう帰ればいいの?

 

私は、また散々迷った挙句、見つけた公園のベンチに座っていた。

ど・・・どうすればいいの?帰り方が分からない・・・・私、このまま・・・・

目から、涙が溢れてきた。

 

その様子を、ずっと見ていたリュークだが、とうとう痺れを切らし、一旦その場を離れて夜神家に帰る。月の部屋に入り、月が隠していたデスノートの切れ端を持ち、再び月の居る公園に戻る。そしてその切れ端を、今の月の目の前に落とす。

 

あら?・・・何?これ?

 

月は、その切れ端を拾う・・・・・・そして・・・・・

「きゃあああああああっ!」

突然、目の前に現れた死神を見て、悲鳴を上げる。幸い、公園には人が居なかったため、何事かと人が集まる事は無かった。

「あ・・・ああ・・・・・・」

あまりの驚きで、月(三葉)は、それ以上声が出なかった。

「心配すんな、俺は、お前には何もしねえよ。ただ、悪い事は言わねえから、これ以上大きな声は出すな。そうしないと、大変な事になるぜ!」

「は・・・・はい・・・・・」

月は、とりあえず、言われるままに従った。

「さて、質問だ。お前、いったい誰だ?月じゃねえよな?」

「み・・・みつは・・・宮水・・・三葉です・・・・あ・・・あなたは?」

「俺か?俺は、死神だよ。死神、リュークだ!」

「ひっ・・・・し・・・死神?」

「だから・・・そんなに怯えんなって、何もしねえって、言ってんだろ!」

そんな事を言われても、中身は普通の女の子なのだから、怯えるなというのは無理な話である。

 

「で・・・何でお前、月と入れ替わってんだ?」

「え?・・・い・・入れ替わってる?」

そうか、私は、この男の子と入れ替わっていたんだ・・・・でも、よりによって、死神に憑りつかれた男の子と入れ替わるなんて!

「な・・・何でって言われても・・・・こ・・こっちが、聞きたいです・・・・」

「そうか・・・・訳は、知らねえのか?」

「あ・・・あなたこそ・・・な・・何で、この男の子に憑りついているんですか?」

「はあ?・・・そいつが、俺のデスノートの所有者だからさ。」

「で・・・デスノート?・・・な・・何ですか?それ・・・・」

 

 

 

朝、目が覚めて、直ぐに体の異変に気付く・・・・何か、体が軽い・・・・それと、胸のあたりが何か重い・・・・・・

目を開け、起き上がると・・・・何だ?この部屋は・・・・畳敷きに布団を敷いて・・・壁に、学校の制服が掛かっているが、女子の制服だ。何より・・・何だ?この女物のパジャマは?僕は、こんな物を着て寝た覚えは・・・・

「どうしたん?お姉ちゃん?」

気が付くと、右手の襖が開いていて、そこに一人の幼女が立っていた。

「お・・・お姉ちゃん?」

僕は、自分を指さして問う。

「他に誰がおんねん!ご・は・ん!」

そう叫んで、幼女は乱暴に襖を閉めて、下に降りて行った。

僕が、お姉ちゃん?・・・・さっきの体の違和感を思い出し、そっと下を見ると・・・・胸に見慣れない盛り上がりと、谷間が・・・・

「何だ?これは?!」

思わず、立ち上がってしまう。よく部屋を見渡すと、目の前に大きな姿見がある。僕は、そこまで歩み寄って、自分の姿をじっくりと見る。

こ・・・これが、僕の顔?ど・・・どう見ても女だ!

何で、僕が女になっている?いったい、ここは何処だ?・・・・・だが、考えても答えが出る訳は無い。とりあえず、僕は部屋の中を調べた。

 

所持品で確認する限り、今の僕は“宮水三葉”という女子高生になっているようだ。学年は2年、僕よりひとつ下か?ここは、岐阜県の糸守町というところらしい。窓の外を見た感じでは、かなり山の中のド田舎だ。

何故?僕がこの女になっているのかは、分からない。デスノートの後遺症か?そんな後遺症があるとは聞いていないが、リュークが言わなかっただけか?

 

考え込んでいても答えは出そうにないので、僕は、壁に掛けてある制服を着て下に降りた。

「お姉ちゃん!はよせんと、学校に遅れるよ!」

先程の妹が、囃し立てて来る。その向かいに、婆さんが座っている。家族はこの2人だけか?父親と母親は居ないのか?

食卓に着いて、食べようとしたその時、

『皆様、おはようございます。』

突然、鴨居に設置されたスピーカーから声が出る。な・・・何だ?有線か?

『糸守町から、朝のお知らせです。来月20日に行われる、糸守町町長選挙について・・・』

と、そこで声が途切れた。婆さんが、スピーカーのコンセントを抜いたのだ。婆さんは、そのままテレビの電源を入れる。

「いい加減に、仲直りしないよ。」

妹が、そう言う。仲直り?・・・誰と?

そう考えていた時に、テレビのニユースが耳に入る。

『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよ一月後に迫っています・・・・』

彗星?一月後?そんな話、聞いた事が無い。どういうことだ?

