サン=サーラ...   作:ドラケン

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三ヶ月ぶりに懲りずに失礼します。フォレストページさんの方にも載せていますが、最終話に登場したエターナル達の設定を更新します。
作者の趣味全開ですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


外典 《Apocrypha》
エターナル設定


・天つ空風の“アキ”

 

 天津風。『生死』や『有無』等の『両儀』を司る、世界卵型の――『人位』や『刃位』とも呼ばれる神剣【輪廻】の担い手です。ただ『()(かえ)す』だけの殺傷力皆無な神剣ですが、永遠神銃【是空】と呼ぶ両刃の長剣にして小銃に納める事で無尽蔵のマナ源となります。化身(アバター)に『劫初海の輪廻龍姫“アイオネア”』が存在します。美しく気高く、聡明で心優しい潮騒と月影の媛君です。

 神剣宇宙の零地点であるとされる『天元』に集められた時間樹や浮き世界の塊『時間樹海(ピースフル)“ニルヴァーナ”』を拠点とするロウの派閥『聖永輪廻(サン=サーラ...)』の首魁です。紫煙と酒精、女香を常に纏う、頽廃そのものが形を成したような色男です。快活ながら陰惨な笑顔を見せ、悪辣ながら紳士的な振舞いの人物です。知略を愉しみ闘争を好む姿は、とあるロウ・エターナル二人と酷似します。

 

 ある時『輪廻の観測者“ボー・ボー”』の導きでロウ・エターナルとなります。その際、『法皇“テムオリン”』は抹殺の為の手勢を送った程です。それを全て消滅させられて渋々認めた彼女ですが、今でも互いに気を許してはいません。

 『あるがままであること』の一念に基づき、望む事を自由に為す彼の気っ風を慕う者も多い反面、カオスからは『ロウの中のロウ』として。ロウからは『カオス思想』、ニュートラルからは『自由という不自由』として敵視されています。本人は歯牙にも掛けていませんが。

 

 最近、カオスの少女を拐かしたとかで、カオスや『叢雲』から狙われているという噂もありますが、定かではありません。

 

 

 

・アーティラリア

 

 愛称は『アーティ』。『聖永輪廻』の旗艦である強襲揚陸艦のAIシステムであり、群体ナノマシンで構築された体を持つ少女です。少なくとも、人格的には『少女』です。

 永遠神剣は持っていませんが、マナゴーレムや抗体兵器の技術を発展させたモノなので、既存の兵器は勿論、下手な神剣士よりは遥かに強力な戦闘能力を持っています。また、『永遠神銃【是空】』を成す根幹でもあります。

 

 元々は前述通りにただの管制システムでしたが、半周期もの間のアキのアップデートの繰り返しにより、何時しか人格を持つに至りました。そしてビウィグが作っていた群体ナノマシンシステムにより身体を得ました。

 その後は、アキとアイオネアのメイドのように振る舞っています。主人二人には甲斐甲斐しいですが、他の諸侯に対しては淡白です。

 

 

 

・凍雲の風花“アオイ”

 

 常に刃に水滴を滴らせる、弦を張った刃のみのシャムシール型の第五位【湧渾】と絶対零度の凍気を操る籠手型の第二位【回向】の担い手の少女です。美しい髪をポニーテールにしています。

 少々融通が利かないところがありますが、真面目で有能な中間管理職の鑑な人なので、総じて信頼されています。何なら、アキよりも人望があります。最近はストレスのためか鉄拳制裁も辞さなくなりましたが、口で言っても言う事を聞かない『聖永輪廻』の面々には効果絶大です。

 

 元はアキを監視するために貸与された、テムオリン配下のロウ・エターナルでした。生まれ故郷を人質に取られており、彼女には決して逆らえません。

 アキがテムオリンの出す難題を全て攻略した褒美としてアオイの故郷を望み、手中にしたため、真の意味で彼の傘下となりました。テムオリンは大層悔しがったそうです。

 

 長距離狙撃と近接格闘、指揮も出来る才女です。魔法の素養も高く、隙がありません。アキには感謝と思慕の両方を抱いていますが、恥ずかしいのであまり表には出しません。所謂ツンデレ、というかツンギレです。

