憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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どれだけ減らしても、課題という名の絶望が僕にやってくる…。

課題よ、僕は君に好かれた所で嬉しくもなんともないんだよ?
だからさ…お願いだから僕の目の前から消えてくれええぇぇぇ!


転校生 オブ ザ デッド⑥

寝そうになるたびに、王馬が考えた『寝ようとすると腹パンしてくるマシーン』のお陰で寝る事なく、夜時間のみんなの行動を発明品を通して確認する事ができた。

 

造った時は嫌がらせだと思ってたけど、そんな事なかった。

今だけありがとう、王馬の発明案!

…何度か寝そうになって、キツイ腹パンされた回数についてはノーコメントだ。

 

結果、夜時間の間にコロシアイになりそうな行動を起こす人など居らず、本日の朝食会も誰一人欠ける事なく開催。

だけど…恐らくここからが本番になるだろう。

明日の朝には、モノクマから本日の動機にもなっている『学園生活内で他人に秘密にしている事』がみんなに知られる事になるのだから。

 

「入間さん、口にご飯がついてるよ?」

 

「うー…」

 

隣でアタシと同じように東条が作ってくれた朝食を食べていた赤松が、そう言っておしぼりを使ってアタシの口元を拭う。

やめてよ。恥ずかしいし、自分でできるって…。

逃げるように首を動かすと、「動いたら取れないよ?」と逃がさないとばかりにアタシの動きを封じようとする。

ホント止めて。

小さな子供みたいで恥ずかしいんだって!

 

「あぁ、もう動かないで…。うん、これで取れたよ」

 

寝不足のせいでろくな抵抗もできず、されるがままになっていた。

それを見て、ゴン太が「赤松さんは紳士なんだね!」なんて言っていたけれど…いいか、ゴン太。

相手が不快になっていたら、それは紳士的な事じゃなくてただのお節介だ。

そもそも、今のが紳士的な事だったのかどうかがアタシは疑問だけどね。

 

中断せざるを得なかった食事を再開させ、ぼんやりとした頭でみんなの会話を聞く。

今日は何をして過ごすだとか、昨日の事だとか、見事に内容はバラバラだ。

空になった皿を見ながら、アタシが少しだけ仮眠でもしようかと考えていると「この後、降霊術でもしてみないかイ?」という声を聞いて、一気に目が覚めたかのように目を見開いた。

 

「死んでしまった姉さんに、ここにいるみんなの事を話してみたいと思ってネ…。誰か参加する人はいるかナ?」

 

真宮寺がそう言って、その場にいる全員を見渡すと同時に「ガタンッ!」と大きな音が食堂に響いた。

 

 

「ゆ、ゆゆゆ幽霊なんているわけねーだろッ!」

 

 

椅子からひっくり返ったような体制のまま、百田が青ざめながらガタガタと体を震わせて叫ぶ。

そんなにオカルトはダメだったのか。

 

「も、百田君…」

 

「またなの…?昨日もやってたじゃん」

 

最原が苦笑いを浮かべ、春川が呆れたような顔をして呟く。

へー…昨日の朝食会もこんな感じだったのか。

真宮寺も「またなんだネ…」と呟くと、百田を静かに見据えて「昨日から、気になってたんだけド…」と語り始めた。

 

「どうして幽霊がいないなんて思うのかナ?」

 

「ううう、うるせー!オレがいないと言ったらいないんだ!」

 

 

なぁ百田…それはどういう理論なんだよ。

もっとこう、科学的な証明をしてほしかったかな。

宇宙飛行士なんだしさ、科学とか得意そうじゃん?

 

 

 

 

×××××

 

 

 

「ねぇ、入間さんも参加しない!?」

 

校舎の4階をうろついていると、白銀に会うなりそんな事を言われた。

その後ろには、アンジーに王馬、真宮寺の姿まである。

何このメンバー…どういう集まりなんだよ。

 

「神様も言ってるよー。参加すればいいことあるってー」

 

「何の話しだよ?オレ様にも分かるように説明しろ!」

 

この際、誰でもいいので説明プリーズ。

いきなり誘われても分からなければ、答えもろくに出せない。

 

「ほら、降霊術だよ。真宮寺君が朝に誘ってたでしょ?今からするんだけど人数が足りなくて。だから、入間さんにも地味に参加してほしいの」

 

