憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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この作品の本文書いてる時によく『ディストピア・ジバンク』っていうボカロの曲を聞きます。
…曲の雰囲気がダンガンロンパに合うからって理由で、聞いてるだけですがね。


限りなく地獄に近い天国②

 

「やっほー、なんだか盛り上がってて楽しそうだね!ボクも混ぜてよー」

 

いつも通り、いつの間にか食堂にいたモノクマが明るい声でアタシ達の会話に突然入ってきた。

そんなモノクマを見るや、王馬は良いこと思いついたとばかりに顔を輝かせ「うん!入間ちゃんがオレをイジメて、とっても楽しそうなんだ!」と言った。

 

…って、ちょっと待てええぇぇぇ!?

 

「なんでオレ様なんだよっ!?」

 

つい、アタシはとっさに王馬の肩を鷲掴みにするとガクガクと揺らして、抗議する。

しかし、それは間違った行動だったようで、逆に王馬を余計に笑わせただけだった。

 

「イジメはダメだよ!イジメなんてカッコ悪い!どん引きしちゃうよ!」

 

「だから、してねーって!」

 

うわぁ…モノクマまで悪乗りしだした。

アタシがある意味イジメられてんじゃん…。

 

「それより…なんの用だ?」

 

悪気なんてないと思うけれど、星がモノクマに言った一言を聞いた瞬間、アタシはその場に座り込んだ。

それよりって…それよりって酷い。

アタシにとっては、それよりなんて言葉で済まないのに…。

 

「入間ちゃん生きてるー?」

 

ニヤニヤ笑いながらアタシの頭をつつく王馬の手を、ペシッと払いのける。

そもそも原因はお前だから。

 

「うーん…ホントはね、あの動機でコロシアイが起きてから渡すつもりのご褒美だったんだけどさ…誰かさん達のせいで動機をなかった事にしちゃったし?だからって、このままオマエラの世界が狭いままなのも面白くないから渡す事にしたんだよね」

 

うぷぷ…とモノクマはそう言って笑う。

こういう笑い方してる時って、絶対何か考えがあってやってるよね…多分だけど。

 

「渡すって…何を?」

 

赤松がそう疑問を口に出すと、突然現れたモノタロウが「はーい、言われたやつだよー!」と大声を出した。

それにつられて、他のモノクマーズもぞろぞろと食堂に集まる。

 

「今から、順番に渡してやるぜッ!」

 

「心の広いお父ちゃんに、感謝してよ?」

 

「………」

 

「ええか!キサマラに渡すのは、この『ようわからへんアイテム』や!」

 

そう言ってモノクマーズがアタシ達の前に出したのは、校内にある謎のオブジェに使うアイテムだった。

…これ、ゲームでは学級裁判を乗り越えたご褒美とかで貰ってたやつだ。

 

「『龍の宝玉』と『黄色いオカリナ』と『通行手形』と『ゾンビゲームでよう使う六角クランク』…こいつをセットでプレゼントするでー!」

 

やったね、カジノで遊べる。

…遊ぶ時間作ろう。

 

「なんだ、このガラクタ!?」

 

どう使うんだと、百田がモノクマに使い道の説明を求めるも「ボクもよくわかってないけど…」なんて答えが返ってきた。

 

「まぁ、よくわからない使い道があるんじゃないかな?そういう訳だから、後はお好きなように頑張ってくださーい!」

 

そんな適当な事を言い残して、モノクマはモノクマーズと共に食堂から姿を消した。

 

「で、さっきのガラクタはどうするの?」

 

春川がモノクマーズ達が置いていったガラクタを見ながら、うっとおしそうに言う。

 

「だったら、最原君が持っておこうよ」

 

「えっ、僕?」

 

自分に話しが回ってきた事に慌てる最原に、赤松が強引にガラクタを持たせた。

 

「最原君は探偵だから、こういうパズルみたいなの得意だと思ってさ…。ほら、このガラクタって校内にある変わったオブジェになんとなく関係ありそうじゃない?私も手伝うからさ、一緒に頑張ろう」

 

「赤松さん…」

 

 

あのさ…最原が持っておく事になったのはいいんだけど、アタシ達空気みたいになってるから。

ほらー、春川なんか「またやってる…」とか言って食堂出て行こうとするし。

天海に関しては「仲良しっすね」って笑ってる場合じゃない、近くにいるんだし止めて。

星も「若いな…」とか言うな。何歳だよお前。

 

 

「と…とりあえず!赤松と最原を中心に怪しいと思ったオブジェを回って行くぞ!」

 

アタシが無理矢理話しを進めると、周りから『よく言った』みたいな視線を受けた。

 

お前らも止めろよぉっ!

