憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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今月中に本編を終わらせたいなぁ…という、できるかどうか分からない目標を立ててみる。
学級裁判って、こんなに長かったっけ?


さよならダンガンロンパ⑥

白銀のコスプレを見ながら、ぼんやり考える。

声とかキャラにソックリすぎて、コスプレを通り越した何かにすら見えてくる。

というか、ボイスチェンジャーもなしにどうやって声変えてるの。

どこぞのキザな怪盗がやる芸当じゃん。

………まぁ、くだらない考えはこれぐらいにして、学級裁判の方に意識を戻そう。

 

「あの…コスプレって、架空のキャラクターになりきる事っすよね?」

 

確認するかのように聞いてきた天海に、白銀は「うん!そうだよ!!」と肯定するや苗木のコスプレをした。

だから、着替えるの早いって。

 

「だとしたら…みんなはどう思う?今までの話しからして、希望ヶ峰学園ってなんだったと思う?」

 

そんなの、聞くまでもない。

 

「んなの、フィクションって事だろ?」

 

アタシがそう答えると、白銀を除いたみんなが驚愕したかのように固まった。

 

「人類至上最大最悪の絶望的事件なんて、実際には起きていない…。希望ヶ峰学園も未来機関も絶望の残党も、この世界には存在しない…」

「なぜなら、あれは現実世界の話しじゃなくて、フィクションの話しだからだ」

 

十神から十神(詐欺師)へとコスプレしていきながら、白銀は話していく。

みんな必死に頭で理解しようとしているのか、黙って聞いているだけだ。

 

「そう…すべて、ダンガンロンパというフィクション作品の中の出来事でしかないのよ」

 

霧切のコスプレをしながら告げられた言葉に、ゲームのプレイ中に思わず『メタ発言!』なんて言った記憶が蘇る。

これも、ある意味ではダンガンロンパというフィクション作品なんだけど?

 

「ダンガンロンパー!」

 

モノクマの楽しそうな声が、響く。

それに対して、やっとの思いで「ダンガン…ロンパ?」と呟いたみんなの声は震えていた。

 

「なんだ?その、ダンガンロンパってのはよ…」

 

「えっ?ダンガンロンパを知らないんですかぁ?私達はみんな…そのキャラクターなんですよ?」

「そうだよ、わたしもゲロブタも、みーんなフィクションの存在なんだよー」

 

百田の疑問に答える為だけに、白銀は罪木と西園寺のコスプレをする。

もう、コスプレについて深く考えるのはやめよう。

 

「それってつまり、希望ヶ峰学園は存在しないって事?あーあ…流石のオレでも、この嘘は見抜けなかったんだけど」

 

悔しそうに爪を噛みながらそう吐き捨てた王馬に、白銀はなんでもないように「あれはフィクションだからね。現実世界には存在しないよ」と笑顔で答えた。

 

「オメーらは、ダンガンロンパってフィクション作品の話を記憶として植え付けられていたんだよ」

「そのせいで、みなさんはフィクションを現実と思い込んでいたのです」

「そうやって、みんなの認識する世界を丸ごとコスプレさせてたんすよ!世界を丸ごとダンガンロンパにコスプレさせてたんすー!」

 

大和田、ソニア、澪田と順番に姿を変えながら、白銀は告げていく。

だけど白銀はコスプレを一度やめると、アタシ達を見下したような目をしていた。

 

「キャラクターのコスプレをするだけが、超高校級のコスプレイヤーの才能だと思った?」

 

ゲームで初めて見た時は、そう思ってたよ。

だから、最終章では『マジかよー!』って叫んでた。

今となっては、そんな事あったなってだけの話しだけどな。

 

「それだけじゃないんだよ…。わたしは世界そのものをコスプレする事ができるんだよ。そのわたしが敵だとすると…みんなの敵は、ダンガンロンパの世界そのものなんだよ!」

 

いや…別に敵にしたいとかじゃなくて、その…なんというか……語弊力が迷子だから何も言えない。

 

「なぁ…どうしてお前はそんな事をしたんだ?フィクションを現実と思わせるなんてよ」

 

「もちろん、みんなにコロシアイをやって貰う為だよ!」

 

朝日奈のコスプレで星の問いに答えたと思うと、次の瞬間には九頭竜の姿になっていた。

 

「ここはダンガンロンパの世界なんだぜ?コロシアイをやるのは当然だろーが」

 

まぁ、コロシアイの後の学級裁判がメインのゲームだしね。

キャラクターも魅力的なのが多いし。

 

