白い司令塔(仮)   作:0ひじり0

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ひじりです。
自分も艦これはしているんですが、運営が下手くそなのか艦娘には苦労をかけてしまってます。

精進せねば…。

2017/2/21 鳳翔の言葉使いを訂正しました。


第弐話

「時間が来たな。では、始めよう。」

 

執務室の椅子に座る樹が皆が集まっているのを確認してから声をかける。

それぞれの艦種の代表は『戦艦代表長門』『空母代表赤城』『重巡代表高雄』『軽巡代表天龍』『駆逐代表響』と『大淀』『明石』『間宮』の8名が樹の前に並ぶ。

 

「早速だがそれぞれの問題点を一人ずつ言ってくれ。」

 

「では、私から。」

 

樹の言葉に長門が一歩前に出る。

 

「まず、現在この鎮守府に中破・大破の者を入渠し、これからは損傷の度合いに関わらず入渠させて欲しい。」

 

「かまわん。元々私もそのつもりだったしな。許可しよう。」

 

長門は納得したのか一歩下がる。

 

「私からも1ついいですか?」

 

「かまわんぞ。」

 

次に発言したのは間宮だった。

間宮は恐る恐るといった感じで続ける。

 

「食の改善をしたいです。今は補給と食事を一度に取るような形でして皆さんに美味しい食事を提供させて下さい。」

 

「なるほど…それも許可しよう。腹が減っては戦は出来ぬと諺でもあるしな。」

 

「ありがとうございます。」

 

間宮は嬉しそうに頭を下げて礼をのべる。

そうして次々に意見は出てきて『補給はちゃんとして欲しい』『艦娘の寝床がぼろぼろで直して欲しい』『連続遠征は止めて欲しい』『休みが欲しい』など普通ならごく当たり前の意見を必死に訴える艦娘達に樹は前提督に対して憎悪が沸き上がる。

しかし、顔に出ていたのか最後に『休みが欲しい』と発言した響が声をかける。

 

「やっぱり、休みはダメだったかい。」

 

「ぁ、いや…すまない。前提督の極悪ぶりに苛立ちを覚えてな。休みに関しては許可だ。」

 

「ハラショー。感謝する。」

 

安堵したように響は顔を綻ばせて下がる。

 

「さて、大体の意見は出たか?」

 

「……。」

 

樹は彼女達を見渡すが唯一発言していない天龍に声をかける。

 

「天龍。何かないか?」

 

「俺は…その、チビどもが笑えて暮らせたらそれでいい。」

 

天龍は目を合わせようとはせずに気まずそうだが答える。

樹は天龍が本当に優しい心を持っているのだと再確認し、微笑む。

 

「フッ…そうか。では、皆に何か問題点が浮上したら直ぐに報告するように伝えてくれ。では、解散。」

 

樹の言葉に皆が執務室を後にする中で天龍は動こうとはしなかった。

 

「天龍どうした。」

 

「いや、その…だな…あ、足は大丈夫なのか?」

 

天龍は樹に負傷した足の事を聞く。

直接自分がした訳ではないが、自分と口論で同じ様な傷を自ら作った樹を心配だったのだ。

 

「あれから医者に診てもらってな。骨などは避けてたから問題はない。」

 

「何であんなことしたんだよ。」

 

意を決して樹がなんであんなことをしたのか訊ねる。

 

「ふむ…何でだろうな…自分でもわからん。」

 

「はぁ?」

 

樹は腕を組み考えるが理由が浮かばなかったのか首を横に振って答える。

その余りにも予想外の答えに天龍は驚愕する。

 

「い、意味もなくやったのか!?」

 

「いや、意味の無いわけではないが…言ってしまえばあれをする必要性はなかった。」

 

天龍は訳がわからず混乱する。

そんな天龍を他所に樹は言葉を続ける。

 

「だが、こうして天龍や他の皆の痛みを少しでも理解出来たなら…私は嬉しく思う。」

 

「っ!?」

 

天龍は優しく微笑みながら自分の左腿を擦る樹にドキッとする。

 

「だが、私は只の人間だ。皆のされた事を全てこの身に受ければ死んでしまうだろう。しかし、私はここを改善するまでは死ねん。」

 

天龍は樹から目が離せなかった。

樹の強い決心が宿った瞳は綺麗で澄んでいた。

 

「だから、残りのは皆との契約が果たせなかった時に受ける。その覚悟はしてきたからな。」

 

「……っ…ば、バカじゃねぇか。本当にバカ野郎だ。」

 

ハッと我にかえった天龍は言葉が浮かばず悪態をついてしまう。

その頬は朱に染まり、慌てた様子で執務室を飛び出した。

 

「………はぁ…。」

 

樹以外に誰も居なくなった執務室で椅子に背を預けて樹の口から小さなため息が漏れる。

それは部屋の中に響いて消えていった。

 

――――――――――

 

バカだ。

あいつは本当にバカとしか言いようがない。

天龍はどこに行くわけでもないが一刻も早くあのバカがいる所から離れたかった。

 

「なんだよ…ちくしょう…。」

 

悪態をつくが真っ赤に染まるその顔は嬉しそうな笑みが浮かんでおり、その心に芽生えた初めての感情に戸惑いながら彼女は歩き続けた。

 

――――――――――

 

その日の夕方に佐世保鎮守府の正門前に二人の艦娘が到着する。

 

「やっと着いたのです。」

 

「ええ。それにしても樹ちゃん大丈夫でしょうか?」

 

「いーちゃんは人見知りなので心配なのです。」

 

「そうですね。早く行きましょうか。」

 

「はいなのです。」

 

二人の艦娘は暁型四番艦『電』と鳳翔型一番艦『鳳翔』だった。

二人は樹がいた徳島牟岐海軍基地から呼び寄せた樹が最も信頼する艦娘だ。

 

「電の本気をみるのです!」

 

「ふふっ…電ちゃんたら。」

 

二人は正門をくぐって樹が居るであろう執務室を目指して歩きだした。

 

―続く。




この度は読んでいただきありがとうございました。

天龍がチョロいん(笑)
これからどうなっていくかは正直自分も未定なんですが和解&ほのぼの&イチャイチャを書きたいなーって思います。

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