白い司令塔(仮)   作:0ひじり0

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ひじりでーす♪

いやー遅くなってすみませんでした!(土下座)
今回のお話には残酷な表現が入っておりますのでお気をつけ下さい。

では、どうぞ♪


第肆話

目の前が赤に染まる。

それは激しく揺らめき全てを飲み込む。

 

ああ…またこの夢か。

 

そこは鎮守府だった。

しかし、今の佐世保でも前の牟岐でもない。

ここは昔の佐世保鎮守府…まだパパがいた時の鎮守府。

その燃え盛る炎の中で金色の髪を振り乱しながら走る一人の女の子がいる。

昔の私。

昔の…弱くて無力な私だ。

 

「パパぁー!!ママぁー!!」

 

幼い私は力の限り叫ぶ。

また走る。

また叫ぶ。

それを何度か繰り返してついに見付けてしまう。

 

「パパ!?パパー!!!」

 

瓦礫の間から大好きなパパの後ろ姿が見えて私は走り寄る。

 

ダメ!

近寄らないで!

…お願い、だからぁ!!

 

「パパ!………パパ?」

 

瓦礫に持たれる様にして座っているパパに声をかけても返事は無い。

当たり前だ。

 

「…ひっ!?」

 

ついに幼い私は正面からパパを見てしまう。

パパは…死んでいた。

顔の半分と右胸辺りから右腕が無くなっていた。

どう見ても即死だろう。

幼い私から見てもそんな事簡単に理解出来るくらいの致命傷だ。

 

「ぃや…嫌嫌嫌嫌いやいやいやいやああぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!」

 

叫ぶ。

叫んで…息もままならない位にまた叫ぶ。

涙は出なかった。

叫ぶのに必死なのか…理解したくないのか今でもわからない。

 

「ああぁぁぁ!!」

 

「樹!!」

 

叫ぶ私を見付けてに抱き締める女性…ママだ。

 

「………ママ…?」

 

「ええ…ママよ。良かった…。」

 

本当に心配していたのか痛いくらいに抱き締めてくれた。

今でも覚えている。

 

「ママ…パパが…パパがぁ…。」

 

「えっ?…っ!?」

 

私の言葉にママはパパを見て悲しくて泣きそうな顔をするが血が滲む程唇を噛み締めて涙を堪える。

 

「轟児さん…先に逝ってしまわれたんですね。」

 

「…ママ?」

 

「樹…辛いだろうけどパパにお別れしましょ…。」

 

「嫌!……だけど…私我慢する!!」

 

「そう。いい子ね。」

 

ママは私の頭を撫でてくれる。

この時の私でも一番辛いのは私ではなくてママなんだと理解出来たから必死で我慢した。

 

「轟児さん…このクラウディア貴方と夫婦になれて…樹と言う轟児さんと私の天使をこの世に産めた事を誇りに思います。本当に幸せでした。」

 

ママはパパの前に膝をついてパパに寄り添う。

 

「…愛しています。」

 

ママはパパの唇に触れるだけの口付けをして体を離す。

 

「…樹。」

 

「うん。」

 

私はママに背中を押されてパパの前に立つ。

 

「パパ。私、パパの分も一杯生きる!だから…だから!……天国から見守ってて下さい。」

 

私もパパの頬にキスをしてから離れてママと手を繋いで走り出した。

 

――――――――――

 

パパとお別れしたママと私は出口に向かって走っているがあちらこちらで火の手があがり、遠回りを余儀無くなっていた。

 

ドォン!!

 

いきなり轟音が鳴り響く。

今思えばそれは副砲位の音だが、当時の私からすれば戦艦級の主砲位に感じたのを覚えている。

 

「ああ!?」

 

「ママぁ!!」

 

私の手を引いて走っていたママが足を払われた様に転んでしまう。

転んだママに寄り添う様にしゃがむ私が見たのは左足の膝から下が無くなって血を流すママの姿だった。

 

「樹…隠れなさい。」

 

「ヤダ!」

 

「樹!!今の砲撃は近かった…見付かったら殺されるわ…お願い!言うことを聞いて!」

 

「やだ…やだよぉ…。」

 

ママは私の頬を叩く。

 

「隠れなさい…早く!」

 

「ママ…。」

 

パパと結婚するまではかつて世界最強と謳われた「氷結の女帝」たるママの気迫に私は慌てて近くに身を隠す。

 

 

「イキノコリガイタカ…。」

 

「くっ…戦艦棲姫ぃ!!」

 

「マサカトハオモッタガオマエトハナ…。」

 

「狙いは…私か。」

 

身を隠す私にも二人の会話が聞こえてきた。

私は二人から見えないように様子を伺う為に顔を覗かせる。

 

「何故私だけを狙わなかった!!」

 

「フンッ…オマエニハカイメツスンゼンニオイコマレルホドニドウホウヲコロサレタカラナ。」

 

「…殺してやる!!」

 

「カンムスモイナイオマエニデキルコトハナイ。ゼツボウシナガラ…イケ。」

 

ドォン!!!

