サン=サーラ...   作:ドラケン

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その全て 聖なるかな Ⅰ

 根源の闇に軌跡を残しながら、二本の大剣【輪廻】と【悠久】が交差する。互いに黄金のオーラの刃を纏いながら、目標に向けて疾駆する。

 それは漆黒に艶めく六挺の旋条銃(ライフル)から為る龍の翼と、純白に煌めく鳥の羽根から為る六枚の天使の翼――――全く別物でありながら、同じ『天翔翼(ウィングハイロゥ)』を広げたアキとユーフォリア。

 

「氷晶の青、輝閃の白……」

「天照の光、深淵の闇……」

 

 片方は青のマナと白のマナ、もう片方はオーラフォトンとダークフォトンを反応させたモノを。

 それが、天地に別れる。アキは大上段から、ユーフォリアは最下段から大剣を振るい――――その交点で、ナル・イャガを捉える。

 

「「――――その完全なる調律よ!」」

 

 二つの完全調律の剣撃『パーフェクトハーモニック』が、ナル・イャガを襲う。

 神剣だけでなく本人達同士も同調した振り下ろしと振り上げ、続いて振り上げと振り下ろしが空間を軋ませる。

 

「――――ふふ、それじゃあ、おやつ代わりにもならないわ」

 

 だが、ナルに染まった『精霊光の聖衣』は破れない。純粋な強化もあるが、何よりもそのナルによる浸食効果がアキとユーフォリアの歩みを閉ざす。

 

「集え、マナよ――」

「マナよ、我が求めに応じよ――」

 

 一旦距離を取る為に、アキとユーフォリアは空いた片手をナル・イャガへと翳す。

 それぞれの掌には、練り上げられる途中の濃密なオーラ。

 

「オーラとなりて、我が敵を滅ぼせ!」

「一条の光となりて、我が敵を貫け!」

 

 それを、一息に解き放つ――――!

 

「貴方達の味、楽しみだわ――――」

 

 よりも、ナル・イャガが早く行動を起こした。空間が鬩ぎ、軋みながら――彼女の見えざる(あぎと)と化した。

 

「――――少しずつで、いいから!」

 

 それこそは、『業を喰うもの』。彼女の胃の腑に繋がる、形の無い顎門が風の如く疾駆する。

 

「――――チッ!」

 

 舌打ちしたアキは『生誕の起火』を呼び起こし、ユーフォリアと共に発動で出遅れながらもノーモーションの発動により此方を上回ったナル・イャガを再度上回る。それにより、またもや『生誕の起火』が種火まで消耗したが。

 その掌から放たれたオーラフォトンの爆轟『オーラフォトンレイ』とオーラフォトンの光条『オーラフォトンビーム』の狙いを見えざる顎へと変える。

 

「成る程な――――そりゃあ、短刀のままよりも今の胃袋(赦し)の方がテメェ向きか!」

「うふふ……察しが良いわね。ええ、そうよ。【赦し】は形を保つ事をやめて、私を取り巻く『胃界』と化したの。お陰で、この通り」

 

 ナル・イャガの足元から芽吹いた、植物の蔓が這い上がる。余りにも悍ましい、この世の物と正反対の、負を体現したその存在。

 今までのように単発ではなく、四つ五つと。五、六、七と渦を巻きながら、縦横無尽に繰り返し襲い掛かる致死の牙。

 

 『オーラフォトンレイ』と『オーラフォトンビーム』で薙ぎ払えたのも途中まで、爆轟や光条すらも食い散らかしたナル・イャガの『底無しの胃袋(ブラックホール)』の一つが、ハイロゥのライフルと【輪廻】の砲撃形態の二挺を使って迎撃するアキの砲閃を潜り抜けて喉笛へと襲い掛かる――――!

