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『さて皆様!!大変長らくお待たせ致しました。今回のメインである最終試合の開幕です!!』
界龍最大の道場にして模擬戦場、八天門場が歓声によって揺れた瞬間だった。
『今回の試合、史上初となる【万有天羅】への挑戦となります!そこで、今回はゲストもお招きしています!まずは当学院を運営、管理している母体並びに諜報工作機関【龍生九子】の皆様、左から順にご紹介いたします!母体の幹部である雪ノ下様と我が界龍の卒業生にして元序列4位の雪ノ下陽乃様です!!』
生徒の殆どは雪ノ下の母親の方は知らないと思うが、雪ノ下陽乃の事は誰もが知っていた。それもそうであろう。容姿端麗、成績優秀、文武両道、この3つを兼ね備えた学院の実力者だからだ。そして見ない間に髪も少しだけ伸びているせいか、大人の色気も増していた。
セシリー「おぉー陽姐じゃーん!!綺麗になってるー!!」
冬香「ふふ、そうですね。笑顔が眩しいです。」
『次に、当学院の工作機関【龍生九子】の一派閥である《睚眦》の一員である、当学院の元序列1位アレマ・セイヤーン殿です!』
アレマ【やーやーどもども〜!!】
大きめの用紙に毛筆で書いてあった。この場には不釣り合いな気もするが、彼女なりの盛り上げ方なのだろう。
『そして最後はこの方々!!当学院の歴史の中でも最強最高のお2人です!ご紹介します!!先代【万有天羅】汪小苑様と初代【万有天羅】春麗蘭様です!!!』
小苑「解説はせぬが、よろしく頼むぞ。」
麗蘭「よろしくお願いします。」
会場からは再び歓声が上がった。それもそうである。歴代でも最強と言われている【万有天羅】が2人……いや、3人と勢揃いするからである。
『………さて、ゲストも紹介した所ですので、選手紹介をしたいと思います。』
一気に会場が静まり返った………それだけ緊張感が増しているのだろう。2人の最強がぶつかり合うほんの数分前なのだから。
『まずは西方!この界龍に来たのは僅か6歳!そして黄辰殿を開いた3人目の継承者!この2つ名を受け継いだ者にしか扱えない仙具を用いてこの決戦に挑みます!!界龍第七学院序列1位【万有天羅】茫星露ー!!!』
先程よりも大きな歓声が八天門場を包み込み、熱気にも溢れていた。
『師父がこの学院に来てから早6年近く経ちました。未だ星武祭に出場できる年齢ではありませんが、その実力は他学園の学園も認める程の実力!今回も用いている仙具と共に挑戦者へと立ちはだかります!!』
『そして、今回師父に戦いを挑んだのはこのお方!!』
『およそ4年前に当学院に転校して、僅か1ヶ月で序列2位を勝ち取った界龍の生きる伝説!そして今回もその伝説を新たに作ることが出来るのでしょうか!?界龍第七学院序列2位【夢幻月影】比企谷八幡ー!!!』
『現序列3位の武暁彗大師兄を倒してから序列2位、そして尊師と呼ばれ、界龍全生徒から信頼、敬愛される存在になりました!そして尊師は、歴代で誰1人として扱える者がいなかった純星煌式武装【祢々切丸】の初適合者!師父の仙具とも渡り合えるでしょう!!』
八幡「勝手に決めつけられても困るんだがなぁ……」
星露「何じゃ?戦う前から随分と自信なさげじゃのう?妾は早く戦いたくてうずうずしておるというのに!」
八幡「そりゃオメェは戦闘狂だからだろうが。まぁ俺もただでやられるわけにはいかねぇからな、悪いが本気で行かせてもらうぞ。」
星露「えぇのうえぇのう!お主のその目、堪らんのじゃあ!妾を本気で倒しにかかる目じゃ!存分にこの戦いを楽しもうぞ!」
『両者、準備が整いました!それでは皆様お待ちかねの戦いです!公式序列戦最終試合、スタートです!!』
『Start of the Duel』
『バトルゥ〜、スタアァァ「尊師ーーー!!!」ァァァ………あれ?』
決闘が始まると思いきや、1人の生徒が正門から出てきた。今は開放していないはずの扉からだった。
星露「……おい、お主何をしておる。これから大事な決闘じゃぞ!邪魔をするとはどういう了見じゃ!!」
八幡「その通りだ、勝負に水を差されては気が失せる。なぜ邪魔をした?」
門番1「はぁ……はぁ……そ、それどころではありません!!尊師、今すぐこの決闘を中止してください!!」
門番からの突然の試合中止の宣言。当然周りからは大ブーイングだった。
八幡「………何故だ?何故決闘を中止しなければならない?決闘以外に大事なことでもあるの言うのか?」
門番1「お願いします!一大事です!!」
八幡「………理由を言え。」
門番1「奥方様が……何者かに襲撃を受けております!!」
八幡「……………シルヴィが?おい、どういう事だ!?説明しろ!!」
八幡が人目も憚らずに声を荒げていた。八幡のこんな姿は誰もが初めて見る姿である。
門番1「我々がいつも通り門の番をしていたところ、奥方様のお姿が見えたまではよろしかったのですが、突然空から黒い影が降りてきて、奥方様の前に立ちはだかったのです!今はもう1人が助勢に向かっていますが、どこまで持ちこたえられるか………尊師、お願いです!決闘を中止して、直ぐに来てください!このままでは、奥方様が危ない!!」
八幡「星露、試合は次だ。俺はシルヴィの所に行く。」
八幡は既に八咫烏と憑霊をしていた。背中から翼を生やして上空へと飛び、界龍から六花街に続く道路を飛んでいた。すると、八幡が何かを見つけた。
全身血だらけで切り傷の酷い状態になって倒れているもう1人の門番だった。
八幡「おい!おい!!しっかりしろ!!」
門番2「………うっ……うぁ………そん、し………申し、訳……ございま……せん……はぁ……はぁ……奥方様を……お守りする事が……できま、せんでし……た……」
門番2「やは、り……私ごときでは……足手まといにしかなり……ませんでした……ははっ、本当に……お恥ずかしいかぎり、です……」
八幡「そんな事はいい!!それよりもどんな奴らだった!?覚えている限りでいい!特徴を言え!!」
門番2「………黒い、マントを羽織って…ました。顔は……仮面をつけて………いたので、分かりませ、ん。武器は………赤い、剣を使って、ました。しかも……剣が、割れ物のように分解されて……はぁ……はぁ……私に、襲い掛かって……来ました。方向は………此処から……西の、方角……レヴォルフ黒学院の方向です!!……ガフッ!!ゴホッ!」
八幡「……分かった、良くやった。もういい、ゆっくり休め!」
門番2「……ははっ、尊師に……褒めて頂ける、なんて……光栄の、極み……です……」
八幡の腕で上体を起こされている門番は、安心したかのように気を失った。
八幡「……シルヴィだけでなく、界龍の生徒にまで手を出すとはな………その黒ずくめ、余程死にたいみたいだな。」
すると八幡から、紫と黒の星辰力が溢れた。そしてその星辰力の中に、僅かだが碧いオーラも混ざっていた。
そして八幡が徐々に震え始めた。
八幡「覚悟は出来てんだろうなぁ黒ずくめ!!俺を本気で怒らせた事を後悔させてやる!!」
絶対に怒らせてはいけない人を怒らせましたね、その黒ずくめ。なんかもう……ヤバイとしか言えない。
そして前書き、皆さん騙された!って思ったでしょう?