憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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スイパラのV3コラボカフェに行きたい…。
行きたいけれど家からめっちゃ遠いし、電車乗り換えだし、迷子になるし……

神様、あんた僕の事嫌いだろ(血涙)


愛も青春もない旅立ち②

徹夜で作った発明品を片手に、中庭を歩く。

才囚学園は本日も快晴。

絶好の作戦日和だ。

 

いや、あれはアタシが作った作戦って言えるようなものじゃないし…訂正。

絶好の共犯日和だ。

……どうしよう、何を言ってるのか自分で分からない。

なんだよ、共犯日和って。

 

「…なに変な顔してんの?」

 

寄宿舎から出てきた春川に、若干引かれながらそんな事を言われた。

落ち込みそうになるのをグッと堪えて、アタシは「ほらよ」と持っていた発明品を春川に差し出した。

 

「何これ?手榴弾?」

 

受け取った春川は首を傾げながらも発明品…ピンク色の派手な見た目をした手榴弾を確認すると、アタシに「で?どんな効力があるの?」と聞いてきた。

 

「そいつはな、エレクトボムの手榴弾タイプだ。まぁ、ボムと比べるとちょっと性能は落ちるけどな」

 

本当は造る気はなかったんだけど、念の為というわけで寝ないで造った。

アタシが持っているやつと、春川に渡した分だけが現在存在するエレクトボムだ。

試作品は、この前使ったのだから当然ない。

その時に春川には簡単にエレクトボムの説明もしてあるから、通信やセンサー、レーダーを妨害するという効力も当然把握済みなんだし、今更余計な説明は不要だろう。

 

「エレクトボム…この前、話す時に使ってたやつだっけ?私用に造ったんだ」

 

嬉しそうに口元を緩ませる春川だったが、アタシがジーッと見ている事に気づくとすぐに「で、実行するのって今日だっけ。準備とかあるの?」といつもの表情に戻ってしまった。

 

うーん…アタシとしては、もうちょっとだけ珍しくデレを見せた春川の顔が見たかったなぁ。

 

「準備なんて大層な事は特にねーぞ?けどよぉ…」

 

春川の制服の裾辺りをギュッと握りながら、アタシは思わず上目遣をししながら春川と目を合わせた。

 

「そのぉ…どうやって、みんなを誘えばいいのかなーって……」

 

ほら、自分から誘う事なんてキーボに「メンテナンスやんぞっ!」って感じでしかした事ないし?

この前のプログラムの事だって、どうやってみんなを誘ったのか覚えてないし?

いや、もしかしたらプログラムの時は入間の人格が出てくれたのかもしれないけれど、こっちに戻ってきてからは何も反応がないから、頼れないというか…できれば頼りたくないというか…。

 

「………」

 

信じられないとばかりに絶句する春川の視線が、めっちゃくちゃ怖かったとだけ明記しておこうかな。

 

 

 

 

×××××

 

 

 

 

「…っていうわけで、入間があの地下道を攻略する為の発明品を造ってたから、夜時間になったら裏庭のボイラー室に集合して欲しいんだって」

 

朝食を食べに集まったみんな(王馬を除く)に、春川がアタシが言うべき台詞を1から10まで説明してくれた。

時折、自分で言えって目線で訴えられたけれど、視線をわざと逸らして誤魔化した。

 

だってさ、アタシだったら春川みたいに説明もせずに『今日の夜時間になったら裏庭に集合しろ!』とか『そん時になったら分かる!』って感じでやってたと思うし。

……あれ?アタシってコミュ症だっけ?

うん、違う。大丈夫、コミュ症じゃない。

ただあれだ…説明するのがめんどくさかっただけだ。

ほら、徹夜してたから頭回らないだけ。

 

「じゃあ…みんなとここから出られるの!?」

 

真っ先に食いついてきたのは、赤松だ。

誰よりも、みんなとここから出たいと願っていたのだから、当然と言えば当然かもしれない。

あまりの嬉しさでが、うっすらと涙が滲んでいる。

 

 

…地下道ーーー絶望のデスロードの結末を知ってる身としては、罪悪感が酷い。

 

 

「じゃあ、その発明品を使えばゴン太達はここから出られるの?」

 

「そういう事だな。よくやったぞ、ハルマキ!入間!」

 

「別に私は何もしてないし…。後、ハルマキは止めてってば」

 

わいわい騒ぐみんなの様子を眺めていると「あの、1つ聞いてもいいですか?」と隣にいたキーボが喋りだした。

 

「なんだ?身体に不調でも感じるのか?」

 

メンテナンスという言葉がすぐに頭に浮かんだけれど「いえ、そうではなくて…」と否定された。

 

なんだよぉ…早く言えよ。

 

「どうして夜時間なのかと思って。今からじゃ駄目なんですか?」

 

「………」

 

そこに疑問持たれるとは思わなかったわ。

まぁ、確かに今からでも突撃する事はできるんだけれどさ。

 

「えぇっと…最終チェックとか、心の準備の問題だな」

 

素直に『原作の流れ的に』とか、『王馬が首謀者乗っ取る為の布石の為』なんて言えないし、それっぽい事を言ってアタシは誤魔化した。

苦しい言い訳っぽいけど……大丈夫だろ!

ほら、言ってる事とかそんなに変じゃないし、間違ってない…よな?