「と言っても、ただのコロシアイじゃないんだけどね。フィクションで塗り固めた世界で行われる、現実の命を使ったコロシアイ…」

「つまり、究極のリアルフィクションなんじゃあああ!」

 

狛枝、弐大のコスプレから、このコロシアイがリアルフィクションである事を告げられる。

 

「現実の命を使ったリアルフィクション…。フィクションという事は、世界が滅びていた光景もフィクションっていうことになるよね?つまり、私達には帰る場所がちゃんと---」

 

「あー、そりゃねーべ」

 

赤松の言葉を遮るように、葉隠のコスプレをした白銀が声を上げた。

 

「教えてよモノクマー。どういう事なのー?」

 

アンジーがモノクマに問いかけてみたが、モノクマーズが真っ先に喋り出した。

 

「本当ニ、知リタイノ?」

 

「外の世界なんて、気にしても仕方がないわよ!」

 

「せや!キサマラの世界は、この才囚学園の中だけなんやしな」

 

「自分と関係ない世界の事なんて、ほっといた方がいいぜ!」

 

「知ったら後悔しちゃうよ!」

 

モノクマーズがそう訴えている間、モノクマはずっと眺めていただけだったけど、「視聴者のみんなも、そう思うよねー!」とモノクマーズ達の後に笑いながら言うと、裁判場に沢山のモニターが出現して、色んな人々の顔が数々と移り込む。

 

「彼らはずっと、あなた達を見ていたのよ」

「当然…これはほんの一部だがな」

「デスゲームは、見てくれる人がいるから成立するんですよ」

 

霧切、大神、舞園とコスプレしていきながら、白銀はモニター映る視聴者を見ていた。

 

「こ、ここでの生活を見ているのは…とても平和な世界の人達なのよ…」

「とても平和な世界…それは、言い換えればとても退屈な世界という事です」

「誰もが平和に退屈し切っているのよ。だからこそ刺激を求めるの…」

 

白銀がなりきる腐川、セレス、霧切の言葉が、少し前までゲームとして楽しんでいたアタシにグッサグッサと突き刺さる。

で、でも!オマケモードの平和な世界軸もとても素敵だと思ってる。

むしろ、平和な世界軸の方が好き!

……アタシは誰に言い訳してるんだ。

 

「ダンガンロンパはそのニーズに応える為に、この究極のリアルフィクションまで発展したんだよ。これを見ている外の世界の人達はね…みんなダンガンロンパの大ファンなんだよ。コロシアイが大好きなみんな…これは、そんなみんなの為のコロシアイ…。だから…みんなのコロシアイ新学期なんだよ」

「それが、あなた達がやっているコロシアイ生活の正体なんだよ。まさに、究極のリアルフィクションでしょ?」

 

七海のコスプレをしたと思ったら、いつも通りの白銀に戻る。

見ているこっちとしては、大変そうなんだけど実際どうなんだろ?

 

「もう、気付くのが遅すぎるよ!モノクマと言えば、ダンガンロンパなんだから…ボクがいるって事は、これはダンガンロンパなんだよ!」

 

モノクマがそう言った瞬間、モニターの画面が変わった。

このコロシアイのタイトル『ニューダンガンロンパV3~みんなのコロシアイ新学期~』という文字が浮かぶ。

 

「これは…何かナ?」

 

視線がモニターへと釘付けになりながらも真宮寺が白銀に聞くと、白銀は九頭竜のコスプレをして「テメーらがやっているダンガンロンパのタイトルだ。こいつを見ればわかるはずだぜ?」と笑う。

そして、苗木のコスプレをするとアタシ達1人1人の顔を見ていた。

 

「このコロシアイは何回目のコロシアイだと思う?これはシリーズ何作目のダンガンロンパだと思う?あのロゴを見ればわかるはずだよ?」

 

…これ、実はロゴを見なくても分かったりする。

 

「53回目…だろ?さっき、53世とか言ってたしな」

 

アタシが即座に答えてやると、「ぴんぽーん!大正解ー!」とモノクマがすぐに肯定した。

 

「そう、これはシリーズ53作目のダンガンロンパなのでーす!つまり、ニューダンガンロンパV3の正式名称はニューダンガンロンパ53なのでしたー!」

 

うん、知ってる。

そんなアタシの内心を知らずに、モノクマはダンガンロンパシリーズについての話しをしていく。

 

