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八幡による錯覚術により、試合は一方的な展開になっていた。絶え間ない攻撃に、2人の体力も限界が見えてきた。
いくら武術を嗜んでいる2人でも、1人は合気道の達人レベル、もう1人は2人に術を教えた程の実力者、その2人の攻撃を耐え凌ぐのは無理であろう。
宋「はぁ……はぁ……はぁ……」
宋(これだけの術、大量の星辰力を使うはず……なのに、全く途絶える様子がない。それどころか、ますます勢いを増しているようにも感じる。くっ、せめて位置さえ分かれば!)
羅「ゼェ……はぁ……はぁ……」
羅(俺はまだ大した傷はなかったから動けたものの、この2人が相手では意味など無かったか。………ふっ、天霧くんが宋にやった悪足掻きをしても、バチは当たるまい。)
八幡「………動きが止まったな、それも3人全員。2人はともかく、陽乃さんはどうしたんだ?」
そう思っていた矢先に、陽乃が八幡の元へと戻ってきた。
八幡「攻撃が止んだと思ったら、どうしたんですか?」
陽乃「八幡くん、もう2人は限界だと思うよ?あの2人があんなに分かりやすく息を切らしてるんだもの。これ以上は……」
八幡「………そうですか、分かりました。じゃあこの術は解きますね。後、陽乃さんは宋をお願いします。俺は羅を。」
陽乃「うん、いいよ。」
そして八幡は展開した術を解き、羅の方へと向かった。
決着をつけるために。
陽乃の方は、既に宋の目の前に立っていた。満身創痍の宋に対して、陽乃服に傷の1つもなかった。
宋「はぁ……はぁ……」
陽乃「大丈夫かな?」
宋「はぁ……は、はい……。さ、流石は師姉です。手も足も出ませんでした。」
陽乃「私はほとんど何もしてないけどね。君たちをこれだけ圧倒したのは、ほぼ八幡くんだからね〜。」
宋「はぁ……はぁ……そう言われると、ふぅ…何も言い返せませんが、はぁ……師姉の体術も御見逸れしました。」
陽乃「そう?ありがとっ♪」
言葉や顔では余裕を見せる陽乃だが、目は真剣そのものだった。普段のような陽気な目ではなかった。
陽乃「君たちも酷いよね。八幡くんばっかりで、全く私を相手してくれないんだもん。おかげで八幡くんが術を仕掛けるまで暇でしょうがなかったよ。」
宋「ははは……申し訳ございません。尊師の事しか頭になかったもので。」
陽乃「皆の憧れなのは分かるけど、あそこまで私の事を見てくれないって思うと、少し傷つくよ。」
宋「……返す言葉も無いです。」
陽乃「だから、倍返しにして返してあげるよ。あっ、別にこれ以上痛めつけようなんて考えてないからね?君の腕見たらそんな気なんて起きないし。」
宋「……成る程、決着をつける……という事ですね?分かりました。」
2人「参るっ!!(勝負っ!)」
一気に距離を詰める2人。お互いに武術を嗜んでいる同士、良い勝負とも言えるが、宋は肘の負傷と体力的にも限界があったため、すぐにガタがきた。
そして、ついに陽乃の受け流しで地面に仰向けになりながら転がってしまった。
陽乃「肘がそんな状態なのに、私が受け流すまでよく耐えられたよね?もし万全だったら、私絶対ヤバくなってるよ。」
宋「はぁ……はぁ……貴方相手に、少しだけでも……善戦出来たので、はぁ……良しとしましょう。それに…これ以上は無理です。師姉、こんな無様な格好で失礼ですが、お見事でした。」
陽乃「うん、君の諦めない姿勢、確かに見届けたよ。星露にもよく言っておくよ。」
そして陽乃は宋の校章を打ち砕いた。
梁瀬『宋然、校章破壊!!拳の攻防を制したのは雪ノ下選手だー!!』
陽乃(さて……八幡くん、私の方は終わったよ。後は君だk……って何あれ!!?)
