憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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やっと…ここまで辿り着けた。
本編ラストは明日にでも投稿の予定です。

学級裁判って、こんなに長かったっけ?


さよならダンガンロンパ⑧

このままだと、投票放棄という形で終わる。

それだけは避けたいのか、白銀は「キーボ君、いいの?そんな結末でいいって内なる声が言ってるの?」と静かに喋り出した。

 

「外の世界は本当にそれを求めているの!?ダンガンロンパの終わりを求めているの!?ねぇ!みんなはなんて言ってるの!?内なる声はなんて言ってるの!?」

 

だけど、それらはやがて叫び声へと変わっていく。

白銀は白銀で必死になっている。

 

「内なる声はそんな結末認めないと言っています。でも、ボクにはもう内なる声なんて関係ありません!」

 

言い切ったキーボを見て、白銀は「やっぱりね…。でも、なんで?」と首を傾げた。

 

「視聴者代表のキーボ君が視聴者に逆らうなんて、視聴者の怒りを買うだけだよ?だから、邪魔な人格を消されたっておかしくないのに。ううん、勝手な暴走を繰り返すキーボ君は視聴者のアンケート結果により、人格を消されたはずなのに…なんで人格が残ってるの?」

 

理解できないとばかりに目を丸くする白銀が、キーボを見つめる。

だけど、何かに気づくとハッとしたようにアタシを睨みつけてきた。

 

「ねぇ…今までキーボ君のメンテナンスをしてたみたいだけど、その時に何かした?キーボ君の人格が消えないように、プロテクトでも作ったの?」

 

「メンテナンスで、そんなのやる暇ねーよぉ…」

 

嘘は言ってない。

アタシは…メンテナンスの時にはしてない。

学級裁判が始まる前に、お守りとか言ってやっただけ。

だって、人格を消すとかロボットだからって残酷でしかない。

ロボットだろうと、視聴者代表だろうと…キーボにはキーボの考えや気持ちがちゃんと存在している。

 

「…だけど、外の世界はコロシアイを求めているんだよ。勝手にダンガンロンパを終わらせるな!今までずっと応援してたんだぞ!…ってね。だから、いくらあなた達が投票を放棄して死のうと、その訴えは外の世界には届かないんだよ。外の世界はダンガンロンパを求め続ける!それは変わらないんだよ!」

 

「それでも、僕達が変えてみせる…。どんな不可能だって、やり遂げれば可能になるんだっ!」

 

嘘には無限の可能性がある…。

嘘を真実に変えてしまうように、嘘から世界を変える事だってできる。

それが、アタシ達がやっているダンガンロンパなんだ。

 

「そんなの、できる訳ないよ!」

 

「そうよ!みんなダンガンロンパが好きなんだから!」

 

「今更、偽善者面スルノ…?」

 

「世界が求めるから、ミー達は作られたんだぜ!?」

 

「説得なんて、するだけ無駄や!」

 

モノクマーズが言い合う中で、裁判場の形が変わっていく。

白銀とモノクマ、モノクマーズ…モニターに映る視聴者と向き合うように、アタシ達15人が並ぶ。

…まさかの、議論スクラム。

議題は『ダンガンロンパは終わらない』と『ダンガンロンパを終わらせる』って感じかな。

 

モニターから溢れ出るコメントが『希望でも絶望でもないなんて認めない』やら『運営仕事しろ』やら『今回のロンパは荒れてんな』で溢れている。

『コロシアイしなよ』なんてコメントもあれば、『平和な世界軸(笑)』なんてのもある。

……関係ないかもしれないけど、『最原君の眼力欲しい』とか『赤松ちゃんと結婚したい』とか『なん図書』っていうコメントはなんなんだ。

 

「オマエラはフィクションなんだよ!フィクションが世界を変えられるわけないよ!」

 

「それでも想いを伝える事はできるっす」

 

「フィクションだって、世界を変えられるんだよ!」

 

外の世界を変えられないと言ったモノクマに、天海と赤松が外の世界を変えられると反論する。

 

「コロシアイは最高のエンターテイメントなんだよ!」

 

「だが、俺達の命は本物だ」

 

「コロシアイなんて間違っているわ」

 

コロシアイをエンターテイメントと言うモノクマーズに、星と東条かがエンターテイメントではないと反論していく。

 

「投票放棄で無駄死になんて、最悪なオチだよ!」

 

「無駄死になんかじゃないヨ」

 

「外の世界のみんなに、分かってもらうんだよー」

 

「だって、転子達の命を使うんですから!」

 

無駄死にだと言う白銀に、真宮寺とアンジーと茶柱が無駄死にではなく、命を使うんだと反論する。

 

「『キャラがコロシアイをするのが、ダンガンロンパだろ!』」

 

「誰もテメーらの思惑通りに、動かねーよ。オレ様達は見せ物じゃねー」

 

「ゴン太達は、コロシアイなんてやらない!」

 

視聴者コメントをそのまま読み上げたモノクマに、アタシとゴン太で言い返す。

 

「『希望か絶望か選びなよ!』」

 