「ダンガンロンパは希望ヶ峰学園シリーズを描いた、1と2と3を経て…それからもシリーズは続いていき、コロシアイもどんどんエスカレートしていって…やがてゲームやアニメという枠を超え、この究極のリアルフィクションの形まで発展し…そして、今作のダンガンロンパで53作目になるのでーす!」

 

えっと…一応、アタシの前までの認識でいくと、一応これもゲームなんだけど。

口が滑らない内に考えるのを止めておこう。

ほら、混乱とか避けたいし。

 

「だからね…首謀者はわたしだけど、あなた達にこれをやらせている黒幕は……外の世界の人達なんだよ。だって、わたしがダンガンロンパの世界を作ってるのも、あなた達にコロシアイを強要させているのも…外の世界がそれを求めているからなんだよ?それはわたし達だけじゃなくて、このプロジェクトに関わる全員がそうだからね」

「ダンガンロンパを作っているのは、チームダンガンロンパって会社なんだよ」

 

…なんで最後だけ不二咲のコスプレで説明したし。

 

「わたしも所属している、チームダンガンロンパの仕事はね…とびっきりのコロシアイエンターテイメントを作って、みんなを思いっきり楽しませる事…その最新作となるのが、このニューダンガンロンパV3なんだよ!」

 

メタ発言と思っているのは、この場ではアタシだけなんだろうか。

……いや、どう足掻いてもアタシだけだよな。

 

「ふ、ふざけんじゃねーぞ!テメーの作ったフィクションの世界で、フィクションと同じコロシアイをするなんてよ…」

 

「そうだ、いくらフィクションの記憶を埋め込まれたからって、僕ら自身はフィクションじゃーーー」

 

百田の怒鳴り声に便乗するように最原も叫ぶように言うも、モノクマに「…どうして言い切れるの?」って口を挟まれた事で止まってしまった。

 

「キミらもボクらと一緒なんだよ。ダンガンロンパの世界でしか生きられないんだ」

 

狛枝のコスプレをした白銀にそう告げられた事で、何人かは気づいたんだろう。

所々から「まさか…」なんて声が聞こえた。

 

「そう、あなた達もフィクションなんだよ。最初に才囚学園にやって来た頃、あなた達は今とは違う姿だった…。その時のあなた達こそが本当の姿で、今のあなた達はフィクションの存在でしかない…それが真実なんだよ」

 

つまり、超高校級の才能なんてこれっぽっちも持ってない、普通の一般人でしかなかった。

だけど、最初の…ゲームでいうプロローグの時、思い出しライトで超高校級としての才能やキャラクター設定、性格や生い立ち、家族構成に思い出を植え付けられ、生み出されただけの存在でしかないということ。

 

「みんなの才能なんて、ただの嘘っぱちなんだよ。もちろん、最初からある程度の適正はあったけど、プラシーボ効果みたいなものなんだよ。自己暗示だね…ほら、やればなんとかなるってヤツだよ」

「肉体が本物だとしても、人格や性格も才能も過去もフィクションの存在…」

「それでも、フィクションじゃないって言い切れるの?」

 

七海、日向、苗木のトリプルコンボ。

この3人のキャラに言われるのは、コスプレだと分かっていても辛い。

 

「まぁ、仕方ないよね。あなた達も元は外の世界の人間だったんだから…大好きなダンガンロンパに参加したいと思っても、不思議じゃないよね」

 

恍惚とした表情を浮かべながらそう言った白銀に、赤松が「そんなはずないよ!」と否定したが、「だったら、これを見てもそう言える?」と白銀はモノクマに目配せすると、モニターに映像が流れた。

 

そこには、今とは違う制服を着た最原が映っていた。

 

『154番…ーーーーです。僕は…昔からダンガンロンパが好きで…いつかコロシアイに参加してみたいって思ってて…。えっと…もし参加する事になったら、僕は超高校級の探偵になりたいです…。あ、でも…探偵じゃなくてもいいです。とにかく…僕はどうしてもダンガンロンパの世界の一員になりたいんです…。だから、こよコロシアイに参加できる事になったら、僕は精一杯頑張ります!今まで誰も見た事がないような殺人をして、見ている人全員を驚かせるつもりです!超高校級の探偵がクロって展開は今までないですし、探偵ならではの特殊なトリックができるはずです!そうだ、僕がクロになった時のオシオキも考えてあってーーー』

 

……マシンガントークな最原って、なんか新鮮。

隣で見ていた最原本人をチラリと見てみると、顔を真っ青にして「こんなの嘘だ…」と呟いていた。

 

