ついに始まりました、八幡の武術講習会!
予め言っておきますが、文字数が少なかったり説明が多かったりしますので、ご了承下さい。
八幡side
今から講習会を始めるんだが、虎峰や暁彗もこの道通ったんだよな……俺、通りたくないな。
冬香「……どうかしましたか?」
八幡「いや、見えなくして通るってのはダメですか?」
冬香「ダメです。八幡さんは界龍の序列2位にして今回の講習会のメインなんですよ。もっと自信を持ってください!」
八幡「はぁ……ですよね。それじゃ、行ってきます。」
冬香「はい、尊師♪」
良い声で見送ってくれましたね……
ーーー八天門場ーーー
俺は目の前の門を開けて、参加している人たちの間を通るように真ん中へと移動していった。
予想していた通り、辺りからは呟きが聞こえる。
「本物だよ!本物の【夢幻月影】だよ!」
「かっこいいね!」
「この日を待ってたんだよな!」
「これで俺も少しは強くなれるだろうな。」
色んな声が聞こえて来たが、そんなのは気にしない。早く講習会やらんといけないからな。
真ん中の少し突起した円状の台の上に立つ。さて、挨拶兼説明だ。
八幡sideout
ーーーーーー
八幡「今回は私の講習会に参加して頂きありがとうございます。講師を務めさせて頂きます、比企谷八幡です。」
八幡「今日は皆様に私の会得している武術、詠春拳を披露、教授したいと思っています。先ずは説明から致します。」
八幡はスクリーンを起動させて詠春拳の事についての説明を開始した。
八幡「詠春拳とは、中国の広東省の発祥で女性が創始者の拳法です。中国武術には北派と南派があり、この図のように詠春拳は中国の南部の方に位置しているので南派武術に分類されます。」
八幡「次にこの武術の特徴ですが、皆様の思っている武術とはかけ離れていて、動きに派手さの無く、大振りな動きがないので、現代の言葉で言えば地味な拳法です。しかし表現を変えれば、無駄な動きを一切取り除き、より精密な動きをする事が出来る武術でもあり、攻撃と防御を同時に出来る攻防一体の武術でもあります。短橋狭馬、簡単に言うと腕を短く使って歩幅も狭く使う、コンパクトな拳法です。詠春拳は手だけではなく、膝で押し出したり、接近戦ならではの肘での攻撃、私はあまりやりませんが腕を縦にチェーンソーのように回しながら打つ連続攻撃や倒れた相手に対する奇襲攻撃、頭部を固定して連続攻撃などが主に使われる技です。」
八幡「武器術にも優れていて、この図にある八斬刀や刀を使って戦う刀術、竹や棒などの棍術、他にも様々ありますが、今回は省きます。」
八幡「そして詠春拳の訓練には、私の隣にある人に見立てた道具《木人椿》を使われる事でも有名です。木だと思って甘く見ていたらそれは間違いです。本気で打ち込む為、かなり痛いです。私もこの武術を始めた頃は痛かったです。」
八幡は一呼吸置いてから、動き出した。
八幡「さて、では少しだけ詠春拳の演武と木人椿を使用した訓練を披露します。先程も言いましたが派手さは無いので、見る人によってはつまらないものだと思います。それでもよろしければご覧下さい。」
八幡は足を少し横に開いてから右手を突き出して顔の辺りまで右手を上げて、同時に左手を右腕の肘の辺りに沿うような形にした。
その場動きを真似する人もいれば、動画に収める人、目に焼き付ける人とそれぞれだったが、その中で退屈そうにしている人は誰1人としていなかった。
「へぇ〜あんな風に動くんだ〜!身体がブレないんだね。」
「足も上げてたから足技もあるのかな?」
「足技もあったら強そうだよね。」
綾斗「……比企谷さんの剣術に無駄がない訳だよ。あんな歩法でしかも、あんなに重心がブレない動きをするんだから。綺凛ちゃんはどう見える?」
綺凛「……流石としか言えません。剣術は摺足で動くのが基本ですが、比企谷さんの使っている武術の演武の足元を見ましたが、摺足でした。刀術にも優れている理由が分かります。」
皆思う事はそれぞれだが、序列が上位で剣や刀を使う者は八幡の動きを見て、レベルの高さを痛感していた。
そして中には、こんな人も……
オーフェリア「………構えはこんな感じかしら?」
シルヴィア「うん、そんな感じ。後もう少し狭めてみて。顔の右半分くらいかな。」
オーフェリア「………分かったわ。」
先頭の方で最強魔女2人が詠春拳の構えを見直しているという貴重な場面だった。
ーーー30分後ーーー
八幡「……如何でしたか?実は今の演武、簡単そうに見えますが難しいです。私の師匠、汪小苑は『このくらい普通に出来なくては詠春拳会得など出来ん。』と言っていました。今では厳しく教えて頂いた事に感謝しています。次に木人椿を使った訓練です。こちらはゆっくりやりますので目が疲れる事はないでしょう。」
八幡は木人椿の正面に立ち、また詠春拳の構えを取った。そこから木に自分の腕や足を打ち込む音が響いていた。
柚陽(天霧辰明流と違って重心を動かさず、更に言えば気品のある武術ですね。この武術に私の弓術を取り入れれば、早撃ちが出来るかもしれませんね。)
八幡のこの動きは他の施設でやっている参加者にも好影響を与えていた。
戸塚(八幡はゆっくりやるって言ってたから痛くないんだろうけど、もしスピードを上げてやったら早いし痛いんだろうなぁ。)
戸部「海老名さん、これならレヴォルフの奴らが来ても少しは身を守れんじゃね?」
海老名「むしろ私はそのまま倒れ込んで……いやっはー!!」
戸部「それはねーべよ……」
ーーー20分後ーーー
八幡「………以上で木人椿を使った鍛錬を終わります。私はいつも目隠しをした状態でこれよりも早く打ち込んでます。日によって鍛錬法は変えてますが、この2つは欠かさないようにしています。では今度は皆さんに実践してもらおうと思います。」
八幡「皆さんにやってもらうのは、
「は、はい!!」
八幡はシルヴィアではなく、他校の知らない生徒を指名した。
八幡「手に力はこめなくても大丈夫です。俺の手首に片方は外、片方は内にくっつけてください……そうです。そして回すように動かして下さい………ありがとうございます。そして慣れてきたら自分の手首を外から内へ、内から外へと変えてみても大丈夫です。ありがとうございました。」
「は、はいぃ!!」
女子はそそくさと自分のいた所に帰っていった。凄くニコニコしながら。
八幡「私も見て回りますので、皆さん思うようにやって見てください。」