 

朝食を終え、家を出て学校に向かう。妹と途中で別れ、1人で通学路を歩く。

学校は、糸守高校。自分の部屋からも、湖を挟んで対岸の丘の上に見えた。周りにも、同じ高校の生徒が何人も歩いているので、迷う事も無い。

歩きながら考える。

これは夢なのか?だが、意識ははっきりしている。夢とは思えない・・・・最も、夢の中で自分で“これは夢だ”と認識する事も、殆ど無いと思うが・・・・・

「三葉~!」

その時、後ろから声をかけられ、振り返る。

自転車に2人乗りした男女が、こちらに寄って来る。この女の交友関係は、部屋にあった生徒名簿と日記から、おおよそ理解している。このガタイの良い坊主頭は“勅使河原克彦”、この女は“テッシー”と呼んでいる。女の方は“名取早耶香”、この女は“サヤちん”と呼んでいる。特に親しい友人は、この2人だけだ。

今のこの状況が、夢なのか、デスノートの試練なのか、まだ分からない。一応は、順応しておいた方が無難だろう。

「お・・おはよう・・・サヤちん・・テッシー・・・」

とりあえず、普通に挨拶を返した。

「あれ?三葉、何なん?その頭?」

「え?・・・・」

「無造作に纏めてるだけで・・・・いつものように、結ってないけど・・・・」

「ほんまや!それじゃ、まるで侍やな!」

髪が長く、部屋には纏めるためか組紐があった。それで後ろで纏めたのだが、普段は、髪を結って纏めているのか?

「あ・・ああ、ちょっと寝坊して・・・じ・・時間が無かったから・・・」

とりあえず、適当な事を言って誤魔化した。

 

その後、学校に行ってからも大変だった。

教室に入っても、まず自分の席が分からなかった。しばらくは、立って誤魔化し、始業直前に開いてる席に着いた。欠席者がいなくて助かった。

授業中、名前を呼ばれたが、自分の名前では無いので最初は気付かなかった。その場は、笑われるだけで済んだが・・・・

 

昼休み、学校の校庭の隅で、テッシーとサヤちんと昼食を食べた。この3人は、いつもこうしているらしい。

「三葉、何か今日変やない?」

「え?・・・そ・・そう?」

「自分から、あんま喋らへんし・・・・」

「どっか悪いんか?」

「ん・・んん・・・な・・何とも無いよ・・・」

この連中の、会話を聞いていれば分かる・・・・訛ってる。これでは、僕が喋ると、例え女言葉で喋っても、訛っていないので直ぐに怪しまれる。何も分からない今は、目立つのはまずい。できるだけ会話は最小限にして、乗り切るしかない。

 

何とか、学校ではボロを出さないよう気を付け、乗り切った。

家に帰っても、家族との接触は極力避け、部屋に篭っていた。風呂に入るように言われたが、適当に理由を付けて断った。慣れない女の体で、何かあってもまずいので。

 

寝床に入り、また色々と考えた。このまま、この体で生活を続けるの事になるのか?そうだとすると、今日のように、逃げ回ってばかりもいられない。

だが、そうなると、デスノートはここには無い。もう、キラの裁きを続ける事はできない。そもそも、僕の、自分の体はどうなっているんだ?誰か、他の人間が入っているのか?

ん?まさか、僕が入っているこの体の女が、僕の体に?・・・・・・

 

目が覚めると、自分の部屋だ・・・・体も、自分の体だ・・・・・どうやら、おかしな夢でも見ていたようだ・・・・

起き上がり、着替えようとしたところで、リュークに声を掛けられる。

「よう、今日は月だな?」

・・・今日は?

「どういう事だ?リューク?」

「昨日は、三葉とかいう女と、入れ替わってたからよ。」

「三葉?入れ替わっていただと?」

じゃあ、昨日のは、夢では無かったのか?僕は、田舎の三葉という女と、入れ替わっていたのか?・・・・まさか、変な行動をして、警察に目を付けられたりしてはいないだろうな?

「リューク、その女、おかしな行動はしなかったか?自分が三葉だと、他人に言いまわったりとか、異常に、目立つ行動をしたりとか?」

「ん~っ・・・・他人に言いまわるどころか、知人には会えなかったな。道に迷ってたから・・・・目立った行動というと・・・・まあ、俺の姿見て、悲鳴上げたくらいか・・・」

何?!

「待て、リューク!何で、その女にお前が見えるんだ?デスノートに触らなければ、お前の姿は、人間には見えない筈だぞ!」

「ああ、俺が、お前が隠してた切れ端を、そいつに触らせたんだよ。」

「な・・・何だと?」

「仕方ねえだろ!お前が、全くの別人になって、どこの誰かも分からねえんだ。本人に聞きたくても、こっちが見えねえんじゃ聞きようがねえ!おまけに、道に迷って泣いてるしよ・・・」

「そんなのもの聞かなくても、お前には死神の目があるだろう!」

「それが、死神の目で見ても、何にも見えなかったんだよ!」

「何?・・・どういう事だ?」

「俺にも、分かんねえよ!」

本人以外が体に入っていると、死神の目でも、名前と寿命は見えないのか?・・・・・いや、そんな事より、デスノートをあの女に触らせたという事は・・・・

「お前、デスノートの事も、そいつに話したのか?」

「ああ、そうしないと、俺の事も説明できねえからな。」

何という事だ、僕が、キラだという事を知られてしまったかも・・・・・

僕は、机の中からデスノートを取り出した。ページをめくり、空いているページに名前を書き込む。

“宮水三葉”

「何だ?あの女、殺しちまうのか?」

「お前のせいだぞ。お前が、余計な事を教えるから・・・・可哀想だが、キラの正体を知ってしまった可能性がある・・・・足が付く前に、死んでもらう。あんな田舎の突然死なら、ニュースにも取り上げられないだろう。」

何故、こんな入れ替わりが起こったのかは謎だが、それもこれでお終いだ。あの女が死ねば、入れ替わりももう起こらない・・・・・・

 






というわけで、とうとう書いてしまいました。
ですが、初回でいきなり、デスノートに三葉の名前が書かれてしまいました。
せっかく書いたんですが、この話は次回で終了に・・・・・なるわけないですよね。
それじゃ、書いた意味が無いので・・・・・・・

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