「今のあなた達は、フィクションのキャラクターなの。あのオーディションを受けていたあなた達とは別人なんだよ。だからね、外の世界にみんなの帰る場所なんてないんだよ。みんなを閉じ込めている本当の密室は、ダンガンロンパの世界なんだよ。だから、あなた達はこの世界から出られない。あなた達はこの世界でコロシアイをするしかない…あなた達はその為に生み出されたフィクションの存在で、世界もそれを求めている。だから…どこにも逃げられないんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

全て、フィクション

 

 

 

全て、作られただけの設定

 

 

 

全て、嘘

 

 

 

 

 

 

 

「どう?絶望した?むしろ、絶望してくれないと困るわ!ここからがやっと私様の出番なんだもの!あなた達が絶望する姿こそが、視聴者を惹きつけるのです。だから、ほらーっ!外のみんなだってあんなに楽しそうでしょー!?」

 

モニターから視聴者のコメントが溢れ出る。

絶望絶望って……あぁ、もう五月蝿い。

 

 

「フィクションのキャラクターが何を叫ぼうと、どう助けを請おうと無駄だよ。それは視聴者に可哀想って感情を与えるだけで、むしろ、その背徳感がより視聴者を夢中にさせるんだよ。そんな背徳感こそがデスゲームの魅力であり、コロシアイの魅力であり、ダンガンロンパの魅力なんだからね」

 

モノクマが長々と何か言っているけど、それすらも頭に残らないぐらい聞き流してしまう。

 

 

「みんな、諦めちゃダメだ。どんな時だって必ず希望はあるはずなんだ」

 

あっ、キーボに変なスイッチ入った…。

 

「リアルフィクションという事は、すべてがフィクションではないはずだ…。だったら、突破口だってあるはずだ!ボクは最後まで希望を諦めないぞ!外の世界にはボク達の声だって届いてる!だとしたら、ボクの内なる声の言う通りーーー」

 

希望を語っていたキーボに、白銀は「それ…内なる声じゃなくて、外の世界の声なんだけど」とキーボに内なる声の正体を告げた。

 

「あなたは視聴者代表っていう特別な存在なんだよ。あなたの頭のアンテナは、視聴者のアンケートを受信するものだったんだよ。でも、それだけじゃないよ。あなたのその目は視聴者のカメラでもあるの。つまり…そのまま視聴者の目なんだよ。外の世界の人達はね、ずっとあなたの視線でこの生活を見ていたんだよ。自分がダンガンロンパの世界にいるかのような臨場感。それを生み出していたのが…あなたの存在なんだよ」

 

それも、もうじき終わるけどな。

教えてやらないし、言ってやらないけど。

 

「アンタを絶望させる事で、アタシは外の世界を絶望させるのよっ!そして、絶望はフィクションから現実に侵食する!こんな絶望的なラストは、誰も絶望的なまでに想像してないはずさ」

 

「ボクはこの内なる声を通して、外の世界に希望を伝染させるっ!外の世界は、本当は希望を求めているはずなんだ!だから、ボクは希望を信じる!外の世界を信じるぞっ!」

 

なんか…キーボと白銀だけで盛り上がってるんだけど。

あの、周り置いていかれてる。

 

「だったら…決着をつけよう」

「希望と絶望の最後の戦いだ…っ!」

 

日向、苗木とコスプレをしてそう言った白銀に、「決着を着けるって…何をするんだ?」とキーボが問いかけると「特別な投票を行おうか」という答えが返ってきた。

 

「最後の投票で選んで貰うのは…わたしとキーボ君…そのどっちがオシオキされるべきかだよ」

 

用は、物語の結末を選べってやつだ。

希望を選ぶか、絶望を選ぶか…。

 

「もし希望であるキーボのオシオキが決まって、アタシの絶望が勝利した場合は…このままコロシアイ生活を続けてもらうよ。校則にあった通り…最後の2人になるまでね。まぁ、動機を作った所で嘘だってバレてるから、何も起きない可能性が高いけどねー。みんなで仲良く絶望的に生き続ける事ができるってわけ。で、逆に絶望であるアタシのオシオキが決まって、キーボの希望が勝利した場合だけど…もちろん、このコロシアイは終わるよ。でも、最後の2人になるまでっていう校則は守ってもらうから。だから、卒業できるのは2人だけだよ」

 

どっちにしろ、2人までじゃねーか。

誰だよこんなルールにしたの。

 


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