白銀の説明に「なるほどな」と理解して、少し考えるフリをする。

…まぁ、答えなんて最初から参加する一択なんだけど。

 

「これで人数も揃ったんだしさ、早くやろーよ。オレ、降霊術がどんなものなのか気になってたんだよねー!」

 

目を輝かせてこの場の全員を促す王馬に、アンジーが「でもー、美兎はまだ何も答えてないよー?」とストップをかけた。

 

なんでまだ参加するなんて言ってないのに、王馬にメンバーの1人としてカウントされたんだ…って思ってた分、アンジーの言い分はごもっともと言える。

 

アンジーの言った事に、王馬は「えー!」と不満げに声を上げた。

 

「だってさー、入間ちゃんみたいな雌豚がオレの誘いを断るわけないじゃん!」

 

「テメーは、オレ様を何だと思ってんだよ!?」

 

そもそもなんでアタシが、ゲームの入間と同じ扱いをされないといけないんだ!?

下ネタとか言ってないし、そんなに人を罵倒してないだろ!?

ビッチって言われないだけマシだけど!

なんだよ、雌豚って!?

 

「王馬君はあんな事言ってるけど…入間さんはどうするの?キミも参加すル?」

 

なんかここで頷いたら、王馬が言った事をそのまま認める形になりそうだけれど…ううん、そんな事気にしてる場合じゃないな。

 

「んな楽しそうな事、参加するに決まってんだろ!」

 

「そう…それは良かったヨ」

 

「それじゃ、空き部屋まで行こうか。地味に準備は終わってるみたいだし…」

 

 

 

 

 

 

4階校舎にある、3つ並んでいる空き部屋の1つを使い降霊術を行う事になった。

ゲームでは真ん中の空き部屋を使っていたけれど、アタシ達が使うのはアンジーが選んだ左側の部屋らしい。

部屋に入ると、蝋燭の灯りが僅かに照らしているだけで室内は薄暗く、不気味な雰囲気が滲み出ており、部屋の床には大きな魔法陣が描かれていた。

降霊術の魔法陣として、真宮寺が描いたものだろう。

 

「じゃあ、最初に注意事項を言っておくけど…床に描いている魔法陣には決して入らないでネ。清めの塩で描いているだけだから、踏むと簡単に崩れてしまうんダ…。というわけで、暗いから足元にはくれぐれも注意してネ」

 

真宮寺の話しを適当に聞き流しながら、アタシはこれからするべき自分の行動を考え込んでいた。

 

アンジーか白銀に、被害者がやっていた口寄せ役になって貰い…真宮寺が凶器を隠した白い布を、アタシが無理矢理奪って凶器をここにいるみんなの前に出す…。

そうすれば、真宮寺がやろうとしている事は止められるはずだ。

名付けて『やってしまう前に、さらけ出してしまえ作戦』。

 

「それじゃあ、さっそく『かごのこ』の降霊術を始めるとしようカ。その前に口寄せ役を選ぶんだけど…できれば、姉さんと同じ女性がいいナ」

 

この場にいる女性はアンジー、白銀、そしてアタシの3人。

だけどアタシにはアタシの作戦がある為、名乗ろうとはしない。

 

「つむぎと美兎、どっちがイケニエになるー?」

 

「わたしも地味に嫌だなぁ…。だから、入間さんに口寄せ役をしてもらってもいい?」

 

「な…なんでぇ??」

 

ちょっと、そこの白銀。

そこは公平にじゃんけんとかにしようよ。

なんで消去法みたいにして、アタシが選ばれるんだよ。

 

「主は言いました…美兎がやるべきだと」

 

「なんだよ…それぇ…」

 

アンジーまでもが、白銀に同意してしまう。

 

 

…こうなったら、最後の賭けだ。

 

 

真宮寺と王馬の方をゆっくりと振り返って、「なんとかしてくれ」と目で訴える。

 

「オレは別に誰でもいいんだけど?」

 

「…それじゃあ、口寄せ役は入間さんで決まりだネ」

 

 

どうしよう…アタシの味方がいない。

ていうか、真宮寺に関しては絶対拒否すると思ってたのに。

ほら、ゲームで「入間さんと春川さん以外なら、誰でも良かったんだヨ」みたいな事言ってたじゃん!

なんでなんだよ!


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