羅「はぁ……はぁ……まさか、俺の相手を尊師がして下さるとは……はぁ……はぁ……光栄です。」
八幡「まぁ、陽乃さんは武器持ってないからな。俺は
羅「……流石尊師だ、お優しい。」
八幡「……うっせ。そんな事よりも、息を整えろ。そんな状態のお前と戦ってもつまらんからな。」
羅「では……お言葉に甘えて。」
ーーー5分後ーーー
羅「大分楽になりました。」
八幡「そうか……んじゃあやるか。」
羅「お願いします!猛き炎よ、我が棍に力を!急急如律令!」
羅は呪符を取り出し棍につけると、そこから炎が飛び出し、棍を纏っていた。
八幡「ほう……」
羅「いざ、尋常に勝負っ!!」
羅が構えて待っている中、八幡は祢々切丸を抜刀しようとする。
???『へぇー、中々良い炎してるじゃねぇか。』
八幡「っ!」
突然の声に、八幡は意識を集中させる。
八幡は、八咫烏と会った時と同じ空間にいた。夢を見ていないのにだ。
???『おっ!旦那が俺の主人かい?へへ、良いじゃねぇか!旦那もかなり強えな。いや、かなりは不適切だな。最高に、だな。』
そこにいたのは、大きな鳥だった。だが、ただの鳥ではなかった。全身が赤色、いや、朱色で翼は炎で包まれていた。尾が10本もあった。
八幡『……お前は、その姿からして鳳凰、朱雀か?』
???『おっ!冴えてるなー旦那!その通り!俺は朱雀ってんだ!他にも鳳凰、不死鳥、鳳とも呼ばれてる、よろしくな!』
何ともフレンドリーな喋り方をする朱雀に八幡は少しだけ意外感を覚えていた。
朱雀『そんでよ旦那、憑いたばっかで唐突だけど、頼む!俺を纏ってくれ!』
八幡『………ちょっと待て。何故そのことを知ってる?』
朱雀『何故って……『俺ら』はずっと旦那の中にいるんだぜ?旦那は知らねぇだろうけど、八咫さんや索冥の姉貴と俺を含めて、計7体いるんだぜ?旦那の中には。』
八幡(おいおい、あの2人はそんな事言ってなかったぞ。まだいたのかよ……)
八幡は自身の中に眠る守護霊の存在に驚きつつも、朱雀の方に目を向けていた。
朱雀『まぁ、それはおいおいという事で………旦那、頼む!俺を纏ってくれ!あの炎を俺にぶつけさせてくれ!』
八幡(……多分こいつは動かないだろうな。仕方ない、やるか。)
八幡『分かった。お前を纏ってやるよ。だが、初めてだからそんな長く持たないと思うぞ?それでもいいか?』
朱雀『おうよ!流石旦那だぜ!』
そして待ちきれなかったのか、すぐに現実に戻されてしまった八幡だった。
目を開けると、そこには燃え盛る棍を構えて待っている羅がいた。
八幡「……すまん、待たせた。俺も本気で行きたくなった。」
羅「むしろ願ったり叶ったりです!」
八幡が刀を抜き、それと同時に朱雀を現世に召喚した。
朱雀は八幡の肩にとまっていた。そして一気に真上に飛んだ後、八幡の方へと消えていったが、準決勝同様に八幡の姿が変わっていった。
八幡の着ていた黒の中華服は面影も無くなり、全身赤を基調とした格好へと変わっていた。
赤のロングコート、赤の長い鉢巻、赤の長ブーツ、そしてその端には黄色で彩られた炎の柄があった。
そして八幡は祢々切丸ともう一本刀を持っていた。祢々切丸は紫の炎、片方は真紅の炎に包まれていた。
八幡「憑霊……
羅「…………」
羅も言葉が出ないようだった。
八幡「……行くぞ。」
羅「っ!!」
八幡の短い言葉に羅も反応し、構える。お互いに炎と炎の戦いでもあった。
羅「はあぁぁぁ!!」
八幡「ふっ!」
ガキィィィン!!
刀と棍が鍔迫り合いの状態になり、力比べになっていた時、異変が起きた。
羅の棍を纏っていた炎がみるみる八幡の刀に吸収されていた。
羅「っ!!こ、これは……」
八幡「勝負あったな。」
八幡は迫合いで勝った後、すかさず柄頭で羅の校章を砕いた。
梁瀬『羅坤展、校章破壊!!そして、試合終了!!!勝者、比企谷八幡&雪ノ下陽乃!!!』
梁瀬ミーコが叫び終わった途端に、会場が沸き、紙吹雪が一斉に会場へと放たれた。
羅「………完敗です。尊師に傷どころか、打ち込むことすら出来なかった。まだまだ修行が足りませんね。良い試合をありがとうございました!!」
八幡「あぁ、俺も良い試合ができた。」
梁瀬『ついに、ついに優勝が決まりました!!幾多もの激闘を乗り越え、優勝に輝いたのは界龍第七学院、比企谷&雪ノ下選手ですっ!!』
ここで出てきましたね!八幡の新しい守護霊、朱雀!
因みに八幡が朱雀と憑霊した時の格好ですが、戦国BASARA 真田幸村伝の真田幸村です。尚、胸元は隠してます。