本編ラストは明日にでも投稿の予定です。
学級裁判って、こんなに長かったっけ?
このままだと、投票放棄という形で終わる。
それだけは避けたいのか、白銀は「キーボ君、いいの?そんな結末でいいって内なる声が言ってるの?」と静かに喋り出した。
「外の世界は本当にそれを求めているの!?ダンガンロンパの終わりを求めているの!?ねぇ!みんなはなんて言ってるの!?内なる声はなんて言ってるの!?」
だけど、それらはやがて叫び声へと変わっていく。
白銀は白銀で必死になっている。
「内なる声はそんな結末認めないと言っています。でも、ボクにはもう内なる声なんて関係ありません!」
言い切ったキーボを見て、白銀は「やっぱりね…。でも、なんで?」と首を傾げた。
「視聴者代表のキーボ君が視聴者に逆らうなんて、視聴者の怒りを買うだけだよ?だから、邪魔な人格を消されたっておかしくないのに。ううん、勝手な暴走を繰り返すキーボ君は視聴者のアンケート結果により、人格を消されたはずなのに…なんで人格が残ってるの?」
理解できないとばかりに目を丸くする白銀が、キーボを見つめる。
だけど、何かに気づくとハッとしたようにアタシを睨みつけてきた。
「ねぇ…今までキーボ君のメンテナンスをしてたみたいだけど、その時に何かした?キーボ君の人格が消えないように、プロテクトでも作ったの?」
「メンテナンスで、そんなのやる暇ねーよぉ…」
嘘は言ってない。
アタシは…メンテナンスの時にはしてない。
学級裁判が始まる前に、お守りとか言ってやっただけ。
だって、人格を消すとかロボットだからって残酷でしかない。
ロボットだろうと、視聴者代表だろうと…キーボにはキーボの考えや気持ちがちゃんと存在している。
「…だけど、外の世界はコロシアイを求めているんだよ。勝手にダンガンロンパを終わらせるな!今までずっと応援してたんだぞ!…ってね。だから、いくらあなた達が投票を放棄して死のうと、その訴えは外の世界には届かないんだよ。外の世界はダンガンロンパを求め続ける!それは変わらないんだよ!」
「それでも、僕達が変えてみせる…。どんな不可能だって、やり遂げれば可能になるんだっ!」
嘘には無限の可能性がある…。
嘘を真実に変えてしまうように、嘘から世界を変える事だってできる。
それが、アタシ達がやっているダンガンロンパなんだ。
「そんなの、できる訳ないよ!」
「そうよ!みんなダンガンロンパが好きなんだから!」
「今更、偽善者面スルノ…?」
「世界が求めるから、ミー達は作られたんだぜ!?」
「説得なんて、するだけ無駄や!」
モノクマーズが言い合う中で、裁判場の形が変わっていく。
白銀とモノクマ、モノクマーズ…モニターに映る視聴者と向き合うように、アタシ達15人が並ぶ。
…まさかの、議論スクラム。
議題は『ダンガンロンパは終わらない』と『ダンガンロンパを終わらせる』って感じかな。
モニターから溢れ出るコメントが『希望でも絶望でもないなんて認めない』やら『運営仕事しろ』やら『今回のロンパは荒れてんな』で溢れている。
『コロシアイしなよ』なんてコメントもあれば、『平和な世界軸(笑)』なんてのもある。
……関係ないかもしれないけど、『最原君の眼力欲しい』とか『赤松ちゃんと結婚したい』とか『なん図書』っていうコメントはなんなんだ。
「オマエラはフィクションなんだよ!フィクションが世界を変えられるわけないよ!」
「それでも想いを伝える事はできるっす」
「フィクションだって、世界を変えられるんだよ!」
外の世界を変えられないと言ったモノクマに、天海と赤松が外の世界を変えられると反論する。
「コロシアイは最高のエンターテイメントなんだよ!」
「だが、俺達の命は本物だ」
「コロシアイなんて間違っているわ」
コロシアイをエンターテイメントと言うモノクマーズに、星と東条かがエンターテイメントではないと反論していく。
「投票放棄で無駄死になんて、最悪なオチだよ!」
「無駄死になんかじゃないヨ」
「外の世界のみんなに、分かってもらうんだよー」
「だって、転子達の命を使うんですから!」
無駄死にだと言う白銀に、真宮寺とアンジーと茶柱が無駄死にではなく、命を使うんだと反論する。
「『キャラがコロシアイをするのが、ダンガンロンパだろ!』」
「誰もテメーらの思惑通りに、動かねーよ。オレ様達は見せ物じゃねー」
「ゴン太達は、コロシアイなんてやらない!」
視聴者コメントをそのまま読み上げたモノクマに、アタシとゴン太で言い返す。
「『希望か絶望か選びなよ!』」
「だから、どっちも捨てるって。オレには嘘があれば充分だからね」
「どっちかを選ぶから繰り返されるんだ、だったら選ばねーよ!」
選べという白銀と視聴者コメントに、王馬と百田が選ばないという強い意志を見せる。
『ダンガンロンパは終わらないよね?』
「ここで終わるんだよ」
「これ以上は続けさせんぞ!」
「みんなの手で、ダンガンロンパを終わらせるんだ!」
視聴者のそんなコメントに、春川と夢野と最原がダンガンロンパの終結を叫ぶ。
だから、これ以上は無駄だと思ったんだろう。
裁判場の形が、全員を見渡せる元の形に戻った。
「わたしには分かってる…外の世界はダンガンロンパを終わらせたりしない。みんな…ダンガンロンパが大好きなんだ…。それが現実なんだよっ!コロシアイエンターテイメントは永遠に続くんだよっ!」
「そういう事だよ!キーボ君だって外の世界に逆らえないよ。間違いなく絶望である白銀さんに投票する。だって、それが外の世界の選択だからね!」
そう言ったモノクマの手にはいつの間にか、裁判前にアタシがキーボに貼ったシールがあった。
あっ、せっかく造った人格保護プログラム取られてる。
さっきのスクラム中、キーボが黙ってたのはそういう理由!?
