憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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やっと…絶望のデスロードのモノパッド着せ替えをゲットしました。
な、長かったぜ…。何度諦めそうになったやら。
まぐれでクリアできたとはいえ、嬉しくて泣きそうになった。


気だるき異世界を生かせ生きるだけ⑦

これからどうしようか…なんて思いながら、アタシは脳内でノンストップで繰り広げられる下ネタやら罵倒の嵐を聞き流していた。

あの後、王馬はゴン太を連れて別行動。

外の世界の秘密(笑)を探す為に、他のみんなは屋上に行ったり、教会の方に行っている。

 

プログラム世界は雪が降ってて寒い。

外にいれば寒さのせいで体が震えてるだけと言えるけれど、アタシがいるのは館の中なので…別の意味で震えていた。

マジでどうしよう。

 

玄関ホールで1人、いろいろ考えて頭を抱え込む。

その元凶なんかは、アタシが何も言わない事に落ち込みだしたのか、グスンと鼻を啜るような音がした。

 

『おい、無視すんなよぉ…。オレ様とお前の仲なんだからぁ…』

 

どんな仲だよ。

主人格と憑依人格の仲って言いたいの?

…自分で言っておいてだげど、意味が分からない。

 

『ひぐぅっ!せ、せっかくオレ様がお前の為に、色々してやったのにぃ…。ポケットに携帯電話を忍ばせておいたり、お前が寝てる間にカス共のアバターを作ったり…協力してやったのにぃ…』

 

「お前かよっ!?」

 

思わず声に出してしまい、慌てて手で口を抑えた。

聞かれてない?

うん…大丈夫そうだな。

周りには誰もいない。

そっか、ポケットの中は携帯電話なのか…。

 

『い、いきなり大きな声を出すんじゃねーよ!で、でもぉ、ホント苦労したんだよ?だって、オレ様って普段意識の奥底にいるだろ?だから、お前に気づかれないようにプログラム作るの大変だったんだからな!しかも、そう長くは表に出られねーから、余計にな!!』

 

へぇ…お疲れ。

 

『もうちょと誉めてくれたって、いいじゃねーかよぉ。外に出るための秘密の凶器も用意してやったのにぃ…』

 

「……は?」

 

今なんて言った?

秘密の凶器って言った?

ちょっと、詳しく教えて貰っていいかな?

ほら、アタシと入間の仲なんでしょ?

さっさと、ゲロりなよ。

 

『い、言います!すぐに言いますぅ!食堂の扉の近くに時計があるだろ?そいつを、目玉カッ開いて見てみやがれ!』

 

玄関ホールにポツンと置かれている変わった形の時計に、言われた通りに近づいて見てみる。

 

「特に変わった所なんて見当たらねーけど?」

 

『テメーの目は節穴か!?時計の針をよーく見やがれ!!』

 

脳内で騒ぎ立てる入間の声に「一言余計だ」と文句を言いながら、アタシはゆっくり手を伸ばして時計に触れる。

すると時計の長針が、カラン…と音をたてて足下に落ちた。

 

「……え?」

 

あれ?もしかして壊した?

いや、でもプログラム世界では物は壊れないというルールがあるんだし…えっ、なんで長針が落ちた!?

どういう事だ、答えろ入間!

 

『ひゃーっひゃっひゃっ!とんだ間抜け面だな!そいつが、オレ様がお前の為に用意した秘密の凶器だ!時計の長針だけあらかじめ時計とは別の物…ナイフとしてプログラムをしておいてだな…』

 

「あっ、だいたい分かった」

 

『最後まで言わせろよ!』

 

騒ぐ声を無視して、長針を手に取る。

屋上にいるメンバーが玄関ホールに戻ってくる前に、時計に戻しておこう。

 

『な、なんでぇ!?ここで誰かヤッちまえやがれよ!でないと、裏切られて殺されるかもしれねーんだぞ!?だったら、初回特典が有効かもしれねー内に、一緒に出ようよぉ』

 