 

 

 

・痛みの永久“エリーシア”

 

 ヴィクトリア王朝風のドレスと日傘を持つ、風景型の第二位【罪業】の担い手の少女です。彼女とシェラトリィハ、ナユタの三人で、『聖永輪廻』の誇る最強格のエターナル『三姫』とも呼ばれます。

 美しい容姿は、造られたが故です。テレビショウの、愚かな道化として。彼女は、いかに面白おかしく死ぬかを楽しむ為の人形でした。イレギュラーだったのは、唯一。彼女は、何度死んでもまた、同じような存在として創造される事。繰り返す死に、彼女は願いました。『助けて』と。それに、【罪業】が答えました。善意を持って。

 

 その瞬間、観客と出演者は逆転しました。無限地獄の中、人々は、自分が見下していた人形よりも惨めに死んでいきます。自分が、絶対の安全圏に居ると信じている者など、その程度でした。気を付けた人々も、死に絶えます。結局、最後は助かると信じている者など、その程度でした。【罪業】は、マナを得る歓喜と共に震えました。

 彼女が駆け抜けた地獄を再現する【罪業】は、世界を滅ぼしました。善意を持って。だからこそ、エリーシアを己の罠の全てから守り抜き、外に連れ出したアキに、全てを託して消えました。一度でも多く、彼女が笑顔を浮かべられるようにと願いながら。

 

 その願いのまま、彼女はアキに甘えます。生まれたまま、誰にも甘えられなかったからこそ。【罪業】の力の副作用で、常にアキを死の危険に晒しながら。『聖永輪廻』で唯一の、隠す事の無い愛情を向けながら。

 

 

 

・空亡の“ジル・イバ”

 

 裂け目型の第三位【逆流】の担い手で通常とは位相の異なる次元に鎮座する、不定形で可塑性を持ち、極彩色の原形質な身体を持った存在です。

 エターナルとなる前から、そもそも『寿命』や『死』の概念自体がありません。眼や鼻、耳や口、腕や足などは、必要に応じて幾らでも作り出せます。

 

 元々は『銀河そのもの』であり、浮きマナを呑み込む体内には幾つもの世界を持っていました。その中には当然ながら生命が存在し、それらを観察するのが彼の唯一の楽しみでした。

 しかし文明が発達すれば、珠に彼の外に出ていこうとする者も現れます。それは即ち自分のマナが減少すると言う事であり、彼にとっては命を削る行為です。認められる訳がありませんでした。何時しか彼は『邪神』と呼ばれるようになり、彼も『被造物の反抗』を疎み、滅ぼす事を決意してしまいます。

 

 そんな折りに、彼の中に入ってきたのがアキでした。最初こそ【逆流】の能力で圧倒しましたが、銀河全体を『空間断絶』すると言う、『銀河斬り』によって敗北しました。その型に嵌まらない姿、そして何よりも『生誕の起火』の煌めきに魅せられ、アキの元に下ります。

 『どんなものでも引き裂いて繋げる』能力を買われ、以降は通信やセンサーの役割を担っています。しかし、『不気味すぎる』とか『心臓に悪い』と割と不評で、何気に傷付いていたりします。

 

 

 

・傾城“イズルハ”

 

 出流葉。虚空に浮游する、巨大な城郭型の第三位【蓬莱】の担い手である九尾の妖狐。普段は妖艶な美女の姿をとっています。

 享楽と法悦を是とする、破戒的な女怪です。古代の女帝のような衣装を纏っています。幼い頃から帝王学を仕込まれた、生粋の王者です。

 

 かつて、ある浮き世界を支配した世界帝国の女帝でした。神仙の類いであり、様々な妖術に長けていた上に永遠神剣を担う彼女には容易い事でした。その為にテムオリンの下に付く事を兎角嫌い、遂に反旗を翻しました。そこに鎮圧に派遣されたのが、アキでした。

