書きたくなってしまったというか…ね?
ほら…所謂、謎の衝動ってやつなんだよ!
それで勢い余ったと言いますか…ただの気まぐれと言うか…
うん。ただの自己満足なんだよ
蘇る超高校級①
気がつけば、アタシは知らない場所にいた。
いろんな物がゴチャゴチャと置いてある……そう、倉庫の中のような場所に、だ。
植物が生えている事が、かなり気になるけれど。
「どこだよ…ここ?」
少し前までの自分の行動を必死に思い出そうとして、アタシは目を閉じて腕を組み「う~ん…」と唸る。
そう……私はゲームをしてたはずだ。
大好きなダンガンロンパの新作である『ニューダンガンロンパV3-みんなのコロシアイ新学期-』をしていた。
プロローグからエピローグを何度も周回して、溜まりに溜まったモノクマメダルを一枚ずつ消費しながらガチャを回すという作業をして、アイテムコンプを目指していたはずなのに…だ。
「それが気づいたらこんなとこにいましたって……意味が分からない」
改めて周りを確認しようとして、アタシは目を開けた。
しかし、それよりも新たな疑問が生まれてしまった。
(あっ、あれ?アタシって…こんな声だっけ?てか、髪の色違うし……この服装も変!!)
そう。声も身体もアタシが知っているアタシじゃなかった。
でも、アタシは今自分が着ている制服には見覚えがあったし、誰の物なのかもなんとなくだけど分かっていた。
この胸元を強調するような着こなし方をしたピンク色のセーラー服を着た人物。
だけど……だ。
それはあくまで、フィクションの架空の存在の人物だ。
だけど、もしそうならば……アタシが今いる場所が知らないはずなのに見覚えがあることにも納得がいく。
「……って、んな訳ねーだろ!何現実逃避じみた事考えてんだ!!確かめた方が早いに決まってる…」
そうだ。分からないなら確かめるだけ。
それだけで済む事なんだ。
視界の端に捉えたハンドミラーに、ゆっくりと手を伸ばす。
(大丈夫……そんな馬鹿な事、起きるはずがない)
きつく目を閉じながらハンドミラーを手に取り、アタシはゆっくりと慎重に目を開けた。
「……………えっ?」
鏡に映っていたのは、緊張に満ちたようなアタシが見慣れた姿ではなくて。
驚きで目を丸くする、アタシがさっきまでやっていたゲームの登場人物。
入間美兎の姿だった。
アタシが知っている限りの、入間美兎という人物について説明しよう。
彼女はゲーム『ニューダンガンロンパV3』において“超高校級の発明家”という才能を持つ高校生として登場。“超高校級”の才能持った他の高校生達と共に才囚学園に閉じこめられている…という設定。
見た目は良いのだが性格が残念というキャラで、彼女の作る発明品は凄い物や聞いているこっちが赤面するようなもの等がある。
ミニゲームの絶望のデスロードでは、彼女の発明品が大活躍だった。
チャプター1の時点であのミニゲームをクリアした人、超高校級のゲーマー名乗っていいと思う。
と、誰に対してなのか分からない大まかな説明をした所で、アタシはその場に座り込んだ。
今のアタシの状況を言葉にするならば、『憑依』という線が強いんだろう。
というか、それしか考えられない。
憑依から解放する為、アタシは適当に近くの物を漁り何かないかと探してみる。
高跳びの棒、砲丸、使い捨てカメラ、センサーに受信機のブザー、ロープ…。
待て、なんでアタシはこれらを見たんだ。
恐るべし、トリックに使われた物品達。
「ねぇ、何か探してるの?」
思考を変えようとしたところで後ろから突然声をかけられ、アタシは驚いて勢いよく後ろを振り返った。
そこには、たった今倉庫に入ってきたのであろう音符のヘアピンを付けてリュックを背負った少女と、深く帽子を被った少年がいた。
……主人公の赤松楓と最原終一の二人だ。
「急に話しかけてくんな!オレ様がショックでやる気なくしたら、世界規模の損失なんだぞ!!」
よくこんな言葉言えたなと、自分にツッコミを入れたい。
自分の事をアタシと言わないように意識しながら叫ぶと、二人は少し困惑するかのような表情を浮かべた。
…できる限り入間美兎の喋り方をしたとはいえ、何かおかしかった?
いや、でも……下ネタは言う勇気なんて流石になかったし。
「えっと……あなたって何者なの?」
赤松が言った言葉に、今度はアタシが困惑した。
「お、お前マジか?このオレ様を……知らねーのか!?」
えっと……つまり、今のアタシ達は初対面ってこと?
ってことは、今はゲームのプロローグで。
アタシの喋り方に違和感を感じたから変な顔をしたわけではなく、アタシが言った事に対してあの反応だっただけ?
……少しとはいえ、何か間違えたかと思ったアタシの心配を返せ。
「いいか、よーく聞きやがれ!オレ様は“超高校級の発明家”入間美兎さまだッ!」
…正直なところ、憑依しているだけのアタシが発明品を作れるかどうかはかなり不安でしかないけれど。
下手したら、ストーリーに異常を齎すレベルなのだから。
「ちなみに…どういう発明をしているのか聞いてもいい?」
疑問に思ったのか、最原が質問をしてきた。
……えーっと、ちょっと待って。
すぐに思い出すから。
「確か…寝ながらキーボード打てる便利グッズだったり、寝ながら漫画読む便利グッズだったり?」
いかに寝ながらできるかの発明が課題だとか言ってた気がするし、嘘ではない……はず。
「全部寝ながらなんだ…」
苦笑いを浮かべた赤松の言葉に、アタシはムッとしながらもそれを表情に出さないようにして言葉を続ける。
「あとは、『目薬コンタクト』とかもそうだな!」
「えっ?あれって入間さんの発明なの?友達でも使っている子いたよ!?」
「僕の友達にもいたよ…。入間さんって凄いんだね」
いい感じに驚いてくれた赤松と最原の反応に、アタシは誇らしいと思うと同時に申し訳ないという気持ちで一杯だった。
いや、だってさ、いくら今のアタシが入間美兎とはいえ、作ったのは入間美兎であってアタシじゃなくて……あっ、ややこしい。
「まっ、権利は企業にやったからオレ様は関係ねーけどな」
話は終わりだとばかりにアタシは二人に背を向けると、再び倉庫内を捜索する。
あっ、モノクマメダル見っけ。
「ところで…さっきから何を探しているの?一生懸命探していたよね?」
心配で声をかけてきたと思われる赤松に何も言わずに、アタシは出ていけとばかりに手で追い払うような素振りをした。
バカ正直に『憑依という怪奇現象を解く方法がないか探してます』とか言えるわけないからな。
さて、この自己満足がいつまで続くのか…