あっ、うん。ごめん。
僕が満足していないだけです。
あれから倉庫内を散々物色してみたけれど、結論から言う。
憑依を解くような手がかりなんて、存在しなかった。
いや、そもそも倉庫の中にあるって思った事がおかしかった。
理解不能な状況になると冷静さを失うっていうのも、嘘ではないようだ。
ということで、アタシは次なる手がかりの捜索だとばかりに倉庫の扉を勢いよく開けて廊下に出た。
「んー…手がかりになりそうなのがある場所なんてあったか?」
ガシガシと頭を掻きながら記憶の中からそれらしい場所を探してみる。
図書室…は、ゴチャゴチャしてて探すのに苦労しそうだし。
となれば、隠し部屋か?
………それはそれで危険な気がする。
そんなアタシの思考を止めるかのように、『キーンコーン…カーンコーン』と建物全体にチャイムが鳴り響いた。
その少し後に、扉を開けっ放しにしている倉庫のモニターに映像が映る。
『おはっくまー!お待たせ!!今から入学式を始めるよ~』
『ヘルウェー!今すぐ体育館に集まれ!!』
赤・青・黄・緑・桃色の五体のクマことモノクマーズによる集合を知らせもものだった。
その後はブツッと音をたてて、元の何も画面に映らないモニターだけがそこにあるだけ。
「はぁ~あ…」
思わず溜め息が出た。
行くしかないんだろう。
そもそも行かないと何をされるか……あっ、だいたい予想つくからやっぱ行くしかないじゃん。
「おっ、そうだ…」
行く前の寄り道…と言わんばかりにアタシは倉庫の隣にある購買部の扉に手をかけた。
なんでって?
んなの、ガチャに決まってんだろ!
ドアノブを回し、アタシは扉を開けようとしたが……鍵がかかっているのか『ガチャガチャ』と耳障りな音をたてただけで、扉は固く閉ざされていた。
不本意だけど、実に不本意だけど、今だけはガチャを諦めてアタシは体育館に向かって歩き出した。
×××××
アタシを含め、体育館には既に何人か超高校級の才能を持った生徒が集まっていた。
最後に“超高校級のピアニスト”である赤松と、“超高校級の探偵”の最原が体育館にやって来るのを見ると、「これで16人…全員揃ったわね」と“超高校級のメイド”である東条が全員揃った事を教えてくれた。
「へー…超高校級が16人揃った絵面ってのも壮観だな」
“超高校の宇宙飛行士”の百田がこの場の全員を見渡しながら、そう口にする。
アタシは思わずそれに賛同しながら、口には決して出さないが内心では『凄いけれど、この中に憑依してるだけの凡人がいます!誰のことって?アタシだよ!』と叫んでいる。
「みなさん、油断は禁物です。いつどこからか危険が来るか分かりませんから」
百田の呑気な言葉を壊すかのように、“超高校級のロボット”ことキーボがアタシ達に周りを警戒するように言う。
どうでもいいけど、キーボの名前って“希望”からきてるよね?
「き、危険とか言わないでよ……オレ、怖くてどうしたらいいか…」
キーボの言ったことにすぐ、“超高校級の総統”である王馬が怯えたように弱音を吐く。
その言葉が嘘か本当なのかは、アタシには分からない。
「心配しなくても大丈夫だよー。ちゃんと神様が見守ってくれるから」
不安等感じさせないような声で“超高校級の美術部”夜長アンジーが笑顔で言った。
いや…見守るんじゃなくて、今すぐアタシを助けてください神様。
「心配すんな!次にあのヌイグルミ集団が出てきたら、オレがまとめてブッ壊してやっからよ!」
アタシ達を安心させようと、百田が拳を握りしめて宣言する。
人はそれを、フラグが立ったと言う!
