憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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ゲームのイベントに夢中になってたら、予定よりも更新遅れてました(笑)


気だるき異世界を生かせ生きるだけ③

研究教室に籠もって、1人で黙々と発明品造りに精を出す。

そうしている内にだんだん落ち着いてきたのか、今では数時間前の自分を思い出すだけで穴に入りたい思いになる。

 

ヤバイ、どうしよう。

思い出しライト浴びた後のあの行動(っていうか逃亡?)は、マズイ。

絶対みんなから『こいつ大丈夫か?』みたいな目で見られるくない?

何か絡まれる確立が高そうじゃない?

アタシだったら、心配になって拒否されても絡む自信あるし…。

 

うん。

次に造るのは、忘れろビームみたいな発明品で決定だな。

ついでだし、他にも思いついた物もやっちゃおう。

 

「あっ、やっぱりここにいた。探したよー入間ちゃん」

 

聞こえるはずのない声に思わずバッと振り返る。

教室の出入り口…あれ?いない??

 

「んだよ、気のせいか」

 

「あのさー、気のせいじゃないから」

 

「ひいぃぃっ!?」

 

いつの間にか真っ正面にいた王馬に驚いて、思いっきり後退りする。

心臓に悪い!

せめて普通に出てこい…って、なんかモノクマみたいな扱いになってるなぁ…。

 

悪戯成功とばかりに笑っている王馬に「オレ様は忙しいぞ」と言って、アタシは此処から出ろとばかりに扉を指差した。

それでも「えー…、別にいいじゃん。入間ちゃんはケチだなー」と言うだけで、全く出ようとしない。

むしろ、その辺で置きっぱなしにしている発明品を見て「これ何に使うやつ?」なんて聞いてくる。

 

 

どう足掻いても、会話のキャッチボールができない。

むしろ、デッドボール。

アタシが諦めるしかないのか。

 

 

諦めたアタシが「何しに来たんだよぉ…」とオドオドしながら聞くと、その言葉を待ってましたとばかりに王馬の目が輝いた。

 

「やっと聞いてくれる気になった?実はまた作ってほしいものがあってさー。ほら、この前の『エレクトハンマー』と---」

 

「お前が欲しいのは、この『試作品のエレクトハンマー』か?それとも『できたてのエレクトハンマー(在庫あり)』か?」

 

王馬の言葉を遮り、アタシは泉の精のように2つのエレクトハンマーを持って問いかけた。

 

「えっ、どっちもに決まってんじゃん」

 

「貪欲すぎんだろ…」

 

王馬から返ってきた答えは両方。

なんとなく分かってたけど、せめて悩むフリぐらいしろよ。

 

「あとさ、『エレクトボム』もあと何個か作ってよ。それからー、いつでもいいって言った前の発明案に書いた、エグイサルとかの機械を操作できるやつを今日中に」

 

てきたばかりのエレクトハンマーを手に取りながら、王馬は更なる注文をしてくる。

…それについての答えは前から決まってる。

 

「そいつは無理だな」

 

「なんで?」

 

スッ…と王馬の顔から表情が消える。

 

「な、なんでって言われてもぉ…材料がねーんだよぉ」

 

なんせ、エレクトハンマーとエレクトボムは同じ素材を使って造っている。

原作よりもハンマーを多く造ったうえに、性能も上げたとなると……見事にボムの分がなくなってた。

気づいた時は「あっ、やばっ…」なんて思っていたんだけど、後になって「別にいいか」ってなった。

というわけで、エレクトボムはあの試作品1個と新たに造った1個だけだ。

 

…エグイサルのリモコンもどきは、以前造ったから言わずもがな。

あれはやらん。

 

「つーわけでだ、諦めろ。オレ様はコンピュータールームでやる事もあるしな」

 

「ふーん…。じゃ、今はそれでいいや」

 

今は、ってなんだよ。

後でも絶対にやらねーって。

 

 

 

 

 

 

×××××

 

 

 

 

コンピュータールームなう。

 

あの馬鹿でかいコンピューターこと、コロシアイシュミレーターをアタシなりにアレンジ中だ。

ほら、なんかこれって遊べそうじゃん?

