学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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遅咲きの成長

 

ーーーーーー

 

 

雪乃「生成、氷槍!」

 

 

雪乃はまず最初に氷の槍を生成した。その後、自身の周りにいくつか先の尖った氷を生成して宙に浮かせていた。

 

 

雪乃「……行くわよ。」

 

八幡「来い。」

 

 

八幡も《祢々切丸》を抜刀して切っ先を雪乃の方へと向け、左脚を少しだけ前に出していつでも動けるようにしていた。

 

雪乃はそこから八幡の方へと向かって行った。

 

 

八幡(……戦術が2年前と明らかに違う。観れたわけではないが、あの時は完全な遠距離型だったからな。今回のは中距離型の武器がある。普通なら槍で牽制しながら隙を伺いつつ、浮いている尖った氷で俺を攻撃するのがセオリー。さて、どう来る?)

 

 

雪乃(誰でも思いつくような戦い方では比企谷くんの思う壺だわ。ここは敢えて奇策で攻めるのみね。でも、それが通じるのは1度だけ。星辰力の消費は激しいけれど、一手一手を変えていくしかないわね。)

 

 

雪乃「ふっ!!」

 

 

八幡(っ!?加速っ!?)

 

 

八幡は予想していた戦術とはかけ離れていた事に驚き、咄嗟に槍を受け流した。槍は刺突・投槍を目的とする武器。相手との間合いを詰めさせない為に使われる武器でもある。その武器の長所を生かさず、自ら間合いを詰めての近接攻撃だった。

 

体力のない雪乃にとっては不利な戦いだが、槍で放つ攻撃の鋭さ、速度は八幡の予想する上を行っていた。

 

 

八幡(何だ、この攻撃は?槍のリーチを生かす気がない?雪ノ下もそこまでバカじゃないと思うが……何故だ?なぜ間合いを取らない?)

 

 

八幡「……変わった戦術だな。槍の長所ではなく短所を生かすとはな。やりにくくないか?」

 

雪乃「勿論やりにくいわよ。リーチが長い分、振り回せないもの。でも、何も切っ先だけでしか攻撃できないわけではないわ。」

 

八幡「違いない……なっ!」

 

雪乃「っ!」

 

八幡「遅いっ!」

 

 

八幡は雪乃に攻めかかり、氷の槍を弾いた。その隙をついて校章に切りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、校章には攻撃が当たらなかった。

 

 

八幡「………成る程な、その浮いている氷はこのためにあったのか。」

 

雪乃「他にもあるのだけれど、方法としてはこれもあるわ。」

 

 

八幡の攻撃が雪乃の周りに浮いていた氷が身代わりになって防いだのだ。

 

 

雪乃「この周りの氷は私が指示したら動く氷で、カウンターや防御にも使えるわ。」

 

八幡「つまり俺が攻撃して防がれたとする。次に雪ノ下が攻撃して俺が躱したとしたらその氷が俺を攻めるってわけか。だがいいのか?おいそれと敵に情報を渡してよ?」

 

雪乃「えぇ、心配ないわ。この手はもう使わないもの。次の手を使うから。」

 

八幡「何通りあるんだよ、その戦術。」

 

 

雪乃は槍を消失させ、短い刀(脇差)を生成した。およそ50〜60cmくらいだった。

 

 

雪乃「ここからは正攻法ね。」(ボソッ)

 

 

雪乃(この先は体力と星辰力との勝負。もし比企谷くんを倒す前に私の体力と星辰力が尽きたら、私の負け。その前にケリをつけるわ!)

 

 

雪乃は自身の身体全体に星辰力を練り上げて纏わせた。元々星辰力の扱いは得意だった為、これくらいの事は最初の時点で会得していた。

 

 

八幡「準備は出来たか?」

 

雪乃「えぇ、待たせてごめんなさいね。ここからは本気で行かせてもらうわ。行くわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュンッ!!

 

 

八幡「っ!?速いっ!」

 

 

カギィイインンッ!!

 

 

八幡(それでいて鋭くて重いっ!だが……)

 

 

八幡「隙が多い!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

八幡は雪乃の刀を受け止めると、すかさず空いている左手で雪乃の腹部を殴打した。だが………

 

 

八幡「っ!(硬い!そうか、あの星辰力は自身の身体能力を大幅に上げるためか!)」

 

雪乃「はぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパッ!

 

 

八幡「………」

 

雪乃「………」

 

八幡「………まさかだな。公式の場で俺に傷を付けたのはこれで4人目だ。よもやお前が俺に傷をつけるなんてな。」

 

 

八幡の左頬には鋭い刃物で切られたような擦り傷が出来ていた。

 

 

雪乃「それは光栄に思っていいのかしら?」

 

八幡「考えてみろ、たった4人だぞ?その中で序列外はお前だけだ。」

 

雪乃「ふふっ、なら私の名前は歴史に残るわね。初めて【万有天羅】に傷をつけた序列外の生徒って。」

 

八幡「違えねぇ。なら、こっからは俺も本気でいかねぇとな。でなきゃ失礼だ。」

 

雪乃「そうしてもらえると嬉しいわ。」

 

 

そして八幡と雪乃は再びぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

雪乃「はぁっ……はぁ……はぁ……」

 

八幡「ふぅ……どうやら時間との勝負でもあったようだな。」

 

雪乃「え、えぇ……はぁ……貴方も、知っているでしょう?……はぁ……私が体力に…自信が、ない事に……はぁ……」

 

八幡「つまりは体力と星辰力が枯渇する前に俺を倒さなきゃお前の負けってことか。大博打をしたもんだな。お前らしくないが、そういうのは嫌いじゃないな。」

 

雪乃「ふふっ……はぁ……はぁ……賭けには、負けたようね。早く校章を切りなさい。」

 

八幡「今日の試合、色々と学ばされた。礼を言う。」

 

 

八幡は刀を振って雪乃の校章を2つにした。

 

 

梁瀬『雪ノ下雪乃、校章破壊!!勝者、比企谷八幡〜!!流石は【万有天羅】ともいえるべき戦いでしたね。』

 

チャム『最初は様子を伺いながらの戦いだったから、後半は物凄い追い込みだったッス。これは次も期待できるッスね。』

 

 

八幡「しかし、よくここまで強くなったな。2年前とはえらい違いだ。」

 

雪乃「実はこの成長は半年前からなのよ。1年下の天霧くんから小太刀術と槍術を習ったのよ。今回はその2つだけだけれど。」

 

八幡「だからか……なんか試合には勝ったが、勝負には負けた気分だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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