学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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今日はなんとか書けました!



激情の理由と覚悟の足りなさ

 

八幡side

 

 

ーーー控え室ーーー

 

 

準々決勝も勝利で終わり、少し一息入れたいところだが、今回はそうもいかない。

 

理由は先程の試合の陽乃さんの事だ。

あの試合の陽乃さんは明らかに様子が変だった。言うなれば、不機嫌をそのまま体現しているような感じだった。

 

今は落ち着いているが、未だに負のオーラは隠せていなかった。

 

 

八幡「………」

 

陽乃「………」

 

 

話しかける話題も無ければ、その事を聞けるような状態でもない。この人がこんなにも感情的になるのは初めて見る。

 

 

陽乃「……さっきさ、」

 

八幡「っ!」

 

 

………まさか陽乃さんから話しかけてくるとは思わなかった。

 

 

陽乃「何で私の様子が変だって分かったの?」

 

八幡「………雰囲気と言葉遣いですかね。貴女が意味もなくあんな事をする人じゃない事くらい、俺は分かってるつもりですからね。」

 

八幡「聞いちゃ悪いとは思いますが、何かあったんですか?」

 

陽乃「………」

 

 

やっぱだんまりか……まぁ、簡単に突っかかっていいようなものじゃないんだろうな。詮索が過ぎたかもな。

 

 

八幡「すみません、忘れ「何で私があんな事しちゃったのかっていうとね……実は誰のせいでもないの。」……?」

 

 

え?

 

 

陽乃「私の思い込みが激しかっただけなんだ。それであんな風になっちゃったんだ………相手を悪く言うつもりはないけど、沙々宮ちゃんいたじゃない?あの子の態度とかがちょっとね。」

 

 

沙々宮の?どういう事だ?

 

 

陽乃「あの子、少し雪乃ちゃんと似てたんだ。ぶっきらぼうな態度に少し上から物をいう言動、困った時に黙り込むとこなんて特に。全くの赤の他人なのにね。」

 

陽乃「それが無性に腹が立ったというか、分からないけどなんか凄く嫌悪感というか憎悪感みたいなものが溢れてきて……それで……」

 

八幡「………」

 

陽乃「私、多分八幡くんが止めてくれなかったら、そのまま彼女を無意味に傷つけてた。それも無意識に、何をしているのかも分からないまま。」

 

八幡「……そうだったんですか。」

 

 

思わぬところであいつが出てきたんだな。だが陽乃さんはこの表情、沙々宮にした事を激しく後悔してんだろうな。

 

 

陽乃「ねぇ八幡くん、今の私ってどんな風に見える?やっぱり醜いよね?」

 

八幡「え?」

 

陽乃「何もない初めて会った子に、自分の妹を重ねてあれだけ酷い事をした私が綺麗に見える?見えないでしょ?」

 

 

………ここまで追い込まれてたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「別に醜くなんてないですよ。俺にはいつも通り綺麗に見えますけど?」

 

陽乃「………え?」

 

八幡「それなら俺はどうです?奴らに対してまだ何にも思うところが無いんです。精々嫌な奴らだったって思う程度です。」

 

陽乃「それは……八幡くんが優しいからじゃない。」

 

八幡「陽乃さんも充分優しいですよ。それに覚悟も出来てる。自分の妹を潰せる覚悟が。でも、俺にはまだ無い。」

 

八幡「力では負けないでしょう。けど、実の妹やあの2人の顔を見てぶん殴れるかって言われたら間違いなく迷います。俺は貴女より臆病だ。」

 

陽乃「でも……それだって立派な優しさだよ。相手を傷つけたくないって思う気持ちだって立派な感情だよ?」

 

八幡「自分が憎んでる相手に対しても、ですか?そう言えます?」

 

陽乃「………」

 

八幡「言えないですよね。こんな感情を抱いている時点で俺は臆病風は全く治ってないんですよ。それに比べたら、貴女の醜さなんてほんの米粒みたいなものですよ。」

 

陽乃「八幡くん………」

 

 

そう、俺は『嫌い』というのをハッキリさせただけで、陽乃さんみたいな『覚悟』は何も決まってなかった。

 

その点で言うなら、俺なんてただの『嫌いだから関わらないビビリ』ってだけだ。

 

けど陽乃さんは覚悟を決めていた。本当は俺の問題なのに。陽乃さんを例えるなら、『嫌いだから徹底的に壊すか潰す』だ。

 

 

八幡「俺からして見れば、陽乃さんは俺よりも奴らと決別する覚悟が出来てるように見えますので、醜くなんてありません。」

 

陽乃「………」

 

陽乃「………やっぱり優しいなぁ、八幡君は。そんな風に考えられるなんて。私には無理だよ。」コトッ

 

 

陽乃さんは俺の肩に頭を乗せてきた。

 

 

陽乃「ありがとう、凄く気が楽になったよ。やっぱり八幡くんってお兄ちゃんみたいだよ。」

 

八幡「お礼は素直に受け取りますが、俺が兄みたいってまた言いましたね。」

 

陽乃「やっぱり包み込んでくれるような優しさがあるからかな?」

 

八幡「俺に聞かれても……」

 

陽乃「そうだね♪八幡くん、後で沙々宮ちゃんに謝りに行きたいんだけどさ、ついてきてもらってもいいかな?」

 

八幡「そんなのお安い御用ですよ。」

 

陽乃「ありがと、八幡お兄ちゃん!」

 

八幡「……やめて下さい///」

 

 

意外と良いなんて言えない。

 

 

陽乃「それじゃあもう行こっか?」

 

八幡「もう少し休憩してから行きませんか?早く行き過ぎても迷惑でしょうし。」

 

陽乃「それもそうだね。」

 

 

 

 

それに、次は準決勝。しかも銀梅と永成とだからな。あん時の言葉が実現しちまったな。ここまでくるなんてまったく予想してなかった。

 

 

あいつらと戦うのも楽しみだな。

 

 

 

 

 

 




いかがでした?なんかゴチャゴチャしているかもしれませんが、堪忍して下さい!

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