憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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変な所で一区切り………それが、僕のやり方なんだ!


9日目②

大人しく部屋に閉じこもってテレビゲームをしていると、扉の方からガチャガチャと物音がした。

まるで、誰かが無理矢理入ろうとしているかのようにドアノブを動かす音のように聞こえてしまい「ひっ!?」と思わず短い悲鳴を出した。

モノクマの悪戯なのか、それとも他の誰かなのかは知らないけれど鍵がかかっている限り押しかけられるなんて事はないはずだ。

 

………モノクマなら、入ってくるかもしれないけれど。

 

仕上げとばかりにカチャリと鍵の回った音に、いよいよマズイと悟ったアタシは持っていたコントローラーをテレビの真横に置いてクローゼットの中に隠れて身を潜める。

すぐに扉が盛大に開かれる音がして、少しでもタイミングがズレていたら隠れる瞬間見られて恥ずかしい思いするやつ…なんて思いながら誰が来たんだろうと首を傾げた。

 

「やっほー入間ちゃん!ちょと協力して欲しい事が…って、あれ?留守??」

 

「駄目っすよ王馬君。勝手に女子の部屋に入ったら…」

 

少しだけ開けたクローゼットの隙間から部屋の様子を窺ってみれば、首根っこを掴まれて子猫みたいになっている王馬と、親猫のように首根っこを掴んだまま部屋を出ようとする天海の姿があった。

 

あっ、これ隠れてるのバレたら多分めんどくさい事になるやつ。

 

「でもさー、天海ちゃん。オレの作戦では入間ちゃんが駒としていた方が絶対面白い事になるんだって!」

 

「それ、王馬君だけっす。ほら、男子の俺らは出るっすよ」

 

何やら不穏な会話をしながらも出て行った2人を確認すると、アタシは出来るだけ音を立てずにクローゼットから出てきた。

出て行ったと見せかけて、アタシが物音を立てた瞬間乗り込むなんて事になったら大変だ。

 

「何だったのかは知らねーけど、とりあえずベッドの下の非常食を持ってもう一度隠れておくか」

 

「うんうん。でも、隠れるのは諦めてね」

 

ゾクッと背中に悪寒を感じながら、ギギギ…と壊れたブリキのようにゆっくりと出てきたばかりのクローゼットを振り返る。

クローゼットとテレビ台の間に座り込んだ赤松は、アタシと目が合うと「入間さん、確保ー!」と大声で叫びなが逃がすまいとアタシの腕を掴んだ。

すると、部屋の外に出ていた2人も再び入って来るのだから、アタシは諦めてうなだれた。

まさかアタシが隠れていた場所から視界に入らない所に赤松がいたなんて………声を出さなかった事といい、一体誰の策略にアタシは陥ってしまったのやら。

 

 

 

×××××

 

 

 

作戦について、アタシは王馬からコレといった説明なんてされなかったけれど『今日は夜時間まで赤松にベッタリついてたらいい』というよく分からない役割を押し付けられた。

まるで誰かさんへの嫌がらせのようにも見えるかもしれないけれど。

とりあえず…ということで裏庭をブラブラしているけれど、未だに真意など理解できない。

 

「ったく…何考えてやがんだあいつ」

 

「でも、入間さんが一緒にいてくれるなら私も嬉しいかな」

 

王馬の作戦関係なしでそう言って微笑む赤松から逃げるように、アタシは視線を逸らす事で自分に『今は照れるな』と言い聞かせた。

ほらだって赤松……ちょっと…あれ、百合方向な思考があるから。

 

「なんて、考えるだけ無駄か」

 

「どうかした?」

 

「オレ様を巻き込むなんて、王馬も偉くなりやがったなーって思っただけ」

 

アタシがそう言うと赤松から返ってきたのは苦笑いだった。

どうせ、今は逃げられないんだ。

少し離れた所からは作戦立案者の王馬が隠れながらこっちを見ているし、なぜか赤松がアタシの腕を組んでベッタリしているし、もう1人の実行犯らしい天海の姿もない。

 

というか、天海が王馬の悪巧みらしきものに乗るなんて珍しいんじゃないか?

何か秘密でも握られたのか…一応、後で確認しよう。

あと、赤松はアタシとやる事が逆なんじゃない?

アタシからはやろうなんて思わないけれど。

恥ずかしいし、相手をからかうわけでもないのにできるわけない。

赤松のメンタル凄いな。

 

「んじゃ、次はどこに行くか……」

 

ずっと裏庭をブラブラするわけにもいかないし、一応デートという形なのだから何か楽しい事……面白い事……話題…。

 

「ん?話題っていえば…」

 

足を止めて立ち止まったアタシを赤松が「どうかしたの?」と覗き込む。

赤松は、朝起きた人類至上最大最迷惑な撃沈者多数最原事件(今勝手に名前付けた)を知ってるのか??

………赤松に王馬に天海はあの事件の被害者にならなかった数少ない生存者なんだし、あれ………最原のやつ本当に今日中に言えるのかな。

なんか心配になってきた。

 

「ねぇ、本当に大丈夫なの!?」

 

「なんでもねーよ。ちょっと、考え事してただけだっつーの」

 

心の中でもし赤松だったら、アタシじゃなくて王馬を恨めよ…と最原に訴えながら気を取り直す為に、目を閉じた。

 

「あっ、最原君だ」

 

まぁ、赤松のそんな一言で確認するためにすぐに目を開けてしまったから意味なかったけれど。

 

 


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