ここ最近既に初夏みたいに暑くてだるんだるんになってます。
春よ。仕事をしろ。仕事を。
では、どうぞ。
私がこの鎮守府に着任し、改善を開始してから一週間がたった。
これまで食の改善を始めとして身を清める為の一日一回の入渠や毎回の補給にローテーションでの休暇。
直ぐに開始出来る事は直ぐに実施してきたがついにある問題に衝突した。
「皆集まったな。」
その問題を解決すべく私は完全休暇を与えて全艦娘を食堂に集めて声をかける。
ガヤガヤと話をしていた声が静まるのを確認して再度私が口を開く。
「うむ。皆がこうして集まり、私の声に耳を傾けてくれるようになって嬉しい限りだな。」
少し前まではこうして前に立つと殺意を孕んだ目で此方を睨む者や聞く気がなく出ていく者等が沢山いたが今は殺意はまだ無くならないが少なくとも出ていく者はいなくなった。
「では、本題に入ろうか。まずはこれを見てほしい。」
近くの者に紙の束を渡して皆に回すように伝えて皆に配り終わったのを確認してからまた口を開く。
「これは皆からの要望等を記入したものだが改善済みのものは横線で急を要するものは赤文字で書き記しているんだが、明日からこの鎮守府…前提督がくだらない程に手を加えた執務室等を含めた全ての施設を建て直す予定だ。」
私の言葉に納得が五割、驚きが四割、さして興味がないのが一割程度だ。
「提督。」
艦娘達の中からスッと手が上がる。
私が指名すると立ち上がり、質問を開始する。
「どうした。長門。」
「この工事はかなり大規模になると思うが…施工期間は?」
「ああ、完全に施工完了するには半年程かかると言われたな。」
「なるほど。予想は出来たが長すぎないか?」
「もっともな意見だ。しかし、いきなり全てするわけではない。先ずは寮と鎮守府本館を始めて、次に工房、最後にグランドや食堂などの細かい施設と順番にする予定だ。これにより工期が何ヵ月か延びてしまうがここが攻撃されないとも言えないから了承してほしい。」
「確かにそうだな。私は了解した。」
「助かる。」
長門は納得したのかその場に座り、此方に見つめてくる。
「更に皆の中で先に改修してほしい所などが有れば遠慮なく言って欲しい。二つ返事とは言えないが出来る限り考慮するつもりだ。」
今の所は特にないのか手は上がらない。
「ふむ。では次の議題に移ろう。寮を改修するに当たって問題が生じる。皆の寝るところだ。」
「考えてねぇのかよ。」
皆が驚いてる中で声が上がる。
「いや、プレハブにはなるが一応グランドに簡易寮を設置する予定だ。天龍。」
「チッ…なら文句ねぇな。」
「いや、まだ問題がある。」
「あ?なんだよ。」
「プレハブがおける数は10個が限界だ。
一つに10人で、満室だが艦娘だけで100名いるわけだが…私を含めてこの鎮守府に住んでいるのは101名いるわけだ。つまり、私の寝る場所がない。」
そう、由々しき事態なのだ。
鎮守府と寮が工事に一番時間がかかり、今回のプランではこの二つだけで半年かかる予定だ。
男装で見た目は男だが、中身はれっきとした女の私だ。
流石に廊下などで雑魚寝したくない。
「「「「……はぁ。」」」」
至るところからため息が漏れる。
わかっていたとは言え少し悲しくなる。泣きそう。
「私も半年近くも廊下等では寝たくはないからな。ホテルなんてもっての他だ。そんな無駄遣いは出来ん。」
私も学生時代は寮生活で元々貧乏性なのもあり、ホテルなど論外だ。
「そこでだ。私もプレハブで寝ようと思う。無論嫌な者も出てくるだろう。」
「「「えぇー!?」」」
うん。わかってたよ?