危険物とかがなければ、ただのゲーム世界って事での遊びとかできるでしょ。

 

まぁ、遊びの内容なんて思いつかないけれど。

 

そうやって作業を進めている内に、誰かがコンピュータールームに来たらしく、扉の開く音がした。

 

「あれ?入間さん?」

 

「あー…白銀か。誰か探してるなら、他を当たれよ」

 

入ってくるなり、周りをキョロキョロしだした白銀にそう言うと、「そんなんじゃないんだけど…」と白銀はアタシの隣からプログラムを覗き込んだ。

 

「何やってるのか聞いてもいい?地味に気になって」

 

「これか?みんなでゲームできるように、プログラムを書き換えてるんだよ!完成したら、絶対楽しいぞ!」

 

「ゲーム…キャラクターはどんなの!?主人公は?黒髪赤眼のキャラっている!?」

 

ゲームと告げた瞬間、白銀に両肩をガッシリと捕まれて逃げ道を失い、一気に質問責めにされる。

なんか、変なスイッチ入れてしまったやつ?

 

「いや、その…分身となるアバターは、ここにいるみんなの姿にしようかと思って……」

 

「それって、わたしたちがゲームのキャラなの?でも、どうせならもっと凄いのにしない!?ほら、みんなの『こういった人物になりたい!』っていう姿にするとかさ!」

 

両手を握り締めて恍惚の表情を浮かべる白銀に、アタシは思わず苦笑した。

そんな事したら、誰が誰か絶対に分からない。

いや、それよりももっと面倒な事になりそうな気がする。

 

「で…でもぉ、オレ様はプログラムを書き換えるのに時間がかかるし、そんなの聞いてる暇なんて…」

 

遠回しに諦めてもらうように弱腰で言ってみるも、「だったら、わたしが代わりに聞いてあげるよ!」と白銀が諦める事はなかった。

……マジで止めて。

 

「い、いや…いい!そういうのなら、ゲーム世界よりもコスプレでやった方がいいだろ!?だから…」

 

コスプレの方に話しを逸らそうとすると、白銀の目が更に輝いた…気がした。

 

「入間さん…コスプレに興味があるの!?だったら、もっと早く教えてよ!」

 

「なんでそうなるのぉ…?」

 

また、アタシは白銀の変なスイッチを押してしまったらしい。

もうやだ。

白銀ってば、1人で何かのキャラについて語り始めた。

とりあえず頷いてみたりするも、内容なんてさっぱりだ。

 

「…っていう事なんだけど、入間さんはどのキャラのコスプレをしてみたい!?やっぱり組織の科学者とか?それとも、武道に長けたヒロイン!?」

 

「ちょっ…待ってぇ。それよりも、プログラムの方を…」

 

「あっ…そうだったね」

 

やっと落ち着いてくれたのか、白銀はそれっきり黙り込んだ。

…それはそれで、アタシが落ち着かないんだけどね。

 

兎に角、アタシはプログラムの書き換えを再開する。

凶器になりそうなものや、プログラム世界での物は壊れないというルールのせいで縄と同類となってしまったトイレットペーパーのプログラムデータを次々と消していく。

 

「ねぇ、入間さん…ちょっと思ったんだけどね」

 

消去の処理時間を見計らったように、白銀が考え込むように人差し指を口元に持っていって空を見ていた。

 

「最初の動機の…『最初の殺人においては学級裁判が開かれない』ってやつって、地味にまだ続いているんだよね?」

 

「………は?」

 

思わずそんな声がでた。

いやいやいや…えっ?

続いて…はい?

 

「んなわけあるかよ。あんなの、最初に動機を提示した時だけに決まってんだろ?」

 

「でも、本当にそうかなぁ…?だって、時効とか取り消しなんて聞いてないんだよ?」

 

確かにそうだ。

でも…。

 

「なんでオレ様に言った?んなの、最原にでも言えばいいじゃねーか?」

 

だからといって、アタシにそれを話す理由なんてないはずだ。

 

「確かにそうなんだけど…入間さんなら、いいかなって」

 

全くもって意味がわからん。

意味不明もいいところだと思う。

どう返事したらいいか分からず、アタシはガシガシと頭を掻きながら「食堂で東条に紅茶貰ってくる…」と扉を開けて廊下に出た。

 

 

 

 

「うぷぷ…」

 

 

 

 

聞き慣れた笑い声に、アタシは近くにモノクマがいるのかと思って辺りを見渡した。

でも、廊下のどこにもモノクマの姿なんてない。

 

「……寝不足か?」

 

それにしても、モノクマの幻聴なんて誰得なんだ。

今この状況では、絶対にお引き取り願う。

 

 


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