 

「そうですね!転子も心の準備は必要だと思います!」

 

茶柱からの同意も得られたし、問題ない。

そういう訳で、朝から明るい空気になった食堂で「外に出たら、何をしよう」という話しをしながら朝食を迎えた。

 

1つ付け加えるなら……東条の作る朝食の量がいつもの倍に多かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、オレ様はなんで足止めされてんだよ」

 

朝食後にガチャを回そうと席を立った瞬間、なぜか茶柱に再び椅子に座らせられた。

なんでだよ、アタシが何をしたっていうんだ。

 

「そう言わずに、転子達と少し話しましょう!あっ、もちろん男死は抜きなので安心してください!」

 

「あん?……転子『達』?」

 

ということは…他にも話しをするメンバーがいるって事か?

食堂に残ったメンバーを、ぐるりと見渡す。

といっても、朝食は終わったんだから人数はさっきより少ない。

とりあえず、1人ずつ確認していく。

赤松、東条、アンジー、茶柱、白銀、夢野、春川、それからアタシ。

 

 

これ、食堂にいるの全員女子だ。

茶柱が言ってた通り、男子は食べたらすぐに自由行動を始めたし…まぁ、いないのは別に気にしないんだけどさ。

なんで…女子だけ1人も欠けずに食堂に残ってるんだろう?

 

 

「よーし、それじゃあ男子禁制の女子会を始めよっか!」

 

 

赤松のそんな掛け声に、茶柱と白銀のテンションが上がった。

東条も、みんなの前に紅茶を出して準備を終えると椅子に座る。

このメンバーで女子会…かぁ。

そういえば、したことなかったな。

 

「女子会は別にいいけどよぉ…なにするか決めてんのかよ?」

 

紅茶を一口飲みながら聞いてみると、「神様が決めてくれるよー」なんて答えがアンジーから返ってきた。

なるほど、決めてないのか。

 

「女子会を始めたはいいけど、地味に難しいよね」

 

「食堂じゃ、できる事は限られておるからのう…。ウチは今、MP切れで魔法は使えんぞ?」

 

口々に言うみんなに、赤松だけは笑顔で「女子会っていえば、アレだよ!」と目を輝かせていた。

進行役なのか、東条が「それじゃあ、聞かせてちょうだい」と赤松に続きを促した。

 

 

「女子会っていえば…恋バナだよね!」

 

 

わー、赤松がすっごく楽しそう。

ピアノ弾いてる時と同じぐらいに、楽しそうな顔してる。

……ピアノ弾いてる姿は見たことないけど。

 

「な、なんで男死の話しをしないといけないんですか!?」

 

それに比べて、茶柱は全身で嫌がってる。

他のメンバーは他人の話しが早く聞きたいって感じかな?

…春川は、あまり興味が無さそうだったけど。

 

「でもさ、みんな気になる男の子とかはいるでしょ?」

 

「ね?」と赤松がみんなに同意を促す。

すると、アンジーが手を上げながら「えっとねー、アンジーはねー」と笑顔で最初に話し出した。

まさかの話題決定かよ。

 

「アンジーは、終一が気になるよー」

 

そして言っちゃったよ。

うーん…でもまぁ、これはゲームの絆イベ的に予想できたかな。

 

「え?」

 

だから、アンジーの発言で赤松がそんな声を出した。

 

「うーん…でも、地味に分かるかも。最原君って、話しやすいんだよね」

 

「私も、いつかは最原君には仕えてみたいもの。彼にはそれだけの可能性があるわ」

 

「まぁ…最原さんなら、転子もまだ許せますけど。なんせ、ネオ合気道を志す同士ですし」

 

アンジーに続くように白銀、東条、茶柱までもがそう言うのだから、赤松は「え?え?」と混乱してしまっている。

 

「んあー…最原は人気者なんじゃな」

 

「まぁ、悪い奴じゃないしね」

 

それを見て、夢野と春川が他人事のように喋る。

 

 

なんかコレ、女子会というより最原について話す会になってない?

 

 

「あっ…い、入間さんは!?」

 

ハッとしたように、赤松がアタシに詰め寄ってきた。

その表情は、少し不安そうに歪んでいた。

あんなに最原の名前があがれば…恋バナというより、ただの最原の話しだもんな。

……もういっその事、関係ない話しでもいい気がしてきた。

 

「次は何を作るかなぁ…」

 

「ちょっと、誤魔化さないでよ!入間さんは最原君の事どう思ってるの!?」

 

関係ない話しはダメだったか。

あと、話しの内容が恋バナから最原の話しになっている事について、アタシは赤松に何か言ってやるべきか?

 

「入間さんっていえば…キーボ君のメンテナンスを地味によくやってるよね」

 

「この前なんて、王馬さんと一緒にいましたしね」

 

「蘭太郎とも、前に話してるの見たよー」

 

「そういえば、前に一緒にカジノで話したって最原が百田に言ってたっけ…」

 

急にアタシの話しになったけど、正直恥ずかしいから止めて欲しい。

アタシがいない時に話してほしいな。

 

「入間さん…さっきの中で、本命とかいるの?」

 

赤松がやけに真剣な顔して、アタシを真っ直ぐ見据える。

えっ、何コレ?どういう状況?

本命とか言われても、意味が分からない。

 

「東条、これってどうしたらいいんだよ?」

 

「思ったままに答えればいいんじゃないかしら」

 

東条にヘルプを出してみたけれど、良い結果は得られなかった。

答えるも何も……えっ、今何の話ししてたっけ?

 

そうやってアタシがずっと固まっていたら、気づけばお昼になっており、食堂に近寄らなかった男子が食堂にやって来たので女子会は強制終了となった。


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