アタシの行動に、なんでなんでと頭の中で騒がれる。

あー…もう。

そうやって、誰も信じなかったから…犯行を犯そうとして逆にゴン太に殺される結果になるんだよ。

そもそも、あんたが行きたがってる外は……

 

『………』

 

「ごめん、変な事言った。忘れろ」

 

黙り込んだ声からは、返事は返ってこない。

それを良い事に、アタシは時計に長針を戻そうとして…止めた。

誰かがコレに気づいたら、それはそれで面倒な事になりそうだ。

だったら、良い隠し場所を見つけるまで持っておこう。

 

携帯電話と同じようにポケットに入れて、アタシは外に飛び出して……目を疑った。

 

「ん?入間か。調度良い時に来たな。コイツらの遊び道具とかねーか?」

 

身体の自由を大量の猫に奪われた星が、アタシの目の前で「やれやれ…」と言いながら満更でもない顔をしていた。

…不覚にも、可愛いなんて思ったのは秘密だ。

 

「や…悪いな、その…遊び道具はなくてよぉ」

 

「そうか。まぁ、俺はこの有り様で動けないから、代わりに外の秘密を探してきてくれるか?」

 

「あ、当たり前だろ!テメーはそいつらとニャンニャンして待ってろ!」

 

走ってその場から離れると、アタシは肩を震わせて笑っていた。

だって、あの星が猫まみれって。

似合いすぎてて辛かった。

 

 

 

 

×××××

 

 

 

 

「この辺…には誰もいねーのか?」

 

館の裏手の方をキョロキョロしながら歩く。

最初にログインしてから、それなりに時間も経ってて、それなりに人数も沢山いるのに、未だに誰もモノクマによってプログラム世界に置かれた思い出しライトを見つけていない。

いや、王馬とゴン太はもう見つけた後である可能性が高いな。

 

「うーん…」

 

いっそ、外の世界の秘密を見つけたって嘘をついて、みんなを集める?

それとも、携帯電話を使って強制ログアウトさせる…?

唸りながらアレコレ考えを上げてみるも、最善策なんてアタシには分からない。

 

尻尾を振りながらすり寄ってきた子犬の背を撫でながら、空いている片方の手で雪を掻き分けて穴を掘る。

うー…雪冷たい。

 

ある程度掘り終えると、アタシはポケットから成り行きで手にしてしまった時計の長針を取り出した。

 

『本当にいいのかよ?最初で最後のチャンスなんだぞ?』

 

さっきまで何も言ってこなかった入間の声が、また聞こえてきた。

思わず、長針を握る手に力が入る。

チャンスなんて、アタシには関係ない。

けど、コロシイを起こしたら、お前が後悔するのは確かだ。

 

『オレ様達の発明は、世界を救えるんだぞ!』

 

そんな言葉と同時に、撫でていた子犬が急に姿勢を低くして威嚇するように唸りだす。

アタシが長針なんか出したから、警戒しているんだろう。

ごめん、すぐに片付けるから。

 

「今、外に出たって…絶望するだけだ」

 

そう言った瞬間、すぐ後ろで何かがドサッと落ちる音がした。

なんだろうと思い首を動かして確認すると、すぐ側にスノコが落ちていた。

そして、アタシの目の前にはそのスノコを持っていたと思われるゴン太がいた。

なぜか、不自然に両手を上に上げていたけれど。

 

「ゴン太と同じで、入間さんも思い出したの?思わず自殺しそうになっちゃうあの事を…。ゴン太は、入間さんを守れなかったんだね」

 

グスッグスッと目の前で泣き出すゴン太に、アタシは目を丸くするしかできない。

ほら、このスノコで何をしようとしてたんだ…とか、なんか盛大に勘違いされてる気がするけど、何も言わない方がいいかな…とか。

 

「王馬君から、入間さんが誰かを殺そうとしているって聞いて、でも、外に出たら入間さんはきっと絶望しちゃうと思ったから…。だからゴン太がそうさせない為に…でも、入間さんはもう外の事を知ってて。ゴン太は守れなかったんだ!ゴン太は馬鹿だ!」

 