 

「ケイロン――同調宜しく!」

『承知――オーラフォトンスパイク!』

 

 それを、【光輝】の守護神獣『ケンタウルス・ケイロン』の持つ戦槍『ハイデアの槍』から放たれたオーラフォトンの飛槍が貫いた。その隙に、二人はハイロゥを閃かせて離脱する。

 

「あら、意外と速いのね」

「私の【光輝】は光――この位は朝飯前って奴よ!」

 

 それと同時に、ナル・イャガの目の前に光の速さで――――頭の羽飾りを漆黒に染めた、『叢雲の器』沙月が現れ出た。

 それと全く同時にナル・イャガを剣状の【光輝】で打ち上げ、更に対空突きを繰り出す。そこまでは、彼女の得意技である『デマテリアライズ』と同じである。

 

「いくわよ――貴女には何も出来ないわ!」

 

 違うのは、そこから。打ち上げられたナル・イャガを、七支刀と化した【光輝】が下方の三方向から貫いて虚空に縫い止める。複雑な枝分かれをした刃により、成る程身動きなど取れまい。

 

「左様――最早、思考すら許さぬぞ!」

 

 更に、沙月に付いていた『叢雲の力』レーメが白魔法『グラスプ』により、完全にナル・イャガの動きを止めた。

 

「完・全・分・解――――ディスインテグレート!」

 

 そして、大上段からの一撃。文字通り『完全分解(ディスインテグレート)』、光の奔流。

 斑鳩沙月の奥義とも言える、『ディスインテグレート』が見舞われた。

 

「ふふ、もっと見せて……最期まで」

 

 だが、それすらも喰らい尽くす。最早、特異点と化したその聖母は――――撃ち込まれた光すら、脱出不可能なブラックホール。

 

「くっ――――何て奴なの……!」

「会長、接近戦は危ねェっすよ――ナルに呑み込まれちまいます」

「でも、神剣魔法も効かないよ……どうしよう、お兄ちゃん」

「全く、厄介な敵だ……」

 

 集結し、ナル・イャガと睨み合う四人。攻め(あぐ)ねるなどと言う生易しいものではない。一体どうすれば良いかすらも思い付かない。

 

「ふふ、無駄よ……今の私はもう、“全ての運命を知る少年”も“宿命に全てを奪われた少女”も越えた『ナル・エターナル』――――貴方達程度の力じゃ、大海原を棒切れで引っ掻いてるようなものよ」

【言ってくれる……ナルに呑み込まれた分際で!】

【兄さま……】

 

 その言葉は、決して誇張ではない。事実、彼女は――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハ――――上等だよ、クソッタレ……なら、この刃位が。『人の刃』たる【輪廻】が……困難を克服する不屈の意思が、その超越を超克してやる――――――――!」

 

 だから、アキは奮い起つ。弱者のままに強者を倒す事、それこそが“天つ空風のアキ”の存在意義。

 

「そう、楽しみだわ」

 

 その克己すら喰らい尽くすべく。ナル・イャガはナル神剣【赦し】の顎を四人に向けて――――

 

「「「「「――――――――――――――!」」」」」

 

 その四人の背後、彼女の正面から沸き上がった力に目を見開いた――――

 

 

………………

…………

……

 

 

「…………」

 

 神剣を振るうアキ達を見遣りながら、『叢雲の意志』ナルカナは立ち尽くしていた。悲痛に眉を歪めながら、握り締めた掌を抱き締め――

 

「ナルカナ――――」

「望……」

 

 その肩に、望が触れた。それだけで、彼女は目に見えて震えた。

 まるで、その次の台詞に怯えるように。

 

「ナルカナ――――俺と、契約しよう」

「――――あ……」

 

 果たして、彼女は更に身を強張らせた。普段のナルカナからは予想も出来ないほどに、弱々しいその姿。それは、ナル・イャガとの戦いの消耗からではない事は確かだ。

 望とて、そんな事くらいは解っている。以前、彼女から――――彼女には、『担い手を求める』という永遠神剣の本来有るべき欲求が無いと言う事を聞いている、彼には。

 

