憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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3章突入だよー!
みんな、心の準備できた?ツッコミ(?)の用意はできた?
……僕はできてないよ!

だって、思いつきと勢いで書いてるんだもの!
むしろそれで書いている僕を、誰か褒めてっ!!


転校生 オブ ザ デッド①

みんなが寝静まった夜に、地下にある秘密部屋で彼女はソファに座ってイライラしていた。

 

「ホントありえない。こんな絶望的な事、誰が得をするっていうのよ…」

 

ツインテールに結い上げた、自身の明るい色をした髪を触って呟く。

彼女の計画では、すでにコロシアイが起きているはずだった。

学級裁判を行っているはずだった。

 

「はぁ…一体、どこからこんな事に…いえ、思えば最初の動機からでしたね…」

 

急にジメッとした空気になったと思えば、さっきまでとは違った喋り方をしていた。

しかし、それもすぐに変わって今度は「邪魔だよね…」と片手で顔を半分ほど隠していた。

 

「やっぱり、今の彼女は絶望的に邪魔だね。次の動機でなんとかするしかないか。誰かがコロシアイを起こすように誘導させて…」

 

そこまで言うと、急に口元を歪めて「うぷぷ…」と笑った。

 

「それにしても、アタシが監視してた感じだと…たまたまと偶然が重なりすぎて胡散臭いってゆーか、気味が悪いのよねー」

 

大きなため息を吐きながら、「よいしょっ」っと彼女は近くにいたモノクマを抱っこして、ここ数日の事を思い出す。

まずは最初の動機。

あの時、彼女は赤松楓と最原終一の計画を利用して、天海蘭太郎を殺す計画をしていた。

理由を述べるとしたら、彼の持つ生存者特典。

その情報が他人に回らないようにする為だった。

 

 

なのにだ。

計画を実行する際に、彼女にとっての誤算が起きた。

 

 

1つ目は、秘密部屋に行く為の隠し通路が使えなかった事だ。

彼女しか知らない隠し通路がある場所に、ある人物が余計な事をした事が原因だった。

2つ目は、その人物が図書室に作られていた凶器の通り道を、めちゃくちゃにして壊した事。

どこにも不自然を感じさせなかったこれらの行動が、彼女の計画を壊す要因として重なっていた。

彼女がこの部屋に入れなかった原因もあり、この動機は没にするしかなくなった。

 

そして更に最悪な事に、その人物に生存者特典の存在を知られた。

思い出して怒りが膨れたのか、「チッ…」と舌打ちをする。

 

次に、今回の動機。

 

動機ビデオという自分にとって、大切な人達の身に危険が迫っていると、外に出たいと思う気持ちを後押しする…いや、実際には思い出しライトと同じ要領でそう思わせる事で、コロシアイを起こす気だった。

彼女の計画通り、それである人物がコロシアイを起こそうと計画した。

 

なのに、ここでも誤算が起きてしまう。

 

わざと数人だけに自分の動機ビデオを持たせ、他の人達は『ビデオが入れ替えられた状態』だと思わせる事で、みんなが入れ替えられていると思わせた。

それなのに…またある人物が『自分の分を持っている人はいないのか?』と言ったせいで…当てはまる人達が顔色を変えたのを見て、確信したかのような顔をしていた。

 

だから、彼女はその人物のやる事の1つ1つに、細心の注意を払って見ていた。

それでも、特に気になるような行動は起きなかった。

だが、念には念を…として、昆虫でなごもう会の為に自分が王馬小吉と獄原ゴン太の計画を利用して、その人物の身動きを取れないようにした。

なのに……

 

「この私様をコケにするなんて…!おのれ、やるじゃない人間め!」

 

つい数時間前の事を思い出したのか、急に立ち上がって肩で息をしながら怒鳴り散らす。

 

「うぷぷ…楽しみにしててよね……」

 

そう言って笑った後、彼女の姿はこの学園内でよく見る人物になっていた。

 

「私なりに、地味に絶望させてあげるから」

 

 

 

 

 

××××

 

 

 

 

夢野のマジカルショーも何事も起こらずに終わり、アタシ達は食堂で東条の作った朝食を食べながら感想を述べ合っていた。

 

「ピラニアが落ちてきた時は吃驚したけど、凄く良かったよ」

 

「私は、獄原君がステージに上がった事に驚いたわ」

 

「ゴ、ゴメン…」

 

「まぁ、いいじゃねーか」

 

みんなが笑顔で感想を言っているのが嬉しいのか、夢野は満更悪くないとばかりに「ウチの魔法は凄いじゃろう!」と胸を張って言っていた。

 

「確かに凄かったけど…結局、あれってどういう仕掛けなの?」

 

「最原よ…。お主、ウチの魔法を信じておらんな?」

 

帽子の陰から睨んできた夢野に、最原は根負けしたかのように「ご、ごめん…」と謝る。

そんな最原に、百田が笑いながら肩を叩いた。

 

「気にする事ねーって終一。オレも気になってたしな!」

 

「だから、あれはウチの魔法じゃ!」

 

それらを見ながら、隣で「馬鹿らしい…」と呟いた春川に、思わずアタシは苦笑いをした。

 

「そーいえば、オレからみんなに言いたい事があるんだけどいい?」

 

急にそんな事を言い出した王馬に、みんなして首を傾げた。

かくいうアタシも、なんだろう?と思って記憶を辿る。

…うん。ゲームではこんな展開なかったはずだ。

 

「実はオレ、知っちゃったんだよねー。オレより嘘つきなヤツがいる事を!」

 

「…はぁ?」

 