『お、オレ様のやる事が、あのツルショタにバレてやがったのかよ!?』

 

目の前と頭の中で、一斉に喋られる。

今すぐ止めて。

アタシはパニック議論が苦手なんだよ。

はら、何言ってるかなんて聞き取れないし。

 

あぁ…この状況どうしよう。

まぁ、やることなんて最初から1つなんだけどな。

 

アタシはポケットから携帯電話を取り出すと、それに向かって「獄原ゴン太」と告げた。

すると、ゴン太の足下から光が現れる。

そしてそれが消えた時には、ゴン太のアバターはアタシの目の前から消えていた。

 

さて、どんどんいこう。

続けてどんどん携帯電話に名前を言っていく。

 

王馬、赤松、最原、東条、星、夜長、天海、茶柱、真宮寺、夢野、キーボ、白銀、百田、春川…。

 

みんな仲良く強制ログアウトだ。

 

『なぁ、なんで外に出たら絶望するんだよ?』

 

自分の名前を言おうとしたら、そんな疑問を脳内で聞かれる。

 

 

「……入間美兎」

 

 

でも、アタシは答えずにログアウトした。

知らない方が幸せって事もあるからな。

 

 

 

 

 

 

 

被っていた装置を頭から外すと、真っ先に視界に入ったのは困惑したみんなの顔だった。

 

「あの…気づいたらログアウトさせられてたんですけど、転子だけじゃないんですよね?」

 

「もっちもちー。アンジーもだよー」

 

「ゴン太は気づいたら寝てたから、分からないんだ…ごめん」

 

装置を置いて椅子から立ち上がると、アタシは適当にコンピューターを操作して「あー…」と言葉を濁した。

 

「どうした?原因は分かったのか?」

 

後ろから百田がコンピューターを覗き込むも、プログラム言語の羅列に「なんだこれ…」と顔を引きつらせた。

そんな百田をコンピューターから引き剥がしながら、春川が「で、なんだったの?」と訪ねてくる。

 

「あー…エラーに対しての防衛みたいなやつでの強制ログアウトだな。プログラムが幾つかエラーでおかしくなってる。修復には結構時間かかるぞ…」

 

「エラー?」

 

隣からプログラムを覗き込んできた王馬に、画面を見せる。

変な嘘はバレるだろうし、本当の事を混ぜて嘘をつくしかない。

 

「ほら、ここ…誰かがログインの際に何らかのエラーが起きたらしくてな。それを修復しようとプログラムが動いたみたいなんだが…結果はご覧の有り様だけどな」

 

「ふーん…」

 

上手く騙せたかは分からないけれど、たぶんバレてる。

何も言わないのが、どうしてかは知らないけれど。

 

「ククク…僕としては、もう少しあの世界で猫と戯れる星君を見ていたかったネ」

 

「やめろ。照れるじゃねーか…」

 

「ゴン太は寝てたから分からないけれど、みんなが楽しめたなら良かったんだと思うよ!」

 

みんなが喋り出す中で、アタシは装置とコードを回収していく。

…ゴン太がコードの挿入場所を間違えたのは言わずもがな。

 

「はい、これで全部だよね?」

 

同じように装置とコードを回収してくれていた赤松から、残りを受け取る。

よく見れば東条を中心にして、みんなも椅子を集めたりして片付けてくれている。

さすがは、仕事が早いメイドとして定評のある東条。

そんな東条の活躍もあり、片付けはすぐに終わって解散となった。

 

 

 

 

 

×××××

 

 

 

 

 

研究教室に用意していたハンモックに座って、ぼーっとする。

そうしていると、扉がゆっくり開いた。

やって来た来客に、アタシは「待ってたぜ!」と笑顔で歓迎する。

 

「で…大事な話しって何?」

 

来客…春川は鋭い眼光でアタシを射抜く。

どうして此処に春川が来たのか…アタシが片付けの後に大事な話しがあるから、1人で来てほしいと頼んだからだ。

約束通り1人で来てくれたらしい。

これは、信頼されてる…って自惚れていいのかな?