バシャッ!!!

 

這いつくばるママにアイツ…戦艦棲姫は主砲を放つ。

ママの体は上半身が消し飛び、辺りに真っ赤な血が飛び散る。

血は私の顔にもかかり、私は気を失ってしまう。

 

「アッケナイモノダナ。ヒキアゲルゾ!」

 

その間に戦艦棲姫は去ってしまった。

 

「ん…っ!ママ!!」

 

目を覚ました私は慌てて隠れていた所から飛び出してママに走り寄る。

しかし、ママの遺体は燃えてしまっていた。

私は絶望でその場で膝をついてママを見つめる。

 

「くっ、ううううぅぅぅぅぅ!!!」

 

身を屈めてギリッと歯を食いしばって叫ぶのを堪える。

今はまだ叫べない。

近くにまだアイツの仲間がいるかも知れないから。

だから堪える。

身が裂けてしまう程の絶望、苦痛、憎悪。

 

「えっ!?髪が、白くなってる!?」

 

視界に映る金色の髪が白く染まっていく。

怖かったが、今はここから逃げ出すのが先決だからまた走り出す。

しかし、神様は残酷だった。

 

ドガァァン!!

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

運悪く近くで爆発が起こり私は吹き飛ばされる。

そして不運はそれだけではない。

 

ドスッ!

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

吹き飛ばされた際に直径三センチ程の剥き出しの鉄筋が腹部に刺さったのだ。

 

「ぐっ…ゲホッ!」

 

ボタボタ!

 

急激な吐き気で噎せると出たのは胃液ではなく血だった。

大量の血を一気に失った私は意識が朦朧とする。

 

「いやだ…死にたくないよぉ…ままぁ…ぱぱぁ…たすけてぇ…。」

 

私の言葉は虚しくも燃え盛る炎にかき消される。

もうダメかと思った時にそれは現れた。

 

「マダ…イキノコリガイタノネ。」

 

「だぁ…れ…?」

 

「チュウカンセイキ…。」

 

「私を…殺す…ゴホッ!…の?」

 

私は諦めた腹部に刺さった鉄筋を抜いて逃げれる程の気力も体力もないし、逃げたとしても直ぐに捕まって殺されるに決まってるから。

しかし、彼女…中間棲姫は首を横に振る。

 

「コロサナイワ…ワタシハシズカニクラシタイダケダモノ。ココニキタノモムリヤリツレテコラレタダケダシ…。」

 

「そう…なんだ…。」

 

「メノマエデシナレルノハキブンガワルイワ。」

 

そこで私の視界は暗転し、意識を手放した。

 

――――――――――

 

「――ゃん―――ちゃん――――いーちゃん!」

 

「んっ…電?」

 

名前を呼ばれて目を覚ます。

目に入ったのは可愛らしい顔を不安げに歪めた電の顔だった。

 

「電なのです。大丈夫なのです?」

 

「うん…大丈夫。」

 

ぎゅぅ。

 

「…電?」

 

電は私の頭を抱き締める。

子供特有の高い体温と柔らかい体が心地いい。

 

「また、あの夢を見たのですか?」

 

「……うん。ごめんなさい…また、心配かけちゃったね…。」

 

私が謝ると電は頭を撫でてくれて私も甘える様に電の腰に腕を回す。

 

「謝らなくていいのです。」

 

「ん…ありがとう。」

 

「どういたしまして、なのです♪」

 

謝罪ではなくてお礼を言うと電は一度ぎゅっと抱き締める力を強めてから体を離して私に微笑む。

 

「お母さんは?」

 

「もう食堂なのです。」

 

「そっか…じゃあ、まだローテのメンバー決まってないから手伝い行こっか。」

 

「はいなのです♪」

 

―続く。




読んで頂きありがとうございました!

今回は過去のお話になります。
過去の話は時々ぶっこんでいきますのでどうかご了承下さい!

因みに樹の両親の紹介しますね。

長宗我部・ティルピッツ・轟児(享年34歳)
娘である樹が産まれるまでは長宗我部家唯一の生き残りであった。
一族を滅ぼされて憎悪で深海棲艦を滅ぼすことばかり考えていたが将来妻になるクラウディアに出逢い諭される。
荒れていた時に付けられたあだ名がかつて長宗我部元親に付けられていた【鬼若子】だが、クラウディアには一度しか勝てていない。
性格は豪快かつ単純で裏表がなくて明るので皆から慕われていた。

長宗我部・ティルピッツ・クラウディア(享年35歳)
ドイツのティルピッツ家出身の元女性提督。
その腕は【氷結の女帝】と謳われており、越えるものどころかその足元にも近寄れないと言われて世界最強を欲しいままにしていた。
演習で負けたのは轟児に負けた一度だけだった。
性格は基本的にはのほほんとした天然さんだが、一度戦いになると緻密に計算された作戦で冷酷に相手を追い詰める。

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