なーんて、アタシがふざけていると遠くの方から何か音が響いた。
その音はどんどんアタシ達のいる場所に近づいてきて…それは突然現れた。
「「「「「おはっくまー!」」」」」
その挨拶は数分前に聞いたモノクマーズのものだったが、アタシ達の目の前にはモノクマーズではなく、大型ロボットが5体……エグイサルという……まぁ、ガ○ダムみたいなのを適当に作った感じのやつだった。
「きゃあぁぁぁ!!」
それを見た瞬間、“超高校級のコスプレイヤー”の白銀が悲鳴を上げた。
ワーオ、演技上手い。
本当に怖くて悲鳴上げているようにしか見えないよ。
「みんな、ゴン太の後ろに下がって!」
白銀の悲鳴にハッとしたように、“超高校級の昆虫博士”のゴン太がみんなを守るかのようにしてアタシ達の少し前に出る。
さっきの話しの流れ的に、それを言うべきなのは百田だとアタシは思う。
まぁ、思うだけで口には出さないが。
「な、なんですか…このバケモノは!?」
“超高校級の合気道家”の茶柱が悲鳴に近い声で叫ぶ。
因みに、アタシが初めてゲームでエグイサルを見た時のリアクションと同じだったりする。
「こいつは高機動人型殺人兵器エグイサルだ!」
バケモノ呼ばわりされたのが嫌だったのか、モノクマーズの誰かがエグイサルの正式名称を言った。
…正式名称長ッ。
しかも、なんでかさっきからアタシの手が何かをしたくてウズウズしている。
まさか、入間美兎としてのアタシがエグイサルを解体しようとしているのか!?
それはそれで困る。
「ねぇ、誰かあれをまとめてブッ壊すとか言ってなかったっけ?」
騒然となった空気で淡々とした声でそう言ったのは、表向きでは“超高校級の保育士”となっている“超高校級の暗殺者”の春川。
いいぞ、春川さーん!もっと言ってやれ!!
「ふ、ふざけんな!あんなの聞いてねぇぞ!」
ブッ壊す宣言をしていた百田を見てみると、顔色を真っ青にしてエグイサルを見ていた。
まぁ、見て分かるけれど勝ち目なんてないもんな。
みんながエグイサルを見て内心慌てている中で、それを宥めるかのように「まぁ、ちょっと落ち着くっす」と超高校級の……えっと、どっちで言うのが正解なんだろう?
本編とオマケ編で才能違っていたからなぁ……。
“超高校級の生存者”と言うべきか、“超高校級の冒険家”と言うべきなのか迷うけれど、天海が確信を持っているかのように自信あり気に話しを続ける。
「慌てなくても多分平気っすよ。俺らを殺すつもりなら…とっくにやってるはずっす」
そこまで言うと、天海はエグイサルに不用心にも近づいた。
「で、俺らに何をさせるつもりなんすか?酷い目にあいたくなかったらって脅して、俺らに何かを強いるつもりもんすよね?」
思わず拍手をしたくなるような天海の問いに、エグイサルに乗っているモノキッドはそれを待っていましたとばかりに「だったら言っちまうぜ!オマエラにやって貰いたい事は……」と一度止めた。
「コロシアイ、ダヨ」
しかし、続けて喋ったのはモノキッドではなくモノダム。
だけどそんな事は、この凍ったような空気の中ではどうでもいいことだった。
コロシアイ…殺しあい…殺し合い。
分かっているつもりだったのに、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
…オマケの紅鮭団ルートになってくれなんて願っても、憑依した時点で神様に見放されたアタシの願いなんて聞き入れられず、気づいたらモノクマーズが喧嘩していた。
いや、なんで潰し合おうとしてんだよ……って、さっきモノダムがモノキッドの台詞を取ったからか。
「ねぇねぇ、入間ちゃんって“超高校級の発明家”なんだよね?アレ、発明品でどうにかできない?」
モノクマーズ達の喧嘩を楽しんでいるかのように笑っている王馬が、いつの間にかすぐ側で期待するかのような目でアタシを見ていた。
「…今は何もねーよ」
王馬の視線から逃げるように、目を逸らしながらアタシが答えると「ふーん…」と興味を無くしたような返事をしたかと思えば、次の瞬間には王馬はニコニコと笑っていた。
「知ってる?今の入間ちゃんみたいなのを、役たたずって言うんだよ」
………ちょっと殴らせろと思ったアタシは悪くない。
それなりに書いているのに、未だにゲームのプロローグって……
そして、所々でネタを入れる僕は、やはりシリアスみたいな雰囲気は無理なんだなとしみじみ思う。