 ミニオンや龍、無名の神剣士やエターナルなどの集めに集めた戦力を全て倒されて完全敗北、【蓬莱】自体も崩壊寸前まで追い込まれました。再起を図って逃亡するも、今度は自分の身内から裏切りに合い、アキに引き渡されました。無論、アキは『主君を売った臣下』を許さずに処断しています。本来は彼女も処刑される予定でしたが、自ら臣下の礼を取った事で彼の物となり、回避しました。

 

 以降は帝の位をアキに譲り、自身は彼の『ペット』として悠々自適の自堕落な生活を送っています。よくアオイから怒られますが、余り気にしていません。ただ、実害が及びそうになると『好きな場所に好きな場所を呼び出せる』効果を持つ【蓬莱】の中に引き篭もります。中には兵糧も兵員もあるので、一度籠ると中々出てきません。

 

 

 

・言葉の“ナユタ”

 

 那由多。言語型の第二位【言葉】の担い手である、元ニュートラルエターナルです。エターナルなので幼い容姿のままですが、淫魔である為に凄まじく美形であり、男性(希に女性も)には無条件でチャームが掛かります。

 楚々とした見た目とは正反対の、わがままで気ままな人物です。声をより遠くに届ける為にスタンド付きのマイクを使います。どこに仕舞っているかなど問題ではありません、彼女が『有る』と言えば有るのです。

 

 文明開化後の日本のような世界で生まれた、没落した華族の令嬢です。かつては、身の上を弁えてか大人しい性格でした。しかし、彼女の世界を形作る【言葉】に選ばれた事から、彼女の人生は一変します。『口にさえすれば全てが現実に反映される能力』により、今までの冷遇が嘘のように傅く諸侯、王公貴族。『自分は特別な存在』だと、歪むのは時間の問題でした。それが、【言葉】の目的とも知らずに。

 アキが現れたのは、正に歪みが絶頂に達した刹那でした。トウヤを打ち倒し、更には己の【言葉】が利かない彼に、遂にナユタは叫びます。『助けて』と。聞き入れたのは、【言葉】――――ではなく、アキでした。【言葉】の意思を破壊され、彼女の独裁は終わります。

 

 全てが終わり、王位を去った彼女は、『聖永輪廻』に無理矢理加わりました。意思を無くしても、【言葉】は健在です。アキとアイオネア以外には、不思議に思う存在すらいません。自称『聖永輪廻のマスコット』であり、事実上『聖永輪廻のアイドル』――――『象徴にして偶像』であるアイオネアには対抗心を抱いています。とは言え、別に嫌ったりはしていません。寧ろ、仲が良いくらいです。

 

 

 

・須臾の“トウヤ”

 

 陶冶。野太刀型の第三位【須臾】の担い手であり、カオス、ロウ両方の協力要請や侵略をことごとく打ち払ってきたニュートラルエターナルの武将です。夢魔である為に凄まじく美形であり、女性(希に男性にも)は無条件でチャームが掛かります。

 見た目に反して堅物ですが、洒落と風流を愛する人格者です。

 

 文明開化後の日本のような、東洋と西洋が独立したまま混ざり合う世界の生まれです。彼と妹は没落した華族であり、慎ましく生きていました。それが一変したのが、妹がその世界を統べる永遠神剣に選ばれた事です。強大な第二位神剣に選ばれた事で人格を蝕まれた妹を憐れむ彼を、【須臾】が選びました。全ては、慈しむ妹の為に。時空を滅茶苦茶に切続するだけの効果しか持たない【須臾】で、彼は自分よりも遥かに強いエターナルに対抗してきました。しかし、そのマナすらも全て妹の永遠神剣の糧となり、妹を苛む事になる現実に絶望していました。

 アキが現れたのは、そんな折です。【須臾】を手にして以来初めての敗北、そして妹を救ってくれた彼に、人生で二度目の忠誠を誓いました。

 

 その判断力を生かして突撃抜刀隊を任されており、所謂斬り込み隊長です。器用貧乏な為、『聖永輪廻』では損な役回りが多いですが、本人はそれなりに楽しんでいます。

 

 

 

・迅雷の凱歌“アズヴェルザーグ”