「だから、どっちも捨てるって。オレには嘘があれば充分だからね」

 

「どっちかを選ぶから繰り返されるんだ、だったら選ばねーよ!」

 

選べという白銀と視聴者コメントに、王馬と百田が選ばないという強い意志を見せる。

 

『ダンガンロンパは終わらないよね?』

 

「ここで終わるんだよ」

 

「これ以上は続けさせんぞ!」

 

「みんなの手で、ダンガンロンパを終わらせるんだ!」

 

視聴者のそんなコメントに、春川と夢野と最原がダンガンロンパの終結を叫ぶ。

だから、これ以上は無駄だと思ったんだろう。

裁判場の形が、全員を見渡せる元の形に戻った。

 

「わたしには分かってる…外の世界はダンガンロンパを終わらせたりしない。みんな…ダンガンロンパが大好きなんだ…。それが現実なんだよっ!コロシアイエンターテイメントは永遠に続くんだよっ!」

 

「そういう事だよ!キーボ君だって外の世界に逆らえないよ。間違いなく絶望である白銀さんに投票する。だって、それが外の世界の選択だからね!」

 

そう言ったモノクマの手にはいつの間にか、裁判前にアタシがキーボに貼ったシールがあった。

あっ、せっかく造った人格保護プログラム取られてる。

さっきのスクラム中、キーボが黙ってたのはそういう理由!?

 

視聴者のアンケート通りに動くようになってしまったキーボを、みんなが不安そうに見つめる。

でも、誰も何も言わない。

外の世界に言いたい事は言ったんだから。

きっと…大丈夫なはず。

 

「では、張り切っていきましょう!最後の投票ターイム!」

 

そうして、投票を促される。

だけど、この投票は放棄すると決めていたんだし、する必要はない。

目を閉じて、時間切れになるのを待つ。

 

「さて、投票が終わったようなので、さっそく結果発表にいきましょうか」

 

モノクマによる結果発表が出される。

その前に、白銀が「そうそう、わたしも投票を放棄したからね」と告げた。

 

「ほら、わたし達って仲間でしょ?あなた達だけに投票を放棄させる訳にはいかないよ。で…わたし達15人が放棄したって事は、キーボ君の投票だけが有効って事になるから…彼がわたしに投票していても、生き残るのはキーボ君だけ…希望の勝ちって事になるんだよ」

 

……だからさ、希望と絶望をズルズル引きずるのやめようよ。

 

「みんなが命懸けでコロシアイを止める気なら、わたしは命懸けでコロシアイを続ける気だよ。たかがフィクションとは言え、わたしだって命懸けで作ってるんだよね。でね…この後のわたしのシナリオはこう。長い戦いの果てに、無事に希望が勝ったものの、生き残ったキーボ君は首謀者の策略にハマってしまい…そして、たった1人で次のコロシアイに挑む事になる。次こそ真の希望を掴む為に…っ!」

 

それ、今回の天海もある意味ではそうだったんじゃない?

ほら…あのビデオメッセージとか、生存者特典の言葉的に。

 

みんなの顔に焦りが見えだしたけれど、そんな中で最原だけは笑っていた。

 

「モノクマ…投票結果を教えてくれる?」

 

「はーい!それでは始めましょーう!勝つのは希望か絶望かー!?」

 

いや、だからさ希望と絶望は(以下略)。

そこはさ、嘘の世界か外の世界かー!?でもいいんじゃない?

えっ、だめ?

 

大きなモニターから、投票結果が表示される。

そこには『ATTENTION 投票なし』と大きな文字が映されていた。

 

「…は?」

 

白銀が、真っ先に素っ頓狂な声を出した。

 

「16人全員…投票放棄?それじゃあ…」

 

みんなの視線が、キーボに注がれる。

アタシが造ったプロテクトを失った事で人格を消され、外の世界の意志を元に行動したキーボに。

 

「な、何それ…!」

 

狼狽える白銀に、キーボが「外の世界が、コロシアイを否定したという事ですよ」と外の世界の真実を突きつける。

 

「ちょっと…待ってよ!ほ、本当にそれでいいの!?ダンガンロンパが終わっちゃうんだよ?疑心暗鬼のコロシアイが…仲間同士の裏切り合いが…シリーズ53作目でいきなり完結なんて…そんな終わり方で本当にいいのっ!?」

 

そんな白銀の訴えも虚しく、モニターに映る視聴者の姿が1人また1人と消えていき…最後には真っ暗な画面だけが残った。

その間に、アタシはポケットに入れていた発明品を幾つかキーボに取り付けていく。

急げ…だけど、作業は丁寧に。

 

「まさか…全滅して終わりとはね。こんな結末は予想してなかったから、それに相応しいオシオキは用意してないんだよね…。だから、キーボ君に任せるよ」

 

「ま、待って!もうちょっとでキーボの簡単な改ぞ…じゃなくて、メンテナンスも終わるからよ」

 

ガチャガチャと音をたてながら白銀にダメもとで聞いてみると、「早くしてよ」って返事が返ってきた。

言われなくても、早く済ませてやんよ。

 


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