「気付いたんだ、俺は……」

 

 それでも尚、伝えたい言葉が――――伝えたい思いがあった。

 その、自称『永遠神剣の頂点』たる第一位【叢雲】の一部である彼女を後ろから抱き締める。とても人外とは思えぬ、柔らかで小さなな身体だった。

 

「ま、待って、望……あ、あたし……」

 

 背後から抱き竦められたナルカナは、顔を真っ赤に染めて何とかそれだけを呟いた。

 そんな彼女の耳朶に吐息を掛けるかのように、望は呟く。ナルカナは瞼を閉じ、続く言葉を――――

 

「頼む、俺は――――護りたいんだ、全てを」

「うん、全てを……って、え?」

 

 怪訝な表情と共に、聞いた。それもそうだ、この流れならば熱烈な愛の告白くらいは有って然るべきと言うもの。事実、ナルカナとてそう思っていたのだ。

 だから、どんなに嬉しくても――――それを断ろうと決意していた心が、ずっこけた。

 

「確かに、俺じゃ頼りないと分かってる。お前みたいに強い力も、空みたいに強い意思も持ってない俺が、こんな事を望むのは間違ってるのかもしれない……けど!」

 

 だが、そんな事はお構い無しに望は言葉を紡ぐ。他人へと訴え掛ける技巧も、なにもない……ただただ、馬鹿正直な心情の吐露。

 

「失いたくないんだ、何を無くしても……全てを失っても、俺は――――今を生きる皆の命を、生きようとする意志を諦めたくないんだ!」

「…………」

 

 だからこそ、その声は恐らく――――存在する全ての生命に、響いた。

 

「……全く、やっぱりあんたは大物よね。あ~あ、少しくらいロマンチックな事を言ってくれても良いのに。やっぱり男なら、空くらい積極的な方が女は喜ぶのよ」

「うっ……わ、悪い。そう言うの、不慣れでさ」

 

 そして、難しい顔をしていたナルカナが笑った。ずっこけていた頑なな心が――――呆れ果てて。

 

「……ありがとう。うん、幸せだね……やっぱり。求められるって……」

 

 穏やかに笑うナルカナの掌が、己の肩を抱く望の掌に触れる。

 

「世刻望は求める。【叢雲】よ……俺を主として、認めろ」

「神剣【叢雲】は、汝を主として認める……原初より連なる全ての力と使命を授けよう。共に、永遠を歩む者となれ」

 

 交わされる祝詞。それは、世刻望の、尋常の存在としての最後。

 

「【叢雲】を為す根源よ――我が主の血肉となれ!」

 

 ナルに染まり、すげ替えられていく存在。それは、ナル・イャガが行った事と全く同じだ。

 だが――――一つだけ違う。それは、誰が為の愛かと言うこと。

 

 自らの為にではなく、他人の為に。その違いが――唯一無二にして、絶対の違い。

 

「……ありがとう、ナルカナ」

 

 目を開いた望の右手には、細身の長剣。毛抜型の柄を持つ両刃の、鍔本の宝玉から雲を棚引かせる、古き世の和剣。

 即ち――――大和建命(ヤマトタケルノミコト)が佩いたと伝えられる天皇家の武力の象徴、三種の神器の一つ『草薙の剣』にして永遠神剣第一位【叢雲】である。

 

「あれが……【叢雲】、ですって」

 

 そこから漏れ出す力に、神気に。望はおろか、殺し合っていた五人すらもが動きを止めた。

 

「これなら、戦える……」

 

 誰もが、その宿す力に戦いていた。他ならぬ、一度、理想幹で握った筈の、担い手の望すらも。

 

【はぁ? なに言ってんのよ、望……あたしの担い手の望には、『()()()()()()』を握って貰わないと】

「本当の、お前?」

 

 言うや、その意思の矛先が変わった事を感じる。その向きは――――

 

【『叢雲の力』よ――その練達の技を、我が主の智とせよ!】

「ほあ? な、なんだこれは~~っ!」

 