それじゃ…アタシも信頼には信頼で応えよう。

これから話すのは、アタシなりの信頼だ。

 

「これから話すのは、他のやつらには他言無用で頼む。それぐらい真剣でヤベー話しなんだ」

 

試作品として、ずっと使わずにいたエレクトボムを起動させながらアタシがそう言うと、春川の目が更に鋭くなった。

 

「今使ったのは、試作品のやつだけどエレクトボムって言ってな…詳しい事は時間がねーから省くぞ?で、大事な話しってやつだけど…オレ様はモノクマのコロシアイ生活を終わらせる為に首謀者の乗っ取りを計画しているんだ」

 

「首謀者の…乗っ取り?」

 

春川が目を見開くと同時に、扉の方からガタンと物音がした。

2人して目を合わせて扉を開けると、そこには座り込んだ王馬の姿があった。

 

「やっほー、入間ちゃんに春川ちゃん。2人して内緒話し?オレも混ぜてー!」

 

思わず、顔を手で覆う。

聞かれたくない人間の上から2番目の王馬に、聞かれた。

 

「どうするの?」

 

「…時間勿体ないし、巻き込むか」

 

「にしし、そうこなくっちゃ」

 

あーあ、最初の予定では春川だけに言うつもりだったのになぁ…。

でも、心のどこかでこうなるなと理解していたからか、そこまでショックは大きくなかった。

そんな事で急遽、王馬も加えた3人でアタシの研究教室の中に。

時計でエレクトボムの効力の残り時間を確認しながら、アタシは「で、一番ヤバイ話しだけど…」と一度前置きを置いた。

 

「超高校級の発明家として、思い出しライトを調べたけど……あれは、記憶を思い出すようなヤツじゃなかった。あれは、記憶を植え付けて、オレ様達に過去にあった事として思い出したように錯覚させるとんでもねーやつだったんだ」

 

「えっ…」

 

「嘘じゃなさそうだね。入間ちゃん、続けて」

 

絶句する春川に対して、王馬はいつも通り…じゃないな。

王馬は真顔で話しを催促してきた。

 

「…で、さっき春川に話した首謀者の乗っ取りに話しに繋がるんだけどな。他の連中にオレ様が首謀者だと嘘をついて、嘘の証拠を見せる。そしたら、みんなはオレ様が首謀者だと思うだろ?」

 

「なるほどね、入間ちゃんが首謀者だと名乗る事で、本物の首謀者が目障りな入間ちゃんを消そうと何らかの形で行動を起こすかもしれないって事だよね?それが、記憶を植え付ける思い出しライトかもしれない…って事でいい?」

 

王馬が話しを飲み込むのが早くて助かる。

その一方で、アタシの腕を掴む春川は話しを飲み込めても納得できていないようだった。

 

「でも、それをやるのは入間じゃなくても…」

 

春川が辛そうな表情をして、アタシの腕を掴む手に力を入れる。

あの、痛いです。

 

「そうそう…例えば、オレとかね」

 

それはできれば止めてほしい。

 

「そうだよ、入間。盗み聞きしようとしてた、このクソヤローに代わりに痛い目に合ってもらいなよ」

 

そこは、クソヤローだからこそ信用できないって言ってほしかったかな。

心の中で涙を流している間に、『首謀者の乗っ取りを実行するのは王馬』と2人の中で決定され、それを元に話しが進められていく。

なんでアタシってこう…弱いのかな?

 

「ったく…んじゃ、残り時間の問題で一気に話していくぞ。後から確認ってのは、絶対になしだからな」

 

「その前に、首謀者の乗っ取りを考えたのはどうしてなの?思い出しライトだけが理由なんて思えないんだけど」

 

そう聞いてきた春川に、手榴弾のような発明品を渡しながらアタシは「んなの、決まってんだろ」と笑ってみせた。

 

「このコロシアイ生活をそろそろ終わらせる為…って言いてーけどよ、このオレ様を一瞬の気の迷いとはいえ、コロシアイに走らせようとした仕返しだ」

 

これは、何があっても許せない事だからね。


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