 

 

 

 

×××××

 

 

 

 

オブジェの捜索に向かったみんなとは別に、アタシは未だに食堂から動かずに寛いでいた。

もう、朝起きた時からいろいろ疲れた。

何がとかは言わないけど。

 

「なんか忘れてる気がするけど…いいや」

 

テーブルの上で、腕を枕のようにして顔を埋める。

動機が発表されていない、この何もない1日っていうのは貴重だからな。

有効に使わないと…ね?

 

「オブジェは他人任せにして、このまま寝てやる…」

 

「それはダメっすよ」

 

「ダメとか言うなよ。オレ様は……んんっ!?」

 

あっれー、おかしいな?

今、誰かと話した?

会話になってたよな?

誰かいるよね?ね?

 

ゆっくりと顔を上げて、食堂の出入り口の方を見る。

外に繋がる方…は、誰もいない。

となれば、廊下に繋がる方……。

 

「……なんだ、天海か」

 

「ちょっと、また寝ようとしないでほしいっす」

 

再び寝る体勢に入ったら、注意された。

なぜだ。

 

「お前、なんでここにいるんだよ?赤松や最原と一緒に校内走ってたんじゃねーのかよ?」

 

「いや、走ってないっすよ。そういう入間さんは、なにサボってるんすか?」

 

疑問に疑問で返された。

なんでだよ、答えろ。

…それとも、アタシから答えないとダメなやつなのか?

いいの?言っちゃうよ??

後悔しても知らないよ?

 

 

「朝から茶柱に投げ飛ばされて、強打した腰が痛いから動かないだけ」

 

答えた瞬間、天海に目を逸らされて「そっすか…」とだけ言われた。

ねぇ、肩震えてるけど笑うのこらえてるの?

アタシの目を見て話してくれないかな?

 

「…オレ様は答えたぞ。お前は何しに来たんだよ?」

 

「あぁ…俺は姿が見えなかった入間さんを探しに来ただけっす。いろいろ話したい事もあるんで」

 

やっと目を合わせて話したと思ったら、予想とは違って真面目な顔をしていた。

それより…アタシがいるのが、ここだとよく分かったなぁ!?

モノパッドのマップには、誰がどこにいるとかはゲームと違って表示されないのに…。

 

「で、今話してもいいっすか?」

 

どうせ、昨日の図書室での事だろうしなー。

…説教されんのかな、アタシ。

悪いことした覚えないけど。

 

アタシが何も言わないのを、肯定の意味だと思ったらしい天海が話しだそうとすると、そのタイミングで食堂にアンジーが入ってきた。

タイミングが神ってるー。

 

「やっほー!美兎と蘭太郎みーっけ!体育館に集合だってさー」

 

それだけ言うと、アンジーは慌ただしくどこかに駆けて言った。

せめて、なんで体育館に集まるのか教えてから行って。

 

「……」

 

「……」

 

残されたアタシと天海は、無言でお互いの顔を見る。

沈黙が無駄に重い…なんでだ。

 

「とりあえず、行ってみるっすか?話しはその後にでもやるんで」

 

「あぁー…うん」

 

後からなら、アタシにも心の準備というのができるはず…うん、お説教ぐらい受けてたとう。

あっ、でも本当にただの話しだったらいいな…。

そんな軽い気持ちでアタシは頷くと、集合場所と言われた体育館までゆっくり歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

体育館にみんなが集まると、アンジーが全員に見えるように「ほーれ、これってなーんだ」と手を持ち上げた。

その手にはヘンテコな懐中電灯が…って、それ思い出しライトっていう名前の記憶植え付け機械じゃん。

 

「よくわからないから、もりもり調べてみたんだけど…結局わからなかったのだよー。だから、教えてほしいってアンジーから頼んでおいたよー」

 

笑いながらそう言ったアンジーの後ろから、「困った事があったらモノクマにお任せーっ!」と笑いながらモノクマが出てきた。

えっ…まさかアンジー、モノクマをおんぶしてたの?

 

「教えてよー。この懐中電灯ってなんなのー?」

 

「あぁ、それは『思い出しライト』だよ。その懐中電灯が照らすのはただの闇じゃなくて…」

 

 

 

オマエラの『失われた記憶』という闇なんだ

 

 

 

モノクマのその言葉に、アタシを除いた全員が僅かに表情を動かして反応した。

 





もう少し書こうと思っても、気力の問題で強制終了。

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