 呼び掛けの刹那、レーメが物凄い勢いで【叢雲】に吸い込まれる。

 

【続いて、『叢雲の器』よ――根源を統べる神名を、我が主に刻め!】

「え――ちょ、わ、私も~~っ?」

 

 続いて、沙月が【叢雲】に引き寄せられて呑み込まれた。

 

「……ぽか~ん」

「いや、全く」

 

 ユーフォリアが口にしたオノマトペに、心底同意する。一体、どんな理由であの二人が吸い込まれたのか。少なくとも、アキとユーフォリアには全くもって理解できなかった。

 

【そして、あたしが『叢雲の意志』……この三つが揃って初めて、本当の第一位永遠神剣【叢雲】よ】

「ああ……行こう、皆」

 

 望の握る剣は、更なる力を放つ。さながら、大空を渡る叢雲の如き――――把握する事すら困難な、雄大すぎる力を掲げて。

 

「俺は、第一位永遠神剣【叢雲】の担い手――――ナル・ハイエターナル“叢雲のノゾム”……!」

 

 その鋒を、ナル・イャガへと向けて。高らかに宣言した――!

 

 余りの力に、息を飲む。それは、並び立つ彼女も、刃を向け合う彼女も同じ。

 

「望さん……凄い力……」

 

 そう、ユーフォリアが呟くのも仕方ない。なまじ力を手にしたからこそ理解できる、その圧倒的な力の渦。

 

「……随分と強くなったのね、貴方。今までとは比べ物に成らないくらい」

 

 ナル・イャガの眼差しが、今まで意識すらしていなかった望へと向く。つまり、それ程と言う事だ。

 だが、だからといって『有利』等ではない。純粋な『力』で言えば、元からエターナルでありその保有していたマナ全てをナル化させているナル・イャガの方が、概念を分割されて時間樹に封じられていた【叢雲】と契約したばかりの若いエターナルよりもまだ上だ。

 

「…………」

 

 しかし、望はその問いかけに答える事なく。右手の和剣【叢雲】と左手の大剣【黎明】を一振りずつ。確かめるように、振るう。

 そして――――真っ直ぐ、ナル・イャガを睨み付けた。

 

「随分と待たせたな……それじゃあ、始めようか」

 

 それだけで、世界が震える。この時間樹が、彼に平伏そうとしている。

 

――――野郎……成る程、こりゃあ唯我独尊を地で行く訳だぜ……!

 

 冷や汗が止まらない。それに見合う力が、そこに存在している。

 

「――――ハ、心強いねェ。まぁ、振り回す筈が振り回されてた、なんてオチが付かなきゃ良いけどよォ」

「もう、お兄ちゃんったら……」

 

 故に、アキは強がる。オイルタンクライターを仕舞いつつ、銜えた紙煙草から紫煙を燻らせながら。元々の戦闘好きもあるが先にも表した通り、弱者のままに強者を倒す事――――それこそが、それだけが彼の存在意義。

 例え『()()()()()()()』だろうと、強いだけの者には屈しない。

 

「ハハ、ホントお前は天の邪鬼だよな……ナルカナと良い勝負だ」

「【何をォ!」】

 

 それを知るからこそ、望……否、『()()()』も呆れたように笑う。アキと同じく、頼りになる仲間に。

 

「全く……三人とも、今は目の前の敵に集中してください」

 

 そんな彼らの間に、イルカナが立つ。ジトッと、ノゾムとアキを睨みながら。

 

「イ、イルカナ……」

「おい、ルカ……足、足踏んでる」

 

 その掌を【叢雲】に重ねたイルカナは、ゆっくりとアキの足から自分の足を退けて――――

 

「てい!」

「痛ッ! な、何すんだルカ――――」

 

