学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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励まし

 

 

シルヴィアside

 

 

朝の恥ずかしいエピソードが終わって、今はお昼を過ぎて少し経ったくらいの時間。あの後私たちは着替えてから朝食を食べて、だらだらと過ごしていた。本当に明後日に星露と戦うの?って思えるくらいに。

 

八幡くんは今日、界龍に戻るみたい。あまり時間がないけど少しでも八幡くんと一緒に、少しでも近くに入られたらと思って今日は外出はしないで2人きりで過ごすことにした。

 

 

八幡「シルヴィ、本当にこれで良いのか?俺は別に外出しても良いんだぞ?」

 

シルヴィア「ううん、これが良いの。八幡くんを1番近くで感じられるのは、この家の空間だけだから。外に出たらさ、やっぱり1歩引いた距離になっちゃうから。今はこれが良いんだ。」

 

八幡「……そうか。」

 

 

そう、今はこれが良い。他人の目を気にすることなく八幡くんの側に居られる。

 

 

シルヴィア「……なんかあんまり実感が湧かないんだ。八幡くんが星露と戦うのに……あんまりにもいつも通りだから。」

 

八幡「まぁ、1週間前に俺が突然言いだした事だからな。すぐには納得なんて出来ねぇだろうし、理解も出来るわけねぇよ。明後日から俺がする事は、今まで誰もしたことがない事なんだからな。自慢するつもりじゃないが、かなり勇気いる事だと思うぞ。」

 

シルヴィア「ふふふっ♪そうだね、確かに八幡くんは勇気があるね。勇者だね!それともただのおバカさんかな?」

 

八幡「バカで終わるか勇者で終わるか、それは明後日次第だな。だが……バカとはなんだ〜バカとは?誰がバカだって〜?」(ワシャワシャ)

 

シルヴィア「キャー!」(≧∀≦)

 

 

キャー!八幡くんに襲われちゃう〜!

 

 

八幡「………まぁでも、バカでは終わりたくねぇな。せめて負けるにしても、あいつに一撃くらいは入れたい。一矢報いるくらいはしないとな。」

 

シルヴィア「八幡くんがバカで終わるわけがないよ。負けたとしても、ちゃんと皆祝福してくれるよ。バカにする人なんているはずがないよ。」

 

八幡「それは分かってる。界龍の奴らの中にそんな奴はいない。ただ……怖くてな。」

 

シルヴィア「え?」

 

 

………怖い?あの八幡くんが?

 

 

八幡「相手は3代目【万有天羅】だ。俺の力がどこまで通じるのか、どれだけ渡り合えるのか……だが、俺の技が全て通じなかったら?そう思うだけで怖くてな。」

 

八幡「情けない話だが、俺は今までの試合を勝って当たり前の試合だってのを自分の中で思い込んでいたのかもしれないな。だが今回のはそうじゃない。油断したら負ける、そんな試合だ。」

 

八幡「だから……「八幡くん。」……な、何だ?」

 

シルヴィア「今から考え過ぎてもダメ。確かに星露は強いかもしれない。でも、だからといって今から気を張り詰めていても意味なんてないよ?」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「八幡くんは今までの鍛錬があったからこそ、序列2位を勝ち取れたんだし、《鳳凰星武祭》《獅鷲星武祭》にも勝ってこれた。それに今では、界龍の皆に《尊師》って言われるくらいにまで慕われてる。他学園にも、八幡くんを認めている人は大勢いる。」

 

シルヴィア「八幡くんはそれだけ強いの。どの学園から見ても頭一つ抜けている存在。だから自信を持って。そして星露に勝って。それでも自信が持てないっていうのなら、私が決闘の前に界龍の皆の前で叫ぶからね。『私の彼氏は世界一強い。』って。」

 

シルヴィア「だから八幡くん、そんなに弱気になったり、考え詰めないで。君には私がいる。ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………そうだな。俺には最強の味方、シルヴィが居たんだったな。やる前からこんな弱気じゃあ、すぐに負けちまうな。」

 

シルヴィア「そうだよ!私が《王竜星武祭〉の時に八幡くんの部屋に泊まりに行ったのだって、勝てるか不安だったから、怖かったからが理由だったんだから。だから八幡くんなら大丈夫!きっと勝てる!!」

 

八幡「あぁ……そうだな。ありがとうな、シルヴィ。」

 

シルヴィア「ううん、大一番の試合前だもん。誰だってこんな風になるよ。」

 

 

これで少しでも肩の荷が降りるのなら、私はなんだってしてあげるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は過ぎ、夕日が眩しい時間になった。

 

 

八幡「じゃあ……行ってくる。明日は戻って来ないから寂しい思いをさせるが、明後日には界龍に入れるように番をしている奴らには言っておく。」

 

シルヴィア「うん………八幡くん。」

 

八幡「ん、何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

シルヴィア「……行ってらっしゃい。」

 

八幡「……あぁ、行ってくる。」

 

 

そして八幡くんは界龍に向かって歩いて行った。

 

 

私から見た八幡くんの足取りはとても力強く、頼り甲斐のある勇ましいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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