困った。
ものすごく困っている。
何が困ったの?って聞かれたら、アタシは間違いなくこう答える。
今、やることがなくて暇なんです。
なんで今に至るのか簡単に説明させてもらうと、
・朝起きて、みんながいる食堂へ
↓
・みんなで話し合いをしているとモノクマ登場
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・最初のコロシアイでは学級裁判が行われないという、初回特典の動機を発表
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・百田が我慢の限界でブチギレ。モノクマに掴みかかろうとする
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・見せしめとして、百田がエグイサルに潰されそうになるが、モノクマーズの操作ミスとしてモノクマが潰され軽く爆発
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・モノクマが死んだ=コロシアイゲーム終了という考えにより『迎えを待とう』な空気に
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・解散。自由行動となり暇に
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・何をしようかと考えながら、教室でメダル集めてガチャを回す
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・ガチャの景品を見て、改造しようかという考えに
↓
・道具とかは研究教室じゃないとなさそうなんで、研究教室へレッツラゴー
↓
・準備中期間だったらしく、開いていなかった(イマココ)
あっ、思い出したら泣けてきた。
重い荷物(ガチャの景品)を持って“超高校級の発明家の研究教室”まで来たのに、お預けとか。
楽しみを奪われてガックシと肩を落とすも、アタシを慰めてくれるような優しい人達は、残念ながら今この場にはいない。
もう、やけくそでまたガチャ回すか?
ダブったら、誰かに押し付けたらいいしね。
「いや…でも待てよ……」
もし、ガチャ回して出たのがダブりじゃなかったら?
それを見て、こんな発明品あったらいいな~ってインスピレーションが湧いてきたら?
腕を組んで「むむむ…」と悩む。
どうする?
回すべきか……回さずにいるべきか……
「あぁ、改造してぇ~……この際キーボでもいいから、オレ様に改造させろよぉ~」
「なんでボクなんですか!?」
独り言のつもりだったのに、どうやら聞いてた人がいたようで。
しかも、それが話題にあげた人物…というか、ロボットだったようで。
「あっ……えっと…」
当人に聞かれているとは思わなかったアタシは、必死に言葉を探す。
ていうか、なんでアタシは改造しようなんて思った?
もしかして、アタシは少しずつ…才能だけじゃなくて、それ以外も入間美兎に染まってきているんじゃ?
えっ、なにそれ凄い困る。
あんな下ネタ発言をいつかやるとか考えると、胃が痛くなるんだけど。
そんな事はないと願いつつ、本来の問題に戻らないと。
改造…改造……発明………
「そ、そりゃー…アレだ!このオレ様がテメーに役立つ機能を付けてやろうかと考えてだな…」
「機能…ですか?それなら、もうすぐここから出るんですし博士に……」
そう言って断ろうとするキーボの言葉を、アタシは「うるせぇ!」と遮った。
いや、ホント昨日までのアタシは何処に行った!?
「この天才発明家のオレ様がやると言ったら、やるんだッ!」
ビシッと効果音が付きそうな勢いで、アタシはキーボに指を突つけ宣言すると、相手の言い分も聞かずに校舎の方へズンズン歩いて………キーボが見えない所まで来ると一度足を止めた。
「……困った」
えっ、本当にアタシどうしたの?
あれかな?研究教室開いてなくてイライラしたのか?
そうだなよな?そうに違いない。
よし、ここは一度冷静になれ。
「あっれー?誰かと思ったら、初日で役立たずだった入間ちゃんじゃん」
「こんっの…王馬チビヤロー!!」
開始僅か3秒で、イライラとこんにちわ。
いくら好きなキャラとはいえ、自分を馬鹿にされたらムカつく以外何もなかった。
×××××
たまたま近くを通りかかった東条に王馬の説教をしてもらい、アタシは鼻歌混じりに校舎内の地下へと繋がる階段を降りていた。
目的は、図書室にある動く本棚を実際に見ることだ。
まぁ、見るだけで動かすつもりはない。
アタシの記憶が正しかったら正確な時間帯は分からないけれど、赤松と最原が動く本棚にある隠し扉を調べるはずだ。
もしアタシが好奇心で本棚を動かした所を2人に見られたら、1番に首謀者だと疑われる。
だから鉢合わせしてしまったら、本を借りに来た~とか、読みに来た~で誤魔化すつもりだ。
これなら完璧だろ。
口元に笑みを貼り付けて、アタシは図書室の扉を開けた。
図書室の中にはすでに赤松と最原がいて、『これから調べるのかな?だったら、本を何冊か持って寄宿舎に行こう』なんてアタシは思っていたが、その考えは見事にブチ壊された。
なんでって?
今、このタイミングで…本棚が閉まったからですが何か?
「「あっ……」」
アタシに気づいた赤松と最原が『しまった…』とばかりに顔を青ざめた。
そんな反応されても、アタシが困るんだけど。
てか、アタシは短時間でどれだけ困ればいいの?
「赤松に…最原?2人揃ってなに顔を青くしてんだよ?」
黙っているのも怪しいと思い、アタシは必死に声を絞り出した。
隠し扉が動くところなんて見てませんって遠まわしに言ってみたけれど、上手くいくかな…?
「そ…そうかな?入間さんは、どうしてここに??」
「は?図書室に来てやることなんて、限られてんだろ?」
バクバクと五月蝿い心臓を誤魔化すように、アタシは本棚から適当に本を何冊か引き抜き、パラパラと数頁捲り面白そうだと思った本をそのまま抱える作業をしている間、2人の視線がすごく気になった。
視線で『バレてない?気づかれてない?』みたいな事を訴えるな。
アタシの気が散るだろ。
もう…ボロを出さない内に出よう。
そんで、部屋に引きこもってやる。
それが一番良い。
5冊ほどの本を持って、アタシは用は終わったとばかりに図書室の扉の前まで行くと、一度赤松と最原の2人の方をクルリと振り向いた。
それだけだというのに、赤松は肩をビクリと跳ね上げ、最原はアタシの視線から逃げるように帽子を深く被った。
そんな2人の前で「すぅっ…」と息を吸い込むと、前から言いたかった事を力一杯に叫んだ。
「リア充、爆発しやがれッ!!」
そのまま図書室から出ると、扉越しから「そんなんじゃないよ!」と赤松の声がしたけれど、無視だ無視。
さっさとくっつけ、無自覚カップルめ。
ちなみに余談だが、その後個室でのんびりと本を読んでいたら、あっという間に夜時間になってた。