憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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5章終わったから休題。
アンケートの結果、愛の鍵ネタになりました。

そして、みなさんにご報告。
この前「多忙から解放されたー」なんて言ってましたが、再び多忙になる事になりました。
週1更新さえも怪しくなってしまい、只今凹んでおります。
やること多すぎるんだよ、誰だよこんなに増やしたの。僕だけど。


休題

やけに派手な内装の部屋。

大きなベッドにメリーゴーランドの回転木馬という…まぁ、あれだ。

簡単に言うと、ラブアパートの部屋に気づいたら居た。

 

「なんでぇ…?」

 

情けない声を出してしまったけれど、そこは見逃して。

 

…だって、アタシ愛の鍵使ってないのに此処にいるんだよ?

いくら寝ぼけて『使いますか?/はい』を選択してたとしても、ありえない。

 

なぜならアタシは、愛の鍵を持ってないから。

 

なんでだよ、意味が分からないんだけど。

ふざけんなよ。

何が悲しくて、ラブアパートの一室でボッチ状態にされなくちゃいけないの。

 

「………待てよ?」

 

愛の鍵ないのに、ラブアパートでボッチ?

まさか……ランダムで相手役に選ばれた、なんて落ちじゃないよね?

違うよな?

そんな訳ないよね?

 

……どうしよう、言ってる内に自信がなくなってきた。

 

いや、待った。

まだ1つだけ可能性は残っているはず。(現実逃避じゃない)

例えば…

 

「夢……とか」

 

そうだ、夢に違いない。

だってここにはアタシ1人なんだから。

なんだ…悩んで損した。

となれば、やることは1つ。

 

「前から気になってたんだよなぁ…」

 

無意識に回転木馬に目がいく。

これ、乗れそうじゃん?

乗ってみたいと思わない?

いや、思うだろ。

 

木馬にゆっくり手を伸ばす。

その時「ガチャ…」と扉が開く音がして、アタシは慌てて手を引っ込めた。

 

えっ、誰か来たの?

思わずドアの方を振り返る。

 

 

アタシの姿を見て、固まった最原の姿があった。

 

 

「………」

 

「…………」

 

お互いに無言のまま時間が流れる。

ちょっと…何か喋れよ。

ていうかさ、アタシがここにいるのは最原のせいなのか?

最原が鍵を使ったせいなのか!?

おい、どーすんだよ。

こんな事になるなんて聞いてない。

 

えっ?アタシの妄想で設定作れって?

無理だよ。今は頭真っ白。

 

「……」

 

「……」

 

この空気どうしたらいいんだろう。

向こうも『どうすればいいんだ…』みたいな顔してんじゃん。

アタシのせいだけどさ、どうするんだよ!

仕事しろ、アタシの脳内妄想!

 

「えっと……その…」

 

頑張って喋ろうとするも、言葉は文章にすらならない。

なぁにこれぇ。

長年、部屋に引きこもっていたコミュ症ニートかアタシは。

 

「大丈夫…?」

 

わー…、最原に苦笑いで心配されたー。

結構ダメージくるかも、精神的に。

 

「えっ…?あ、うん。大丈夫大丈夫」

 

口ではそう言ったけど、全然大丈夫じゃない。

なんでだよ、これって部屋に呼ばれた相手の妄想で話しが始まるんじゃなかったの?

妄想が行方不明になってるの?

そんなのアリ?

 

「あー…その、だな」

 

落ち着きなく、視線をさ迷よわせる。

こうなったらヤケだ。

いつも通りに話そう、それがいい。

 

「なんで、殆どの自由時間はカジノにいるんだよ?」

 

「…えっ?」

 

なんでそんな事を聞くの?って顔をされた。

アタシもなんでそんな事聞いたのか、自分でも分からない。

 

「あっ、ごめん。今のなし。テイク2で」

 

「いいけど…」

 

さっきより最原の苦笑いが深くなった。

誰のせいかなんて言わずもがな、アタシのせいだ。

 

うーん…と何を話そうか考える。

そうしていると妄想が今になって帰還したのか、ある設定がふと頭に浮かぶ。

…よし、この設定でこの愛の鍵イベントを乗り越えよう。

 

 

「いいか、最原。お前の事を信用して話すから、こっから先言う事は他言無用で頼むぜ」

 

「う、うん…」

 