視聴者のアンケート通りに動くようになってしまったキーボを、みんなが不安そうに見つめる。
でも、誰も何も言わない。
外の世界に言いたい事は言ったんだから。
きっと…大丈夫なはず。
「では、張り切っていきましょう!最後の投票ターイム!」
そうして、投票を促される。
だけど、この投票は放棄すると決めていたんだし、する必要はない。
目を閉じて、時間切れになるのを待つ。
「さて、投票が終わったようなので、さっそく結果発表にいきましょうか」
モノクマによる結果発表が出される。
その前に、白銀が「そうそう、わたしも投票を放棄したからね」と告げた。
「ほら、わたし達って仲間でしょ?あなた達だけに投票を放棄させる訳にはいかないよ。で…わたし達15人が放棄したって事は、キーボ君の投票だけが有効って事になるから…彼がわたしに投票していても、生き残るのはキーボ君だけ…希望の勝ちって事になるんだよ」
……だからさ、希望と絶望をズルズル引きずるのやめようよ。
「みんなが命懸けでコロシアイを止める気なら、わたしは命懸けでコロシアイを続ける気だよ。たかがフィクションとは言え、わたしだって命懸けで作ってるんだよね。でね…この後のわたしのシナリオはこう。長い戦いの果てに、無事に希望が勝ったものの、生き残ったキーボ君は首謀者の策略にハマってしまい…そして、たった1人で次のコロシアイに挑む事になる。次こそ真の希望を掴む為に…っ!」
それ、今回の天海もある意味ではそうだったんじゃない?
ほら…あのビデオメッセージとか、生存者特典の言葉的に。
みんなの顔に焦りが見えだしたけれど、そんな中で最原だけは笑っていた。
「モノクマ…投票結果を教えてくれる?」
「はーい!それでは始めましょーう!勝つのは希望か絶望かー!?」
いや、だからさ希望と絶望は(以下略)。
そこはさ、嘘の世界か外の世界かー!?でもいいんじゃない?
えっ、だめ?
大きなモニターから、投票結果が表示される。
そこには『ATTENTION 投票なし』と大きな文字が映されていた。
「…は?」
白銀が、真っ先に素っ頓狂な声を出した。
「16人全員…投票放棄?それじゃあ…」
みんなの視線が、キーボに注がれる。
アタシが造ったプロテクトを失った事で人格を消され、外の世界の意志を元に行動したキーボに。
「な、何それ…!」
狼狽える白銀に、キーボが「外の世界が、コロシアイを否定したという事ですよ」と外の世界の真実を突きつける。
「ちょっと…待ってよ!ほ、本当にそれでいいの!?ダンガンロンパが終わっちゃうんだよ?疑心暗鬼のコロシアイが…仲間同士の裏切り合いが…シリーズ53作目でいきなり完結なんて…そんな終わり方で本当にいいのっ!?」
そんな白銀の訴えも虚しく、モニターに映る視聴者の姿が1人また1人と消えていき…最後には真っ暗な画面だけが残った。
その間に、アタシはポケットに入れていた発明品を幾つかキーボに取り付けていく。
急げ…だけど、作業は丁寧に。
「まさか…全滅して終わりとはね。こんな結末は予想してなかったから、それに相応しいオシオキは用意してないんだよね…。だから、キーボ君に任せるよ」
「ま、待って!もうちょっとでキーボの簡単な改ぞ…じゃなくて、メンテナンスも終わるからよ」
ガチャガチャと音をたてながら白銀にダメもとで聞いてみると、「早くしてよ」って返事が返ってきた。
言われなくても、早く済ませてやんよ。