百田が何言ってんだコイツ…みたいな顔をして、王馬を見る。

それに吊られるように、他の人も呆れたような顔を浮かべたり、また始まった…みたいな顔をしながらも、王馬に続きを促す。

 

この流れ…なんとなく分かった気がする。

 

食事の手を止めて、アタシは王馬の側まで行くと「つまんねー嘘だったら、しばくぞ!」とだけ言ってやった。

 

 

「大丈夫だって!…これは嘘じゃないしさ」

 

ニヤリと笑った王馬に、「あっそ…」と言ってアタシはそっぽを向いて、無言で王馬を睨んでいる春川に視線をやる。

 

「それじゃ、言っちゃうよ?動機ビデオで知っちゃったんだけどさー。春川ちゃんって、超高校級の保育士じゃなくて…超高校級の---」

 

王馬がそこまで喋った瞬間、春川が目にも止まらぬ速さで動いた。

その手が王馬の首に届く前に、アタシは春川と王馬の間に割り込むように入った。

 

「どいて、入間。そいつの減らず口を止めないと」

 

「だからって、お前が今からしようとしている事を止めない理由にはならないだろ。むしろ、お前がそうするのを王馬は望んでいるとしか思えねーな」

 

アタシの背中に隠れながら春川の様子を伺っていた王馬を見てみると、「あっ、バレてた?」と悪びれもせずに笑っていた。

 

「で、続けるけど…春川ちゃんって超高校級の暗殺者だったんだよ!」

 

「えっ…?」

 

「あ、暗殺者…?」

 

驚きで目を丸くするみんなの視線から逃げるように、春川は王馬をきつく睨みつけると食堂から出て行った。

 

「王馬君…今の話しは本当なの?」

 

「ホントだよ。だから、春川ちゃんもあんな行動に出たんでしょ?入間ちゃんが止めなかったら、きっと今頃オレは殺されてたよ…」

 

むしろ、自分からそうなるようにしてたんじゃ…なんてアタシの考えは無理矢理押し殺す。

 

「それにしても、暗殺者なんて危険だネ…」

 

「ならば、変な事をしないように閉じ込めますか!?転子のネオ合気道が炸裂しますよ!」

 

なにやら、物騒な事になりそうな意見が飛ぶ中で、百田が胸を叩きながら「まぁ、待て。春川の件はオレ任せろ」と笑ってみせた。

 

「何か考えがあるんすか?百田君」

 

「あぁ、オレがあいつの化けの皮を剥がしてやるよ」

 

…正確には、春川の暗殺者としての化けの皮だろ。

言葉抜けてるぞ、百田。

 

「なら、春川の事は百田に任せるか…」

 

星がそう言って話しをまとめた所で、「話しは終わった?じゃあ、話してもいい?」とモノクマがテーブルの下から出てきた。

なんて変な所から出てくるの!?

 

「もう、いちいち構ってる暇なんてないって!」

 

「そんな…。せっかく、オマエラの世界が広がる為のものを持ってきたのにさぁ…」

 

赤松が言った事にモノクマが落ち込んでいると、少し遅れてやってきたモノクマーズが「お父ちゃんどうしたの?」と首を傾げた。

 

「マァ、イイヨ…。ソレジャ、オラ達カラキサマラニ…素敵ナプレゼントヲアゲル!」

 

モノダムがそう言うと、他のモノクマーズもモノクマを気にするのを止めた。

おい、それでいいのかよ。

 

「今回は…」

 

「待て、オレに言わせろよッ!」

 

「この『ゴールドハンマー』と『魔法の鍵』と『伊賀の巻物』だよー」

 

「これらを、セットでプレゼントや!」

 

渡されたそれらに、キーボが「予想はしてましたが…やはりこのガラクタでしたか」と呟いた。

それに同意するかのように、王馬も「あーあ」とぼやき出す。

 

「ガラクタはキー坊と入間ちゃんの発明品だけで十分だってのに…。まぁ、その発明品を借りパクしてるオレが言う事じゃないか」

 

「ロボット差別ですよ!」

 

お決まりとなっている事を言うキーボに対して、アタシは両手で顔を覆った。

そうじゃん…なんだかんだで忘れてたけど、ミニキーボは王馬が持ったままだった。

いい加減、返せよコノヤロー…。

思いっきりそう言ってやりたいのだが、天海が妹をあやすみたいにアタシの頭を撫でるから、別の意味で顔を覆ってしまう。

誰かこのお兄ちゃん止めて。

 

「それじゃ、それを使って新しい区域を捜索してきなよ。思い出しライトも隠しておいたしさ…」

 

そう言い残して、モノクマはモノクマーズと仲良く食堂から出て行った。

 

「それじゃ、早速捜索するか…。終一、また頼んだぜ」

 

「う、うん…」

 

渡されたアイテムを手に取って頷いた最原は、そこでアタシが別の意味で顔を覆っているのに気づいたのか「天海君…」と声をかけた。

 

「ん?どうかしたっすか?」

 

そこでやっと頭から手が離れた事についてアタシは最原に感謝し、相変わらず顔を覆ったままで東条の後ろに隠れた。

なんで笑っているの斬美ママ。

 

「フフ…大丈夫?入間さん」

 

「あいつ、絶対オレ様を妹扱いしてる…。年下扱いしてやがる…」

 

慰めて!とばかりにアタシは東条の腕にしがみついた。

そこで、アタシは冷静になって一度考える。

天海に妹扱いされたのって、こういう行動が原因じゃね?

 

うん、てかそれ意外考えられない。

さすがアタシ…完璧な推理だ。

 

勢いよく東条から離れると、アタシは最原を中心にオブジェの捜索を始めたみんなの少し後ろからその後を追った。

 


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