急に真面目な話しになったせいか、最原の表情が強張る。

でもさ…ごめん、こっから先話すのはアタシの妄想100%だから。

言わなくても、知ってると思うけどな。

 

「オレ様には双子の姉がいるんだ。小さい頃にオレ様が親戚に引き取られたせいで、実はあんまり面識がないんだけど…」

 

「それってつまり、僕は探偵として入間さんの双子のお姉さんを捜せばいいのかな?」

 

それぐらいなら、おやすいご用とばかりの最原に「その必要はねーんだ」とアタシは否定した。

 

「実はもう見つかってるんだよ。ただ…その、相手がオレ様達がよく知る奴でさ…」

 

俯きながら最原をチラリと確認してみると、真剣な表情で考え込んでいる様子だった。

あっ、どうしよう。

なんか楽しくなってきた。

 

「それで…その人物って誰なの?」

 

思いつく人がいなかったのか、恐る恐るといった風に最原が問いかけてくる。

気になるなら答えてあげよう、妄想で作られた衝撃的な嘘の真実。

さーて、どんな反応をしてくれるかな。

 

「あ…赤松なんだ」

 

「」

 

あれ?最原が固まった。

目の前で手を振ったり、呼びかけたりするけど反応がない。

マジの『返事がない。ただの屍のようだ』は誰も望んでないと思うんだけど?

…えっ、生きてるよな?

 

「おーい、最原?立ったまま寝てんのかよ?」

 

「えっ?いや…ええぇぇっ!?」

 

頬をツンツンしてると、やっと最原から反応が返ってきた。

起きてるなら返事ぐらいしろって。

何も反応なかったから驚いたじゃん。

 

…一番驚いているのは、最原だと思うけれど。

 

「えぇ!?赤松さん?双子?えっ、待ってよ。……えぇ?」

 

まさかとは思うけれど、本気で思ってたりしない…よな?

これ、君が好きな愛の鍵イベントなんだけど。

全部妄想なんだよ?

 

「ごめん、入間さん…ちょっと考える時間を貰っていいかな?」

 

「お…おう?」

 

いっその事、最原が考えを纏めている間に部屋から出て行こうかな…なんて考えが浮かんだ。

ゲームでは王馬がやってたんだし、問題ないと思うんだ。

よし、帰ろう。

 

強制終了だ。

じゃあな最原。

アタシは夢として、この部屋で起きた事を全部忘れてやる。

 

 

 

×××××

 

 

朝起きたら、無駄に疲労感があった。

おかしいな…昨日はいつもより早く寝たはずなんだけど。

寝返りとかで体力使ったのか?

 

「まっ、別にいいか」

 

別に支障が出るほどじゃない。

とりあえず今日はキーボのメンテナンスでもして、後は適当に過ごそう。

さっ、東条の作った朝食でも食べに行こう。

 

空腹の為、切なげに鳴く胃を押さえながら個室から出ると、今まさにインターホンを押そうとしている最原が目の前にいた。

 

「…ここはオレ様の部屋だぞ?」

 

思わず寝ぼけてんじゃねぇの?と失礼な事を考えながら言うと、「それは知ってるよ…」なんて返答がくる。

じゃあさ、なんでアタシの部屋のインターホンを押そうとしてんだ。

朝から何か用なの?

なんかあったっけ?

…何もないはずなんだけどなぁ。

 

「ちょっと気になった事があって、それを聞きに来ただけなんだけど…。入間さんって、双子のお姉さんがいたりする?」

 

「……………………はぁ?」

 

ごめん、いきなり何?

双子の姉?何を言ってるのか意味が分からんぞ。

 

「最原、頭打ったのか?東条に見てもらえば?」

 

「えっ!?いや…うん。なんでもないんだ」

 

1人で自己完結したのか、最原はそれ以降は「あれは夢だもんね…うん。現実の事が混ぜ合わせになってる訳ないよね…」とブツブツ呟いていた。

ちょ、マジでどうした。

朝から怖いって。

 

「よく分かんねーけど、オレ様もう行ってもいい?腹減ってんだよ…」

 

「あっ、待ってよ。僕も行くから」

 

さっきまでのよく分からない空気が嘘だったかのように、今日の朝食は和食と洋食のどっちにするだとか、今日は何をする予定だとか、他愛もない会話で盛り上がった。

 


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