でも、そんなに露骨に嫌がらなくてもいいと思うんだ。
本当に泣きそう。
「最後まで聞いてくれ。一週間のローテーションで場所を変えつつ皆の部屋に泊まらせてほしいんだ。半年間一緒よりはましだろ?」
私の言葉に未だに嫌そうだが渋々といった感じで了承してくれる。
「皆、本当にすまない。では、話は以上だ。解散。」
皆が各々行動を始めるのを横目に私も食堂を後にした。
――――――――――
「…………本当にどうしよう。」
執務室の机の上に両肘をついて口の前で両手の指を絡める。
俗に言うゲン○ウポーズである…って、それどころじゃない。
「どうしよう…私だけが贅沢なんて絶対したくないけど…男装がバレちゃうよ。」
コンコン。
執務室の扉がノックされて私は頭を切り替えて返事をする。
「どうぞ。」
「失礼するのです。」
「入るぜ。」
入って来たのは電と天龍だった。
他の第六駆逐隊が天龍になついている為、自然と電も仲良くなったと聞いたが本当みたいだ。
「どうかしたのか?」
私がそう問うと電は俯き、天龍は少し困った様に頭をかいた。
「司令官さん。天龍さんは信頼出来るのです。」
「ふむ…だが、それでは意味がないと思うんだが?」
意を決したのか俯いた顔をあげて電は言うが、私は心苦しくてもその意見を一刀両断に切り捨てる。
「でも、今回は仕方ないのです。」
「…痛いところをつくな。だが、ダメだ。」
電が私を心配してくれているのは分かるが自分の都合だけでの行動は慎むべきだし、何より自分勝手は私が嫌いだ。
「さっきからなんの話だよ。訳が分からねぇぞ?」
天龍の言葉にも反応できないほどに電と私は真剣な目で睨み合うがそんな空気は一瞬で消し飛ぶ。
「何をしているんですか?」
鳳翔…お母さんの手によって。
「おか…鳳翔…。」
「鳳翔さん…。」
私達二人は明らかに怒ってますオーラ全開のお母さんが立つ執務室の入り口に恐る恐る目を向ける。
「さっきから聞いていたら折角来てもらってる天龍を放っといて何をしているんですか?」
見た目は優しい笑みを浮かべるお母さんだが、時折覗く薄く開かれる瞳には光がない。
マズイ。マジギレだよ。これ。
「それに司令官さん?私達に相談も無しに勝手に工事を決めてしまったのにも私は怒ってます。」
ああ…矛先が私に向いちゃったよぉ…。
「聞いてますか?」
「は、はい!」
反射的に椅子から立ち上がりその場で直立する。
「決まった物は仕方ありませんが秘密を守る為には私と電ちゃんだけでは不可能ですから何人かに打ち明けましょう。」
「いや、それでは意味が…「ナニカモンダイデモ?」いえ!何でもありません!!」
あわわわ…。
お母さんが片言になってて反論なんか出来ないよ。
「つか、さっきから何の話だよ。説明しろよ。」
しびれを切らしたのか、ずっと放っとかされていた天龍がイライラした口調でお母さんに話しかける。
「ああ、長い事放置してすみません。とりあえず、私の口からは言えませんから司令官さんから聞いてください。」
「???まあ、いいけどよ。」
再び私を見るお母さんの目には【ちゃんと言わないと後でキツいお仕置きですよ?】と言ってくる。
仕方ないので観念した私は溜め息を吐いてから天龍に告げる。
「騙しててごめんなさい。私は本当は女です。」
「は?」
【何言ってんのコイツ】みたいな目で見ないで。
その目は心にくるから。
「とは言っても信じれませんよね。今証拠を見せますよ。」
今だ表情を変えない天龍にチクチクと精神的ダメージを受けながら胸を押さえつけているさらしを解く。
「ん…ふぅ。苦しかった。」
「………。」
「ん?天龍?」
今まで押さえつけられていた乳房が元の形を取り戻し、軍服を大きく押し上げてその存在を主張する。
「………。」
「んん?おーい。天龍ぅー。」
「ぬぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!」
「きゃぁ!?」
反応がない天龍に近付いて顔の前で手をヒラヒラしていると突然叫び始めた天龍に驚き後退りしようとして失敗して床に尻餅をついてしまう。
ガン!ガン!ガン!
「ああぁぁぁ!夢だ!夢だ夢だ夢だぁぁぁ!!!」
何故か錯乱した天龍は壁に自分の頭を何度も打ち付けて叫んでいる。
私達が必死に止めようとするが止まらず結局脳震盪をおこして倒れるまで錯乱は続いた。
―続く。
天龍ちゃんがかわいそー。
まあ、自分のせいなんですけどね!!
ですが、百合スキーな自分ですからいい感じの仲になってくれたらいーなーって思ってます。
では、今回も読んで頂きありがとうございました♪