 思いっきり、その脛を蹴った。さしものアキも、無防備な状態で弁慶の泣き所を『ディスペランスシールド』を纏った状態で蹴られては堪らない。

 【輪廻】を足場に突き立てて膝を抱えるように抱き寄せ、脛を擦れば――――姿勢が低くなったアキの頬に両手を添えたイルカナが、桜色の唇を寄せた。

 

「……お別れです、兄上さま。私は、やはり――――【叢雲】の一部ですから。全力を引き出す為には、不可欠なんです」

「ルカ……」

 

 悲しげな囀りと共に、その姿が金色の霧へと変わる。その姿が、【叢雲】へと還っていく。

 

「……チッ、下手コイたな。こんな事なら、さっさとモノにしとくんだったぜ」

 

 それに、悪辣な笑顔を返す。心底から残念そうに。どれ程、喪う痛みを伴おうとも――――『兄』等と呼ばれておきながら、醜態など晒せはしない。

 

「ええ、本当に……兄上さまはいつも、肝腎なところでスローリーなんだから。多寡が残滓の私は【叢雲】に還ればもう、二度と『同じイルカナ』として出て来れはしないんですから……精々後悔してください」

「そりゃあ、手厳しいな……本当、惜しい話だぜ」

 

 それに応えて、イルカナもまた笑顔を見せた。その笑顔を次いで親友二人へ、ユーフォリアと化身化したアイオネアに向けた。

 

「ユーちゃんもアイちゃんも、随分と大人っぽくなって……羨ましいな。私はこれで最後だから、さっきのキスは許してね」

「ルカちゃん……」

「うう……」

 

 

 涙ぐむユーフォリアに、早くもしゃくりあげ始めているアイオネア。それに自身も感極まったのか、涙を浮かべて……それでも笑顔のまま、イルカナは。

 

「じゃあね、二人とも。たまにで良いから……私の事、思い出して……ね……」

「何言ってるの……きっと、きっと忘れないよ……ルカちゃん」

「うん……だから、また会おうね……ルカちゃん」

 

 二人からの、涙ながらの笑顔に見送られて。彼女は、その姿を【叢雲】へと融かして消えた。

 その名残を惜しみなどしない。それは――――もっと後で。

 

「――――ッ!」

 

 刹那、襲い来た『業を喰うもの』をアキの『絶対防御(アブソリュート)』とユーフォリアの『サージングオーラ』、ノゾムの『ディスペランススフィア』の三枚が辛うじて防ぐ。

 

「盛り上がってるのね、私も是非混ぜて欲しいわ――――」

「ハ――――悪ィね、若者だけのコミュニティだ。ババァの入る余地は無ェんだよ……!」

 

 足場に突き立てたままの【輪廻】を握りながらループレバーを操作して銃弾を装填、その刃を旋回する三枚のハイロゥの回転速度を上げる。

 鍔本の宝玉から溢れ出る黄金の風を巻き込むそれは足場に黄金の魔法陣を展開し、やがて追い風となる。

 

「行くぞ、これが――――」

 

 その隣ではノゾムが【叢雲】を握る右腕を前方に突き出しながら、同じく黄金の魔法陣を展開。

 右腕のガントレットを包むように青いオーラを纏いつつ、光を生む。

 

「はい、見せてあげます――――」

 

 そして、そんな二人の少し後ろ。【悠久】を回転させながら天高く掲げて、やはり黄金の魔法陣を展開したユーフォリア。

 刃の半ば程の位置にある赤い宝珠が煌めき、意志の力を引き出す。

 

「「「絆の力を!」」」

 

 激励のオーラ『トラスケード』に神聖のオーラ『ホーリー』、鼓舞のオーラ『インスパイア』――――同時に、三つのオーラが煌めく。

 

「ええ、楽しみにしてるわ――――きっと、美味しいんでしょうから!」

 

 ナル・イャガは、左手で身を包む絹紗(ヴェール)をはためかせる。それと同時に頭上と胸元、足下に毒々しい肉色の……最早、『渦』としか形容できないナル化マナの濁流が広がった。


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