 

 六角棍型の第四位【金剛】と、輪のように連なった雷神太鼓型の第三位【羅漢】の担い手の、獅子の獣人です。筋骨隆々の偉丈夫で、体格に見た目が合わさって凄まじい威圧感を与えますが、本当は取っ付きやすくノリの良い好漢です。

 女好きで戦好きが珠に瑕であり、暴走しがちです。他の王侯からは調子に乗りやすい性格をよく諌められています。

 

 かつては、神剣宇宙を荒らし回る大海賊団の首領を勤めるロウ・エターナルでした。数兆ボルトの雷撃を手足の如く操り敵を蒸発させる姿から、『雷神』とも呼ばれていました。

 その運の尽きは、アキの揚陸艦を襲撃した事です。一騎討ちの末破れ、おまけに見逃されてしまいました。その後は何度もアキに再挑戦しましたが、その度に返り討ちにされて遂に七度目の敗北で心服。以降は彼を『兄ィ』と慕い、船団ごとアキの軍門に下りました。

 

 その経歴ゆえ、アキへの忠誠心は一番を自負しています。なお、ビウィグとは喧嘩友達の間柄です。

 

 

 

・条理の改竄者“ビウィグ”

 

 あらゆる機械を『物理的に』自在に操るコンピュータープログラム型の第三位【不還】の担い手の、豚の獣人です。小肥りの矮躯で、常にPCを弄る見た目が合わさって凄まじいオタク臭を与えますが、本当にオタクです。

 劣等感の塊でコミュ障であり、暴走しがちです。拡張現実を使わないと、普段は他人と会話すらできません。他の王侯からは躁鬱の激しい性格をよく諌められています。

 

 かつては、生まれた時間樹のログ領域を単独で、しかも神剣のバックアップなどない状態でハッキングしてのけた凄腕のハッカーなロウ・エターナルでした。摂氏数兆度の焔熱を操り敵を蒸発させる闘い方は、味方すらも焼き尽くすほどです。

 カオスの侵入を迎撃した際、一緒にテムオリンの部下まで蒸発させてしまい、制裁の為にアキが向かわされました。時間樹全体のマナを集めた巨神機形態での敗北の後に、アキもロリコンであると知り心服。以降は彼を『ブラザー』と慕い、アキの軍門に下りました。

 

 その経歴ゆえ、アキへの忠誠心は一番を自負しています。なお、アズヴェルザーグとは喧嘩友達の間柄です。

 

 

 

災禍(わざわい)の胡蝶“シェラトリィハ”

 

 アラビアンナイトな世界の、マハラジャの娘です。害毒疾病型の第二位【蠱毒】の担い手です。【蠱毒】は普段は金色のランプ内ですが、呼べば風水を汚す漆黒の蝶の翅、或いは魔神の姿で顕現します。

 金儲けの事しかない父を嫌い、医者を目指していました。全ての人を救いたいと、真摯に祈ります。【蠱毒】は答えました。悪意を持って。

 

 『死を冒す病』を産み出し、『消滅』以外の死を無くしました。しかし、否、だからこそ人は争いを止めなくなりました。彼女を巡り、更に争いは激化します。その度に幾つも命は潰えました。『何故』と人々は彼女を呪い、『魔女』と呼びます。それを【蠱毒】は笑いながら見ていました。答える事は、彼女にも【蠱毒】にもできません。全ての命を見送った砂漠の都市で、彼女は無限の時を患者を待つ事に費やしました。生きている者が居る筈、と願いながら。それを【蠱毒】は笑いながら見ていました。過分の怒りを孕んで。

 【蠱毒】の力が通用しないロウ・エターナルによって、世界はマナの霧に還りました。彼女と【蠱毒】は、涙を流しながら見詰めました。救いたい世界が、滅ぼすべき世界が消えていく様を。

 

 以降は、『聖永輪廻』の軍医として従軍しています。鳥籠の中から救い出してくれたアキの為に。文句が多いのは、多分、照れ隠しです。少なくとも、【蠱毒】はそう彼女を弄って楽しんでいます。 


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